ラブライブ!〜1人の男の歩む道〜   作:シベ・リア

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みなさんどうも!
さて、遅くなりましたが今回はUA10万突破記念回となります!
この回の執筆が終わったときにはUAは107537となっておりました!ありがとうございます!
さらに今回は揺さんの挿絵付きです!さらにさらに、リクエストまでしていただきました!リクエスト内容は最初の挿絵の中にあります!
それでは、感謝の気持ちを込めたこの回……是非お読みください!どうぞ!



Another way(UA10万突破記念)「私を想ふ貴方の気持ちの大きさは」

ある秋の日、μ'sのメンバーは練習を終えて下校していた。

「そう言えば、ナオキくんまたあの問題間違ってたよね〜」

「うっ……!」

穂乃果が数学の授業でのことを言うと、ナオキな顔を歪めて目線を逸らした。

「はぁ……しっかりして下さい。これはもう、勉強会をして徹底的に指導するしかありませんね」

海未はそんなナオキに呆れたように言った。

「えぇ〜、めんどくせぇ……」

ナオキはそれを聞いて肩を落とした。

「なにが面倒臭いですかっ!私は、ナオキのことを思って言っているのですよ!」

「うぅ……」

海未が怒鳴って、ナオキがしょぼんとすると、他のみんなは声を出して笑った。

 

1()()()()()()……

 

「……………」

寂しそうで、どこか思いつめていそうな表情をしてナオキ達を見ている、ナオキの彼女でもある絢瀬絵里。そして絵里は楽しそうに笑うナオキから目線を逸らして下を向いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ナオキは何かを感じて、そんな絵里に目を向けた。

「絵里………」

 

 

UA10万突破記念

 

 

「私を想ふ貴方の気持ちの大きさは」

 

 

 

「ハラショー!」

ある日の土曜日、東京駅で絵里はある物を見て目をキラキラとさせてそう言った。

「絵里、写真撮るか?」

「うん!」

ナオキが私物のデジカメを見せて言うと、絵里は元気よく頷いた。

その姿はまさに初めての物を目の前にして興奮している子供のようであった。

「いくぞ〜……はいチーズ」

パシャッとカメラがシャッターをきる音を立てて、この旅初めての写真が撮られた。ちなみに今のは、『この度』と『この旅』をかけていて……

「ふふっ、ありがとう」

「絵里、嬉しそうだな」

ナオキはお礼を言って近づいてくる絵里に言った。

「だって、初めての新幹線よ?そりゃあテンション上がるわよ!」

そう、絵里が今まで嬉しそうにしていたのは初めての新幹線を目の前にしているからだ。

「あぁ、喜んでもらえてなによりだよ。さ、そろそろ乗ろうか」

「えぇ!」

ナオキは絵里が返事すると、乗車券に書いてある号車の車両に乗り込もうと歩き出した。

「……ん、どうした?」

だが、ナオキは止まって振り向いて、歩く様子を見せない絵里に不思議そうに聞いた。

「………………手、繋いで」

絵里が少し頬を膨らませてキャリーバッグを持っていない手を出してそう言うと、ナオキはしばらくそんな絵里をじーっと見つめた。

「………ふっ、わかったよ」

そしてナオキは優しそうな表情を浮かべて絵里の方に歩いて絵里の手を握った。すると絵里は嬉しそうな表情を浮かべて手を握り返して、2人は今度こそ車両に向けて歩き出した。

 

 

 

新幹線内では、指定席に座ったナオキと絵里が雑談をしたり、外の景色を見ながら旅を楽しんでいた。

「ふぅ……落ち着くな〜」

ナオキは椅子にもたれかかって一息ついた。

「ふふっ、これもナオキが『映画村特別ペアチケット』を当てたからね」

「いやぁ〜それほどでも〜」

ナオキは絵里にお礼を言われて自分の後頭部を撫でた。

 

 

それは数日前、2人が商店街を訪れた時のことだった……

 

 

「ねぇナオキ、あそこでくじやってるみたいよ」

「ほう……『新井式回転抽選器を回して景品を当てて日本国内にペア旅行に行こう!』か……」

ナオキは絵里が指をさした方を見て、そこにあったのぼり旗の文字を読んだ。

「新井式回転抽選器……?なにそれ?」

絵里は聞きなれない単語に首を傾げた。

「あぁ、取っ手を持って、ぐるぐる回すと中から玉が出てくるやつだよ」

ナオキは新井式回転抽選器を回す仕草をしながら言った。

「あぁ、あれのことね!よく知ってたわね?」

「だ、だろ〜?(本当は図書委員さんに教えて貰ったなんて言わないでおこう……ちょっとぐらい絵里にいい格好させてくれ……)」

「それじゃあ、ナオキ!お願いね!」

「おっしゃ!」

ナオキは腕を回してやる気満々で向かい、先程お願いされるときに渡された絵里の買い物レシートを見せて、3回引くことになった。絵里はナオキの横から、新井式回転抽選器から出てくる玉を見つめた。

1回目は白……ポケットテッシュが当たった。

2回目は…………白。

残るはあと1回……ナオキは唾を飲み込んでから腹をくくって、新井式回転抽選器を回す。

3回目は………白………ではなく………

 

「「おぉ!」」

2人は出てきた玉の色と景品を見比べる。

「おめでとうございます!赤の3等!『映画村特別ペアチケット』が当たりました!」

「「やった〜!」」

くじ引き場所で待機していた商店街の人のベルの音と共に、ナオキと絵里は飛び跳ねて喜んだ。

 

 

そして、今に至る……

 

 

「それで、映画村って……なに?」

「知らないのかよ……!」

ナオキは絵里が映画村に行くということで喜んでいたのに知らなかったのかと少し笑いながらツッコミをいれた。

「京都ってことは景品に書いてたからわかったけど……他はあまり……」

絵里はそう言ってテヘッと舌を少し出してウィンクをした。

「仕方ない、説明しよう!

映画村とは、京都にある『大人しい足軽』とかの時代劇とかに撮影場所として使われるアトラクションやイベントはもちろん、昔風の建物とかを見るのも楽しめる所なんだ。おれは大阪にいた時に遠足で行ったことあるけど、結構面白いぜ?」

「へ〜。ねぇねぇ、『大人しい足軽』ってどんなの?」

「あれだよ、江戸時代にある足軽が身分とかを隠して奉行となり、悪いやつを成敗する話だ」

「そうなのね。でも時代劇とかに使われるなんて……なんだか楽しみね!」

「あぁ、めいいっぱい楽しもう。

その……()()()()2人っきりの旅行だし////」

ナオキは絵里がいる方とは逆の斜め上を向いて頬を人差し指でかいて、少し照れて言った。

「うん////」

絵里も頬を赤くして頷いた。絵里は今日は初めての新幹線に乗る日だけではなく、初めてのナオキと2人っきりの旅行の日であったようだ。

 

そんなこんなで2人は古都、京都の地に足をつけた。

 

「ん〜!やっと着いた〜!」

ナオキは新幹線から降りて肩を伸ばした。

「そうね〜。さ、早く行きましょう」

「あぁ、そうだな」

ナオキは頷いて、絵里の手を握って歩き始めた。最初はナオキが引っ張る感じであったが、しばらくして絵里が足を早めてナオキの隣まで小走りし、2人は並んで歩いた。

 

2人はそれから電車を乗り換えて映画村近くの駅で下車し、その駅から映画村まで歩いて辿り着いた。

「ここが映画村だ。懐かしいな〜」

「ハラショー!」

ナオキが映画村の入り口を指さすと、絵里は大手門風の入り口に歓喜の声をあげた。

「ま、本当はあっちなんだけど、この券を持ってる人はあの大手門から入るらしい」

「へ〜」

ナオキは大手門の右の方にあった入り口を指さして、もう一度大手門を指さした。

「さ、早く行こうぜ」

「えぇ!」

そうしてナオキと絵里は大手門に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

〜〜♡〜〜

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇナオキ!あれやりたい!」

「わかったから引っ張んなって」

絵里はナオキの服の袖を引っ張って、ある場所を指さした。ナオキは足を進めてその場所に向かう。

2人は大手門で当たった券を見せると、江戸時代風の服装をしたスタッフの人達が「来たか」という表情を浮かべて、2人の服にハート型のバッチを付けた。2人はそれの説明を受けずに荷物を預けさせられて、門をくぐらされて、今に至る。

「あ、いらっしゃいませ!『的あて』をご利用ですか?」

「はい、お願いします!」

江戸時代風の服を着たスタッフの女の人が横から出てきてそう聞くと、絵里は返事をした。

たがその人は答えた絵里の服を見て、フッと笑みを零した。ハート型のバッチを見たのだろうか、スタッフは続けて言った。

「あ、お客様方は"特別なお客様"のようで……お客様は弓の引き方はご存知でしょうか?」

「い、いえ」

スタッフにそう言われて、絵里は首を横に振る。

「そちらの……お客様はご存知でしょうか?」

「はい、うろ覚えですが」

次にナオキが聞かれて、ナオキは少し自信がないように答えた。

「それでしたら、一度お教えしますね」

「は、はい」

そう言ってスタッフはナオキに弓の引き方を丁寧に教えた。

「まずはここの真ん中を持って、弓矢の後ろのところを弦に付けて引っ張って、人差し指を伸ばして、それに弓矢を乗せて……」

「あぁ、思い出しました……ふんっ!」

ナオキが先に吸盤が付いている弓矢を発射して、真ん中に命中した。

ナオキは喜んで絵里の方を見るが、絵里はどこか寂しそうな表情を浮かべていた。

「ん、どうした?」

「べ、別になんでもないわよ。ナオキはやっぱり上手ね」

ナオキが理由を聞こうとすると、絵里は誤魔化すようにナオキを褒めた。それを見たスタッフは、「計画通り」という表情を浮かべた。

「じゃあ、今度は彼女さんに優しく教えてあげて下さい」

「「えっ?」」

スタッフがニコッとしてそう言うと、ナオキと絵里は目を丸くして驚いた。スタッフはナオキに「さぁさぁ」と早く教えるように言った。

「……絵里、失礼」

「ナオキ……!?////」

ナオキが絵里後ろにまわって机の上の弓を取ると、絵里は驚いて顔を赤くした。

「いいから……ほら、弓持って」

「う、うん……////」

絵里はナオキに言われた通りに弓を持つと、ナオキは絵里の弓を持っている手に自分の手を覆い被せた。

「次に弓矢を……」

絵里は頬を赤く染めながらも弓矢を持って弦に付けると、やはりと言うべきか、ナオキはその手に自分の手を覆い被せて弓矢を引いた。絵里は弓矢をナオキと一緒に引っ張ると、人差し指を伸ばして狙いを定めた。

「あ、ちょっと上の方に向けてた方がいいぞ?その方が狙いやすい」

「わ、わかったわ……」

絵里は頷いて狙いを少し上にずらした。そして、2人は息ぴったりに同じタイミングで弓矢から手を離した。その弓矢は見事に真ん中に命中した。

「はははっ、やったな」

「えぇ!」

ナオキが絵里の顔を覗き込んで言うと、絵里はそんなナオキの顔を見て笑顔で頷いた。

「お客様方、仲がよろしいですね」

スタッフがニヤニヤとしてそう言うと、ナオキと絵里は顔を真っ赤にした。

「さ、さぁ、早く全部やっちまおうぜ」

「あっ……」

ナオキが残りの矢を撃とうと離れると、絵里は残念そうな表情を浮かべてナオキを見つめた。

「ん、今度はどうした?」

「う、ううん、なんでもないわ」

絵里は誤魔化すように弓を構えた。そして、絵里の放った弓矢は的を外れてしまった。一方、ナオキの放った弓矢はまた真ん中に命中した。

「むぅ……」

絵里は少し頬を膨らましてナオキを見つめた。

「絵里、だからどうしたんだよ?言ってみな?」

「え、え〜っと……その……ナオキと一緒に撃たないと当たらないな〜って……」

「えっ……?」

絵里がモジモジしてそう言うと、ナオキは頬を赤く染めて驚きの表情を浮かべた。

「だから、また、一緒に……して?」

絵里は少し頬を赤く染めて、上目遣いをしながら首を少し傾げた。ナオキにはこうかはばつぐんだ!

「わかった。おれが撃ち終わるまで待っててくれ」

そう言ってナオキはシュパパパパと、速攻で残っている自分の弓矢を全て真ん中に撃ち込んで弓を机の上に置いて絵里の後ろに立った。

「お待たせ。さ、弓を持って……」

「うん……」

絵里が弓を構えると、ナオキは弓を持っている絵里の手に自分の手を覆い被せた。2人の周りはイチャイチャオーラに包まれていて、スタッフやその光景を見かけた人達が羨ましがるほどであった。そしてその人達はその隣の的……つまりはナオキが撃っていた的を見て驚きの表情を浮かべていた。

絵里がナオキと共に放った弓矢は、全て真ん中に命中した。

「やったな。絵里は上手いな」

「違うわ。ナオキが教えるのが上手いのよ」

「はははっ、そんなことねーよ。絵里が上手いからいけたんだよ」

ナオキはそう言って絵里の頭を左手で撫でた。

「おめでとうございます。まずはこちら、1本だけ外れたお客様の景品でございます」

「あ、かわいい!ありがとうございます」

絵里はスタッフから受け取った景品……小さなクマのぬいぐるみを見つめて、目をキラキラとさせた。

「そして、全て命中させたお客様には……この、エアーガンを差し上げます!」

「エ、エアーガン……?あ、ありがとうございます」

ナオキはその景品を見て苦笑いを浮かべながらもありがたく受け取った。

「あ、よければ景品を持って記念撮影を」

「じゃあ、お願いします」

すると、別のスタッフがカメラを持ってやってきて2人に記念撮影はどうかと言ってきたので、ナオキは承諾して2人は横に並んで景品を掲げて記念撮影をした。

 

 

「ありがとうございました!どうぞ、お楽しみください!」

2人はその場を去って、時代劇などの撮影でよく使われるセットに足を進めた。

「おい、そこのお二人さん。ちょっと待ちな」

しかし、その道中にあるお店のおっさんに声をかけられて2人はその足を止める。

「なんですか?」

「あんたらのそのバッチ……特別なお客様みたいやな。ま、そこに座り」

「「は、はぁ……」」

ナオキと絵里はそのおっさんに言われるがままに、テラス席に座った。

しばらく待っていると、さっきのおっさんがドリンクの入ったグラスを持ってナオキ達の方に向かってきた。

「はいよ、お代はいらねぇ。特別なお客様へのプレゼントや」

「こ、これは……?」

「これは、『特製桃色ジュース()()()()()()()』や」

「へ〜カップルサイズ……!」

「………………………」

「……………………………………………」

「ほい!」

「「カップルサイズ〜〜〜!?」」

2人はにこにこしてそのグラスを見つめていると、極めつけにおっさんがハート型に絡まっていて、吸い口が2つあるストローをぶっ刺すと、2人は表情を変えて言った。

「せや。ま、イチャラブして飲みな」

ガハハハと笑ってそのおっさんは店の中に入っていった。そんなおっさんの後ろ姿をナオキと絵里は呆然と見た。

ナオキは視線をそのままの状態で戸惑いを見せた。だが絵里はナオキとは違い、目をうるうるさせてナオキの方を見つめていた。ナオキはそんな絵里の視線を感じたのか、ゆっくりと絵里の方に視線を向けた。

「絵里……さん?」

「ナオキ……一緒に飲みましょ?」

「の、飲みたいけど他の人が……」

ナオキは内心、絵里と巷のよくカップルが飲む方法で飲めるので飛び跳ねているが、やはり周囲の目を気にしているようであった。

「ナオキは……私と飲むの……イヤ?」

「嫌じゃないです。是非飲ませてください。お願いします」

これもまたまたこうかはばつぐんだ!ナオキは自分から頭を下げて絵里とドリンクを飲むことを所望した。

「えへへへ、やった〜」

「じゃあ、飲むか……(飲みたいとは言ったけど、どういう感じなんだろう?)」

ナオキはこれをすることでどのような感覚になるのか少し気になっていた。その気持ちは絵里も同じであった。

2人はストローを咥えてドリンクを吸った。最初は目線をしたにしていたが、ふとお互いの顔を見たことで目線が合った。その瞬間、2人の顔はどんどんと赤くなっていき、頭からボンと湯気を出した。

「や、やっぱり恥ずかしいな////」

「そ、そうね////」

2人はそう言ってまたドリンクを吸い始めた。だが、吸っているうちに慣れ始めたのか、2人の表情は和らいでいき、お互いに笑顔を浮かべ、またイチャイチャオーラが放たれるのであった。

 

 

 

「これ……どうする?」

「う〜ん、家でも使う?」

ナオキと絵里はナオキが持っている先程使ったストローを見て言った。

「まぁ、2人っきりのときにな」

「うん!」

ナオキは絵里が頷くと、そのストローを袋に入れてカバンにしまった。

そしてナオキはチラッと、おっさんから渡されてカバンにしまったナオキと絵里が仲良く同じドリンクを吸っている写真を見て笑みを零した。

 

 

 

ナオキと絵里はそれから、今度こそ、セット……通称江戸の町に向かった。

そこでは、時代劇で見たことのある建物や、よく忍者が天井裏や床下から室内を覗くシーンで使われる場所もあった。2人はそこを一周して、次にレストランで映画村名物のラーメンを食べ、明治通りを散策し、中央広場にある噴水の近くのベンチに座った。

「ふぅ……結構歩いたわね」

「そうだな。疲れたか?」

「うん、ちょっとだけ」

絵里はそう言って腕を前に伸ばした。

「そうか……なら、なんか飲み物買ってくるから待っててくれ」

「うん、わかった」

ナオキは立ち上がって自動販売機に飲み物を買いに向かった。

絵里はナオキの背中を見て、落ち込むように下を向いた。

 

 

「えっと……2つともポカリでいいかな?」

ナオキはお金を入れて、ポカリを2つ買った。取り出し口から出てきたポカリを取ろうとした。

 

 

そのときだった…………

 

 

 

「え〜なに〜?」

「ナンパ?」

「感じ悪いわね……」

横の方にいた女性達をはじめ、他の人達もなにやらざわざわし始めたのだ。

ナオキは嫌な予感を感じてポカリを持って後ろを振り向いた。

「っ……!!」

ナオキはその光景を見て大きく目を見開いて、2つのポカリを強く握った。

 

 

 

 

一方その頃、ベンチに座っていた絵里は……

 

「はぁ……私って、ナオキの彼女で本当にいいのかしら……?ずっと気になって仕方ないわ……折角のナオキとの旅行なのに………」

絵里がずっと思いつめていたのは、『自分が本当にナオキの彼女でいいのだろうか?』ということであった。

ナオキは明るく、誰でも頼りたくなるような性格なので、他人からの人望もある。もちろん、他の女性からも人気があるのは絵里も承知済みである。

だが、ナオキが他の女性と仲良く、楽しく話していると、『本当は自分以外の人と付き合ってもいいんじゃないか?』とついつい思いつめてしまう。

『自分と話すより、自分と一緒にいるより、他の人と一緒にいる方がいいんじゃないのか?』そんな不安はどんどんと膨らみ続ける。

絵里はナオキのことは好きである。これは変わりようのない事実。

だが、ナオキはどうなのか?

自分なんかより好きな人がいるんじゃないか?

そうだとしたら自分と付き合うよりは………

そんな葛藤がここ最近続いていた。

「はぁ………」

絵里はまた心の中のもやもやを出すかのようにため息をついた。だがそのもやもやは消えない。

 

 

 

そのときだった…………

 

 

 

 

 

「あれ?ねーちゃん1人ぃ〜?」

「え?」

明らかガラの悪そうな若い男が絵里に話しかけてきたのだ。

周りにはそのツレだろうか、他に2人の男がいた。

絵里は不意だったので目を丸くして驚いた様子を見せた。

「こんなところで1人なんて危ないよ〜?」

「1人より、俺達と遊ぶ方が絶対楽しいよ〜?」

「え、でも……」

「でもじゃなくて、俺達と遊ぼうよ……ねぇ?」

 

そう言って最初に絵里に話しかけてきた男が絵里に手を伸ばした。

 

「嫌……嫌よ……」

 

「まぁまぁ、そう言わずに………」

 

その男の手は、どんどんと絵里に近づいていく。

絵里は目に涙を浮かべ、身を後ろに下げながら首を横に振る。

そして、恐怖で声が出せない中、目を瞑って助けを祈る。

 

 

 

 

(ナオキ……!助けてっ……!!)

 

 

 

 

その祈りは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

届いた………!

 

 

「おい、おれの彼女になにしてる?」

 

「「「あ?」」」

 

ナオキがその男達に声をかけると、その男達はナオキを睨みつけて声を出した。

「ナオキ………」

絵里が涙声でナオキの名を呼ぶと、ナオキは笑顔で絵里の方を向いて頷いた。その表情は「待っててくれ」と語っているように絵里は感じた。

そしてナオキは険しい表情に変わり、キッとその男達を睨んだ。

男達はナオキのその目を見て、汗を垂らし、少し後ろに下がった。

「は、はっ!彼氏だぁ?そんなん関係ねぇ!お前なんかより俺達と遊んだ方が楽しいに決まってらぁ!」

「そ、そうだ!」

「ふん、んなわけねーだろ。馬鹿かてめーら。そんなことも考えられねーのか?彼氏であるおれと一緒にいる方がいいに決まってるだろ?だからいいか、おれの彼女に手を出すな」

 

「ちっ……!言わせておけばァ!!」

 

すると、最初に話しかけてきた男のダチの1人がナオキを殴ろうと拳を振りかぶってナオキに近づいた。

 

「あっ、ナオキっ……!!」

 

絵里はナオキの名を呼んで危険を知らせる。

 

男達は「ざまぁみろ」という表情を浮かべてナオキを見る。

 

そして、その男の拳は、ナオキの顔面に………

 

 

「ヒッ……!?」

 

「「なっ……!?」」

 

「ナオ……キ……?」

 

当たることはなく、ナオキに殴りかかってきた男の腕はナオキに掴まれ、代わりに男に()()が向けられていた。

 

「て、てめぇ!それはっ……!?」

 

「もう一度言うぞ?おれの彼女に手を出すな。さもないと………殺すぞ」

 

ナオキの向けてきた銃に3人の男達はビビって、戸惑っていた。ナオキの目は……()()だからであった。

 

「へ、へっ!撃てるもんなら撃ってみやがれ!」

 

「そうか?なら撃たせてもらう」

 

「いや待て待て待て!」

 

「ん、どうした?撃ってみろって言ったくせに命乞いか?」

 

「本当に撃つんかよ!?」

 

「撃つさ。そうだな……なら選ばせてやるよ。ここでおれに撃たれて死ぬか、大人しく引き下がって生きるか……どうする?」

 

ナオキは男達を睨み続けながらそう言うと、男達はナオキの言っていることが冗談だと思っていたが本気だと気付いた。

 

「へ、へっ!今日はこれぐらいで勘弁してやるよ!」

 

「次こそは覚えと……」

 

その男の捨て台詞をナオキの持っていた銃の撃つ音が遮った。

ナオキは威嚇射撃として、空に向かって一発撃ったのだ。

 

「二度と現れんなよ?」

 

ナオキはもう一度銃口を男達に向けて、奇妙な笑顔を浮かべて言った。

 

「「「すみませんでした!!!」」」

 

3人はそう言うと、出口の方に走り去っていった。

 

「絵里っ!」

「ナ……ナオキっ……!」

「絵里っ!絵里っ……!!」

ナオキは持っていた銃をカバンに入れて絵里の方に向かって走って、ベンチからなんとか立ち上がった絵里を強く抱きしめた。

「ナオキ……っ……ナオキっ!!」

絵里は最初は頭がまだ混乱したような表情だったが、ナオキの温もりを感じると、必死にナオキの胸に顔を埋めて声を出して涙を流した。

「怖かったな……ごめん……!」

「ううん、ナオキがちゃんと助けてくれたから大丈夫。ありがとう」

ナオキが絵里を抱きしめながら頭を撫でると、絵里はまだ目に涙を浮かべてナオキの顔を見上げて言った。ナオキは絵里のその涙を親指で拭いて笑顔を浮かべた。

周りの人達はナオキと絵里を笑顔で見つめて拍手をした。するとナオキと絵里は頬を赤くして照れた仕草を見せた。

「あ、そう言えばあの銃は?」

「ん、あぁ、あれはあのときもらったモデルガンだよ。絵里を助けに来る前に職員の人に使ってもいいかって許可もらってあいつらを脅したんだよ」

「えっ、でもそれがわかったらまた……」

「大丈夫だ。今頃ここに常駐してる警察の人が取っ捕まえてるだろうよ」

「よかった……」

絵里は心配事が解消されたのでホッと胸を撫で下ろした。

しかし、ナオキがさっき見せた今まで見たことのない表情、行動に驚きと疑問を隠せないのはまた事実であった。

 

 

 

 

そしてその後、ナオキと絵里はスタッフに声をかけられて、普段は戦国や江戸、さらには明治の各時代の衣装を着ることができるお店に連れてこられた。ナオキと絵里はその店に着くなり2つの部屋に分かれて入らされ、わけが分からないままスタッフの指示に従って服を着させられていた。

 

「はい、お疲れ様です。着付け完了です」

「あ、ありがとうございます……?」

ナオキはそうは言われたものの、やはりまだ状況が掴めていなかった。

ナオキは中に水色の薄い着物、その上から黒く袖と足元の方が少し黄色く塗られている着物を着て、紫色の帯をしていた。

「では、説明致します」

「今かよ!」

「これから貴方と彼女さんは記念撮影をしていただきます」

「記念撮影……?」

「はい。貴方がたは、特別なお客様ですので」

ナオキはまた『特別なお客様』と言われて不思議に思った。

「あの、その特別なお客様って…「さ、外で彼女さんを待ちましょう」…あ、はい」

それはまだ解消されなかったみたいだ。しかし、外に連れられるとそれはすぐに解消された。

 

 

 

「これ、歩きにくいですね……」

「はい。でも昔はこれで生活してた人もいるんですよ?」

「へぇ〜」

絵里は水色、薄い青色、そして濃い青色の三重に着物を着ており、濃い青色の着物の袖にはナオキのと同じく、少し黄色く塗られていた。いつもより歩きにくくて苦労するが、同時にスタッフの説明を受けて感心した。

「さ、彼氏さんが待ってますよ」

「は、はい……」

絵里はまだ"あのこと"が心から取れておらず、少々不安じみた表情をした。

 

 

 

 

「あ、ナオキ」

「おっ、絵里。やっと来たな。

あ、今のは、『来たな』と『着たな』をかけていて……」

『…………………………』

ナオキがダジャレを言うと、ひゅ〜っと冷たい風が吹いたようにナオキ以外のその場の全員が寒気を感じて無言になった。

「……ナオキ、寒いわよ」

「ごめんなさい……」

「さ、さぁ、気を取り直して記念撮影をしましょう!」

カメラ担当のスタッフがそう言うと、絵里はナオキの隣に歩いて行った。

そして、ナオキの腕を掴んで2人でカメラのレンズの先にあるパネルの前に立った。

そこには………

 

 

 

『映画村No.1カップル』

 

 

 

と書かれていた。

 

「え、これって……!」

「あぁ、おれも見たときは驚いたよ」

絵里がそれを見て驚いて目を丸くすると、ナオキは自分が初めてこれを見た時のことを思い出しながら言った。

「実は、私共(わたくしども)はずっと貴方がたのことを見ておりました。あの類の券で入場された"特別なお客様"は、私共で『映画村No.1カップル』に相応しいかどうか決めるのです。そして、お客様方は見事それに相応しいと判断致しましたので、このような撮影になったのです」

「……だってさ」

「そ、そうなのね……////」

絵里は嬉しく照れているのか、頬を赤くして斜め下の方を見つめて言った。

「さて、では記念撮影をしますのでこちらを向いてくださ〜い!」

カメラマンのスタッフが手を振ると、ナオキと絵里は笑顔でカメラの方を向いた。

「なぁ、絵里……1ついいか?」

シャッターが何度かきられる中、ナオキは口を開いた。

「どうしたの?」

「絵里……最近なんか思いつめてるだろ?」

「っ……!な、なんでわかったの?」

絵里はナオキに図星をつかれて、なぜわかったのか理由が気になって聞いた。

「そりゃあ、絵里の彼氏だからな」

「も、もう……////」

「なぁ、よかったら話してくれるか?」

ナオキがそう言うと、カメラマンのスタッフは部品などを取り替えるためにカメラを弄り出したが、本当は2人に話す機会を与えるために部品を取り替えるフリをしていたのだった。

絵里は心の奥の不安をついに口から出した。

「………そのっ、私ね、ずっと思ってたの………"ナオキの彼女は私で本当によかったのか"って……だってナオキは色んな人から信頼されてるし、楽しく話してたし……だからナオキの彼女は……私じゃなくてもいいんじゃないかって……そう考えたら……私っ……!」

絵里はその不安の全てを吐き出して泣き出してしまった。ナオキは絵里がそんな不安を抱えていたのが衝撃的で、驚きを隠せずに絵里を見つめていた。

「そうだったのか……」

「うん……」

絵里が頷くと、2人とも無言になってしまう。だがナオキはすぐに言葉を紡ぐ。

「安心しろ。おれはそんなこと思っちゃいない」

「えっ……!?」

「おれがこんなに愛おしく、心から愛したいって思うのは……絵里だけなんだ。それに、おれがそんなこと思ってたらさ、あのときだってあんなに必死に絵里のこと守らないって。

ま、確かに他の人とも話してて楽しいけど、絵里とは近くにいるって考えるだけでも、ただ隣にいてくれるだけでも楽しいし嬉しいんだ。

だから絵里はおれの彼女に相応しくないわけがない。絵里しか、おれの彼女に……()()()()()()()()……かな?あはははは……」

ナオキは頬を少し赤く染め、人差し指で頬をかいて言った。

絵里はそのナオキの言葉を聞いて安心したのか、片目から一粒の涙を流した。

「そう……そんなふうに思っててくれたのね……私、嬉しいわ……すっごく……!」

絵里は自分で涙を拭きながらそう言うと、ナオキは優しい笑顔で絵里の頭を撫でた。

「あぁ、だから思いつめる必要なんてないんだ。これからも、()()()()()()()()()()()()

「えっ、それって……」

絵里がナオキの言葉の意味を聞こうとするが言えなかった。それは、ナオキが絵里の頬に優しくキスをしたからである。

「ふっ、だから待っててくれよ」

ナオキは絵里の耳元でそう囁いて、絵里の鼻をツンと突いてからカメラの方を向いて頷いた。それは、フリをして欲しいと頼んだのはナオキで、スタッフにもう大丈夫だと合図をしたのである。

「じゃあ、最後の1枚撮りますよ〜」

スタッフはそう言ってカメラを構えた。

そして絵里はまだ少し頬を赤くしてフッと笑ってナオキの方を向いてからその腕を両手で持った。ナオキは感触でそれがわかり、少し驚いた。

「では、笑顔でお願いしますね〜」

ナオキはカメラマンの一言で笑顔になる。

 

だが、絵里は………

 

 

 

「ありがとう。私、待ってるからね」

 

そうナオキの耳元で囁いてからナオキの頬に優しくキスをした。

シャッターはそのタイミングできられたのであった。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

そして2人のお互いに向ける愛はついに"永遠の愛"になった…………




〜妄想ラジオ(特別版)〜

ナ「さて、今回はUA10万突破記念!もちろん、絵里と一緒にお送りします!」
絵「ハラショー!UA10万って凄いの?」
ナ「すごいんじゃね?だって、おれ達の物語を約10万人が読んでくれたってことだろう?」
絵「それは確かにハラショー!だわ!」
ナ「さて、今回の話はどうだった?」
絵「とてもよかったわ!作者は初めて私達の旅行回を書いたんでしょう?」
ナ「まぁ、企画のときはほかの作家さんが書いてたけどな」
絵「そういえば、まだ本編では旅行に一回も行ってないわね」
ナ「そうだな。一回ぐらい早く書いてほしんだけどな、本編で」
絵「Another wayは本編とは別だものね」
ナ「早く書いてくれねーかなー?」
絵「作者にプレッシャーが……」
ナ「ま、でも今回は挿絵もあったしよかったな」
絵「えぇ!揺さんの小説リクエストからの、揺さんの誕生日プレゼントである挿絵も使ってよく考えたわね」
ナ「まぁ、シベリアもネタ思いつく前に映画村行ってたみたいだしな」
絵「そうなのね。シベリアグッジョブね!あと、気になったのが1つあるんだけど……」
ナ「ん、なんだ?」
絵「あの『大人しい足軽』っていう時代劇……なんなの?」
ナ「あぁ、あれだよ。かの有名な『〇〇〇〇将軍』のことだよ。そのタイトルを対義語にしたらしい」
絵「それならさっきナオキが言ったようにすればよかったのに」
ナ「どうせネタだろ?」
絵「なるほどネタね。ネタといえば、今回はナオキがダジャレ言ってたわね」
ナ「あぁ、あとでお仕置きしとくから大丈夫だ。それじゃあみなさん、これからもこの小説をよろしくお願いします!」
絵「明日にはお気に入り300件突破記念回が投稿されますので、そちらも読んでください!」

絵・ナ「「ばいばーい!」」

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