ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜   作:シベ・リア

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みなさんお久しぶりです!
まずはお待たせして申し訳ございません!
さて、この作品を投稿していない間にガルパンやバンドリの新作をいくつか投稿しておりましたので是非お読みください!
4月ですね。新しく学校に入学する方、進級する方、新しい会社に入社する方、色んな人がいると思いますが、頑張りましょう!

では今回からは大阪編!自分は大阪出身なのである意味親近感が湧きますね!それでは、どうぞ!



第151話「帰省」

 

────新大阪駅。

 

「帰ってきてしまった……」

「新幹線の中で言ったこと覚えてる?」

「はい、勉強になりました」

 

大阪に着いたナオキは二重の意味で疲れていた。

まずは本当に学校を(理事長公認で)サボって大阪に帰省してしまったこと。それと新幹線の中で絵里にガッツリ数学を教えて貰っていたこと。そして新幹線の長旅での疲れである。………あ、三重か。

 

「なぁ、流石に家に着いたら勉強はいいだろ?」

「そうね……考えておくわ」

「………え?あの、それは……」

「さて、お義母(かあ)様はまだかしら?」

「絵里さん、聞いてますか!?」

「そう言えばお義母様とは最近会ってなかったわね。ナオキ、探して」

「ったく、しょうがね〜な。え〜っと……」

 

絵里はキョロキョロしてナオキの母親がまだ迎えに来ていないか確認したが、ナオキの方がわかるからとナオキにバトンタッチした。

ナオキは髪の毛を掻きながら母親を探すためにキョロキョロした。

 

「あ、いた」

「どこ?」

「こっちに来てる人」

 

絵里はナオキが指差した方をじーっと見つめ、こちらへ向かってくるある人影を見つけて慌てて髪や服装を気にした。

 

「嫌な予感しかしない……」

「え、どうして?」

 

────刹那。ナオキの体は締め付けられるような感覚を感じた。

 

いやまぁ、本当に締め付けられてるんだけどね、母親に。

 

「ナオキ〜!会いたかったわよ〜!」

「痛い!痛いから離してくれってお母さん!」

「あっれぇ〜おっかしいわね〜?私の知ってるナオキは私のこと"ママ♡"って呼ぶんだけどなぁ〜」

「この歳にもなって呼ぶか!」

「はっ……!?これが噂に聞く反抗期……!?」

「親離れです」

「ママ悲しいわ……およよよよよ」

「あとそろそろ離してくれないですかね。その、周りの視線が……気になるから」

「そうね、ごめんごめん」

 

ナオキは母親がやっと離れると大きく息を吐いて滴る汗を拭いた。

香川 樹木(かがわ いつき)。ナオキの母親で、大阪府警本部長であるナオキの父、香川 トウマの秘書を務めている。父親は元々警視総監という警視庁の長であったが部下の失態の責任を負って大阪府警本部長に降格……とは表向きの理由で、トウマは昔優秀な警察官で様々な難事件を解決に導いて来たこともあり、大阪で多発している麻薬取締、凶悪犯罪を解決するために大阪府警に派遣されたとあうのが本当の理由なのである。

 

「お久しぶりです。絢瀬絵里です」

「え、嘘!?本当にあの絵里ちゃん!?久しぶりね〜!こんなに可愛くなって〜!」

「あ、ありがとうございます……」

 

絵里は樹木に褒められて頬を少し赤くした。

 

「ナオキも隅に置けなくなったわね〜このこの〜」

 

樹木はニヤニヤしながらナオキの胸のあたりを肘でつんつんと突いた。ナオキは鬱陶しく感じているような表情を終始浮かべていた。

 

「べ、別にいいだろ!さ、早く帰ろうぜ」

「はいはい、そんなに焦らなくても大丈夫よ。さ、行きましょうか」

 

そしてナオキと絵里は合流した樹木と共にナオキの実家へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

────香川家。

 

 

「ただいま〜」

「お邪魔します」

「はい、おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも……え・り・ちゃん?」

「きゃっ」

「はぁ……」

 

ナオキは実家に帰って早々母親のジョークを聞かされて大きなため息を吐いた。

 

「さて冗談はさておき、とりあえず部屋まで案内するわね」

「おれ達はどこで寝たらいいんだ?」

「元ナオキの部屋よ。物は全部片付けてあるから広いし、2人ならゆっくり出来るわよ」

「わかった。それじゃあ荷物先に置いてくる」

「私も行く」

「ごゆっくり〜」

 

ナオキと絵里は樹木に見送られて2階にある、ナオキがこの家に住んでいる時に自室として利用していた部屋に向かった。

 

 

 

「懐かしいな、この部屋」

「ちゃんと布団も用意してくれてるわね」

「とりあえず荷物置いてゆっくりしようぜ。なんで帰省してくれって言われたのかわからないけど」

「そうね」

 

絵里はそう言って荷物を置くとカバンの中からある本を取り出した。ナオキはそれを見ると危機感を感じた表情をした。

 

「暇なら今のうちに勉強しておきましょうね」

「あ、そうだ!久しぶりにお母さんに会ったし、お話したいからリビングに行こうかなー」

「逃がさないわよ?」

「お、お許しを〜!」

 

それから夕方までナオキはみっちりと絵里から数学を叩き込まれたのであった。

 

 

 

 

 

 

──夕方。

 

「お、ナオキ。本当に帰ってきてたのか」

「お父さん、その言い方はないと思う」

「だって樹木が寂しいからナオキを呼び戻すって言ってて、俺は冗談だと思ってたんだよ」

「よし、お母さんと話そう」

「その前にこの問題を解く!」

「は、はい……」

「お久しぶりです、絢瀬絵里です」

「おぉ、あの絵里ちゃんかい!?美人になったねぇ〜。しかもナオキを尻に敷いてるときた!これは傑作だ!」

 

帰宅してきたナオキの父、トウマはガハハハハッと大笑いした。ナオキはそんな父親の態度に歯を食いしばながらも数学の問題を解いた。

 

「じゃあ俺は先にリビングにいるから、勉強が終わったら降りて来なさい」

「はい、ありがとうございます」

 

トウマはそう言うと部屋のドアを閉めて階段を降りていった。

 

「おい樹木〜!ナオキは絵里ちゃんとイチャイチャしたいらしいから先にご飯食べてようぜ〜」

 

その大きな声を聞いてナオキだけではなく絵里も大きな音をたてて立ち上がってトウマを追いかけた。そんな2人の顔は真っ赤だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ははははっ、すまんすまん」

「もう、トウマさん。からかうのは程々にしないと」

「それお母さんが言うか?」

「ははははっ、それは言えてるな」

「お父さんも笑ってる場合じゃないって」

 

ナオキ、トウマ、樹木はまるでナオキが暮らしていた時のように家族団らんの雰囲気を作っていた。絵里はその空間にどこか入りずらく、邪魔をするのも悪いとナオキの隣でずっと控えめに笑っていた。

 

「なぁ、絵里も言ってやってくれ。からかうのもいい加減にしろって」

「……ふふっ、面白そうなご両親でいいじゃない」

「なっ、絵里まで……」

 

そして絵里が気を使っているとわかったナオキは絵里にも話を振り、絵里を含めた4人で話は盛り上がった。話に混じった絵里の頬は何故か少し赤くなっていた。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「で、これが執事のコスプレをしたナオキです」

「なるほど。ナオキはこんな趣味があったのか」

「いや、ないからな〜!」

 

トウマの得意料理であるお好み焼きを食べた後、絵里は樹木とトウマに東京でのナオキのことを話して盛り上がっていた。ナオキは洗い物をしながらその会話に参加した。

 

「というかナオキ、洗い物出来たんだな」

「洗い物ぐらい出来るよ。それに料理も出来るし」

「それは本当か!?」

「ナオキ料理出来るようになったの!?」

「ナオキの料理、凄く美味しいんですよ」

「いいな〜私も食べてみた〜い」

「また時間があればな」

 

ナオキは言葉ではそう言っていたものの、両親から褒められたことに照れていた。絵里はそれがわかってクスクスと静かに笑った。

 

「絵里ちゃん、他にも聞かせて!」

「はい、えっとこれは────」

「まだ続くのか……」

 

それから絵里がまた東京でのことを話し出すとナオキはため息をついた。

樹木とトウマはとても楽しそうに絵里の話を聞いていた。なにより、自分達の息子が自分達が見ていないところでしっかりと成長していることを確認出来てとても嬉しく思っていた。そしてそのことをナオキは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

絵里がお風呂に入っている間、リビングは樹木とトウマ、そしてナオキのみになった。それから3人は何も話すことはなく、ただただゆったりとテレビ番組を見ていた。

だがナオキはどこか落ち着かない様子を見せていて、もちろんそれには樹木とトウマも気づいていた。しかし2人はナオキ自身からその理由を話すのを待っていた。

 

「あ、あのさ……」

 

「ん、どうしたんだ?」

 

「えっと……これ、見てほしいんだけど」

 

ナオキは少し頬を赤くしながらポケットからある紙を取り出して、スッと樹木とトウマの前に差し出した。トウマはその紙を開くと目を見開いてそれを見つめ、樹木はそれを覗くと両手で口を塞いで目をうるうるとさせた。

 

「そういうことだから……よろしく」

 

ナオキは視線を2人から逸らして少し赤くなっている頬を人差し指で掻きながらそう言った。

 

「…………大丈夫なのか?」

 

「大丈夫。しっかり心に決めたから」

 

「そう、なら私達は止めないわ。やりたいことをやりなさい」

 

「ありがとう……ママ、パパ」

 

ナオキが照れくさそうに言うと樹木とトウマは嬉しそうに笑った。そうして家族水入らずの時間はすぐに過ぎていった。

 

 

 

絵里はナオキ達に気を使っていつもより長めに湯船に浸かっていた。そして天井に左手をかざして、その手の薬指をぼーっと見つめた。そのとき思い出していたのはナオキにプロポーズをされた時。すると絵里の頬がポーっと赤くなった。それはのぼせたのか、それとも………?

 

「っ……そ、そろそろ出ようかしら」

 

そして絵里は慌てて湯船から上がった。

髪の毛や体に付いている水滴もしっかりと丁寧に拭き取ってからパジャマに着替えた。それから、ナオキの両親からどう思われるかを気にしているのか、自分の体の匂いを嗅いでからリビングへと向かった。

 

 

 

「お風呂ありがとうございま──」

「──うん、ビールが美味い!」

「ナオちゃん、ビール持ってきて〜」

「だからもうその辺にしとけって!飲みすぎだ!」

「え、えっと……」

 

リビングに入った絵里はその場の状況が飲み込めずにいた。トウマと樹木はビールを片手に何やら騒いでいて、その前に座っているナオキは2人を叱っている。訳がわからない。

 

「ったくもう……絵里、出たんだな」

「うん、次入る?」

「そうするよ。この2人に構うのがめんどくさくなったら先に部屋に戻ってていいから」

「ひっどーい!」

「それが親に対して言う言葉か!」

「ははははは……」

 

ナオキはそんな酔った両親の言葉に反応することがダルそうに思いながら風呂場へと向かった。絵里はそんな光景に苦笑いを浮かべながらリビングのドア付近に立っていた。

 

「絵里ちゃん絵里ちゃん、こっち来て」

「え?あ、はい……」

 

ナオキが風呂場に入ったことを音で確認した樹木は小さな声で名前を呼んで絵里を自分の方に来るように手招きをした。絵里がこちらに来て向かいの席に座るとトウマと顔を合わせて頷いた。

 

「絵里ちゃん、ナオキとは上手くいっているかい?」

「は、はい……」

「そうか、それはよかった」

「ナオちゃん、迷惑ばかりかけてるでしょう?」

「い、いえ、そんなことは。いつも色々助かっています」

「ナオキの勉強も見てくれているんだろう?ったく、情けない」

「それは……まぁ」

「ふふっ、ナオちゃんはずっと理系科目は苦手だったから。私達とは大違いね」

「おふたりは理系科目が得意なんですか?」

「あぁ、そうなんだ。不思議だよなぁ……」

「任せてください!私がナオキを理系科目でいい点数が取れるように鍛えます!」

「それは助かるな!」

「そうね〜」

 

樹木とトウマはビールを飲みながら絵里とナオキのことを話した。絵里は時々頬を赤くしたりしていて、樹木とトウマはナオキの話を聞いて盛り上がっていた。絵里もそんな2人のテンションにつられ、ついつい沢山ナオキのことを話してしまった。

 

「さ、そろそろ部屋に行った方がいいんじゃないか?ナオキがこの光景を見たらなんて言うか」

「そ、そうですね」

「………あ、そうだ」

 

絵里が立ち上がって自分達が寝る部屋へ向かおうとすると、トウマは何かを思い出したかのように絵里を呼び止めた。

呼び止められた絵里はキョトンとしてトウマを見つめた。するとトウマと樹木は先程とは打って変わって真剣な表情をして絵里の顔を見つめた。

 

「……ナオキはいつも強がっているけど、本当は誰よりも心が弱いんだ。辛いことがあればすぐ抱え込んでそれを周りに察しさせないようにする。そして誰よりも落ち込んだりしてしまう。あの子は誰かが支えてやらないといつか自分で自分を壊してしまう。だから絵里ちゃん、ナオキのこと、よろしく頼むよ」

 

「私からもお願いするわ。あの子はきっと、近くに絵里ちゃんがいるだけで安心すると思うから」

 

「………はい、任せてください」

 

トウマと樹木からそう言われると頬を赤くして少し嬉しそうに絵里は頷いてリビングを出ていった。そんな絵里を見送った2人はゆっくりとビールを飲むのであった。

 

 

「………幸せなやつだな」

 

「えぇ、()()()()からこうなることを望んで育ててきた……それが叶ってよかったわ」

 

「そうだな……」

 

トウマと樹木は懐かしむように、だがどこか寂しそうに"あのとき"を思い出しながらビールを喉に通した。

 

 

 

そしてそんなナオキの久しぶりの帰省の初日はあっという間に終わりを迎えた。

豆電球をつけていて少し明るい部屋の天井を両手に頭を乗せながらじーっと見つめているナオキはあることを考えていた。隣から絵里の寝息が聞こえていて、度々その寝顔を見つめて幸せそうな表情をした。だが、その幸せそうな表情の裏には少しの不安があった。それはほんの小さな不安だった。だがそんな小さな不安も時間が経つ事にどんどんと広がっていき、ナオキの心を染めていった。

 

 

 

その不安とは────

 

 

 

 

(おれは、本当に絵里を幸せにできるんだろうか………)

 

 

 

次回に続く……

 

 





ありがとうございました!久しぶりのこの作品の最新話でしたがいかがだったでしょうか?出来れば投稿ペースを上げたいところですが、なかなかそれが……()なので次回も気長にお待ちください!
それでは次回お会いしましょう!バイバイ!

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