「リゼ? ――あいつ、生きてたの!?」
店長のその言葉に、私は耳を疑った。
神代リゼ。20区の厄介者の一人。通称「大食い」で、その呼び名に外れない大人数を捕食していた喰種。でも、それだって去年の10月からめっきりその姿は見かけなくなって。
代わりに”喰種”となって、こっちに来たのがカネキで。
カネキは――リゼの臓器を移植されて、喰種になったと言っていた。
テレビの報道が正しければ、リゼは死んで、カネキも死にかけてて。そんな状況だったからこそ臓器移植って話も出たんだろうと思っていたのだけれど。
休日、開店前のあんていく。テーブルを拭いてる私にそんなことを言った芳村さんは、近くにあったグラスを手に取りながら言った。
「……カネキくん達が、動いていたようだ。四方くんからそう聞いている」
「……カネキが?」
「リゼくんの臓器を移植されたのは彼だ。思うところもあったのかもしれないし、何か気づいていたこともあったのかもしれない」
じゃあ、ここのところ急がしそうにしてたのって、それ?
「彼女は各方面から、その身を狙われている。アオギリのように、彼女の強大な赫子を悪用しようとする連中も少なくない。
元は二十区の仲間だ。いくらかの期間、彼女をここの地下で預かろうかと思う」
「それは……。はい。
カネキは、知ってるんですか?」
「一応、次に来た時に話そうと連絡はしてあるんだけれどね。朝来てくれても構わないと言ってはあるよ」
丁度、テストも終わって夏休みに入ろうってタイミング。カネキだって普通にそういうのは終わらせたんだろうけど、今月分のシフトにその名前は極端に少ない。前に比べてみても、時間も含めて減っていた。
なんとなくモヤモヤする胸の内。
何にモヤモヤするのかは、いまいちわかんない。カネキがリゼのために色々やっていたことに思うところがあるのか、そーゆーのを全然私たちに話してくれなかったことにひっかかりがあるのか。店長や四方さんが、それ以上に何故カネキの言ってなかったことを知りうる状態にあるのかとか。
でも、そんなこと関係ない。
……助けようとしていたはずの、カネキが全然来ないって方が気がかり。
普段ヘタレてる分、一度その気になるとカネキはかなりぐいぐい行く。ヒナミの時もそうだったし、クソニシキの時だって。リオの時だって。
そしてたぶん、今の私に対しても――。
そんなカネキが、わざわざ「朝から大丈夫だ」と言われてるにも関わらず、何にもアクションを起こしてないっていうのが、なんだか私はモヤモヤしていた。
流石に私も朝からっていうのは久々だけど、一応午前終わりだから後で行こうかな……。
お店が開店して、いつまでも上の空で居るわけにもいかない。出来る限りいつもの様に応対するのを心がけながら、私は注文をとったりする。
ただ、お昼前後にシフトに入ったクソニシキが、変な顔していた。
カヤさん達と入れ替わりで休憩に入った時、引きつった表情のまま聞かれた。
「……なんだ、テスト酷かったか?」
「……は?」
「ものすんげぇ、気が気じゃねぇって顔してんぞ。大丈夫か?」
……ニシキに心配されるようじゃ、流石に私もヤキが回ってる。
っていうより、あれ? 私ってそんなに表情に出てたっけ。
「カネキのこと」
「お? あー、アレな。リゼのことな」
「……知ってたの?」
「まぁな。お前には話すなって言われたけど」
「何で」
「そんな話知ったら、お前テストどころじゃなくなるだろって。ほら、アレだろ? 上井目指してんのは知らなかったみてぇだけど、結構大学受験は頑張ってるって知ってんだろ? アイツも。だったら下手なことして不合格とか、させたくねぇだろ」
「そりゃ……。そうだけど、そうじゃなくって……ッ」
「ま、どっちの言い分も分かるけどよ。そーゆーのは他の奴に、馬のクソかからないようにやれ」
で何があったんだ? と聞いてくるニシキに、私は店長から聞いた話をした。
「あー、なるほどなぁ」
「……なんか、あんての地下にリゼが居るっていうのが、変な感じって言うか」
「気持ち悪い、て言っちまえよストレートに。でも、なんか哀れだよなぁ……。あんだけ自由にやってたリゼが、今じゃ囚われの身でどこにも行けないって。
因果応報っつーけど、なんか同情しちまうな」
「……」
なんとなくその後、シフト上がりに店の地下に回って。リゼの現状を見て、私は言葉を失った。
失ったというよりも、そのあまりの荒れように、一歩、一歩後退した。
「……極度の飢餓状態だ」
「……四方さん?」
不意に、背後から四方さんの声。
「リゼは”特別”だ。……強力だからこそ、自我を保てる程度に食事の量も調整しなければならない。下手に暴走すれば、何が起こるか」
「……どうしたらコイツ、ラクになれんの?」
「大きな力を背負うには、それだけ代償が必要になる。……本人が望むのと望まないのとに関わらず。
食事の量を徐々に緩めて、許容範囲を広げていく。バランスを探していくことになるだろう」
目の前の酷い有様のリゼの姿に――漂う匂いに、不意に私はカネキのことを思った。
いつも、考えないようにしていたことがある。……ここ半年の間で、徐々に、段々と、カネキの匂いのことを。根っこはリゼで、人間の匂いもあるにはあるんだけど。
ただそれ以上に――時々、隠しようもないような、そんな匂いが漂っていた。
あれは、血と、喰種の匂いだ。
「カネキ……、何やってたんですか? ずっと」
「……それは、本人から聞くべきだろう」
四方さんは多くを語らず、この場を去って。
私は――私は、私は。
悪態を少し付いて、すぐに走り出した。
思ったらもう、なんだか居ても立ってもいられなかった。
※
喰種になった当初のことを、僕はぼんやりと思い出していた。
リゼさんの赫子は当時の僕には酷く恐ろしいものに感じられた。……力そのものは確かに恐ろしい。でも今は、以前ほど怖がってはいなくなっていたように思う。自転車をこぐように、あるいは車でも運転するように。嘉納先生の言葉を借りれば、鳥が空を己の翼で飛ぶように。
きっと、慣れていたのだろう。
だからこそ、心のどこかに認識の甘さがあった。
……「自分に制御できない力」を、使ってはいけないんだ。
あの時、間違いなく僕はヒデを食べようとしていた。トーカちゃんが手を貸してくれなければ、もう確実に。
そしてこの間だって、バンジョーさんの赫子が出てなければ、きっとあの場で僕は彼を殺してしまっていた。
反芻すれば反芻するほど、気が滅入ってくる。
バンジョーさんは言っていた。あの場所で戦っていた喰種たちを追っている間、突如エトが現れたと。そこでかなり重症を負ったはずだが、そのタイミングで赫子が初めて出たんだろうと言っていた。
皆で拠点に帰った際、月山さんは言っていた。
僕には力があるのだと。強さとは、価値なのだと。時に他人を蹂躙することに、躊躇いを覚える必要はないのだと。有象無象の尊厳を踏みにじっても、有り余る価値があるのだと。
……たぶん慰めようとしてくれていたのだろうけれど、残念ながらその価値観は僕とはズレている。仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。
言うなれば僕は、その有象無象の中にあって価値がなければ意味がないと考えているのだから。
皆が居なければ、そこに意味などないのだから。
……でも、それだって僕は怖い。その中に居て、僕はきっと「誰からも求められない」。そんなこと関係ないと頭で分かったつもりでいても、結局心のどこかで、その事実を否定している。
お母さんの、あの後姿が断続的に脳裏を過ぎる――。
時刻は昼過ぎ。
そんなことを考えながら階段を上り自分の部屋へ向かっていると、トーカちゃんが入り口で立っていた。
「……あれ、おはよう」
「……ん」
トーカちゃんは僕に答えず、顔を覗きこむよう、下から見上げてきた。
半眼で見つめられて、ちょっと僕は後退。
もっとも、それを無視する勢いでトーカちゃんが距離を詰めてくる。
「え、えっと、どうしたの?」
「……私は、テスト終わった」
「あ、うん」
「悪くなかったとは思うから、気にはしないでいい」
「あ、そうなんだ。良かったね」
「だから――話せ」
「いたッ」
ぐいっと、トーカちゃんは僕の両方の耳たぶを引っ張って、半眼でそう言った。
話せ、とは具体的に何を? そういう聞き返しが、なんだか出来るような感じじゃなかった。加えて言うと、僕もかなり心当たりはあるので、下手な誤魔化しを出来ないという事情もあった。
「……無茶、してないよね」
なんとなく、顎をさすりながら僕は笑った。
「ある程度は、かな。流石に万全とは言えないけど」
「……店長、リゼを店でかくまうって言ってた」
「……うん」
「行く?」
トーカちゃんの言葉に、僕は一瞬言葉に詰まる。
でも、少し呼吸を整えて、僕は首肯した。
「……準備できたら言って」
そのまま連れて行かれる、ということはなかったけど、トーカちゃんは入り口に立ったまま、僕を待つようだ。これは……、わざわざ家の中に入らないのは、プレッシャーをかけるためなんだろうか。
一度カツラを外して、眼帯を外して、バッグに仕舞う。……どうしても、亀裂の入ったドライバーが目に付いてしまう。これも後でトーカちゃんに話さないといけないだろう。
気が重い。二重の意味で。
それでも、何もしないという選択肢は流石に僕にはない。大学もそろそろ試験だし、勉強だってしなくちゃいけないのだ。
人間と、喰種と。両方の選択肢を持って生きると決めたのだから、僕はそれなりにハードワークだ。
誰しもハードワークと言えばハードワークなんだろうけど、肉体的なことより精神的な切り替えが、思ったより引きずりそうだった。
軽く着替えてカツラを再装着して、表に出だ。
「えっと、インスタントしかないけど飲む?」
「後ででいい」
並びながら歩く僕ら。トーカちゃんは横を向いていて、なんとなくいつかの、初めてウタさんのお店にマスクを作りに行った時のことを思い出す。最近にしては珍しくトーカちゃんはこちらを気にせずに足を進めてるようだった。
と、不意に彼女の視線がこちらを向く。
「……な、何? じろじろ」
どうやらぼうっとしていた分、トーカちゃんをじっと見つめてしまっていたらしい。
ごめんごめんと言いながら、なんだか懐かしいって話をした。
「去年の秋頃だから、思ったより時間は経ってるのかな……?」
「ま、私も髪伸びたし」
「うん。似合ってると思うよ」
「……」
「どうしたの?」
「……いや、私ってここまで単純だったかなぁと」
何とも言えない表情で、トーカちゃんは僕から顔を逸らした。
不思議と、そこから会話は続かなかった。僕もトーカちゃんも無言のまま。ただ時々、ぼうっとしてる僕の腕を引いたりして、なんとなく僕はひっぱられて。
会話はなかったのだけれど、なんでかあまり、僕はそれに居心地の悪さみたいなものは感じなかった。
店の裏側に着いて、地下室への扉を開けて。
バンジョーさんが四方さんと特訓するのに最近はよく使われている地下は、相変わらず広い。
と、全体を見渡していると、不意にトーカちゃんが僕の手を握った。
「……トーカちゃん?」
「……今さらだけどさ。ホントに、会いたいの? リゼに」
「……うん」
「どうして?」
……どうして、か。
色々、理由はある。僕がこちらの世界に、足を踏み入れる原因だったことも。彼女の赫子のお陰で、何度も命を救われていることも。頭の中に生まれた彼女の言葉が、ヤモリに殺されそうになった時も、その後も、何度も何度も僕を助けてくれたことも。
「……僕は、”人間”で”喰種”だから」
「……」
「今僕があるのは、間違いなくリゼさんが居たからだから。リゼさんを利用されるのが、良い事にならないっていうのもあったけど……、でも、やっぱり会いたい。
もう一度、会って話がしたい。
だから、色々やってたっていうのも、大きいと思う」
「……私は、あんまり今行かせたいとは思わない」
僕の正面に回って、もう片方の手をとるトーカちゃん。
こちらを見る目は……、どうしてか涙ぐんでるようにも思う。
「……」
「……」
「……トーカちゃん」
「――ばか」
うつむいて、トーカちゃんは小さく言って、手を離した。
なんとなくその頭に手を伸ばして、でも、どうしてか触る事を僕は躊躇った。
――そして、僕は耳にした。悲鳴を。叫びを。
音の方に走る、声の聞こえる部屋の前まで。
がんがんと打ち付けるような音を聞き、僕は勢い良く扉を開けた。
そこには、確かにリゼさんは居た。……確かに、居たには居た。
「リゼ、さ――」
「――ア、あげ、が」
左右で「色合いの違う赫眼」を向きだしながら。リゼさんは涎を垂らしながら、その場で転がり、叫んでいた。
身体は拘束服のようなもので動きを封じられている。……その状態が解けないのは、食事の量を調整されているからか。
僕の呼びかけも、彼女は聞こえてなさそうだった。
「あっっ、あああああ、はぁ、に、く、ニク、肉ッ!!!!
食べないと、食べないと――食べたくないよぉおおおお! 違うの、違うのぉおおおおおおッ!
お腹すいたよぉおおおお! 食べたいよぉ! ”お団子”でも”オムライス”でも一緒に食べたいよおおお!
なんで
「リ―― ……さ……、ん?」
「も、もも、、、、、
もぅ嫌よぉ、こんな、こんな暗いところもう嫌ああああああ!
耐えられないの、、、、もう無理よ、だって
出して、助けて、誰か出して出して出して――だれか居ないの、誰か、お父様ァ!!! ――”研くん”!!!!」
やはりと言うべきか。彼女は僕の名前を何故か知っているらしい。
でも、その言葉はただ僕を混乱させるばかりで。
トーカちゃんが隣から入ってきて、肉のパックを開けて、リゼさんの前に置いた。
リゼさんは泣きながら、それに齧りついていた。
「……詳しくは知らないけど、前みたいに好き勝手に食べられてた訳じゃないんでしょ? リゼ。
だから、今調整中らしい」
立ち上がったトーカちゃんの横で、僕は膝を付いて。
たとえこんな状態でも、僕は、話すしかなかった。いつか頭の奥で、彼女の幻影が言ってくれたように。
「リゼさん……、久しぶり、ですね」
「んむ……、ぶ、ふ゛ふ゛、」
「あれから、色々ありました。楽しかったこともあったし、辛かったこともあったし。
……『あんていく』で働くことになって、トーカちゃん達と出会って。友達、食べようとしたり、知り合いのお母さんが目の前で殺されたり。僕らの命を狙う捜査官と戦ったり――拷問されたり」
とてつもなく凶暴な力を持っていても、それでも誰かのために命をかけられる、やさしい子と出会ったり。
力を付けるために、多くの喰種と戦って、赫子を齧っていったり。
僕みたいな、リゼさんに端を発する半喰種の子たちと会ったり。
「そして、また、会えました」
本当に、本当に辛い事が多かった。楽しい事もあったけど、それ以上に辛い事が多かった。
「それでも僕は……、なんだろう、”君を憎めない”んですよね。
これって変なのかな……。でも、君と話がしたいんだ。何か、何か『重大な何か』を見落としてるような気がして」
何故リゼさんが、僕のことを「研くん」と呼ぶのか。その呼び方をしていたのは、記憶の中ではもう既にこの世に居ないはずの、あの彼女くらいだというのに。
腹部を、彼女の赫胞が収まっているだろう腹を押さえながら、僕は彼女に、話しかけ続ける。
徒労だろうが何だろうが、例え――それで目がにじんだとしても。
「――へぁ、えふ……、ぶ゛、」
「ねぇ、リゼさん。僕を、見てよ――」
トーカちゃんが、僕の名前を呼ぶ。でも、それさえ僕は応じる事は出来なかった。
自分の中のバランスが、崩れ始めていた。
「僕は、今の僕は、人間の僕と喰種の貴女で出来てる」
僕の知った彼女は自由で、余裕があって、奔放で、凶悪で好き勝手やってて――。
でも僕が見ていた彼女は、偽りだったかもしれないけれど、やっぱりどこか記憶の底を掠める何かがあって――。
そんな貴女だからこそ、僕は。
「――それでもどこかで、あなたが『好きだった』から、だから僕は一緒の道を探そうって」
拷問の果てで、意識が変わりそうだったあの時にトーカちゃんが僕を呼びとめた時。
僕は結局、リゼさんと一緒に居ることに決めた。……今だからわかる。だからあれから、ずっと彼女の声は僕にささやき続けたんだ。両方の選択肢を手に取って歩く象徴として、自分の中の喰種の象徴として――。
でもだからこそ、今のリゼさんを見て僕の中のそれが崩れた。
自分の中にあった強い痛みの記憶が、ヤモリのような形をとったのだろう。……失いたくないという、その衝動が、失わないためなら何をしても良いという形になったんだろう。
でも、だから。
だから、だからもう一度リゼさんと話したかった。和解なんて出来なくても、自分の中で何かしら、答えが出せればって思って。
でも――リゼさんは僕の隣に「居ない」。喰種の象徴としての彼女が「居ない」。
「貴女が居ないと、僕は、僕だけなんですよ……、人間の僕しか、残ってないんですよ……。
ただの、子供の、金木研しか――」
からっぽの僕しか、残ってないじゃないか。ただの愛されたがりの、自分しか――。
項垂れる僕と、涙を流して食べ続けるリゼさん。
そんな僕の肩に、トーカちゃんは手を置いた。
「……違うでしょ、カネキ。それだけじゃないでしょ」
「……」
「全部見て知ってるわけじゃないけど、私が見て知ってることだって、いっぱい、いっぱいあるから。
少なくともアンタは、依子のことで困ってる私に手を貸してくれた。リョーコさんのことで戦ってる私に、死んで欲しくないって、何かしたいって」
「……」
「”白鳩”と戦ったときだって、色々やってたみたいじゃん。月山の時なんか、自分の肉食えって言ってさ。
アオギリでもかなり酷い目に遭ったみたいだけど――全部、戦ったのは、誰?」
「……それは」
「アンタでしょ。アンタ以外居ないでしょ」
顔を上げて、トーカちゃんの方を見る。
トーカちゃんは……、なんだか、慰めるようにふっと力を抜いて笑っていた。
「力は、切っ掛けはリゼだったかもしれないけど。
戦ったのは全部アンタの力じゃん。……立ち上がったのも、立ち向かったのも」
「……僕の?」
「何があったかとかさ。全然分かんないけどそれだけは言えるから。誰がなんて言っても、カネキは自分で選んで来たんでしょ? なら、カネキならそれは出来る。
でも、だから、話して。
突っ張らないでいいからさ」
殴んのはその後にしてあげる、と。トーカちゃんは僕にそう言って。
「……結局、殴るのは確定なんだね」
「当たり前」
ふふん、と少しだけ得意げに、トーカちゃんは鼻を鳴らした。
「自分で自分がワケわかんなくなってるときに、はたいてやれる奴が居ないのも寂しいじゃない」
その微笑に、どうしてか僕は胸に痛みを覚えて――ものすごく、眩しく感じた。
四方「……」 扉付近で出るタイミングを逸して、微妙な顔で二人のやりとりを聞いている
※本作のリゼは、設定面でたぶん原作と結構食い違ってます