ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜   作:シベ・リア

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みなさんお久しぶりです!夏休みだぁ〜!!ま、サークルで忙しいのでほとんど大学に行くのですが……いよいよ夏休みですね!私は大学生なので9月の末まで夏休みなのですよ!(ドヤ顔)あと、約3年ほどおせわになった絵里の手帳型カバーのアイポン5sさんの画面が割れたので、6sさんに機種変しました(どうでもいい)。あとタブレットも手に入れました(ほんまどうでもいい)。

そしてそして、さらに本日8月4日は私が初めてこの作品を投稿した日!つまり、小説家シベリア香川とこの作品の2周年でございます!みなさん、ありがとうございます!これからもどうかよろしくお願い致します!(読者さんに言われるまで気付かなかったやつ←)

さてさて雑談はこれぐらいにして、今回のお話は2話にわけさせていただきます!え、今までカットとか全然なかったのになんで今回はするのかって?そんなの決まってますよ。気分ですよ、気分!!
それでは、前編をどうぞ!!



第146話「ナオキと絵里のハラショー!な旅行〜前編〜」

 

 

「ん、ん……?」

 

ナオキはカーテンの間から差し込んでいる陽の光を目に浴びて目を覚ました。隣に目を向けるとYシャツがはだけている状態の絵里がまだ寝息を立てながら寝ていた。

 

簡潔に言うと、2人は仲直りをして自分達が住んでいる部屋に帰ってきたのだが、亜里沙はコンビニで会った穂乃果と雪穂に連れられて高坂宅に行き、そのままお泊まりをすることになったそうで、そこにはナオキと絵里しかいなくなった。

それからご飯を食べ、別々にお風呂に入り、後から出てきた絵里が裸Yシャツで部屋にいるナオキの元に行った。

それを見たナオキは戸惑ってはいたが、結局絵里の誘惑に負けて襲ってしまい朝を迎えたのである。

つまりは昨夜はお楽しみであったのであります。部屋には2人しかいなかったので絵里は絵里で思うまま喘ぐことができたし、ナオキはナオキで欲望のままに犯すことができたし、ウィンウィンだね!!

 

てなわけで朝チュンを迎えたナオキは体を起こして背筋を伸ばした。そして絵里を起こさないようにベッドから出て制服に着替えた。今日もShooting Starsの練習があるので学校に行かなければいけないからである。

 

「ん、ん〜……朝?」

 

ナオキが着替えていると絵里が目を覚まし、半分目を開けてまだ完全に眠気が覚めていない様子で声をあげた。

 

「おはよう。起こしちゃったか?」

「ん……もう行くの?」

「あぁ、そろそろ行かないと間に合わないからな」

 

ナオキはそう言って身だしなみを整えるために洗面所に向かった。絵里は若干うとうとしながらもはだけていたシャツのボタンを留めて、引き出しから出した下着を履いてリビングに向かった。

ナオキは支度が終わると部屋に戻り荷物を取って、部屋にいなかった絵里がいるであろうリビングに向かった。

リビングにいた絵里は椅子に座ってコップに入った水を飲んで一息ついていた。

 

「絵里、ちょっと水を一杯もらえるか?」

「いいわよ〜。はい」

「おう、ありがとう」

 

ナオキは絵里が先程まで持っていたコップを受け取り、絵里が少しだけ飲んでいた水を全部飲み干してそのコップを絵里に渡した。所謂関節キスである。

 

「じゃあ、いってくる」

「うん、いってらっしゃい」

 

2人は挨拶を交わすと関節キスでは飽き足らず、お互いの唇に直接キスをした。最近はナオキと亜里沙が一緒に行くためできなかったが、今日ここには2人しかいないため久しぶりにできたのだ。2人はそんな特別なキスをゆっくりと味わうように少し離しては重ねと数回繰り返した。

 

「ん……すまん、そろそろ行かないと」

「ん……わかった。でも、最後に一回だけ……んっ」

 

ナオキが名残惜しそうに絵里から顔を離すと、絵里が上目遣いでさらにその目をうるうるとさせてナオキを見つめたのでナオキは我慢できなくなり最後に優しくキスをした。

 

「……じゃあ、いってきます」

「……いってらっしゃい」

 

そしてナオキは練習のため音ノ木坂学院に向かうのであった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「えっと……」

 

学校に着いたナオキはその場の状況に言葉を失っていた。

ナオキが今いるのはアイドル研究部部室の更衣室に当たるところだ。そこでナオキは穂乃果、海未、ことり、真姫、花陽、凛、そしてにこに囲まれて正座させられていた。そのメンツの表情は決して穏やかなものではなく厳しいものであった。

 

「ナオキ……」

「は、はいっ!?」

 

ナオキは鬼のように怖く低い声で名前を呼ばれてビビりながら返事をした。もちろんその声の主は鬼園田こと園田海未である。

 

「なんでこうなっているか、わかりますか?」

「わ、わかんないです……」

 

ナオキがそう言うとみんなはさらに厳しい視線をナオキに浴びせた。

 

「ごめんなさい……」

『はぁ……』

 

ナオキが肩身を狭くして謝罪の言葉を述べるとみんなは一斉にため息をついた。

 

「あのね、あんたなんで絵里に話さなかったのよ」

「うぐっ……」

「亜里沙ちゃんから昨日聞いたよ?」

「ったく、ちゃんと仲直りはしたんでしょうね?」

「そ、そりゃあもちろん!」

 

にこ、穂乃果、真姫からの攻めに対してナオキははっきりと声を出した。

 

「でも言わなかったことは事実だよね?」

「ぐぬ、ごもっともでございます」

「そうだよ!凛達が怒っているのはそこなんだよ!」

 

珍しく攻めて来た花陽、凛からの言葉をナオキはシュンとした様子で聞いた。

 

「まぁまぁ、みんな落ち着こうよ」

「ことり……!」

 

ついに良心が現れたとナオキは感動して期待の目でことりを見つめた。

 

「仕方ないよ。ナオキくんは()()()()()なんだからいくら言っても意味があるとは思えないよ」

「ことりぃ〜!?」

 

と思っていたが真実は違った。この中に良心的な存在なんていないとこの時点でナオキは確信した。

 

「さぁ、説明してもらいましょうか?絵里に私達からの告白のことを言わなかった理由と昨日のことを」

 

海未が不機嫌そうな声でそう言うとみんなは変わらずナオキを咎めるような目で見つめた。そしてナオキは隠す必要もないと判断し、みんなに事の全てを話すことにした。

話したら絵里が傷つくと思い、絵里のために告白されたことを黙っていたこと。でも絵里にとっては教えて欲しかったみたいで喧嘩に発展してしまい絵里が怒って出て行ってしまった。でも誤解も解けてちゃんと仲直りしたと。ヤったことに関してはもちろん言わなかった。だが本人にはわからないがヤったことは雰囲気でみんなに悟られていた。女の勘って怖い。

 

「……っていうのが全部です」

 

ナオキの弁明を聞くとみんなはなるほどと頷いた。

 

「まぁ、きっと絵里がたっぷりと怒ってそうだし私達は別に怒らないわ」

 

ナオキはにこの言葉に安心を覚えてほっと胸を撫で下ろした。ナオキはもう何も言われないと思っていたのだが、そんなわけはなく続けなて海未が言葉を続けた。

 

「ですが、絵里を悲しませたのは事実です。ナオキはそれをわかっているのですか?」

「わ、わかってるよ……」

 

昨日の絵里の涙は忘れるはずがない。絵里の悲しんだ目、表情、そして声はナオキの脳裏にしっかりと刻まれていて、今でもそれはすぐに思い出すことができる。だがその度にナオキの胸はしめつけられ、あのときの自分の想いが溢れ出てくるようであった。

 

「なのでナオキには罰を与えます」

「ば、罰!?」

 

罰とは一体なんなのか、ナオキはその正体について頭をフル回転させて考えた。

 

太ももに石板を何個も重ねられる?

 

綱でくくられた状態で天井から吊るされ「ブーリブリ」という掛け声とともに回転されながら叩かれる?

 

回転する丸い板に貼り付けられていつ当たるかわからない矢を射られる?

 

 

 

それとも…………

 

 

 

 

死刑(アイアン・メイデン)

 

 

『キャーーーーーーーー』

 

 

どこからか悲鳴が聞こえたナオキはその恐怖から身震いをした。

 

 

「じゃあ……」

 

そう言った真姫はスタスタとナオキの元に近づいた。

ナオキは罰を執行するのは真姫なのかと悟り目を瞑ってこれから起こることを受け止めようとした。

 

 

「……はい」

 

「………あれ?」

 

ナオキはなにかされなかったので目を開けてパチパチとさせた。真姫は真姫で封筒をナオキに差し出していたので尚更である。

ナオキはそれを受け取り、地獄への招待状かと怖がりながらその封筒を開けた。

 

 

その中身とは………

 

 

 

 

「………なんだこれ?」

 

「なんだとはなによ。西()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ」

 

ナオキは地獄への招待状ではなかったのでホッと胸を撫で下ろし、それと同時に西木野の凄さを改めて実感した。

 

「で、なんでこれが罰なんだ……?」

 

そう、これは罰ではない。どちらかというとご褒美である。罰であるならそこで無給アルバイトとかをさせたらいいのにと考えはしたが、口に出せば「そう言うならそうしましょ」と路線変更されそうなので黙っておくことにした。

 

「ナオキには罰として絵里と()()()一緒にデートしてもらいます」

「なんか一部だけ強調されてたんですがそれは」

「要するに思う存分イチャイチャしてこいってことよ」

「な、なんだよそれ……」

 

ナオキはにこから言われたことに頰を少し赤く染め、その頰を人差し指で掻いて目線を斜め下に逸らした。

 

「ナオキくんが絵里ちゃんに悪いと思ってるなら、絵里ちゃんとしっかりと楽しんで来てね」

 

天使だ……と思うこの状況であったが、ナオキにはその花陽の笑顔から少し威圧を感じていた。

 

「は、はい……」

「じゃあ、早速帰って準備しないと!明日だよ、明日!」

「はぁ!?明日って……練習あるだろ?しかも今は大事な時期だし……」

 

穂乃果がまるで自分が行くかのようなテンションでそう言うと、ナオキはこいつ頭いかれてんじゃねーのぐらいの勢いでそう言った。

 

「大丈夫、ちゃんとみんなの了承は得てるから」

「いや、本人の了承は得ていないんですがねことりさん……このこと絵里は知らないよな?」

「知ってるわけないにゃ。頭いかれたかにゃ?」

「お前にだけは言われたくねぇ……!」

「それどういう意味にゃ〜!?」

 

凛がナオキに反論するとその場にいた全員の動きが止まり、その空間は沈黙に包まれた。

 

 

「ププッ……ハハハハハッ!」

 

 

するとナオキが耐えられなくなり我慢していたもの全てを出すように笑った。それにつられて先程まで怒っていたみんなも笑ってしまった。

この光景からわかること。それはどんなことがあってもこのメンバー……絵里や希を含めたμ's10人の絆は決して崩れないということである。

 

「ハハハッ……つまりは、おれから絵里に伝えて一緒に行けってことだろ?」

 

ナオキが笑いの余韻が残っているような表情でそう言うと、みんなはその通りと言わんばかりにうんうんと頷いた。

 

「ありがとう。じゃあ有り難く使わせてもらうよ。花陽、海未、少しの間練習頼んだ」

「は、はい……!」

「ま、任せてください……!」

「「「「「「「ははははは……」」」」」」」

 

花陽と海未がそう言うと、みんなは何故か苦笑いを浮かべた。

 

「ん……?まぁ、とりあえず今日も帰るわ。あ、穂乃果。その間亜里沙のこと頼んだ」

「ま、任せといてぇ!」

 

穂乃果は何故か語尾を張り上げていたがナオキは気にせずに横に放置していた荷物を持った。

 

「それじゃ、お先に。ゆっくりと楽しませてもらうぞ」

 

ナオキはそう言って部室を出て行き、絵里の待つ自宅に帰って行った。

みんなは見つめ合って親指をビシッと立ててドヤ顔をキメた。

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「ただいま〜」

「おかえりなさい!?早かったわね」

 

たまたま廊下にいた絵里はさっき出かけたナオキが早く帰って来たことに驚きを隠せなかった。

 

「あぁ、実は真姫からこんなものを貰ってな……」

「これは……リゾートホテルの招待状!?」

 

絵里はナオキに手渡されたリゾートホテルの招待状を見てさらに驚いたリアクションをした。

 

「真姫達に絵里とここに遊びに行ってこいって言われてさ、お言葉に甘えることにしたんだ」

「へぇ〜……それで、いついくの?」

「明日」

「へぇ〜明日…………………って明日!?」

 

絵里はナオキが帰って来てから驚いてばかりである。そんな表情の絵里もかわいい。つまり絵里はなにをしてもかわいい。つらい。しんどい。最強。

 

「あぁ、もう貸し切ってるみたいでな。そこに書いてあった」

「貸し切り!?ハ、ハラショー……」

 

絵里は貸し切りと聞いた瞬間にカタカタと体を震わせながらそう言うと、ナオキはかわいいなと思いながらそんな絵里を温かい目で見つめていた。

 

「ってことで明日の準備をするために帰って来たんだ」

「なるほど!みんなは許してくれたの?」

「あぁ、だからおれはここにいる」

「ふふっ……じゃあ準備しましょうか」

「OK!」

 

それから2人は明日を楽しみにして胸を躍らせながら準備に取り掛かった。

準備している途中に真姫からメッセージがきて移動費も負担しようかと言ってきたのだが、流石にそれは悪いと思って断った。

 

 

ま、自宅から東京駅までリムジンで送ってもらうことになったのだが。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

 

東京駅に着いた2人は真姫と運転手の人に礼を言ってから構内へと入っていき、電車に揺られて目的地へと向かった。

そのリゾートホテルは足立区付近にあるそうで、ホテルの1階にはいくつかの種類の温泉があり、さらに少し値段が高めの部屋には露天風呂も付いている。もちろん1階にも露天風呂があるらしい。だがこのホテルは温泉だけではない。2階と3階は娯楽施設のスペースになっていて、ゲームセンターやカラオケなどなど様々な年齢層の人が楽しめるようになっている。

 

最寄り駅に着くと駅の入り口付近にそのホテルの従業員らしき人物が送迎用のバスとともに2人を待ち構えていた。

ナオキと絵里は頭を下げてきたのでホテルの従業員とわかり、その人の元へ向かった。

 

「どうも、香川様と絢瀬様ですね。お待ちしておりました。私、西木野リゾートホテル支配人の梅島 真司(うめしま しんじ)と申します。この度は当ホテルをご利用いただきありがとうございます」

「(支配人かよ〜……)」

「(ずっと普通の従業員さんかと思ってたわ……)」

「それではホテルまでこのバスで向かいますのでどうぞお乗りください」

「「あ、ありがとうございます」」

 

ナオキと絵里は従業員……支配人の梅島の運転によってホテルまで向かった。2人は戸惑いを隠せずにいた。

 

「えっと……梅島さんはいつもこうしてお客さんを送迎してるんですか?」

「ハハハッ、ご冗談を。こんなこと滅多にありませんよ」

「で、ですよね……あははははは……」

 

ナオキと絵里の戸惑いはさらに大きくなった。

 

「ですが真姫お嬢様の頼みですから、これぐらいお安い御用です」

「(西木野家すげぇ〜……)」

「(ハラショー……)」

 

ナオキと絵里は改めて西木野家の凄さを身をもって感じ、戸惑いがさらに大きくなったのであった。

 

ホテルが近づいてくると2人は感動の声を上げ、それを聞いた梅島は嬉しそうな表情をしてホテルの説明をした。

 

「当ホテルは温泉、娯楽施設があるリゾートホテルです。ホテルの周りには散歩道があり、湯冷ましにご利用されるお客様が多いですね。それらの他にも様々なサービスがご利用いただけますので、お気軽に従業員にお問い合わせください」

「「は、はい……」」

 

2人はホテルの説明を受けたが、そのホテルの豪華さを実感して何故か緊張したような表情になった。

 

 

 

 

〜〜〜ラブライブ!〜〜〜

 

 

 

 

「こちらがおふたりのお部屋になっております。オートロック式ですのでこちらのカードキーをお使いください」

「「ありがとうございます」」

「では、ごゆっくり……」

 

フロントにいた従業員に部屋へと案内されたナオキと絵里は、緊張した面持ちでカードキーをかざした。すると鍵が開いた音がなり2人は肩をビクッと上げた。ゆっくりとドアを開けながら2人は部屋の中がどれだけ豪華なのかを想像していた。

ホテルは洋式っぽかったのでやはり部屋もベッドが2つ並んでいて備え付けのユニットバスもあるのだろうかなど、様々な想像を膨らませながらその部屋へと2人は足を踏み入れた。

 

「この匂いは……畳かな?」

「ん〜……いい匂いね〜」

 

ナオキと絵里が部屋に入ると畳のいい匂いが2人を出迎えた。そこは和風な雰囲気がある部屋で畳が敷き詰められていて奥の方には扉があった。

絵里は嬉しそうに靴を脱いでその扉の方へと向かって期待の目を浮かばせながら開けた。その扉の先は小さな更衣室になっており、さらにその先にはガラス張りの扉があって絵里はさらに目をキラキラさせながらその扉を開けた。

 

「わぁ〜!」

 

絵里はその先にある光景に思わず声をあげてしまった。

そこは石畳が敷き詰められているテラスで、外側には木で出来ていて底が若干深い四角い箱状のものがあった。その箱状のものの壁側には何かが出てくると言わんばかりの穴があった。

 

「ほう……ここがパンフレットにあった露天風呂か」

 

絵里がその光景に感激していると、ナオキがこのホテルのパンフレットを開きながら絵里の横に立った。

 

「いつもらったの?」

「ん?いや、なんか机の上に置いてあったからさ」

「へぇ〜」

 

絵里は興味深そうにナオキが持っているパンフレットを覗き込もうとすると、ナオキは絵里が見やすいように少しパンフレットの位置を下げた。絵里がその心遣いに気付いてナオキの顔を見つめた。

 

「な、なんだよ……」

「ん?ナオキ優しいな〜と思って」

「そ、そうか……」

「ふふっ、照れてるの?」

「て、照れてねーし!」

 

ナオキはからかわれて視線を少しだけ逸らすと絵里は可笑しそうに笑った。

絵里の笑いが止まり目を開けるとナオキの目と視線が合い、それに気付いた2人は無言でお互いを見つめ合った。

 

「絵里……」

「ナオキ……」

 

お互いの名前を呼んだ2人の顔は徐々に近づいていき、2人の唇がまじで重なる5秒前という状況になっていた。

 

 

あと数センチ……あと数ミリ………

 

 

プルルルルルルル……

 

 

だがそこで部屋にあった備え付けの電話が鳴り出したので2人の動きは止まってしまった。

 

「あ、おれ出るよ」

「え、ちょっと……それ、出ていいの?」

「大丈夫大丈夫。備え付けの電話はそういうもんだからさ……はい、香川です」

 

絵里はナオキが電話に出るために離れると残念そうな声をあげたが、それを誤魔化すかのように疑問をぶつけた。

ナオキは受話器を耳に当てながら相槌を打っていたが、ふと絵里と視線が合うと「またあとでな」と言わんばかりに唇に指を当ててウィンクをした。絵里はその仕草にパァーッと笑顔になって嬉しそうに頷いた。

 

「はい、わかりました。失礼します」

「なんて連絡だったの?」

「あぁ、昼食の準備ができたから持って来るってよ」

「へぇ〜持ってきてくれるのね」

「部屋が旅館に似てたからそんな気はしてたけどな」

「ふ〜ん」

 

受話器を置いたナオキと絵里はそう会話したあとに部屋の真ん中にあった机の周りをある程度片付けて昼食を出迎える準備をした。

 

それからしばらくすると従業員数名が昼食の料理を持ってやってきた。何名かの従業員が食事の準備をしてる間に、1人の従業員が口を開いた。

 

「この度はご利用いただきありがとうございます。昼食の準備の間に少しご説明させていただきます。当ホテルにご宿泊中は隣の寝室にございます、浴衣をご使用ください。こちらにお持ちするお食事、お飲物はお代わり自由ですので電話でお申し付けください。何か困ったことなどがございましたらフロントまで電話を掛けていただければ対応致します。それでは、どうぞお楽しみください」

 

そう言い残して従業員達は部屋から出て行った。

 

「寿司だな……」

「寿司ね……」

「高そうだな……」

「高そうね……」

 

2人は机の上に並べられた豪華なお寿司にすこぶる驚いていた。その驚きからかなかなか箸を持たず食事を始めなかった。

 

「……よし、食べよう!いただきます!」

「い、いただきます!」

 

だが目の前の料理の誘惑には耐えられることはなく、2人は並べられていたお寿司の一つを口の中に入れた。

 

「なにこれめっちゃうめぇ!」

「ほんとに!ネタはもちろん美味しいけれど、シャリも柔らかくてお醤油に合うわね」

 

2人は一度食べると辞められなくなり、それからはほぼ無言でお寿司を食べていた。

豪華なお寿司が並んでいた舟形の容器は僅か数分で綺麗になってしまった。

 

ちなみに私はガリが好きです。ネタで言えばたまごとかマグロとか色々。

 

「「ごちそうさまでした……」」

 

2人はしっかりと手を合わせて作ってくれた人とこんな素晴らしい旅を用意してくれたみんなに感謝した。

 

「じゃあ、おれはこの容器を返しに行ってくるわ」

「えっ、呼んだら取りに来てくれるんじゃ……?」

「こんな美味しいもの食わせてもらったんだ。お礼はしないとな」

「あ、じゃあ私も……!」

 

ナオキが容器を返しに行こうと立ち上がると、絵里も一緒に行こうと立ち上がろうとした。だがナオキはそんな絵里に座るようジェスチャーで伝えた。

 

「ま、絵里はここで待ってろって」

「え〜なんで〜?」

「ほら、絵里先に着替えたいだろ?おれが行ってる間に着替えたらいいって」

「そ、そう?じゃあ……お言葉に甘えて」

 

絵里はそう言うと浴衣に着替えるために横の寝室に向かい、ナオキはカードキーと容器を持って部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと厨房は……ここか」

 

ナオキは周りをキョロキョロしながら歩き続け、厨房という文字を見つけるとホッと安心したような声を漏らした。

 

「すみませ〜ん」

「は〜い!」

 

そしてナオキは厨房の前で中の人に聞こえるように声を出した。すると女の人の声がして一息をついてその人が来るのを待った。

 

「は〜いなんでしょうか〜…………あ」

 

その人はナオキの顔を見るなり「しまった」と言わんばかりの表情をして声を出した。

 

 

「お前、なにやってんだよ…………穂乃果」

「い、いやぁ〜あははははは……」

 

ナオキにバレてしまった穂乃果はどうにか誤魔化そうと苦笑いを浮かべた。だがナオキはそんな穂乃果をジーッと睨み続け、穂乃果はその視線を恐れて変な汗を垂らしていた。

 

「穂乃果、どうしたのですか?……あ」

「穂乃果ちゃんも海未ちゃんもどうしたの?……あ」

「このお皿洗うわよ〜………あ」

「ご飯炊けたよぉ〜………あ」

「みんななにしてるのよ。早く終わらさないと……あ」

「ねぇねぇ、凛はあとはなにをすれば……あ」

「ほらみんな、ナオキくんは食いしん坊やし絶対連絡くるから早く準備しないと……あ」

 

そしていたのは穂乃果だけではなかった。海未、ことり、にこ、花陽、真姫、凛、さらには希もいた。みんなナオキの顔を見るなり穂乃果のときと同じような表情をしてその場で固まってしまった。

 

「はぁ……お前ら、なんでここにいるんだ?」

 

ナオキもこれには呆れるしかなかった。

 

「フッフッフ……バレちゃ〜仕方ない。私達は、デート見守り戦隊なのだ!」

「…………はい?」

 

そして穂乃果が訳のわからないことを言い出したのでナオキはさらに呆れた表情をしたが、それを合図にみんなが横に並び出したので少し身を引いた。

するとどこからともなく変なBGMが流れ出した。

 

「お饅頭のように甘い愛をお届け!キュアほむら!」

「あなたのハート撃ち抜くぞ〜……キュ、キュアラブアロ……!」

「甘い声、深い愛!キュアミナリンスキー♡」

「猫のように引っ付くにゃ!キュアキャット!」

「お帰りなさい、ご飯にしますか?キュアライス……!」

「はぁ、跪いて犬のように欲しがりなさい……キュアクイーン」

「溢れる笑顔!キュアにこに〜、にこっ♡」

「愛をた〜っぷり注入!キュアスピリチュアル!」

「私達、8人揃って……」

「「「「「「「ナオキ(くん)と絵里(ちゃん)のデートを見守る!」」」」」」」

 

「「「「「「「「デート見守り隊、μ'sマイナス2!」」」」」」」」

 

「………………………」

 

みんながそれぞれポーズをキメて名乗りをあげたが、ナオキは口をポカーンと開けてみんなを細目で見つめた。

 

「うぅ〜キマったね!」

「テンション上がるにゃ〜!」

「練習したかいがあるやん!」

「ま、このにこにーにかかればこれぐらい楽勝よ」

「うぅ、もうやりたくないです……」

「恥ずかしい……」

「楽しかったね、真姫ちゃん」

「そう?」

 

みんなが盛り上がる中、ナオキはずっと冷たい視線を送り続けていた。みんなは盛り上がってそれを誤魔化そうとしていたがその視線に耐えられず、笑い声も徐々に小さくなっていった。

 

「……もう終わったか?」

「はい、終わりました」

「じゃあ、お前らなんでここにいるんだ?」

 

ナオキはみんなの茶番を最後まで見届けるとみんなが()()にいる理由を聞いた。

 

「だ、だからナオキくんと絵里ちゃんのデートを見守るために……」

「それはお前達の茶番でよ〜くわかった」

「「「「「「「「うぐっ……」」」」」」」」

 

みんなはナオキの"茶番"という言葉に胸に矢を射られた感覚を覚えて奇妙な声を漏らした。

 

「おれが聞いてるのはな、なんでお前らがここ(厨房)にいるのかってことだ」

「「「「「「「「あぁ〜……」」」」」」」」

 

みんなナオキのその言葉に納得の声をあげた。するとみんなは顔を見て頷きあってから海未が口を開いた。

 

「えっとですね、ナオキと絵里が喧嘩したのは少なからず私達にも責任があると思いまして……それでこのホテルに貸し切りをお願いしたのです」

「でもね、やっぱりこのホテルを貸し切りにするのは少々厳しかったのよ。時期的には一番儲かるから」

「だから真姫ちゃんのコネと、ウチらが貸し切ってる間は無給で働くことを条件に貸し切ってもらったんや!」

 

海未に続いて真姫と希がそう言うと、さらに続いてみんながうんうんと二度頷いた。それを聞いたナオキは驚いた表情に変わり、少々目をうるうるとさせてみんなの顔を見回した。

 

「まさか……このお寿司ってみんなが作ったのか?」

「うん……」

「そうだったのか……(だからこんなにも美味しかったのか……)」

 

ナオキは絵里と食べた豪華で美味しいお寿司がみんなが作ったと知るとその美味しさに納得がいった。

料理の最大の調味料は、"愛"。そのことを絵里に初めて手料理を振舞った時に教えられた。なので、そのお寿司にはみんなの愛が詰まっている。みんながナオキ達へのお詫びと、この時間を心から楽しんで欲しいと思う気持ちを込めて作ったものなのだから美味しいに決まっている。

 

「フッ……ありがとう、みんな」

 

ナオキは嬉しそうに笑い声を漏らし、笑顔でみんなにお礼を言った。

するとお礼を言われたみんなは顔を見合わせ、微笑み合ってからナオキの方を向いて笑顔で言葉を発した。

 

 

「「「「「「「「どういたしまして!」」」」」」」」

 

 

 

 

~~~〜〜♡〜〜~~~

 

 

 

 

「ただいま〜」

 

ナオキは厨房でみんなによろしく伝えた後、部屋に戻ってそのドアを開けた。先程は気付かなかったが、実はこの部屋の扉は二重になっており、1つはオートロック式のドアなのだが、それに続いて靴を脱ぐスペースがあり。和風の雰囲気を出すためか障子があった。これが2つ目の扉である。その障子は来た時には閉まっていなかったが、今回は絵里が着替えるためかそこを閉めたみたいだ。

 

「絵里、入っていいか〜?」

「えぇ、いいわよ〜」

 

ナオキはトラブルを避けるために絵里に確認を取ってから障子を開けた。

 

「あっ、おかえりなさい」

「お、おぉ……」

 

絵里は旅館の浴衣に着替えた状態でナオキを迎えた。どうやら汗を流すためにシャワーを浴びたらしく髪も解いてあり、タオルを首から掛けながらクーラーの涼しい風に当たっていた。

ナオキはそんな絵里に見惚れてその場に立ち尽くしていた。絵里は前から浴衣や着物などの和服がよく似合うと思ってはいたが、今回もよく似合っている。浴衣からチラッと見える絵里の白い肌はなんとも例えがたい素晴らしいものである。

するとまだ拭き取りきれていない水滴が1滴ポタッと落ち、絵里の肌をつたって浴衣の中へと消えていった。

 

「ナオキ、なんでそこに突っ立ってるのよ?ここ、涼しいわよ?」

「あぁ、ごめん」

 

ナオキがそんな絵里に見惚れていると絵里が自分の近くの畳をポンポンと叩いてナオキを呼び、ナオキは今にでも襲いたいという欲情を抑えてそこに向かって座った。

 

「遅かったわね?なにしてたの?」

「あぁ、実はかくかくしかじか……」

 

ナオキは絵里に時間が掛かってしまった理由を聞かれて、

「「「「「「「「デート見守り隊、μ'sマイナス2!」」」」」」」」

つまりはみんなのことを洗いざらい話した。

 

「へぇ、みんなが……」

「あぁ、だからこれからはコソコソしないで堂々と働いてくれって伝えといた」

「そう……」

「あ、でも、絵里と2人っきりっていうのは変わらないから!大丈夫!」

「ナオキ……………ふふっ、私が残念がってるって思ったの?」

「ほぇ?ち、違うのか?」

「えぇ、ただみんながそんな風に思っててくれたことが嬉しくて……」

「……そうだな」

 

ナオキはそう優しい声で同感の言葉を出すと、クーラーの方を見上げて涼しい風を浴びた。

 

「でも一番嬉しいのは………」

「ん……?!」

 

ナオキは絵里の言葉の続きを聞こうと絵里の方を向いたが、その絵里の顔がとても近いことに驚いた表情を浮かべた。

 

「ナオキが私のことを心配してくれてたってことよ」

 

絵里は囁くような小さな声でそう言うとナオキの唇にしばらくの間自分の唇を重ね、満足したらその唇を離した。

その後絵里はトロンとした目でナオキを見つめ、ナオキはまだ驚いた目で絵里を見つめていた。

 

「ん、あぁ、どういたましまして……(これ反則だってまじで……さっき欲情抑えたのに、頑張って我慢したのに……どうしよう、襲いたい……!!)」

 

「ナオキ?どうかしたの?」

 

ナオキがよからぬ事を考えていると、絵里は何かを考えていそうなナオキの顔を心配して下から覗き込んだ。

 

「へっ!?い、いや!なんでもないよなんでも!!おれもちょっと着替えてくるわ!」

「え、えぇ……」

 

するとナオキは頬を赤く染めて慌てるように浴衣が置いてある寝室へと入っていった。

ナオキはそこに入ってすぐには着替えず壁に手をついて、つい体外に出そうになった欲情をなんとか抑えた。

 

「(ずるいずるいずるいことは、しちゃーダメだよこーらこら……)」

 

ナオキは何故か心の中でそんな歌をうたって顔を真っ赤にしていたそうな……

 

まだまだ2人の旅行は始まったばかり……

 

 

 

次回へ続く……

 






〜妄想ラジオのコーナー〜

ナ「久しぶりの、妄想ラジオ!」
絵「あれ、色は変えないの?」
ナ「あ〜そういやそんな機能ついかされたよな。でも作者曰く、めんどくさいからやりたくないそうだ」
絵「へ、へぇ〜……」
ナ「てかなんだよ、あの「ブーリブリ」って。訳わかんねーよ」
絵「なんか某アニメのネタみたいよ。しかも最近の」
ナ「そうなのか……変な拷問もあるもんだ。さて、今回は旅行回の前編だったな!」
絵「そうね。でも私達が泊まるホテル、結構豪華よね」
ナ「だな。温泉あるわ、娯楽施設あるわ、部屋には露天風呂あるわ……」
絵「本当に、ハラショー!よね!」
ナ「よっ、出ました!ハラショー!日本1!いや、ロシア1!」
絵「ふふっ、ナオキ大袈裟よ……」
ナ「そんなことないよ。おれは絵里のハラショー!が一番好きだぜ(好きだぜ……好きだぜ……好き好き好き好きだぜ……)」
絵「ナオキ……!」
ナ「じゃあ、今回はここまで!」
絵「新しくお気に入りしてくださった皆さん、ありがとうございます!評価や感想、どんどんお待ちしております!」
ナ「旅行回の後編もお楽しみに!それじゃあ……」
ナ・絵「「ばいばーい!」」

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