ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜   作:シベ・リア

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みなさんどうも、1ヵ月ぶりで御座います。
ほんまに最近1ヵ月に1話投稿になってしまっていて申し訳ないです。頑張ってペース上げたいですが、マイペースで書いていきますので次話投稿は気長にお待ちくださいませ。
さて、今回は旅行編の後編となっております!そういえば、浴衣姿の絵里を想像してください……やばくないですか?
ではどうぞ。



第147話「ナオキと絵里のハラショー!な旅行〜後編〜」

 

ナオキは色々落ち着いて浴衣に着替えると寝室を出て、クーラーの風を浴びている絵里の隣に座った。

 

「あ〜涼しい〜……」

「ふふっ、こんなところにいちゃ動きたくなくなるわね」

「はははっ、確かに」

 

ナオキは声を出して笑ってから、絵里がクーラーの効いている部屋で寝転がりながら濃い色のパジャマ姿で「夏休みなんて家に引きこもってナンボでしょ」という姿を想像してしまって顔を引きつって苦笑いを浮かべた。

 

「(ま、あるわけないか……)でも折角だし遊びに行くか」

「っ……うん!」

 

ナオキが娯楽施設へ遊びに行こうかと誘うと絵里はとても嬉しそうに頷いた。そう、絵里はずっとナオキと2人でそこで遊びたかったので最高の喜びであった。

ナオキは絵里の手を握って立ち上がると、絵里もそれにつられて立ち上がり、クーラーを切って最低限の荷物を持って娯楽施設へと向かった。

 

 

 

~~~~~♡~~~~~

 

 

 

西木野リゾートホテル2階にある娯楽施設は様々な世代が楽しめるようになっていて、そこにはカラオケ、ボーリング、ゲームセンター、卓球、ビリヤード、さらにリクライニングチェアや将棋などのボードゲームであそべる場所などがある。

まず2人はゲームセンターでホッケーやコインゲーム、さらにダンスゲームや音ゲーをした。

さらにナオキはダンスゲームをしている時にやたら激しく揺れる絵里の胸に目を取られて成績が悪かった。

 

「ゲームセンターって色んなものがあるのね!」

「あぁ、子供向けの乗り物とかあるし、本当にこのホテルの娯楽施設は色んな世代を意識してるな」

「えぇ、部屋にいるだけでも満足できそうなのにこうも施設が充実してたら帰りたくなくなっちゃうわね」

「はははっ、確かに!それは言えてる」

「でしょ?ねぇねぇ、次は何する?」

「う〜ん、そうだなぁ……」

 

ナオキは絵里にそう聞かれると考える様子を見せながら周りを見まわした。

ホラー系のゲームは絵里が怖がるし(見たいけど我慢)、スロット系は単純に興味が無いしやっていても盛り上がりにくいし、格ゲーはやった事がないし、シューティングゲームは………

 

 

 

 

『わぁ〜ナオキ、ハラショー!上手なのね!』

『ま、まぁな!おっと……』

『あっ、ありがとう……』

『いいよこれぐらい。さ、次のステージだ』

『うん!』

 

 

「(そして深まるふたりの仲……これだ!)絵里、あれやろうぜ!あれ!」

 

ナオキは何かを妄想して近くにあったゾンビを撃って倒していくシューティングゲームを指さしてそれを推した。

 

「えぇ……ゾンビ……」

 

だが絵里は紹介画面に出てきていたゾンビに少し恐怖を覚えていた。これもホラーの1種になるのだろうか?

 

「大丈夫だ。おれが絵里を守るから」

「っ……ナオキ……!うん、私やるわ!」

 

ナオキがそんな絵里を見て自信満々に親指を立てると、絵里は腹をくくってやる気に満ちた表情をした。

そして2人はシューティングゲームを開始した。舞台は絶対零度のエリアで、そこに存在する研究所のゾンビを一掃するゲームであった。絵里は怖がっていたしここはナオキがかっこよく絵里をリードしてゲームを進める………はずだった。

 

 

「グァ〜!」

「きゃ〜!」

「……………」

 

 

絵里は出てきたゾンビに悲鳴をあげながら銃を乱射した。リロードする時には表示が出るため、それが出る度に絵里は慌ててリロードしてまた乱射していた。

一方、絵里を助けると宣言していたナオキはゾンビを撃って倒そうとしたらそのターゲットを絵里に撃たれていた。さらに絵里がリロードしているときに処理をして、体力が多い敵に攻撃を加えていたぐらいのサポートもしていた。

 

「……クリアしたし」

「ゾ、ゾンビは……?」

「全部倒したよ。主に絵里が」

「へ?」

 

絵里は腕をプルプルさせながら銃を構えて怖がる様子を見せたが、ナオキの一言に驚いて可愛い声を漏らしてゲームの画面に視線を向けた。

画面に表示されていたトータルスコアを確認すると、明らかに敵のゾンビを多く倒した絵里の方が高かった。

 

「絵里、ハラショー!だな」

「……………」

「絵里……?」

「もう、違うところで遊びましょう!」

「え、ちょっと待っ……えぇ〜!?」

 

ナオキは絵里の叩き出したスコアを褒めたのだが、絵里は何故か頬を膨らまして少し怒った様子を見せてまだゲームセンターに未練がありそうなナオキの腕を引っ張って出口に向かった。

 

 

 

 

~~~~~♡~~~~~

 

 

 

それから2人はカラオケに行き、1時間ほど思いっきり歌った。

それが1時間で終わった理由はまたもや絵里であった。絵里はナオキが歌った『いとしのエリー』という曲を聞いて顔を真っ赤にして、ナオキの腕を引っ張ってそこを出たのだ。

ナオキは『エリー』の部分を意識して『絵里』に変換して歌ったのでその理由に納得である。

 

カラオケの後、2人はボーリング…………をスルーして卓球とビリヤードをした。

結論から言うとナオキは動く度に揺れる絵里の胸や浴衣が少しめくれてチラッと見える絵里の肌に見惚れて全敗した。男だから是非もないよネ!

 

「もう、ナオキちゃんと本気出した?」

「ほ、本気だったよ!おれは女の子相手でも全力だからな!」

 

ビリヤードが終わった後、絵里は頬を膨らませながらナオキを見上げて言うと、ナオキは何故か胸を張ってそう言い切った。

 

「でも、だったらなんでナオキはずっと負け続けなのよ?」

「え、絵里が強いから……?」

「ふ〜ん、そう」

「ごめんなさい。絵里に見惚れてました」

 

ナオキは絵里の素っ気ない返事に何かを感じて恐れたのかすぐに頭を下げて正直に負け続いていた理由を話した。

 

「そ、そう……」

 

すると絵里は急に顔を赤くして腕を組みながらそんな顔を横に逸らしてそう言った。その理由を作ったナオキも自分の言ったことに恥ずかしさを覚えたらしく頬を赤くして、絵里とは逆の方に顔を逸らした。

 

「そ、そうだ!汗もかいたことだし温泉に入ろう!」

「そ、そうね!私も早く温泉に入りたいと思ってたのよ!」

「よし、じゃあ行こうか!」

 

ナオキと絵里は恥じらいを誤魔化すかの様にそう言って1つ下の階に向けて足を進めた。

しかし、その足をある人が言葉をかけて制止させた。

 

「ナオキ、絵里」

「おぉ、海未。どうした?」

 

その人物はこの旅館でナオキと絵里が泊まっている間に手伝っている

「「「「「「「「デート見守り隊、μ'sマイナス2!」」」」」」」」

の旅館の従業員用浴衣を着ている海未であった。

 

「食事のご用意が出来たので呼びに来たのですが……タイミングが悪かったみたいですね」

 

海未は2人が温泉に向かおうとしていることを察して申し訳なさそうに笑顔を浮かべた。

すると、そんな海未の様子を見たナオキと絵里は顔を見合わせてニコッと微笑んだ。

 

「あ〜でも動いたから腹へったな」

「そうね。温泉より先に晩御飯が食べたいわ」

「じゃあ海未、おれ達部屋に戻ってご飯待ってるからな」

「あ、いえ、違うんです。晩御飯はレストランで食べていただきます」

「「レストラン……?」」

 

海未は嬉しそうな顔をしてそう言うと2人を連れてそのレストランなる場所へと向かった。

 

 

 

~~~〜〜♡〜〜~~~

 

 

 

 

「どうぞ、あちらのお席でお待ちください」

 

ナオキと絵里は海未に案内されたレストランの窓側の席に向かった。

 

「綺麗……!」

「あぁ……綺麗な星空だ」

 

ナオキと絵里はその席から見える綺麗な星空を目をキラキラとさせて眺めた。

ナオキは怖いため決して下を見ず、上ばかりを見ていた。

 

「さ、座ろうぜ」

 

ナオキはそう言うとイスを引いて絵里に座るように促した。

 

「ふふっ、じゃあお言葉に甘えて」

 

絵里はドレスの裾を持つように浴衣を裾を持ってお辞儀をしてからナオキが引いたイスに座った。ナオキは絵里が座っているイスを優しく押すと、その向かい側のイスに座った。

そのテーブルには赤いテーブルクロスが敷かれており、真ん中には赤い薔薇が数本水の入った瓶に入れられていた。店内の灯りは少し暗めであったがレストランの雰囲気にはぴったりの明るさであった。

しばらくすると真姫がやって来て、テーブルの上に置かれていたワイングラスに水を注いだ。

 

「こんなレストランでよかったかしら?」

「えぇ、当たり前よ!」

「こんな所、滅多に来れないからな」

「そう、それはよかったわ」

 

真姫は安堵の表情を浮かべてから誰かに合図を出すかのように指を鳴らした。

するとレストランに何故かあったステージのライトが点灯して、オーケストラの綺麗で心落ち着くような演奏が始まった。

ナオキと絵里は突然音楽が鳴り出したので驚いてはいたが、心地よい演奏に聞き惚れるように目を瞑りながら耳をすました。

 

「この音楽とレストランの雰囲気ぴったりだな。水もとても美味しいよ」

「そう、ありがとう。あとその水は近くの山の山頂の水よ。パイプを引っ張って出るようにしてるのよ」

「ハラショー!だからこんなにも美味しいのね!」

「これが、THE TENNENSUIだな!」

 

ナオキはどこか外国人みたいな発音で「ザ・天然水」と言うと、絵里と真姫は無言で笑みを浮かべた。

 

「え、いや、笑ってないでなんかツッコンで欲しいんだけど……」

「じゃ、もうすぐ料理が来るからしばらく待っててね」

「うん、ありがとう」

 

ナオキの本音は意外と簡単に零れたのだが、絵里と真姫はそんな本音をさらっと流して会話をすると、真姫はレストランの厨房の方へと去っていった。

 

「な、なんの料理が出るのかな〜……」

「もう、そんなに落ち込まないでよ。そんなナオキもかわいいと思うわよ……ふふっ」

「っ……うるせぇ……」

 

絵里が顎を左手に置き、その腕の肘を机についてからかう様にそう言うとナオキは頬を赤くして照れる仕草を見せた。絵里はそんなナオキを微笑みながら眺めていた。

 

 

 

 

〜〜〜ラブライブ!~~~

 

 

 

 

「腹が全然膨れてない………」

「ふふっ、あの量じゃナオキみたいな男の子のお腹は膨れないのかしら?」

「それはおれが食いしん坊ってことか?」

「さぁ、どうでしょうね〜?」

 

絵里が楽しんでそうな表情でそう言って廊下を歩くスピードを上げると、ナオキはその背中を見て不満そうな表情で一息吐くと絵里を追ってスピードを上げた。

 

先程のレストランで出されたのは所謂、フルコースというものであった。

フルコースはナオキにとっては縁がなかったものであったからか、料理の量がこれ程まで少ないとは思わなかったみたいで真姫が終わりを告げると鳩が豆鉄砲をくらったような目を浮かべていた。料理が来る前にたくさん食べると張り切っていた分、余計に衝撃を受けたのである。

 

さて、今2人はレストランを出ると一旦部屋に戻って用意されていたバスタオルと温泉内に持って入る用のタオルを取って温泉へと向かっている。最低限の貴重品は小さな巾着袋に入れている。

 

「あ、着いたわよ。温泉!」

 

2人が温泉の入口の前に着くと、絵里はそれに気が付いて振り返って言った。

もちろんではあるが男湯の入口には青色の布に白色で『男』と描かれている暖簾が、女湯には赤色の布に白色で『女』と描かれている暖簾が掛かっていた。

 

「ははっ、嬉しそうだな」

「温泉が楽しみなのは当たり前でしょ?ふふっ、早く入りたいわ!」

 

ナオキが温泉に着いて嬉しそうにしている絵里を見て笑みを浮かべると、絵里ははしゃぐ子供みたいな感じで言った。

 

「それじゃ、温泉タイムと行きましょうか」

「えぇ!じゃ、あがったらここに集合ね!」

「了解。また後でな」

 

ナオキは控えめに手を振って楽しそうに暖簾をくぐっていく絵里を手を振って見送ると、自身も暖簾をくぐった。

 

今日このホテルを客として利用しているのはナオキと絵里のみなので温泉も貸切状態。

しかもここの温泉は前話で説明したように1階に何種類かのものが広がっている。つまり、このホテルだけで軽い温泉巡りが出来るのである。泉質が違うものは2種類あるが、そのお湯をさらにいくつもの浴槽に分けていて、あるものは真ん中から泡が吹き出ていたり、体の部分を刺激するように勢いよくお湯が出ていたりしている。あとは露天風呂、サウナ、そしてそれぞれの浴槽の雰囲気を変えるために銅像を置いたりしていた。

 

 

ナオキは広い更衣室でホテルの浴衣を脱いだ。普通に広い更衣室ではあるが、利用しているのがナオキだけだからだろうかさらに広く感じていた。

 

「ま、この方が気楽でいいけど」

 

ナオキはそう呟くとタオルを持って温泉内へと入っていった。広い温泉を独り占めできるなんて普段では体験できないことなので温泉は好きでも嫌いでもないナオキでもテンションが上がっていた。

ナオキが温泉へと繋がる扉を開けると暖かい空気がブワッと襲い掛かってきた。通常であれば話し声などが温泉内に響いているのだが、今回は例外だ。

 

「いやぁ〜こんなところで1人なんて!」

 

 

「おぉ、やっと来ましたか」

 

 

「1人で………」

 

 

「まぁ、遠慮することはありませんよ。どうぞくつろいでください」

 

 

 

「……………」

 

 

なんということでしょう。先程まで1人だと思っていた空間が………先に湯に浸かっていた支配人梅島の一言で壊れてしまいました(劇的なんちゃらのBGMを掛けながら)。

 

 

「あ、あぁ、では、失礼します」

 

ナオキは数秒固まっていたが、それから失っていた意識が戻ったかのように梅島の言葉に反応して湯に浸かった。

 

「どうですか?楽しんでいただけてますか?」

「はい、とっても」

「それはよかったです」

 

それから2人は無言になった。ナオキはお互い無言になってしまった空間に、先程とは打って変わって気まずくなってしまった。

すると気まずくて動揺しているからか表情が苦くなっていたナオキを見てフッと笑いを零した。

 

「なにかおかしいですか?」

「いいえ、なんだか気まずそうだなと」

「うっ……」

 

図星を突かれたナオキの表情は苦しげなものになり、それを見た梅島は笑い声をあげた。ナオキは笑われたことを恥ずかしがって頬を少しだけ赤く染めた。

笑い声が止まってふとナオキは梅島の顔を見ると、その表情は豊かなものではなく真剣なものであった。

 

「あの……どうかされたんですか?」

 

ナオキはそんな梅島を不思議に思って口を開いた。すると梅島は「ふぅ……」とひと息をついてナオキの顔を見た。

 

「香川様、これから私はここの支配人ではなく、1()()()()()()()()話してもよろしいでしょうか?」

「は、はい……」

 

ナオキは梅島の言っていることのわけがわからずに返事をしたのだが、その理由はそのあとすぐにわかることになる。

梅島はコホンと喉を鳴らすと天井を見あげて語るような口調で話し出した。

 

「真姫お嬢様からおふたりが喧嘩したことを聞きました……と言えばわかるかな?」

「っ……!?」

「なんでお嬢様が無関係な私に話したのか……聞きたいかい?」

「……お、お願いします」

 

 

「実は私は"バツイチ"なんだよ……」

 

 

 

「は、はぁ……」

 

ナオキは反応に困った。急にバツイチだというカミングアウトをされたが、ナオキはどうコメントすればいいのかわからない。その事と、真姫に喧嘩したことを聞いた理由がどう繋がるのか。全くわからない。

そんなことを考えているナオキをよそに、梅島は話すことを止めることはなく淡々と語っていく。

 

「前の妻と別れたのはね、ほんの些細な喧嘩だったんだよ」

「えっ……?」

 

ナオキは"ほんの些細な喧嘩"というワードを聞いて、驚いた声を漏らして梅島の顔を見た。

 

「あぁ、ほんの些細な喧嘩だよ……」

 

梅島はそう言うと悲しい目をして自分が浸かっているお湯に映る自分の表情を見つめた。

ナオキはその梅島の話を真剣に聞いていた。

梅島はあのときのことを思い出しながらナオキに語った。

 

 

「私はその妻との結婚記念日のためにサプライズパーティーを開こうと思っていたんだ。プレゼントも買って、ワインや料理も用意して、妻へのお礼を込めて開こうと思った。

でも、妻にとっては"私が隠し事をしている"という印象の方が強かったみたいなんだ。

そしてその前日、妻は私に不満をぶつけてきたんだ……」

 

 

 

 

 

『あなた、私になにか隠してるでしょ!?』

 

『えっ、いや……それは……』

 

『あなたが隠し事してるってことぐらい、私にはお見通しですからね!』

 

『いや、だから、その……これは……』

 

『もう言わなくていい、わかってるわ。男の人が妻に隠し事なんてひとつに決まってるわ……浮気、してるんでしょ?』

 

『なっ……!?浮気なんてしてないぞ!?』

 

『嘘よ!嘘に決まってるわ!浮気してるんでしょ!?』

 

『だから違うって!私はただ……』

 

『言い訳はよして!言い訳なんて聞きたくない!』

 

『言い訳……?ふざけるなよ!!浮気してないって言ったらしてないんだよ!!』

 

『じゃあなんでそんなに怒るのよ!?』

 

『そっちの方こそ!!!』

 

『っ……もう、いいわ。私達、これでおしまいみたいね……』

 

『あぁ、そうみたいだな!それなら今から役所行って持ってこいよ!』

 

『えぇ、持ってくるわよ…………"離婚届"』

 

 

「そして私と妻は離婚届にサインをして、その日のうちに出しに行ったよ。

次の日は記念日だった。私は1人寂しく『こんなはずじゃなかった』と思いながらワインを飲んで、料理を食べて………」

 

ナオキは話していくうちに目を瞑っていた梅島の顔を見ることは出来ず、自身もお湯に映る自分の顔を見つめていた。

 

「だからね、君たちには選択を誤ってほしくない。お互いにお互いを理解して、お互いがお互いのことを考えて、過ごしていってほしい。そう私は思う。決して、私の、私達のようなことにはなって欲しくない……」

 

「だから真姫は梅島さんに……?」

 

「あぁ、そうだ。私が同じような体験をしているからこそ、真姫お嬢様は私に体験談を話すように頼まれたんだろう……」

 

「そうなんですか……」

 

「はははっ、少し空気を重くしてしまったね。では私は上がらせてもらうよ」

 

梅島はそう言うと立ち上がって温泉の仕切りを跨いで床のタイルに足をつけた。

 

「っ……あのっ!」

 

するとナオキも立ち上がって梅島の背中を見つめた。梅島は何事かとナオキの方に振り向いた。

 

「………ありがとうございました!」

 

「あぁ……ではごゆっくりお過ごしくださいませ」

 

梅島はナオキの礼を聞いて微笑むと、支配人モードでお辞儀をして更衣室の方へ向かっていった。

ナオキは梅島の背中を見送るとまたお湯に浸かって天井を見上げた。

 

 

「お互いに理解して、考える……か」

 

 

ナオキはとっくにそれが出来ていると思っていた。だけど出来ていなかったから喧嘩してしまった。

あの状況のままだったらこのホテルには来ていなかったのかもしれない。絵里とはこうして一緒にいることはなかったのかもしれない。

 

 

「………絵里のこと全部知ってると思ってたけど、全然わかってなかったんだなぁ……」

 

ナオキは絵里と喧嘩したときのことを思い返してそう呟いた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

ナオキは更衣室で扇風機に当たりながらコーヒー牛乳を飲んでいた。

やっぱり温泉上がりはコーヒー牛乳だよね!あ〜でもラムネも捨て難い……皆さんは何飲みますか?え、飲まない?怠惰ですねぇ……

 

「久しぶりの温泉気持ちよかったなぁ……」

 

ナオキはあれからしばらく温泉を巡って1人の温泉を満喫したのだ。全部を巡りきる前にのぼせてしまったので現在こうしている。

 

「さて、そろそろ出るか」

 

ナオキはそう言うと頭からつま先までもう1度拭き直し、浴衣を着て荷物をまとめて暖簾を潜って更衣室を出た。

 

「あ、ナオキ〜!」

「絵里、先に出てたのか?」

 

ナオキが暖簾を潜るとペットボトルのお茶を持っている絵里が近くのソファーに座って手を振っていた。ナオキはそんな絵里の隣に腰掛けた。

 

「えぇ!あ、そうだ。このお茶、飲まない?」

「お茶……てかこれホットじゃん!?」

 

ナオキは絵里の持っていたペットボトルに『HOT』と書かれていることに驚いた。

 

「ん?ナオキ知らないの?」

「な、なにがだよ……」

「お風呂上がりって、冷たい飲み物より温かい飲み物の方が体にいいのよ?」

「へ、へぇ〜……」

 

ナオキがにわかに信じがたそうな返事をすると、絵里は少し機嫌を損ねて頬を膨らました。

 

「あ、信じてないでしょ?」

「まぁ……2割ぐらい?」

「なによそれ……あのね、温かい飲み物は冷たいものより内臓にかかる負担が小さくて、免疫力向上や整腸作用、冷え性の改善、基礎代謝アップなどにも繋がるって言われてるの。お風呂に入って汗をかいてから上がって冷たい飲み物を飲んでも体に吸収されないから、常温の水とか温かいお茶が最適なのよ」

「なるほど……でも本能的にお風呂上がりは冷たい飲み物を飲みたくなるよな?」

「それは否定しないわ。でも健康に気を付けたいなら温かいお茶を飲むべきなのよ」

「………飲めと?」

「うん」

 

絵里はお風呂上がりに温かいお茶を飲んでいた理由を説明するとナオキにペットボトルを差し出した。ナオキはあまり飲む気ではなかったが、絵里が飲めと迫ってくるのでそれを受け取って少し飲んだ。

 

「どう?」

「どうって……普通だけど?でも気分的にはやっぱりコーヒー牛乳かな?」

 

絵里にペットボトルを返したナオキはまだ飲みかけのコーヒー牛乳を全部飲んで、その瓶を専用の回収ケースの中に入れた。

絵里もそんなナオキを見ながら残りのお茶を飲んで専用の回収ケースの中に入れた。

 

「ふぅ……ねぇ、ちょっと散歩しない?」

「散歩?あ〜湯冷ましによく使われる散歩道があるって梅島さんが言ってたな」

「そうそう、そこに行きましょう!」

「わかったよ。じゃあ行こうか」

「うん!」

 

ナオキと絵里は横に並びながら廊下を進んで、その散歩道の方に向かって歩いた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「う〜ん!涼しいわね〜」

「でも灯りがついててよかったな」

「ちょっと〜!からかわないでよ〜!」

 

散歩道で絵里は体を伸ばしてその場の空気を体全体で感じた。ナオキはそんな絵里の横を歩きながらそこの気持ちいい空気を吸った。

 

「ははっ……でもここは空気もおいしいし、本当にいいところだな」

「そうね〜」

 

2人は散歩道で熱くなった体を冷めるために話しながら歩いていた。だがナオキは絵里が少しだけ寒そうに感じていることを察して、自分の羽織っていた羽織を優しく絵里に掛けた。

 

「ほら、風邪ひくぞ」

「あ、ありがとう……」

 

絵里が少し驚いた顔で見るとナオキは照れ気味に言った。絵里も少し頬を赤く染めて笑みを零した。

そして2人はそっと手を繋いで散歩道を歩いていった。

 

 

 

それから2人は涼しい空気に当たりながら散歩道を満喫したのだが、流石に外に出すぎて体が冷えてしまったので一旦ホテル内に戻ろうと近くの出入口からホテルに入った。

 

 

「絵里、どうする?また温泉入るか?」

「ううん、その……入りすぎてのぼせちゃいそうだから部屋の露天風呂に入りたいな〜って……」

「ん?いいぞ。おれもちょうど入りたかったし」

 

絵里がチラチラとナオキに視線を送りながら言うと、ナオキは絵里がそうしている理由がわからずに快諾し、2人は部屋へと戻っていった。

 

 

 

部屋に戻ると露天風呂へと続く扉に「お湯を張りましたのでどうぞ入ってくださいませ」という札が掛けられてあった。

 

「……絵里、先に入るか?」

「ううん、お先にどうぞ。私はちょっと……やりたいことがあるから」

「わかった……(絵里が1番入りたそうにしてたのに、なんでだ?)」

 

ナオキは不思議に思いながらもお風呂場へと向かっていった。更衣室のドアが閉まると絵里はソワソワして落ち着いてはいなかった。

 

 

 

 

 

「あ〜……いい湯だ〜!」

 

ナオキはお湯に浸かると気持ちよさそうに声を上げた。

そこから見える夜空もまた綺麗なものであった。都会の空では見ることができない星がここでは見ることができる。星々がそれぞれに輝いていて、自分達の輝きを見つけようと頑張るスクールアイドルのようだとナオキは感じていた。

 

「この夜空、絵里と見たいなぁ……」

 

そんな素晴らしい夜空だからこそ恋人と見たいと思うのだが、流石にすぐには無理そうなのでまた後で一緒に見ようと割り切って目を瞑った。

 

 

 

その瞬間、重いドアが横に開けられる音が響いた。

 

 

「………へっ!?」

 

 

そのドアを開ける人間は限られてくる。この部屋に泊まっている人間か、ホテルの従業員かのどちらかだ。だが絵里が部屋にいるため後者はまずないだろう。

 

だとすれば、ドアを開けた人間は………

 

 

「え……絵里、どうして?」

 

 

絵里だ。タオルを体に巻いて隠すところは隠している。だが絵里の大きなお胸は隠しきれずに上の方は見えてしまっている。でも隠すところは隠しているのでセーフだ。だからR18ではない。

 

「だって……その……」

 

絵里は恥ずかしがってモジモジしながら頬を赤くして何か言うのを躊躇(ためら)っていたが、そんな仕草もナオキのナオキを刺激していた。

 

「と、とりあえず浸かれよ……風邪ひくぞ」

 

「う、うん……」

 

ナオキは先程まで絵里を凝視していたがサッと視線を外の方に向けて少し横にずれると、絵里はゆっくりと歩いてナオキの横に浸かった。

 

「……なんでまた入ってきたんだ?」

 

「えっ!?えっと、その……ナオキと入りたかったから……」

 

「ん゛ん゛ん゛っ……!!」

 

ナオキは絵里のそのセリフにハートを貫かれて真っ赤になった顔を片手で隠して絵里とは逆の方を向いて変な声を抑え気味に出した。

 

「わ、私変な事言ったかしら!?」

 

「い、いや、大丈夫。ただ絵里がそう言ってくれて嬉しかっただけだよ」

 

「そ、そう……?ふふっ……」

 

ナオキがそう言うと絵里は若干頬を赤く染めて嬉しそうに微笑んだ。

 

「あ、そうだ。絵里見てみろよ。空、綺麗だぞ」

 

「空?……あ、ほんとね!ハラショー!」

 

絵里はナオキの言う通りに空を見ると綺麗な星々が夜空に広がっていた。思わず絵里は感激の声を上げた。

2人はそんな空を静かに眺めて、その場はとてもいい雰囲気になった。ナオキはお風呂の底に付けていた絵里の手に自分の手を重ねた。絵里は触れられた瞬間はびっくりしたものの、それからナオキの手の指に自分の手の指を絡めてナオキにより引っ付いた。

 

「………あのさ、絵里」

 

「ん?どうしたの?」

 

ナオキが空を見ながらそう言うと、絵里はナオキを不思議そうに見た。

 

「おれさ、絵里のことわかってるつもりで全然なにもわかってなかった。だからあんな喧嘩しちゃったんだ……本当にごめん」

 

「もういいのよ。私だってナオキが私のためにしてくれていたのにわかってなかったもの。お互い様よ」

 

「あぁ、おれ達は、その、これから……ふ、夫婦になるわけだし?お互いにお互いを理解して、考えていかないといけないと思うんだ」

 

「ナ、ナオキ……!」

 

「だからさ……おれ、絵里のこともっと知りたいんだ」

 

「えっ……!?」

 

「絵里と2人で色んなところに出掛けて、色んなことして、数え切れない時間を絵里と過ごして、絵里のこともっと知りたい……!」

 

「ふふっ、そうね、私も……だから……」

 

「んっ……!?」

 

ナオキが油断していたところに絵里は自分の唇をナオキの唇に重ねた。

ナオキはいきなりのことに驚いたが、1度唇が離れると今度はナオキの方から絵里の唇にキスをした。

お互いに唇を離すと温泉の熱さと合わさってさらに火照(ほて)っていたからか、頬を赤く染めていた。

 

「ねぇ、続きは……ベッドでしましょう?」

 

「あぁ、そうだな……」

 

するとナオキは絵里をお姫様抱っこしてお風呂場を出た。

 

それから2人がなにをしたのかはみなさんお分かりであろう……だが、ここでは書けないのでご想像にお任せします。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

 

「「お世話になりました!」」

「いえ、こちらこそご利用ありがとうございました」

 

翌日、チェックアウトの日を迎えたナオキと絵里はホテルの最寄り駅で支配人梅島に礼を言った。

 

「おふたりとも。これからも末永く仲良く、お幸せに」

「「は、はい……」」

 

2人は梅島の言葉に少し照れながら返事をした。すると梅島はそんな2人を見て優しく微笑んだ。

 

「では、またのご利用をお待ちしております」

 

そう梅島が言うと2人は笑顔で一礼をして駅のホームへと向かっていった。

そんな2人は心の中ではこう思っていた。

 

 

こんな高いところに2度目は来れるはずがない……と。

 

 

 

 

 

そして、

 

「「「「「「「「デート見守り隊、μ'sマイナス2」」」」」」」」

 

はよく働いてくれたと夕方までそのホテルでくつろいで、西木野家のリムジンでそれぞれの家へと帰っていったのだった。

 

 

 

 

次回に続く……

 





さて、今日も早速妄想ラジオ!……と行きたいところですが、今日はある記念日なので私シベリアの語りとなります。
本日9月16日をもちまして、私、20歳になりました!いえい!やったぜ!ハラショー!
いやぁ〜ついにこの歳になりました!
さらにさらに、今日は主人公ナオキくんの誕生日でもあります!いえい!おめでとう!
ナオキくんはほんまに気まぐれで自分と同じ誕生日にしましたけども、まさかこんなにも感慨深い日になるなんて思いもしませんでした。ま、俺自身が20歳に早くなりたかったのもあるんですがね?

まぁ、ということで、この9月16日をもってシベリアも、ナオキくんも新しい1歩を踏み出しましたのでこれからもみなさん、どうかごひいきによろしくお願い致します!

それでは、数多の作品がある中で、この作品、いや、シベリアの作品にお気に入り、評価してくださったみなさん、そして1度でも読んでくださっているみなさん、本当にありがとうございます!!!感想いただけたらとても嬉しいです!!(本音)
では、次回もお楽しみに!!ばぁいばぁ〜い!!

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