ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜   作:シベ・リア

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みなさんどうもお久しぶりです!
あっという間に6月終わっちゃいますね。あと半年で今年も終わりですよ!やっぱりなんか1ヶ月に1話スピードになってしまってすみません。早くしたいですね、はい。
ということで今回もずっと書きたかった話です!ナオキと絵里が初めて○○○をします。
それではさっそく、どうぞ!!



第145話「熱い愛でアナタを想う」

 

 

 

 

「絵里……今、なんて……?」

 

おれは今絵里がなんて言ったのか聞き取れなかった。いや、正確には聞き取ってはいたがそのことを()()()()()()()()()()()()()()()のである。

 

「……ならもう一度言うわ」

 

絵里は無情にも冷たい表情をしておれにもう一度あの言葉を言おうとした。

嘘であって欲しい。今日がエイプリルフールかなにかであって欲しいと心から願っていた。

 

 

 

 

「私達、()()()()()()()()()……」

 

 

 

「っ………!?」

 

 

否、それは本当だった。それに絵里の目は本気だ。冗談を言うような目じゃなかったが、冗談であって欲しい。

 

「じょ、冗談だよな……?嘘だと言ってくれよ?……な?」

 

おれはそう言って目の前に座っている絵里の肩を持とうと手を伸ばした。

 

 

……………でもその手は弾かれた。

 

 

「…………………………え?」

 

 

「冗談なんかじゃないわ。私は本気よ」

 

 

おれの手を弾いた絵里はそう言うと立ち上がって部屋のドアの方を向いた。

 

 

「待ってくれ、絵里……!おれ、絵里なしじゃ……絵里がいなきゃ……!!」

 

「…………さようなら」

 

 

おれは必死に絵里を呼び止めようとしたが、無情にも絵里はそう告げて歩き始めた。

 

 

「待って、待ってくれ絵里!絵里ッ!!」

 

おれは必死に去っていく絵里に手を伸ばしたが、その手は全然絵里には近づいてはいなかった。

いや、近づくと言うよりかは絵里がどんどんと遠ざかっていったと言うべきであろう。

 

「絵里ッ!絵里……!絵里………え、り……!」

 

おれは絵里が見えなくなってもずっと絵里に手を伸ばし続けた。

 

 

だがその手は届くことはなく、あたりはこれからのおれの人生を暗示するかのように暗闇に包まれていった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

「絵里……絵里……!」

 

 

 

 

「ナオキってば、ナオキ!」

 

「はっ……!?」

 

絵里は隣でうなされていたナオキを揺らして目を覚まさせた。

そんなナオキは全身汗だくで息も荒かった。

 

「ナオキ、大丈夫?」

 

「え、り……?」

 

「えぇ、そうよ。どうしたの?」

 

ナオキは目を大きく開いて絵里を見つめた。絵里はそんなナオキの顔を不思議そうに見つめ続けた。

 

「っ……絵里!!」

 

「ナ、ナオキ!?」

 

絵里は急に抱きついて来たナオキに驚いた。だが自分を抱きしめる力の強さと震えた声で自分の名前を呼んでいるナオキを見て、とても辛い悪夢を見たのだろうと察してナオキの頭を優しく撫でた。

 

「……………………れ」

 

「えぇ、わかったわよ」

 

そんなナオキがかすれた声で言った一言を絵里はよく聞き取れなかったが絵里は優しく言葉をかけて、ナオキが寝付くまで頭を撫で続けた。

 

 

 

 

第145話「熱い愛で君を想う」

 

 

 

 

 

「じゃあ行ってきます」

「行ってきま〜す!」

「行ってらっしゃい」

 

朝、ナオキと亜里沙は練習があるため学校に向かった。

 

8月ともなるとクーラーなしでは過ごせない日々が続いており、絵里は薄いシャツとショートパンツ姿で2人を見送った後にソファーに座って、ソーダ味の四角いものが棒に刺さっているアイスクリームを食べていた。

 

「ん……」

 

絵里はそのアイスクリームを咥えながらふとスマホのホーム画面のある画像を見つめた。

その画像は全国のスクールアイドルと共に歌い踊った『スクールアイドルフェスティバル』の終わりに、絵里がナオキの頰にキスをしたときの写真であった。ナオキは頰を赤く染めて不意を突かれたように驚いた表情をしていた。

絵里はその画像から視線を外して、自分の左手の薬指にはめている"誓いの石"が付いている婚約指輪に向けた。これはナオキが卒業式の日にプロポーズしてくれたときにはめてくれたものだ。

 

そして絵里は不安そうな表情を浮かべて一点を見つめて、昨夜希から聞いたことを思い出していた。

 

 

それは昨夜の出来事であった。

絵里は応援で疲れたであろうナオキが隣で寝付いたあと、ナオキを起こさないようにベッドを抜け出して部屋を出てリビングに向かった。

そして絵里はメッセージアプリで希に電話をしてもいいか確認してから電話をかけた。

 

 

『えりちどうしたん?こんな夜遅くに』

 

「ごめんなさい希。ちょっと聞きたいことがあって……」

 

『聞きたいこと?』

 

「その……ナオキのことなんだけど……」

 

『ナオキくんの?』

 

希はナオキが料理サプライズをしたときみたいに、また不安になったのかと思って話すように促した。

 

「希は……ナオキが他の人から告白されていることって知ってるの?」

 

『えっ……!?』

 

絵里は希が音ノ木坂学院在学中によく女子から相談を受けていて、さらにタロットカードを使った占いを得意としているのもあるためなにか知っているのではないかと思って聞くと、希は少々驚いたような声をあげた。

絵里が返答を待つ中、希はこのことを言おうか否か迷っていた。希はこのことはすでにナオキから絵里に話されていることだと思っていたのだ。しかし実際は違った。ナオキは絵里に話していなかったのだ。自分がナオキに告白したこと。そして、他のμ'sのみんなも「叶わなくてもこの想いだけは伝えておきたい」という気持ちで告白したということを。

 

「希……黙ってるってことは知ってるのね?」

 

『………そうや』

 

希は電話越しに伝わる絵里からの威圧に押し負けたように口を開いた。そしてこの際だと希は言葉を繋げた。

 

『多分ナオキくんは言ってないやろうから言うけどな?ウチもナオキくんに告白したんや』

 

「希……も?」

 

『うん。あと穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん、真姫ちゃん、花陽ちゃん、凛ちゃん、そしてにこっちもや』

 

「み、みんなが……!?」

 

絵里はまさか自分以外のμ'sのメンバー全員が告白したとは思いもしなかったので、その分驚きは大きなものだった。

 

『ウチから話しとくべきやったね。ごめん、えりち……』

 

「ううん、希が謝ることじゃないわ。希は……みんなはただナオキに気持ちを伝えただけだもの」

 

『えりち、ありがとう。でもナオキくんはきっと……!』

 

「それじゃあね、希。ありがとう」

 

絵里は希の言葉を聞かずに通話終了のボタンを押した。

 

 

希は絵里に言葉を伝えきれなかったことに不安を覚えた表情で、通話が終了したことで画面が切り替わったスマホを見つめながら呟いた。

その画面には卒業式の日に希が絵里とにこと一緒に撮った写真が壁紙にしてあった。

 

 

「きっとナオキくんは、えりちのことを想って……!」

 

 

 

そして現在……

 

絵里はナオキが告白されてたことを知ったが、そのことに関しては別に気にしてはいない。気になっているのは『何故ナオキはこのことを自分に話さなかったのか』ということである。

 

もしかしたらナオキは誰かの告白をOKしているかもしれない。

 

もしかしたらナオキは誰かの告白を受けて自分とどちらを取るか迷っているかもしれない。

 

 

もしかしたら、もしかしたら………

 

 

もう誰かと()()()()()()のかもしれない。

 

まさかそんな昼ドラみたいなドロドロなことが起こっているなんて信じたくはないが、もしかしたらそんなことが起こっているかもしれない。

 

 

「可能性があるとしたら……海未?」

 

 

絵里は何故かナオキがOKしそうな相手に海未を選んで、勝手に2人のくっついた妄想を膨らませた。

 

 

 

『い、いけませんっ、こんなことっ……!』

 

『なんだよ、誘ってきたのは海未じゃないか』

 

『で、ですがっ、あっ……!』

 

『本当に、綺麗な体してるなぁ……絵里にはない魅力を感じるよ……!』

 

『もう、私としてるときに、絵里の名前は禁止です……ちゅっ……』

 

 

 

 

「なんてことが……!?」

 

絵里は咥えていた棒を床に落とし、そして頭を両手で抱えながら両膝をついて震えていた。

絵里の不安は次第に大きくなっていき、絵里の心を強く、強く締め付けていった。

 

 

「ナオキ……どうして……!」

 

そう小さな声で言った絵里の目から一粒の涙が零れ落ちた。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「よし、そこまで!」

 

ナオキがそう言うと、踊りきって疲れたShooting Starsのメンバーは「やっと練習が終わった」とその場に座り込んだ。

今日も気温は高く、夏なんだということを感じさせる日であった。ナオキは疲れ切っているみんなにドリンクとタオルを配って、自分もしっかりと水分補給をした。水分補給は大事だよ!!

 

ナオキがドリンクを飲んでいると真っ黒だった自分のスマホの画面が点灯したことに気づきスマホに手をのばし、出ていた通知からメッセージアプリを起動した。

 

「希からか……」

 

ナオキは希からのメッセージに目を通すと右眉をピクッと動かせて表情を硬くした。

 

「お義兄ちゃんどうしたの?」

「すまん亜里沙、ちょっと先に帰るわ」

「う、うん……」

「みんなすまんな。また明日!」

 

ナオキはそう言うと部室の鍵を取り出して、屋上に持ってきていた荷物をまとめて部室に残りの荷物を取りに向かった。それを取ると部室に戻ってきた海未にその場をお願いして急いで帰っていった。

 

「(どういうことかわからないけど、早く帰らなきゃ……!)」

 

ナオキは帰り道を走りながら希から届いたメッセージの内容を思い返していた。

 

 

『ナオキくん、えりちのために早く帰ってあげて。えりち、悲しんでたよ。だから早く帰ってあげて』

 

 

絵里は何故悲しんでいるのかナオキは分からなかったが、何かあったことには変わりはない。だからナオキは急いで帰る。

途中で信号が赤に変わり、ナオキは信号が早く青に変わるのを祈りながらその場で駆け足をしていた。こうしている間にも絵里が悲しんでいると考えると胸が苦しくなり、1秒でも早く帰りたいと思っていた。だが信号は無情にもなかなか変わらない。

 

「……よし!」

 

そしてやっと青に変わると夏休みだからか多くの人が行き交っていたが、ナオキはそれらを心の中で謝りながらもその人と人との間を通って走った。

 

ついに自分が住んでいるマンションに辿り着くと、ラストスパートだと絵里達と暮らしている部屋まで階段で向かった。

 

それから部屋の前に着くと息を整えてドアを開けた。

 

「ただいま〜……」

 

ナオキは少しひかえめの音量でそう言ったが絵里は出てこない。いつもならばドアの開く音を聞いて出てくるはずなので、ナオキは首を傾げた。

 

「絵里〜……あれ?」

 

靴を脱いで、今度はリビングのドアを開けて絵里の名前を呼ぶがそこに絵里の姿はなかった。

 

「となると……部屋かな?」

 

ナオキはリビングのドアを閉めてから自分と絵里の部屋に足を進めた。

そして部屋のドアを開けると絵里がベッドの上で窓の方を向きながら三角座りをしていた。ドアが開いた音に反応した絵里は下げていた顔を少し上げた。

 

「絵里、ただいま」

「……おかえりなさい」

 

絵里は顔が見えない程度にナオキの方を向いて言葉を返した。

 

 

「絵里っ……!?」

 

 

ナオキは絵里が少しだけ振り向いたその一瞬で、絵里の目の下の方が少し光ったのが見えて部屋に足を踏み入れた。

 

 

「ねぇ、ナオキ……」

 

ナオキが近づこうとすると絵里は小さく低い声でそう言った。

 

ナオキはその声を聞いて絵里が怒っていることを悟って足を止めた。

 

ナオキが足を止めると絵里は指で目を拭ってベッドから立ち上がってナオキを怒った顔で見上げた。

 

「ど、どうした……?」

 

ナオキは声を若干震わせながら口元をピクピクと動かせた苦笑いで絵里を見つめていた。

 

「ナオキ、私に隠してることとかない?」

 

絵里のその目は決して優しいものではなく、まさに絵里の生徒会長時代、つまりはμ'sに加入する前の絵里を思わせるものであった。

 

ナオキにはそんな絵里の言葉に返す言葉も持っていなかった。

 

何故なら()()だからである。

 

ナオキは絵里にある隠し事をしていた。故に言えなかった。そうしたら()()()()()()()()()()()()()()()わからなくなってしまうからである。

 

「……どうなの?」

 

絵里はナオキが口を開こうとはしないのでさらに威圧をかけた。

 

ナオキは決して口は開かまいと唇を力一杯閉じて堪えていた。

 

だがその行為は逆に自分が隠し事をしていると肯定しているようなものであった。そして絵里はキリがないと見たのかついに話の展開を進めた。

 

「………希から聞いたわ」

 

「っ……!」

 

 

ナオキはマズイと思って下を向いたまま目を見開いた。床に流れた汗が滴っていくのが目に見えていた。

 

 

「なんで黙ってたのよ。みんなに告白されたこと……」

 

 

「そ、それは……」

 

 

ナオキは言い辛そうに目線をさらに横へと逸らした。

 

 

「ナオキの………ナオキのバカっ!」

 

 

「………………は?」

 

 

そんなナオキを見た絵里はついに声を荒げた。

ナオキはその言葉に驚いた表情を浮かべて絵里の顔を見つめた。

 

 

「ナオキは、私と一緒じゃ嫌なの?他の人の方がいいの!?」

 

 

絵里は今にも泣きそうな声でそう言うと、今度はナオキが焦ったように口を開いた。

 

 

「そ、そんなわけないだろ!?なに言ってるんだよ。おれは絵里と一緒にいたい!これからもずっと……!」

 

 

「だったらなんで言ってくれなかったのよ!!」

 

 

「絵里……」

 

 

「ずっと、ナオキが隠し事してるのかなって心配だった。しかもその内容がみんなから告白されたことだなんて、そんなの不安になるに決まってるでしょ!ナオキの分からず屋!私の気持ちぐらい考えてよ!!」

 

 

まるで溜まったものを吐き出したような絵里の言葉を聞いていたナオキはなにかが頭の中で切れる感覚を感じた。するとナオキの体は小刻みに震え、歯を食いしばった状態で口元をピクピクと動かし、なにかを抑えようとはしていたが限界がきたらしく珍しく怒鳴り声をあげた。

 

 

「おれが絵里の気持ちを考えてない?………バカ言ってんじゃねーよ!おれは絵里が傷つくと思ってこのことを黙ってたんだよ!絵里の気持ちを考えないわけないだろ!?おれは……おれは、絵里のために……!!」

 

 

「だから私のためになってないのよ!私は告白されたことぐらい言って欲しかったのよ!あのときの料理のサプライズは嬉しかったわ。でもこんなサプライズなんて嬉しくない!確かに言わない方がいいことだってあるわ。でもこんなこと隠されてたらなにかまずいことがあるんじゃないかって不安になるはずでしょ!?」

 

「だからおれは絵里にそう思って欲しくなくて……!」

 

「だったら言えばよかったじゃない!言ってもし私が落ち込んだりしたら……慰めたらおしまいな話じゃない!ナオキが私を一番愛してるって証明してくれれば済む話じゃない!!」

 

「そ、それは……」

 

「もう……もうナオキなんて知らない!!」

 

「っ……絵里!?」

 

 

そう言い残して部屋の外へ去ろうとする絵里の腕をナオキは慌てたように掴んだ。

 

 

「………放して」

 

 

絵里は小さいがはっきりとした声でそう言うと掴んでいたナオキの手を振り払った。

ナオキはその勢いで床に尻餅をついてしまい、驚いた表情で絵里を見つめた。絵里はそのナオキを少しの間だけ見つめ、部屋の外へと走っていった。

その直後ナオキの顏にはなにか冷たいものが当たり、しばらくしてから玄関のドアが開いて閉まる音がした。

 

 

「絵里………」

 

 

 

 

 

〜〜〜ラブライブ!〜〜〜

 

 

 

 

「え、り………」

 

ナオキは絵里の名を呟いて力が抜けたように顔を下げて視線を床に向けた。

 

心にあるのは危機感、そして罪悪感である。

 

このままでは"あの夢"みたいに絵里と離れることになってしまうかもしれない。そんなのは嫌だ。追いかけなきゃ。だが、そんな行動を起こそうとしているナオキを押さえ込むように来るものが罪悪感である。

 

 

絵里は泣いていた。自分が泣かせてしまった。

 

 

その事実に体が言うことを聞かない。

 

 

「くっ……(動け、動けよ!追いかけなきゃ……追いかけなきゃ、いけないのに……!)」

 

 

顔に当たったのは絵里の流した涙。悲しみの涙。絵里を泣かせてしまったというその罪悪感がナオキを包み込んでいた。

 

 

「お義兄ちゃん……?」

 

「あ、亜里沙……」

 

 

ナオキは開いたままのドアからこちらを見る亜里沙に視線を移した。

だが亜里沙はそんな様子のナオキを心配していたのではなく、逆にナオキを(いさ)めるような視線を送っていた。

 

「お義兄ちゃん、お姉ちゃん走ってどこか行っちゃったけどどうしたの?」

 

亜里沙は帰って来るとき、マンションの出口から絵里が走って出て行くところを目撃していたのだ。

 

 

「お姉ちゃん、泣いてたよね?」

 

「うっ……」

 

 

そして亜里沙はそんな絵里の目から涙が流れていたのを見逃さなかった。ナオキはそれを指摘されて斜め下を向いて体の力を強めた。

 

 

「……追いかけないの?」

 

「それは……」

 

体が動かないんだ……なんて言えない。絵里を傷つけたという罪悪感、絵里と離れることになるかもしれないという危機感、恐怖感がナオキ自身を縛り付けている。

だが亜里沙はそんなナオキを許すわけはなかった。

 

 

亜里沙は怒った様子を見せながらナオキに近づき、何事かと自分を見上げたナオキの頰を力一杯にひっぱたいた。ナオキはいきなりのことで目を丸くして亜里沙に叩かれた頰を触った。

 

 

「あ、りさ……?」

 

 

「お義兄ちゃん、亜里沙はなんで追いかけないのって聞いてるの。喧嘩したのかもしれないけど、喧嘩するお義兄ちゃんとお姉ちゃんなんて私見たくない!私は仲の良いお義兄ちゃん達が好きなのッ!!」

 

ナオキはそう叫ぶ亜里沙の顔を驚いた表情で見つめた。そんな亜里沙からはこれまでの大人しく優しい子供のような亜里沙は想像できなかった。

 

「だから……だからっ……!」

 

亜里沙は先程までの怒った表情のまま涙を浮かべ、まさに今にも声をあげて泣きそうな感じだった。

 

また女の子を泣かせるのか?そんなこともうしたくない。

それに、追いかけなければいけない。大切な人とまたこの日々を過ごすために……

 

3人でまた笑顔で食卓を囲むために。

 

ナオキはそれを固く決意すると先程まで動かなかった体を起こして泣きかけている亜里沙の頭を優しく撫でた。

亜里沙は頭を撫でられた感触を感じてゆっくりと顔を上げた。

 

 

「亜里沙、ありがとう。そうだよな、モタモタしてたら絵里にもっと怒られそうだ」

 

「お義兄ちゃん……!」

 

「おれ、絵里を迎えに行って来る。ご飯はこれで好きなもの買っておいで」

 

「うん、わかった!待ってるからね!お姉ちゃんが一緒じゃなきゃ入ったらダメだからね!」

 

「あぁ、絶対に一緒に戻って来るよ」

 

ナオキはそう言って亜里沙にお金を渡してから出口に向かって走り出した。

亜里沙はそんなナオキを信じて見送り、一旦荷物を置くために自分の部屋に向かった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜♡〜〜〜〜〜

 

 

時間は過ぎていき、先程まではまだ明るかったがどんどんと暗闇がひろがっていっていた。

 

「えりち!」

 

ここは希の住んでいるマンションの近くにある公園。希は自分の部屋から飛び出してきた絵里から連絡を受けてここへ来たのだ。

 

「の、希ぃ……」

 

灯りが照らされているベンチでぽつりと座っていた絵里は希が近づいて来ると弱々しい声をあげて泣きついた。

 

「え、えりち……?」

 

希はそんな絵里に何があったのかすぐにはわからなかったが、とりあえず絵里を落ち着けるために包み込むように優しく抱きしめた。

 

 

 

 

「落ち着いた?」

 

「………うん」

 

絵里は頷くと希から少し離れて先程まで座っていたベンチに腰掛けた。希はそんな絵里の隣のスペースに座って俯く絵里を心配している表情で見つめた。

 

「それでどうしたん?話やったら聞くで?」

「…………実は、ナオキと喧嘩しちゃったの」

 

「えっ……?」

 

希は驚いた表情を浮かべた。何故、ナオキと絵里は喧嘩してしまったのか。ナオキと絵里が喧嘩したことなんて今までなかった。あったとしてもそれは仲睦まじい感じの喧嘩であった。 だがこの絵里の様子を見る限りはそんな生ぬるい喧嘩ではないのだろう。

さらに希は罪悪感すらも感じていた。おそらく喧嘩したのは()()()()だ。自分が絵里に教えなければこんなことにはならなかったのではないか?そんな不安が希の中を駆け回る。

 

「私……わかってたのに」

 

「えっ……?」

 

希は絵里が何をわかっていたのかわからず、不意にもだらしない声を漏らしてしまった。

絵里は希が声を漏らしても言葉を止めずにそのまま口を動かすことを続けた。

 

 

「わかってたのよ………()()()()()()()()()()()()()()()()ことなんて。希からあのことを聞いた時にわかったことなのに……!!」

 

「えりち……」

 

「なのに私、ナオキに酷いこと言っちゃった……やっぱりナオキが隠していることが不安で、それで……!私、最低よね。こんな私、ナオキが許してくれるはずないわ。嫌いになられて当然よね……」

 

絵里は自分のナオキにしたことを後悔しているのか今にも声をあげて泣きそうな勢いで言った。

希は今まで絵里がこのような弱音を吐いたことはあまり見たことがなかった。ナオキと2人っきりのときはどうかはわからないが、ここまで弱気な絵里は知らなかった。だがこんなときにこそ親友である自分が支えになってあげねばと希は決心した。

希は今にも泣きそうな絵里とは違い落ち着いた感じで言葉を紡いだ。

 

 

「ナオキくんはえりちのこと嫌いにならへんと思うで?だってナオキくん、本気で、心の底からえりちのこと愛してる。それにウチやみんなから告白されたときに、ナオキくんは毎回断る理由はたったひとつやったんやで」

 

「ふぇっ……?」

 

希が絵里に語ったことは、ナオキにとっては告白を断るには十分すぎるものなのである。絵里はそれがわかっていないのか弱々しい声を出して希を見つめた。

 

 

『私……ナオキくんのことが……好き……1人の男の子として……好き』

 

卒業式の日に花壇の前で告白した希。

 

 

『わ……私、ナオキのことが異性として好き』

 

6月、μ'sの最後のライブを前に神田明神で告白したにこ。

 

 

『ナ……ナオキくんのことが好きでした!!』

 

ナオキの初めての料理を教え、食べさせてもらった後に自宅で告白したことり。

 

 

『私、好きだよ……ナオキくんのこと』

 

夏合宿の朝、μ'sが9人の時にラブライブ!優勝を誓ったあの海岸から朝日を見つめて告白した穂乃果。

 

 

『私ね、ずっと前からナオキのことが好きだったの』

 

夏合宿の夜、みんなで花火をしているときにナオキを隣に呼び出して告白した真姫。

 

 

『凛の中ではね、ナオキくんは……特別な存在……なんだよ?』

 

ナオキとショッピングモールで買い出しをしにいったとき、夕日によって照らされていた屋上で告白した凛。

 

 

『私はあなたのことが好きです』

 

言葉で伝える勇気が出なかったので、手紙を書いて告白した花陽。

 

 

『ナオキのことが……好きなんです!』

 

日本道場最強決定戦で優勝し、前々から優勝したら伝えたいこととして保留していたことを控え室で伝えて告白した海未。

 

 

それらの告白を全て断ったナオキのその理由は()()()()()

 

それ以外の理由なんて存在するのだろうか?いやない。

 

絵里の脳内には告白され付き合うことになったナオキとの想い出がまるでスライドショーのように流れていった。

 

 

「それはな……

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()……やで」

 

 

「っ……!」

 

 

 

 

 

『す……好きだ!!おれと……おれと……付き合ってください……』

 

 

 

嬉しかった。

 

帰って来たナオキと2人で下校しているときに突然告白されたあのとき、絵里は心の底から嬉しかった。

 

それは自分も同じだったから。

 

そのときの感情、光景が脳内で想い出されて、何かが絵里の中から込み上げて来た。

 

 

「それに……()()が、何よりの証拠なんじゃない?」

 

「あっ……」

 

希が視線を下げてそう言うと、絵里は希の視線の先……左手の薬指にはめているもの、つまりは"誓いの石"が使われている()()()()()()の婚約指輪に視線を移した。

 

 

 

『おれは絵里のことが好きだ!誰よりも……今も……これからも……どんなときもずっと……絵里のそばにいたい!!絵里にそばにいてほしい!!

この石はな……占いの道具なんだが、この石は昔からある誓いをするときに使われたらしいんだ。誓いの石にもいろんな種類があってこの誓いの石は……「永遠の愛を君に誓う」、永遠の愛を誓う石なんだ。

だからおれは誓う!絵里……おれは絵里を永遠に愛する!!どんなときもずっと……だからもう一度言うよ……絵里、おれと結婚してください……』

 

 

 

ナオキの心の中にはいつも絢瀬絵里という最愛の人がいた。

つまりナオキはあのときの誓いをずっと守り続けている。だから他の人の告白を受けても断り、そして絵里のことを想ってそのことを黙り続けていた。

だが後にそのことを知って、ついカッとなって酷いことを言ってナオキの前から逃げ出した。

 

あのときの言われた誓いは、絵里の心の中にもしっかりと残っている。

絵里はそのときのことを、自分がしてしまったことを思い出し、胸が締め付けられるように痛くなった。

絵里は服の胸のあたりをギュッと掴むと、太ももに何粒かの涙が落ちていった。

 

 

「でも、今更ナオキにあわせる顔なんてないわ……」

 

 

絵里が落ち込んでしまうのはわからないでもない。

相手の気持ちを分かろうともせず、自分の思い込みで思ったことをぶつけて、傷つけた。自分がもしその立場であれば、その相手が自分の好きな人であれば、きっと絵里と同じようになっていたであろう。

すると希のスマホが着信を受信して振動した。希はそのバイブレーションになにかを確信して、スマホの画面を絵里に見せながら言葉を続ける。

 

 

「本当にそうやろか?ナオキくんがほんまにえりちのこと好きやったら……」

 

「えっ……?」

 

 

絵里はその希の震えるスマホの画面を見て驚きの表情を浮かべた。

 

なぜなら、その画面には写真とともにその着信の主である人の名前が表示されていたからだ。

 

その人物こそ………

 

 

 

「ナオキ……!」

 

 

恋人の香川ナオキであった。

 

さらに希はまるで話す内容がわかっているかのように電話に出た。

 

 

『っ……もしもし!?』

 

「ど、どうしたん!?そんな慌てた声して……」

 

電話が繋がるなりナオキは慌てた様子で声を発した。希は理由はわかっていたがなにも知らないのを装ってナオキに問うた。

 

その内容は希の予想通りであった。

 

『絵里を、絵里を知らないかっ!?』

 

「えりち……?どうして?」

 

『その……絵里を怒らせたみたいで出て行っちゃったんだ。だから今思い当たるところを走りまわってて……どこにいるか知らないか!?』

 

「あのこと……なんやね」

 

『……あぁ、そうだ。希、教えたんだろ?』

 

「怒ってる?」

 

『いいや、全然。第一悪いのはおれの方だし。おれがしっかり絵里の気持ちをわかっていればこんなことには……絵里が泣くことはなかったのに……』

 

「それ、ちゃんとえりちに言うんやで?」

 

『あぁ……それで、なにか知ってることは?』

 

「そうやなぁ……あっ、そういえば洗濯しているときにえりちが公園の方に走っていくのを見たなぁ〜」

 

「ほんとか!?」

 

「うん。ウチがあの親友を見間違えるはずないからな。今どこなん?」

 

『今は音ノ木の校門前だ。とりあえずそこに向かってみるよ。希の住んでるマンションの近くだよな?』

 

「そうやで。早く探してあげて」

 

『わかってる。ありがとうな、それじゃ!』

 

ナオキは希の返答を待たずに急ぐように電話を切った。

これまでのナオキと希の会話は、希のスマホがスピーカーモードにされていたため絵里にも聞こえていた。その間絵里は声を出すまいと唇を噛み締めて必死に堪えていた。

 

「ナオキくんもうすぐ来るよ?」

 

「でも……」

 

「さっきのナオキくんの声聞いてたでしょ?今頃ナオキくん、ここに向かって全力疾走してると思うで?」

 

希の言う通り、ナオキは音ノ木坂学院から公園に向かって全力疾走をしていた。

絵里はまだ不安そうな様子で、どうしようかと迷っている仕草を見せた。だが希はそんな絵里を見ると優しげな表情を浮かべて絵里に背を向けた。

 

「の、希……!?」

 

「ウチがいたらお邪魔そうやからね。ちゃんと仲直りするんやで〜」

 

「ちょ、ちょっと……!?」

 

希が絵里に背を向けて去って行くと、絵里はそんな希を止めるように声を出して腕を伸ばした。だが希は止まることなく、そのまま表通り側とは別の出入り口から自らの部屋へと向かった。

 

そして絵里はその公園に1人になった。

 

灯りが照らすその下で絵里は不安そうな表情を浮かべていた。まさに、暗い公園で絵里の存在を目立たせるような役割を灯りは果たしていた。

 

 

 

 

そのときだった。

 

誰かが地面を蹴る音が大きく周りに鳴り響き、その音は次第に大きくなっていった。

 

そしてその音の主は息を切らしながら表通り側の公園の入り口のところで止まったので、絵里はその人物の方を見た。

 

絵里は遠目であったがその人物の正体をよく知っていた。

 

その人物は下げていた顔を上げて、灯りに照らされている絵里を見て硬直した。

 

その人物が誰かはわかりきっていた。この状況でここに来るのは1人しかいない……

 

 

「ナオキ……!」

 

 

「え、り……?」

 

 

2人は目の前にいる恋人の名前をお互いに聞こえないように呟いた。

絵里はなんて声をかけようかと周りに視線を泳がしながら迷っていた。

 

 

その状況で最初に動いたのはナオキであった。

 

「っ……絵里ッ!」

 

ナオキはそう言うとスタートダッシュを決めて絵里のいるところまでダッシュをした。

 

絵里は怒られると思ってグッと目を瞑った。怒られてもいい、自分はそれをほどのことをしたのだからと覚悟を決めていた。

 

 

だが、絵里の予想を裏切るような行動をナオキは取った。

 

 

 

もちろん、いい意味で。

 

 

 

「絵里っ……!」

 

「えっ……!?」

 

今日の絵里は驚いてばかりである。

今度は走って向かってきたナオキにギュッと抱きしめられて驚いた。

 

ナオキのその抱擁は強かったが、とても温かく優しいものであった。

 

「絵里……ごめん!おれ、絵里の気持ち全然わかってなかった!」

 

「ナオキ……!」

 

「おれはあのことを絵里に言ったら絵里が傷つくと思ったんだ。だから隠してた。でも本当は違った。絵里が教えて欲しかったって怒ったときに気付いたんだ………おれはまだ絵里の気持ちをちゃんと理解できてなかった。全然わかってなかった。だから絵里を傷つけて、嫌な思いをさせて………」

 

 

一旦言葉を止めたナオキの脳裏には絵里が出て行くときに涙を流した光景が思い出され、さらに今でも少し絵里の目に残っている水滴を悲しげに横目で見つめた。

 

 

「………泣かせてっ、おれは最低だ!ごめん、絵里……!」

 

そのとき、ナオキの絵里を抱きしめる力が少し強まった。

 

絵里はその力の強さに辛さは感じなかった。逆に感じたのは、()()()()()()である。ナオキは自分のことを本当に、一筋に愛してくれているという気持ちがこの抱擁によって伝わってきたのだ。

他の女から告白を受けたとしても、好意を向けられていたとしても、何があってもこのナオキは絶対に自分を裏切ったりはしない。自分へ向けるこのとても熱い愛を冷ますことはないと、絵里は確信させられた。

 

 

 

………その気持ちは、絵里も同じである。

 

 

 

絵里の浮かべていた涙も目の揺れと同時に頰をたどって流れ、ナオキの服に染み込んだ。

 

「あ、謝らないといけないのは私の方よ……ナオキは私のために黙ってくれていたのに、私気付いてたのに、ナオキに酷いこと言っちゃったもの……!ごめん……ごめんなさい……!!」

 

絵里は顔をナオキの肩に埋めて涙を流したが、声をあげることは抑えてはいたがしゃっくりのような声は漏れていた。

 

ナオキは泣くまいと涙を堪えてはいたが、絵里が見つかったという安心感から涙を流せずにはいられなくなってしまい、一筋の涙を目から流した。

 

 

そしてナオキは瞑っていた目を開け、絵里の両肩を掴んで子供のように手で涙を拭き取りながら泣いている顔を見つめた。しゃっくりみたいな声を漏らしながら涙を拭き取ろうとはしていたが、それは止まらず溢れたように流れていた。

 

「絵里……」

 

「うっ、ひぐっ……なぁに……?」

 

ナオキが絵里の名を呼ぶと、絵里はある程度涙を拭き取った顔を少しあげてナオキの方を見た。

 

 

するとナオキはそんな絵里の顔を見るなり無理やり自分の唇を絵里の唇に重ねた。

 

「んっ、んんんっ、んっ……!」

 

絵里は急なことで驚いて塞がれた口で声をあげながら、苦しくてナオキの唇を離そうとした。だが、ナオキはそれに反抗するようにさらに力を強めて絵里を離そうとはせずに口づけを続けた。絵里はそれに抵抗し続けていたが、離れられないとわかりナオキからのキスを受け入れて気持ち良さような表情をした。ちなみに、舌入れていない。

 

「んっ、んはぁっ……はぁ、はぁ、はぁ……もう、急にされたらっ……!」

 

ナオキは絵里の唇から自分の唇を離すと、キスをする前と同じように絵里を抱きしめた。

絵里は息を荒くしていて、ナオキにもたれかかるように抱きしめられていた。

 

「絵里、こんなことで許してくれとは言わない。でもさ、おれ本当に絵里のことを誰よりも一番愛してるんだ。この愛に、あのときの誓いに嘘なんてない!おれは絵里のことが、どんなものよりも……どんな人よりも大好きだ!」

 

「……わかってる。ナオキの熱い想い、しっかりと伝わったわ。ナオキはずっと私のことを考えてくれていたのね。私、本当に嬉しいわ……」

 

すると絵里は少し力が抜けたナオキの腕をほどいて少し距離を取った。

 

「あっ、絵里……」

 

ナオキは絵里をまだ抱きしめていたかったのか、名残惜しそうな声を弱々と発した。絵里はそんなナオキを見て可愛いなと思うと同時にクスクスと控えめに笑った。

 

「だからね、許してあげる」

 

「本当か!?」

 

「えぇ、私も悪かったところもあるもの。そしてなにより、私もナオキのこと……大好きだから」

 

絵里はナオキに向かって眩しいぐらいの笑顔を浮かべた。その笑顔の瞳にはもう水滴などはなかった。

 

ナオキはそんな絵里の美しさに見惚れたことでさらに絵里のことを好きになった。

 

「じゃあ、帰ろうか……おれ達の家に」

 

「えぇ!」

 

ナオキが右手を差し伸べると、絵里は薬指に指輪がつけられている左手を出してその手の上に重ねた。

さらにナオキは絵里を引き寄せて指を絡めて歩き始めた。絵里は初めはびっくりしたが幸せそうな表情に変えてナオキの肩にもたれて歩いた。

 

月が輝く綺麗な夏の夜空はそんな2人を祝福するようであった。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

それからおれ達はいつも通り話して、笑い合いながら帰っていた。

あと亜里沙のことを話したら絵里に思いっきり腹を肘で突かれた。痛い。

 

そして安心したからかおれのお腹が虫が鳴くみたいに音を立てると、おれと絵里は思わず声を出して笑ってしまった。

 

「もう、ナオキったら」

「ははは、安心したから腹減ってきた」

「ふふっ、それじゃあ帰ったらご飯にしましょうか。簡単なものになっちゃうけれど」

「簡単なものでも絵里の作るものならなんでもいいよ」

「じゃあサンドウィッチで」

「それは勘弁してください」

 

おれはサンドウィッチが苦手だ。絵里はそれを承知の上でそう言ったからか、おれが苦い表情でお願いすると可笑しそうに笑っていた。あぁ……好き。

 

「冗談よ。炒飯でいい?」

「十分だ。大盛りでよろしく」

「ふふっ、わかったわよ」

 

絵里はそう言うとおれの顔から視線を外して前を向いた。

 

 

これからも喧嘩することがあるかもしれない。それは仕方のないことだ。

でも、喧嘩をしてもおれ達はこうやって仲良く過ごしていける気がする。いや、そう思う確信がある。

 

何故ならおれはずっとこれからも、心から絵里のことを愛し続けるからだ。それは絵里も同じ気持ちだってこの機会に気づくことができたから。

 

「私の顔になにか付いてるの?」

「へっ……!?」

「だって、ナオキがずっと私の顔を見つめてたから……」

「あ、あぁ……」

 

絵里は不思議そうにおれが見つめていた理由を問いただして来た。ここは考え事をしてただけとは言えないな。

 

「で、どうしたの?」

「えっと………」

 

やばい、いい答えが思いつかない……!これはピンチなのでは?こうなったら誤魔化さねば。とりあえず空を……あぁ、いいこと思いついた。

 

「もう、なにニヤけてるのよ!」

 

おっと、つい顔がニヤけてしまった。でも誤魔化せる範囲内かなこれは。

 

「いや……()()()()()()って思ってさ」

 

おれがそう言うと絵里は一瞬固まって、次第に顔を赤くしていった。まぁ、()()()()()()()はわかってるはずだから当然だよな。おれも言った側だけど恥ずかしい。

これはおれと絵里が付き合う前に意味もわからずにただ単に月が綺麗だったからおれが発した言葉で、絵里はそのときわかってたみたいだけど結構恥ずかしいこと言ったんだよなぁ〜。

 

 

意味は……私はあなたを愛しています。つまりは"I love you"だ。

 

 

「ふふっ……私もよ、ナオキ」

 

絵里は頰を赤く染めながらその顔をおれの腕にもたれかからせてきた。それと同時に絵里の髪からいい匂いがおれの鼻を刺激した。

 

 

絵里……おれはずっと君を愛すると誓うよ。

 

これから先なにがあろうとも、なにが起ころうとも愛し続ける。

 

 

だから………

 

 

 

 

だから………

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()………

 

 

 

 

 

次回に続く……

 

 





〜妄想ラジオ〜

絵「え〜みなさんに伝えなきゃいけないことがあります。私……結婚します」
希「え〜こちら秋葉原駅前です。総選挙で突如結婚を発表した人気アイドルの絢瀬絵里さん。その一報を聞いた街の人にコメントを伺いたいと思います」

海・こ「「えぇ〜!?」」
こ「まさかあのエリチカが結婚だなんて」
海「びっくりですね」

に「アイドルの恋愛はNGでしょ?なんであのエリチカがやっちゃったんですかね?」

真「まぁ、恋愛なんて自由だと思いますよ?」
花「でもでもアイドルが恋愛しちゃうとファンの人たちがかわいそうです」

穂「あ、そうなんだ!おめでとうございます!」
凛「びっくりはしますけど、おめでたいことですよね!」

希「あ、最後にあの方に聞いてみましょう!すみません」
ナ「はい?」
希「人気アイドルの絢瀬絵里の結婚発表についてコメントをお伺いしてるのですが……?」
ナ「えぇ!?エリチカが!?」
希「ファンなんですか?」
ナ「はい、ずっとファンでした!ほら見てください。こうして待ち受けにしてこれを受験の時や今でも心の支えにしていて、頑張ろうって思ってたんです。とてもショックです!でも……」
希「でも?」
ナ「でも、幸せならOKです」



希「ということで茶番も終わりましたのでこれにて本日の妄想ラジオは終了!新しく評価、お気に入りしてくださったみなさん、ありがとうございます!感想などどんどんお待ちしております!それではまた次回、お会いしましょう!」


ナ・絵「「出番取られた〜!?」」

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