ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜   作:シベ・リア

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みなさんどうも、作者のシベリアです。
ついにこの物語も最終回を迎えてしまいました。書きながら色んなことを思っていました。ですがそれはこの場で語ることではありません。今はただ、みなさんに最終回を読んで頂きたい気持ちでいっぱいです。
それでは『ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜』最終回、どうぞごゆっくりお読みください。



最終回「1人の男の愛する人と歩む道」

 

 

 

『ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜』最終回

 

 

───「1人の男が愛する人と歩む道」───

 

 

 

「ふぅ、今日は久しぶりに楽しかったわね〜」

「そうだな」

 

絵里とナオキは久しぶりの2人っきりのデートを楽しみ、喫茶店で向かい合わせになって飲み物を飲みながら休憩していた。

ナオキはラブライブ!のことやらで、絵里も大学のことやらで2人共予定が合わず、たまたま絵里が休講になったこの日にデートすることにしたのだ。ショッピングモールで買い物をして、ボーリングやカラオケのある所でたくさん遊んだ。ナオキの椅子の隣には、ゲームセンターで取った熊のぬいぐるみが袋に入れられて置かれていた。

 

「……なんだよ」

「ん〜、なにも〜?」

 

ナオキは頬杖をついて脚をぶらぶらさせながらこちらを笑顔で見てくる絵里に若干照れ臭くなった。絵里は久しぶりのデートが余程嬉しかったのかずっとニヤニヤしていた。

そしてナオキはコーヒーを一気に飲み干すとカップをお皿に置いて息を吐いた。

 

「……な、なぁ、絵里。ちょっと行きたい所があるんだけど、いいかな?」

「ん?えぇ、大丈夫よ。そしたらケーキ食べ終わるまで待ってね」

「あ、あぁ、もちろん」

「ん〜、このケーキ美味しい〜!」

 

絵里がチョコケーキをゆっくりと味わう中、ナオキは絵里が承諾してくれた安心感と緊張感を味わっていた。

 

 

 

 

───数十分後。

 

「それで、ナオキの行きたいところって?」

「まぁ、そうだな……着いてからのお楽しみにってことで」

「……わかった」

 

喫茶店をあとにして2人はナオキ先導の元、手を繋いで()()()()へと向かっていた。絵里はどこに行くのか検討もつかず、辺りをキョロキョロしながらナオキの足に体を委ねていた。

 

「……ここだ」

 

ナオキが足を止めたのはある教会の前だった。今は人の気配がなかったが、庭などはしっかり手入れされていたのできっと今日(こんにち)も使われているのだろうとわかる。

絵里はその教会の札、そして大きな木を見て幼き日の記憶が蘇って目をうるうるとさせた。

 

「っ……もしかしてここって……!」

 

「あぁ、教会自体は変わってるけど……()()()()()()()()()()()()だよ」

 

この場所は不思議な歌に誘われて訪れた幼いナオキがバレエを踊る絵里と初めて出逢い、よく遊んで、そして互いが互いに恋心を抱いた場所だ。

 

「まだ残ってたのね……!」

 

「あぁ、見つけた時はびっくりしたよ。外見が変わってわからなかったけど、あの木とこの教会の名前を見て思い出したよ」

 

「もしかして、これを見せるために?」

 

絵里は目を輝かせるほどに感動していたが、それを良い意味で裏切るような返答をナオキはした。

 

「……それもあるけど、もうひとつ理由があるんだ」

 

「え?」

 

予想外の返しに絵里は驚いてナオキの顔を見つめた。そんなナオキの顔は至って真剣で、自然と絵里も緊張してきてナオキの顔から目が離せなくなる。

 

「絵里、ここでしようか」

 

「するって……なにを?」

 

「決まってるじゃないか───」

 

 

 

 

 

ナオキは右膝を地面につけて絵里の左手を両手で優しく包み、絵里の顔を愛おしそうに見上げた。

この状況で教会ですることと言えば"あれ"しかない。絵里はそのことにナオキから直接言われるまで気付かなかった。

 

 

 

 

 

「───結婚式だよ。この教会でするんだ。絵里と初めて出逢って、絵里に一目惚れしたこの場所で」

 

「っ…………!!」

 

この時絵里を襲ったのは言葉にならないような感覚だった。感激のあまり絵里は右手で口を塞いだがその目からは涙が溢れ出ていた。

 

「この教会を見つけた時から決めてたんだ。絵里と式を挙げるならここがいいって。それにここは幸い結婚式も挙げれるように改装されてて、近くにブライダルの会社の事務所もあるんだ。あとは絵里の了承さえあればここで式を挙げることができる……だから絵里、おれとここで───」

 

「───そんなの、いいに決まってるじゃないの……!」

 

「それもそうか……ありがとう」

 

ナオキは微笑み、立ち上がって嬉し涙を流す絵里を優しく抱きしめた。絵里も抱きしめ返して2人は確かな()()を感じた。

 

───2人の出逢いの場所での結婚式。

この教会で不思議な歌により出逢い、別れ、また再会して恋人になって、そしてこの教会で式を挙げる。それは奇跡というよりは運命というべきなのだろう。

 

 

「じゃあ、行こうか」

 

「えぇ……!」

 

 

幸せいっぱいの2人はその教会の近くにあるブライダル事務所に歩いて行った。

 

 

──後日、婚姻届も提出して2人の関係はまた一歩前進した。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

───そして時は1年ほど流れた。

 

ナオキも無事ラブライブ!運営委員会の会長になり、絵里は短期大学を卒業して…………

 

 

 

 

──6月28日

 

 

 

 

この日、ナオキと絵里は出逢いの場で思い出の場所である教会で結婚式を挙げることとなった。

そこには親族以外にもμ'sとShooting Starsや童子、絵里の大学の友人やナオキの職場の人、そしてミツヒデ達やナニワオトメの面々も呼ばれていた。A-RISEにも招待状が送られたが仕事が入り来れなくなってしまった。

 

 

「ついに、か………」

 

ナオキは教会の扉の前でネクタイを上げた。

前には牧師のアレクセイ・ミハイロヴィッチ・パヴロフがいる。

ナオキは式が始まるのを今か今かと待ち望んではいたが、心の整理がつくまで待って欲しいという気持ちもあった。

 

『新郎と牧師の入場です!』

 

扉の向こうから声を聞いていよいよかとナオキは唾をのみ、手袋を力強く握った。

 

 

そして式場の2人のスタッフが扉を開けるとオルガンの演奏が始まり、その音と共に式を見届けてくれている人達の拍手が教会に響いた。教会の奥にあるステンドグラスは太陽の光を受けて、教会内を明るく照らしている。壁も白の塗装がされており、それが一層教会内を明るくしていてより神聖さを際立てている。

 

牧師が先に歩いて行き、間隔が空いてからナオキは歩き出して中に入る直前で止まって一礼した。そして左側、新婦関係者の方に向かいバラ花を一輪ずつ受け取る。その間に、教会の扉は閉められた。

 

 

ナオキはまずは絵里の大学などの友人達から花を受け取っていき、3列ほど歩くと次に右側、新郎関係者の方の後ろの列に戻り、花を受け取っていく。

 

「はい、おめでとう!」

 

「おめでとう」

 

「おめでとうにゃ!」

 

「ありがとう」

 

花陽から花を受け取り、真姫と凛からも祝福の言葉をもらった。

 

「はい、おめでとう」

 

「「おめでとう!」」

 

「ありがとう」

 

次の列ではにこから受け取り、希と雪穂からも祝福の言葉をもらう。

 

「どうぞ、おめでとうございます」

 

「「おめでとう!」」

 

「あぁ、ありがとう」

 

その次の列では海未から花を受け取り、穂乃果とことりからも祝福の言葉をもらった。

 

「おめでとうさん」

 

「「「おめでとうございます」」」

 

「ありがとうございます」

 

さらにナオキはまた左側の列に向かい、童子から花を受け取って真癒美・瑞希・マシュから祝福の言葉をもらった。

 

「ほら、おめでとう」

 

「「おめでとう」」

 

「ありがとう」

 

そしてまた右側の列に向かい、ミツヒデから花を受け取って英吉とイズミからも祝福の言葉をもらう。

それから亜里沙をはじめとした絵里の親戚の人達、梨子をはじめとしたナオキの親戚の人達から花と祝福の言葉をもらった。

 

そしてその合計12本の花束をブーケにしてもらうためにスタッフに渡して、自ら1本忍ばせて途中まで紐でくくってもらい、最後の仕上げをナオキ自身がして段差を上って牧師を見つめた。

 

「ただいまより、ナオキさんと絵里さんの式を執り行います。それでは、新婦の絵里さんが入場されますので皆さんご起立ください」

 

牧師がそう言うと、全員立ち上がって入口を見つめた。

 

 

 

 

 

───数分前。

 

「入場したみたいね……」

 

絵里は控え室で新郎であるナオキが入場する時に流れるオルガンの音を聞いてそう呟いた。

 

「それじゃあ行きましょうか」

 

母の里美がそう言うと3人は立ち上がって、スタッフの案内に従いナオキ達がいる式場に足を進めた。

 

 

 

「絵里、とても綺麗よ」

 

「ママ、ありがとう」

 

「それじゃあ……しっかりね」

 

「うん……」

 

そして里美は絵里にウェディングドレスのベールをかけて、人生の晴れ舞台に向かう我が娘の背中を押した。

 

「秋良さん、あとは……」

 

「あぁ……」

 

そして父である秋良は絵里の横に立ち、絵里はそんな秋良の腕を掴んだ。それから絵里と秋良はジッと扉を見つめていた。

 

「───パパ……」

 

「なんだい?」

 

「その……ありがとう………」

 

絵里は恥ずかしそうに小さな声でそう呟いた。秋良はその言葉を聞いて溢れそうになる涙をグッと堪えて、父親らしく威厳として前を見つめた。

 

「………あぁ、絵里がついに結婚するんだな」

 

「嬉しい?」

 

「あぁ、もちろんだ」

 

そして、オルガンの音がまた聞こえる。それは先程とは別の曲であり、絵里自身のリクエストでもある。

 

『もしもからきっと』

 

もしもナオキと出逢ってなかったらこのような幸せな瞬間は訪れなかった。でもそんなことは考えたくはない。ナオキとの出逢い、全ての人との出会いへの感謝がこもった曲だ。

 

扉が開き、教会の中の人達の目線は純白の名に相応しい真っ白なウェディングドレス姿の絵里に集まり、拍手とオルガンの音が教会内に響く。参列している人達はその姿を目にして口々に綺麗と言っていた。そんな祝福に包まれながら、絵里と秋良はゆっくりと新郎であるナオキのところに向けて足を進めた。

ナオキも頬を上げてその姿を見つめる。絵里は嬉しいのか恥ずかしいのか、緊張した表情も笑顔に代わり途中から下を向いてしまう。

 

「絵里、顔を上げなさい。しっかりと前を、()()を見つめるんだ」

 

「うん、ありがとう……」

 

絵里は父の言葉に従って顔を上げてナオキの顔を見つめる。ナオキは絵里が近づいて来ると段差から降りて関係者の列の1列目のところまで足を進めた。

 

そして絵里と秋良がナオキの前まで来た。

秋良はナオキと右手で握手を交わし、左手で自らの腕を掴んでいる絵里の右手を取りナオキの右手と交じあわせる。そして両手でナオキと絵里の手を握った。

 

「ナオキくん。絵里のことよろしく頼んだよ」

 

「はい。必ず幸せにしてみます」

 

秋良はナオキの言葉を聞くと安心して強く頷いて、絵里をナオキに託して一歩後ろに下がる。

 

ナオキは絵里の手を引いて自らの左腕を掴ませ、2人はゆっくりと歩く。ナオキが先に段差を上がり、自らの左手を差し出す。絵里はその手を右手で掴んで段差を上がる。それをあと3回繰り返し、2人は祭壇の前で向かい合った。

 

「絵里、改めて……おれとこれからの将来を、()()()()()()()を歩んでくれますか?」

 

「はい、もちろんです」

 

ナオキが『感謝』『誠実』『幸福』『信頼』『希望』『愛情』『情熱』『真実』『尊敬』『栄光』『努力』『永遠』……全てをまとめて絵里を愛すると込めてブーケを差し出すと、絵里はその花束の中の一輪の薔薇を取り、ナオキの胸ポケットにOKの意味と12本の薔薇のうち最も大切にしたい『永遠』を込めて刺した。2人の愛を永遠のものにしたいという願いは絵里だけではなく、ナオキもまたそれと同じ想いだった。

それから2人は牧師の方を向いて並び立った。

 

 

その後、讃美歌312番を会場の全員で歌い、そのあと牧師が聖書の『愛』の項目を読んだ。

 

「──愛は寛容であり、愛は親切です。また人をねたみません。愛は自慢せず、高慢になりません。礼儀に反することをせず、自分の利益を求めず、怒らず、人のした悪を思わず、不正を喜ばずに真理を喜びます。全てを我慢し、全てを信じ、全てを期待し、全てを耐え忍びます。愛は決して絶えることがありません」

 

2人はその言葉を真剣に聞いていた。しかしその間お互いにチラチラと目線を送っていた。そしてその項目が読み終わると牧師からも2人にお祝いのメッセージが述べられた。

 

「ではナオキさん、絵里さん、手を繋いでください」

 

牧師がそう言うと、絵里はナオキの手のひらに手をのせてお互い軽く握った。

 

「ナオキさん、いつまでもどんな時も絵里さんを愛することを誓いますか?」

 

「はい、誓います」

 

ナオキは牧師の問いに対してはっきりとした声で答えた。

 

「絵里さん、いつまでもどんな時もナオキさんを愛することを誓いますか?」

 

「はい、誓います」

 

絵里は感動しているのか牧師の問いに声を震わせながら答えた。

 

「ナオキさん、絵里さん、これから先ずっと続く永遠の愛を誓いますか?」

 

「「はい、誓います」」

 

2人は互いの目と声を合わせて言った。

 

「おふたりの愛が証明されました!では、お互いに指輪を交換してください」

 

牧師はそう言うと2つの指輪が置かれている箱を持って2人の間に立った。その指輪は婚約指輪とはまた別のものだ。ナオキは絵里の左手の薬指に結婚指輪をつけて、絵里もナオキの左手の薬指に結婚指輪をつけた。

そして2人は指からお互いの顔に目を移し笑い合う。

 

「では、誓いのキスを」

 

牧師がそう言うとナオキは絵里のウェディングドレスのベールを上にあげた。これで2人の間を隔てるものはもう()()()ない。

 

「ったく……なに泣いてんだよ」

 

「だって……嬉しくて……!」

 

ナオキはベールを上げると絵里の涙を拭い、そして笑顔を浮かべて絵里の顔を見つめた。絵里も笑顔になってそれに応える。

 

「おれも嬉しいよ、絵里。これから先ずっと、一緒にいよう。辛い時も悲しい時も、病む時も、もちろん嬉しい時も、どんなときもだ。誓うよ……」

 

ナオキはそう言うと優しく絵里の肩を掴んだ。

 

「えぇ、私も誓うわ……だから……」

 

絵里は目を瞑り、ナオキに唇を差し出した。キスは何度もしているはずなのに、2人の中からは今までに感じたことのない幸せと緊張が溢れていた。

 

「絵里、ありがとう。

───これからもよろしく」

 

 

そしてナオキはそんな絵里をそっと引き寄せて自分の唇を絵里の唇に重ねた。そうして2人は今までしたキスの中で最高のキス……永遠の愛を誓うキスをした。

ここでの誓いのキスはその前に宣誓した誓いの言葉を封印する意味があり、さらに唇への口づけの意味は愛情だ。つまり互いの唇で愛情と契約を永久にする為に封じ込めることになるのだ。

そんな2人の未来を明るく照らすようにステンドグラスは太陽の光を浴びて輝き、オルガンの音色とオペラの歌声もそんな2人を祝福するかのように教会中に響いた。

 

 

───ナオキと絵里の永遠の愛はここに誓われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

『──おふたりのご結婚を祝して、乾杯!』

 

『乾杯!』

 

式が終わり、教会と隣接する建物で結婚披露宴が行われていた。海未の短い祝いの言葉と乾杯の音頭と共に参列者は飲み物が入ったグラスを掲げる。

 

「海未、ありがとう」

「海未に任せて正解だったよ」

「い、いえ、そんな……!改めて、ご結婚おめでとうございます」

「絵里ちゃん!とっても綺麗だよ!」

「ほ、穂乃果、みんな……!」

「ナ、ナオキくんも似合ってますよ!元気を出してください!」

「マシュ、嬉しいけどフォローになってないからな」

 

乾杯が終わると各食卓に食事が運ばれるまでの間、μ'sとShooting Stars面々はナオキや絵里へ祝いの言葉などを掛けた。そんな様子をスタッフの人や童子も写真におさめた。

 

「あ、先生!」

「絢瀬さんおめでとう。あ、今は()()さんの方がええんかな?」

「もう先生ってば……!」

 

「ナオキ!改めておめでとう」

「ミツヒデ、みんな、ありがとう」

「お前があんな綺麗な人と一緒になれるなんてな。羨ましいわ」

 

絵里やナオキも久しぶりに会う童子やミツヒデ達と話が弾んだ。みんなから祝福の言葉を受けていると料理が運ばれてきて参列者達は自分の席についた。

この披露宴で出される食事はロシア料理のフルコースで、料理長も本国から来たシェフが務めている。みんな珍しい本格的なロシア料理に目を輝かせていた。

前菜であるザクースカが運ばれてしばらくすると、2人の初めての共同作業であるケーキ入刀が行われた。その後も料理がどんどん運ばれ、絵里の大学の友人や希のスピーチがあり、ナオキと絵里は一旦お色直しのため会場を後にした。

 

 

そしてお色直しをしたナオキと絵里は『Love wing bell』の音楽と共に各テーブルを周って、記念撮影や簡単な会話をしながら1番前の自分達の席までゆっくり歩いて行った。真っ白な衣装からナオキは黒色のタキシードを、絵里は情熱的な赤のドレスに着替えていた。

 

『さて、続いては新郎新婦のおふたりを祝うため、サプライズゲストがお越し下さっています。それでは、お願い致します』

 

2人が席について司会が披露宴を進めると会場は暗転し、しばらくするとピアノ椅子に座る真姫にスポットライトが当たった。そして真姫が曲の始まりを告げるようにピアノの音を鳴らすと、新郎新婦席の近くの扉が開かれてスポットライトはそこにいたゲストに当たった。その姿を見た誰もがまさかと驚きの声をあげた。

そのスペシャルゲストの3人、ナオキと絵里は参加できないと聞いていたA-RISEは真姫の伴奏に合わせて『愛してるばんざーい!』を歌いながらゆっくりと新郎新婦席の近くまで歩いてきた。ナオキと絵里はそのサプライズに驚いていたがサプライズはそれだけでは終わらず、1番が終わったあたりからμ's、Shooting Stars、そしてナニワオトメとスクールアイドル経験者達がどんどんとその歌に参加していった。そのとんでもないサプライズに絵里はポツリと涙を落とした。

 

『ナオキくん、絵里さん、結婚おめでとう』

『サプライズ大成功ね』

『行けないと嘘を言ってしまってすまない。そうしろとμ'sから頼まれていてな』

「とっても嬉しいです。ありがとうございます」

 

そんなみんなからのサプライズも終わり、祝電の紹介もされて披露宴もついに終盤に差し掛かった。主役であるナオキと絵里から参列者と2人の両親へお礼が述べられた。

 

『皆様、本日は私達2人の新たなスタートをこのように祝ってくださり誠にありがとうございます。私共から参列者の皆様と、ここまで育ててくれた両親へのお礼の意味も込めまして、1曲披露させて頂きます』

 

ナオキがそう言うと椅子と共にアコースティックギターがスタッフにより運ばれた。ナオキはギターを持って椅子に座り、絵里はマイクスタンドの前に立ち、2人は合図を送り合うとナオキのギターによる伴奏が始まった。

曲名は『Silent tonight』で、絵里の綺麗な歌声が参列者達の涙を誘った。途中でギターソロもあり、ナオキは練習の成果を充分に発揮することができた。

曲が終わると大喝采が2人を包み、その後間も無く2人の両親と共に退場していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参列者の拍手と歓声、そして教会と鐘の音が響く中、ナオキと絵里は教会の出入り口用の扉からブーケを持って現れた。スタッフによって投げられた花吹雪がさらに2人を祝福するかの様に宙を舞っていた。

 

「行くわよ〜?」

 

そして絵里がそう叫んで背中を向けると待ってましたと言わんばかりに女性達は階段の下に群がった。花嫁の投げるブーケを受け取った者は1番結婚が近いということは周知の事実。絵里がブーケを投げると女性達は我先にと宙を舞う幸せに手を伸ばした。

 

「あら、取れてしもうたわ〜」

 

そのブーケは吸い込まれるように童子の手の中に入っていくと、自然と周りからは拍手が巻き起こった。童子は少し照れくさそうに「どうも〜」と言いながら笑顔を浮かべていたが、どこか納得しているナオキと絵里であった。

 

───その数ヶ月後に童子が電撃結婚したことは言うまでもなかろう。

 

 

 

「じゃあ行こうか絵里。おれ達の未来に向かって」

 

「えぇ、どこまでも一緒に付いていくわ」

 

『おめでと〜!』

 

『おめでとうございます!』

 

『おめでとう!』

 

花吹雪が舞い、参列者達の拍手と祝いの言葉を一身に受けながら、ナオキは絵里をお姫様抱っこした状態でゆっくりと短い階段を降りて行った。

 

──そして2人の結婚式は絵里からナオキの頰へしたキスと、参列者達の黄色い声で幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───道とはすなわち人生。

 

"男"は出会いと別れを繰り返し運命の人と巡り逢った。しかしその道は決して平坦なものではなく、途中で石ころや山や谷など様々な障害も存在した。何もない道はつまらないものだ。その道で仲間など様々な人と出会い、笑う時もあれば泣く時もあり、さらに時には(いさか)いがあった。

嬉しみ楽しみはもちろんだが悩み苦しみも道の一部なのだ。その道であるもの、経験すること全てが何かしらの意味を持って与えられている。どれもその道を歩む者に何か教えようとしてくれているのだ。

そんなそれぞれに用意された道はイバラ道、曲がり道、分かれ道を経て他の道と交わる。共に道を歩んでいくが、その足を進めるのは他でもない自分自身なのだ。同じような道を歩もうと全く同じということは決してない。その共に歩む者は仲間と呼ぶのかもしれないし、家族と呼ぶのかもしれないし、恋人と呼ぶのかもしれないし、友達と呼ぶのかもしれない。その存在は歩む者によって違うのだ。今はいなくてもきっといつかそう思える存在が現れる。しかし立ち止まっているだけでは何も始まらない。自ら足を進めその道を歩むからこそ出会えるのかもしれない。

しかし、人間だけではなく動物にも植物にも、大きく言えばこの宇宙に生きる者全てに道はあることをお忘れなく。

人生とは道。その道の自分には見えぬ先が運命という。もしかしたら運命はすでに決まっていて、それを教えるためにそれぞれの道には色んなものがあるのかもしれない。

 

──これはそんな道を歩む1人の男の物語。

 

 

 

 

 

────次回、『ラブライブ!〜1人の男の歩む道』終章。

 

 

 






最終回ありがとうございました!
ナオキくん、絵里、結婚おめでとう!君達の結婚記念日は今日(最終回の投稿日)だ!!
この主人公のナオキと恋人の絵里の最高の幸せでフィナーレはずっと考えていました!
最後に少し語らせていただきました、この小説のタイトルにもなっている『道』についてですが、これはあくまで私個人の意見です。これが正しいのかもしれないし、間違っているのかもしれません。しかしみなさんの頭の片隅にそんな見方もあるということを残して頂ければ幸いです。みなさんもみなさんだけの道を歩んでください。それがこの不肖シベリアの伝えたいことです。

さて、無事に物語は最終回を迎えたわけですが、次回はついに本当のラストである終章です。またはエピローグとも言いますね。みなさんの感想などお待ちしております!この作品全てを通してのものでも大歓迎です!みなさんの思い、できれば聞かせてください!ツイッターのフォローや感想ももちろんお待ちしております!
それでは次回、この物語の終わりを是非見届けてください!よろしくお願い致します!

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