ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜   作:シベ・リア

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みなさんどうも!前回のお話は読んでくれましたか?
今回から連続で3話ほどその後に繋がるお話を投稿していきます!どうぞお読みくださいませ!



After way.01「記念遠足と決戦と」

 

 

卒業式を終え、平日が休みになったナオキ達は制服姿で千葉県にある東京ドリームライフパーク、略してTDLに来ていた。ここは世界でも有数のテーマパークで、日本だけではなく世界中からも観光客がここを訪れる。

みんなで朝早くから集まって東京を出発したおかげで、開園時間に入場することができた。顔にペイントをしたり、売店で被り物を購入してそれを被ったり、ポップコーンなどを食べたり……楽しみ方は人それぞれだ。そして今回は卒業記念の遠足なので、折角ならと全員でパークをまわることになっている。

 

 

「お〜ナオキくん似合ってるぅ〜!」

「………本当にこれ被らなきゃダメか?」

「せっかく来たんだし楽しまなくちゃ!」

「ん〜、そうだな。あれ、穂乃果は?」

「穂乃果なら綿菓子を買いに行ったよ」

 

ナオキは入り口近くの店の前で、ヒフミ達に買わされた魔法使いの帽子を被って他のクラスメイトを待っていた。

 

「早速食べ物ですか……」

「ふふっ、穂乃果ちゃんらしいね」

「ごめ〜ん、お待たせ〜!」

 

そんなナオキ達の元に綿菓子を買え終えた穂乃果とその付き添いのことりと海未が戻って来た。海未も先程ことりに買わされたカチューシャ型のネズミ耳の被り物を付けていた。

 

「さて、みんなも揃ったし早速アトラクションに乗りますか!」

「でもやっぱりTDLに来たらマウ──」

「──ま、まだ食べ物食べてる人もいるしひとまずパークの景色を楽しもうぜ!」

「穂乃果はもう食べたよ!」

 

ナオキの明らかに嫌がる態度をみんなはポカンと見つめていたが、穂乃果の無邪気なひと言の後にナオキ以外で頷き合った。ナオキは事態が悪い方向に進むことを察し、必死にそれを逃れる方法を考えていた。

 

「じゃあ"マウンテンコースター"に決定ということで、ナオキくんを連行!」

『おー!』

「い〜や〜だ〜!ジェットコースターは嫌だ〜!!!」

「ナオキ、諦めが悪いですよ。ここは腹をくくって行きますよ」

「どうか、どうかご慈悲を〜!」

 

ナオキは健闘むなしくパークの名物アトラクション、マウンテンコースターに連行されていった。そしてそのアトラクションが近付くごとに諦めてしまって何かの暗示を独り言で唱えていた。

マウンテンコースターとはパークでも人気なアトラクションで、火山をモチーフにされた山のオブジェクトを中心にレールが広がるジェットコースターだ。そこへ近付くごとに聞こえてくる叫び声はこれから向かう人達に何を思わせるのだろうか……

 

 

 

 

──約2時間後。

 

「やっと乗れたね〜」

「ついに来てしまった……」

「大丈夫ですよ。怖ければ目を瞑ればいいではないですか」

「そ、そうだよな!よ、よし……」

『それでは、出発進行!いってらっしゃい!』

 

ナオキがゆっくり深呼吸をして目を瞑ると、ジェットコースターはスタッフの元気のいい合図と共に動き始めた。ナオキは目を瞑っていても進んでいる感覚を感じながら恐怖に怯えるのだった。

そんなナオキの口から叫び声など出るはずもなく、他のクラスメイトの叫び声だけがその周辺に響いていた。

 

 

 

 

 

 

「いや〜楽しかったね!ナオキくんはどうだった?」

「………ナオキ?」

 

ジェットコースターが停車しようと減速している時にナオキの前の席に座っていた穂乃果は振り向いて感想を求めたが、そのナオキから反応はなかった。不思議に思った隣の席の海未もナオキの方を見て声をかけるが返事はなかった。

 

「あれ!?ナオキくん気絶してる!?」

『えぇ〜!?』

 

それもそのはず、ナオキは最初に降下する時点で意識を失っていたのだ。ナオキの運命やいかに……!

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

──所変わって音ノ木坂学院の屋上。

 

春休みに入って練習の休憩時間に、ここではある()()が行われようとしていた。

 

「凛、あの時のリベンジをさせてもらうわ!」

「真癒美ちゃん、望むところにゃ!」

「いきなり!?」

 

それは凛と真癒美のダンス決戦だ。

真癒美がまだ入部したての時にしたダンス対決で凛に負けてしまい、そのことを今までずっと悔しがっていた。その悔しさをバネに活動を頑張っていたが、次年度から3年生となる凛達はShooting Starsとは別活動になってしまう。だからその決着をつけようと今こうしてリベンジを挑んだのだ。

 

「で、対決するのはいいけど曲はどうするの?」

「それならまた私が──」

「──いや、今回はタップダンスでいいわよ」

『えぇ〜!?』

 

真癒美の自信満々の台詞にその場にいた誰もが驚きを隠せなかった。また以前のようなダンス対決になると思いきや、凛が1年生達とのステージ対決のために練習をしたタップダンスでの勝負だ。この勝負、側から見れば凛が有利な状況なのは明らかだ。

 

「本当にいいのかにゃ?」

「もちろん。私、この日のためにあれからタップダンスを練習してたんだから」

「へぇ……」

 

凛は真癒美の言葉に強い闘志を燃やし、2人の間にはバチバチと火花が激しく散っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、準備はええか?」

「「はい!」」

 

職員会議を終えた童子が加わって、いよいよ2人の決戦が幕を開ける。

ルールはストリートダンス対決みたいなもので、次第に早くなる同じテンポのタップダンスを交互に踊っていき、どちらかが1度でも失敗した時点で勝負終了となる。

 

童子が再生ボタンを押すと、まずはお手本のメロディが流れ始めた。その後にまずは凛が踊り、それと同じテンポで真癒美が踊った。最初は割と合わせやすいテンポから始まり、どんどんスピードが上がったり足を叩く回数が増えたりしていた。

2人とも一歩も譲らぬ攻防を繰り広げ、互いのダンスは回を増すごとにヒートアップしていき、終わりの見えない勝負となっていた。それを見ているみんなも瞬きすら忘れてその勝負に魅入っていた。

 

流石の2人も疲れてきて体力も限界近くになった時、凛がギリギリでクリアして真癒美にその番が回った。これでは真癒美もクリアしてまだ勝負は続くだろうと思わせるほどのダンスだったが、その終盤に足元が狂って尻餅をついてしまった。

 

「やったにゃ〜!」

「くっ……!!」

 

音楽が止まると凛は腕を上げて喜び、真癒美は全力を出し尽くした結果の敗北に悔しそうに地面を1発叩いた。

そして凛はそんな悔しがる真癒美に手を差し伸べた。真癒美はその手を握り返し、体重を凛に預けて立ち上がった。

 

「やっぱり凛は凄いわね。負けたわ……」

「真癒美ちゃんも凄かったよ!凛も危なかったもん!」

「そうね。最初の時と比べて随分実力を上げてるじゃない」

「いや、私なんてまだまだ……実際、凛に勝てなかったし」

 

真癒美は凛や真姫から褒められて照れ隠しするように謙遜していた。しかし2人の言う通り、真癒美はこの1年でさらに実力をつけている。それは経験とたゆまない努力から成る実で、実は決して勝手には成らないのだ。

 

「これなら、任せても良さそうだね」

「えっ、なんの話?」

 

花陽が凛と真姫と頷き合うと、1年生達は何のことだかわからず首を傾げた。童子はそのことについて検討がついているのか納得したような表情をしていた。

 

「真癒美ちゃん!」

「は、はいっ!」

「真癒美ちゃんを、Shooting Starsのリーダーに任命するにゃ!」

「え……えぇ〜!?」

 

真癒美は予想外の展開に素早く後ろに飛ぶように移動してしまうほどに驚いた。他の1年生もビックリはしたが真癒美ほど驚くことはなく、どちらかと言うとその結果に納得していた。

 

「そんなに驚く?」

「そうだよ。あのライブ対決の時に1年生のリーダーしてたのに」

「だ、だってあれは1年生の間の話であって……」

「私達2年生が抜けてこれからのShooting Starsを引っ張っていけるのは、Shooting Starsが大好きな真癒美ちゃんが適任だよ?」

 

真癒美はShooting Starsが大好きだったからこそ、その思いが強いからこそ、2年生がグループを抜けると言った時に誰よりも1番反発した。それがわかっていたからこそ、他の1年生はあの時真癒美に自分達のリーダーを任せることができたのだ。

 

「でも、私に務まるかどうか……」

「そんなことないよ、()()()()

「ちょっ、ちょっと瑞希っ!」

「そうだよ!リーダー!」

「任せたからね、リーダー」

「亜里沙と雪穂まで……」

「で、どないしはるんですか?リーダーさん」

「せ、先生までっ……!」

 

他の1年生から『リーダー』と呼ばれた真癒美は、今にも頭から湯気が出そうなくらいに顔を赤くしていた。真癒美自身は困惑していたが、他のみんなは真癒美をからかうのを楽しんでいるかのようだった。

 

「みんなはこう言ってるけど、どうするのかにゃ?」

「わ、わかりました!やります、やりますから!」

 

真癒美が勢いよくそう言うと、他のみんなは拍手をして新しいリーダーの誕生を祝った。そんな真癒美の顔から戸惑いは消えていたが、みんなからの祝福に照れて顔は赤いままだった。

 

「Shooting Starsのことは頼んだよ、リーダー!」

「期待してるわ、リーダー」

「え、えっと……頑張ってね、リーダー」

「も、もう勘弁して〜!」

 

真癒美の叫び声と笑い声が屋上で響く中、Shooting Starsの新リーダーが誕生した音ノ木坂学院アイドル研究部は新たなスタートを切ったのだった。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

──TDL

 

 

「ぐでぇ〜………」

 

マウンテンコースターの序盤で気を失ったナオキは停車前に海未によって無理やり起こされ、それから溶けるようにベンチに座って空を見上げていた。

 

「はい、お水」

「あ、ありがとう………生き返る〜」

「あははは、まさかナオキくんがジェットコースターで気絶するとは」

「おれは高いところと絶叫系は苦手なんだよ……」

「そ、そうなんだ」

 

ナオキはフミコが買ってきてくれた水のおかげで少し回復したのか、姿勢をしっかりとさせて他のみんなが乗っているビル型のフリーフォール系アトラクション、『ザ・ホラー・ビルディング』を見つめて身震いさせた。

 

「フミコもすまんな、みんなとアトラクション乗りたかっただろ?」

「え?いいのいいの!実は私、遊園地とかこういうところって苦手なんだ」

「へぇ〜、意外だな」

「うん、よく言われる。私もあんまり絶叫系は得意じゃないし、そもそもアトラクションに得意なものが少ないから来ても意味ないと思っちゃって……」

「でもそんなに嫌がってるようには見えなかったけどな」

「そう?あ、そしたら多分みんなと来てるってことが楽しいのかも」

「あ〜それわかる!」

「だよね!特に恋人と来たらちが……あ」

「そうだよな恋人と………え?」

 

フミコは口を押さえて頰を赤らめて目線をナオキから逸らした。ナオキもフミコの口から出た予想外のワードに鳩が豆鉄砲をくらったような表情をしていた。

 

「恋人って……もしかしてお前、付き合ってる人いるのか?」

 

「………………」

 

「………マジか」

 

ナオキはさらに顔を赤くして自分と顔を合わせようとしないフミコの反応で疑問が確信に変わった。そう、フミコには彼氏がいるということが。

 

「か、隠すつもりはなかったんだけど……その、別に話すことでもないかなって」

「ま、まぁわからんでもない。おれもそうだったし……って、なんかおれまで恥ずかしくなってきた」

「……ふふっ、変なの」

 

それから話の話題は自然にフミコとその恋人のことに移っていった。

フミコ曰く、恋人とはμ'sも参加したUTXでのラブライブ!の予選の日に出会ったらしい。その人は当日に警備に当たっていたUTXの生徒会副会長で、遅れて到着した自分達を特別に入らせてくれたらしい。フミコもその人に一目惚れしていて、その年の冬に告白されて現在に至る。しかもそれにはヒデコとミカの後押しがあったらしいのだ。

 

「流石はヒフミトリオ。仲良いな」

「もう、略さないでよ!」

「あ、ナオキくん生き返ってる!お〜い!」

 

するとみんながアトラクションから帰ってきて、穂乃果は元気になっているナオキを見て手を振った。

 

「生き返ってるって……もうちょっと別の言葉はないのか」

「だって本当のことじゃん!」

「フミコ、ありがとうございます」

「ううん、大丈夫大丈夫!私もちょっと疲れてたから」

 

フミコは丁寧に頭を下げる海未に両手と首を振ってそれに応えた。その後に他のみんなも続々とベンチの周りに集まって次のアトラクションを話し合っていた。

 

「ちょっと、そんなんで大丈夫?」

「そうだよ!まだまだお楽しみはこれからだよ!」

「休めたから大丈夫だよ」

「あぁ、おれも大丈夫だ!」

「なら、次は観覧車にする?」

「………マダチョットキブンワルイカモー」

 

ナオキはみんなの顔を見ず額から汗を流しながら口笛を吹いた。そんな反応にみんなは笑い声を上げ、和やかな笑い声が周囲に響いた。

 

 

 

 

その後、レストランのテラス席で昼ご飯を食べながら近くでナイフなどをお手玉のように扱うジャグラーのショーを見た。

そして次に一同が向かったのは、小型の船で洞窟の中を探検しながら付いている銃で沢山出てくる敵型の的を当てて行くというアトラクション、『シューティング・ケイブ』だ。これは2人乗りなので、くじ引きアプリを使ってペアを決めてどの組が1番評価が高いか勝負することになった。ナオキと海未は別に誰とでもいいと思っていたが、他のみんなはこの2人のどちらかと組めば勝てると算段を立てていた。

 

しかし、世の中そんなに上手くいくことはそうそうなく……

 

 

「海未、そっちは任せたぞ!」

「ナオキも、ひとつ足りとも逃さないでくださいね」

 

ナオキと海未の最強ペアが完成してしまった。ナオキは右、海未は左から出てくる的を確実に素早く撃ち抜いていた。それは互いに互いの腕を信じ合っているからこそできることだ。

 

『くそっ、奴が来た!奴を倒さないと命はないぞ!撃て〜!』

 

隊長である男の声がすると下から大きめの敵、この洞窟の主の的が水しぶきをあげながら現れ2人はそこを狙った。その敵の的は顔、腕、手、胴体に複数あって、2人はその全ての的を1発で撃ち抜いた。全てに1発ずつ命中すると敵は沈み、それとは別のところから現れる。

 

『いいぞ!これでトドメだ!撃ちまくれ!!!』

 

主を2回倒すと次の最終エリアで時間内に何発も撃ち込むことになる。もちろん2人は撃った全てが命中。最後のエリアを抜けると外に出て、眩しいぐらいの日の光が出迎えた。

 

『よし、奴は逃げたようだな。良くやった!予想以上の出来だ。コングラチュレーションズ!』

 

「流石は海未だな」

「ナオキこそ」

 

2人は大きく息を吐いて互いの腕を讃えて拳を合わせた。

 

 

 

 

 

「ナオキくん達凄いね!」

「さっすがナオキくんと海未ちゃん!」

「いやぁ、それほどでも〜」

「は、恥ずかしかったです……」

 

海未は先程のことを思い出して顔を赤く染めた。

実は『シューティング・ケイブ』のアトラクションを終え、出口付近で最終エリアで撮られる写真と同時にスコアも表示されるのだが、2人の評価はSSS+(トリプルSプラス)とそこでの最高評価だった。しかも最高評価が出たのは久しぶりでその記念撮影をされて、さらにそれを珍しがる人達の視線を浴びることになってしまったのだ。

 

「でも、もっと誇ってもいいと思うよ?」

「恥ずかしいものは恥ずかしいんです!」

「でもライブとかでも見られてたじゃん。人だってさっきよりも多いし」

「それとこれとは別なんです!」

 

海未はそれが余程恥ずかしかったようで、ことりや穂乃果の言葉にさらに顔を赤くして抵抗した。

 

「で、どうする?時間的に次が最後のアトラクションになりそうだけど……」

「そうか、もうそんな時間か」

 

ヒデコが残念そうにTDLの地図を広げて最後に行くアトラクションをどこにするかみんなで話し合った。みんなは卒業したとはいえ3月中は高校生で、さらにまだ未成年だ。保護者も連れてきていない今、夕方ぐらいが活動限界時間なのだ。

 

「それじゃあジャンケンで勝った人が決めるってどう?」

『賛成!』

「じゃあいくよ〜?じゃ〜んけ〜ん………」

 

ヒデコの掛け声と共にみんな一斉に手をグーチョキパーの3種類のどれかにして前に出した。果たして結果は───

 

 

 

 

 

 

「………視線が痛い」

 

ナオキは周りからの視線を見ないように目を瞑って頰を赤く染めていた。しかしみんなの中にはそれを楽しむ者、ナオキと同じく恥ずかしがる者もいた。

ナオキ達が乗っているのは、愉快な音楽と共に馬や馬車の乗り物がパラソル型の屋根が付いている円型の台の上をゆっくりと上下に揺れながらまわっているアトラクション、メリーゴーラウンドだ。それはおとぎの国がモチーフにされていて、白馬にかぼちゃ型や白く豪華な馬車があってその雰囲気を醸し出している。

 

「わ〜い!いけいけ〜!」

「流石穂乃果……」

「メリーゴーランドでここまで盛り上がれるの逆にすごいね」

「でもこっちまで楽しくなってきちゃうね(やっぱり恋人来るならこれぐらい楽しんだ方が……!)」

 

ジャンケンに勝利してメリーゴーラウンドを希望した穂乃果と一緒の馬車に乗っているヒフミ達は、若干恥ずかしいこの状況で楽しむことができる穂乃果に関心を覚えた。

 

「全く、なんで私がこんな……」

「ははは……」

「でも、中々様になってるじゃん」

 

それぞれ白馬に乗っている海未・ことり・ナオキも話しながら上下に揺られていた。

それぞれが落ち着いて話したり出来るゆったりとした時間を過ごし、その中で今まで共に生活を送った仲間との時間が永遠のものであればいいのにと心のどこかで願っていた。その原因を作った張本人である穂乃果も、みんなが仲良く話している光景を見て微笑みを浮かべた。

穂乃果がこのアトラクションを希望した理由。それはこのようにみんながゆっくりと話す時間が大切なんだと思ったからであった。それをナオキ・海未・ことりは察していて、穂乃果らしいと互いの顔を見て微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「は〜楽しかった!」

「そうですね」

「写真も撮れたしお土産も買えた」

「何より思い出ができた!」

 

ナオキ達はパークを出て駅に向かいながら今日のことを話していた。手には家族などへのお土産を持ち、パーク入口のゲートを振り返ることなく歩いていた。しかしその笑顔の裏には寂しさがあって、一瞬悲しい目をしてしまう。

 

「……ことりちゃん、出発はいつだっけ?」

「来週末だよ。遠いから早めに出ないといけなくて」

「寂しくなりますね」

「うん……」

 

ナオキは悲しそうに会話をする幼馴染3人の背中を見つめた。そう、ことりは去年服飾の勉強へ行こうとしていたアメリカに留学する。その行こうとしていた所は日本でいう高校生も入ることができる専門学校で、今から入学しても問題ないと再び誘いの手紙が届いたのだ。そしてことりはそれに行くことを決めたため、もうすぐ日本を()つ。

ことりだけではない。中には大学や専門学校、職場に行くために東京や地元を出る人もいる。だからこそ、今日という日をみんなかけがえのない思い出として大切に心の中にしまった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ただいま〜」

「おかえりなさい!お土産は!?」

「亜里沙、ただいま。ちゃんと買ってあるよ」

「わーい!ありがとう!」

 

ナオキが家に帰るとお土産を期待した亜里沙は大喜びで、まるで子供のようにはしゃいでいた。ナオキはそんな亜里沙に今日1日の疲れを癒されながら美味しそうな匂いが漂うリビングへと向かった。今日の晩御飯はボルシチのようだ。疲れてあまり腹に物が入らないナオキにとっては丁度良く、絵里はそんなナオキの状態をわかって調理していた。

 

「絵里、ただいま」

「おかえりなさい」

「亜里沙、お土産置いてくるね〜」

 

亜里沙はリビングに入ると思い出したかのように自分の部屋へ戻っていった。ナオキは一旦荷物を机の上に置くと絵里が料理しているキッチンに足を進めた。

 

「もうちょっと待っててね。今のうちに荷物を───」

「───これ、絵里へのお土産だ」

 

ナオキは絵里を後ろから抱きしめるように腕をまわし、絵里の首にTDLで買ったネックレスを掛けた。絵里は突然の行動に驚いて顔をボルシチのように赤くしたが、ネックレスを掛けられたのがわかるとそれを撫でて嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「嬉しいわ、ありがとう」

「どういたしまして。お菓子も買ってきてるからまた食べようか」

「そうね。ほら、早く荷物置いてきて」

「はーい」

 

絵里が少し叱り口調でそう言うとナオキは荷物を持って部屋へ向かった。絵里はナオキがリビングのドアを閉めたのを確認すると、その場で顔を両手で覆ってしゃがみこんで息を大きく吐いた。

 

「あれはズルいわ……」

 

絵里はそう呟いてから深呼吸をして高揚している気分を落ち着かせたが、心臓の音は激しいままだった。

 

 

 

 

 

 

 

────残り5話。

 

 

 






ありがとうございました!
今回からカウンドダウンをしていきます!刻一刻と迫る最終回……書いている自分もドキドキしてきます!
さて、今回のお話はナオキ達のクラスの卒業遠足と、ナオキ達がいなくなったあとのアイドル研究部での凛と真癒美の決戦でした!本当は別々に書こうと思ってたんですけど、それじゃあ決戦の話が短すぎて一緒にしました。
次回はナオキの卒業旅行のお話です!お楽しみに!それでは、サラダバー!

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