仮面ライダーハイセ   作:黒兎可

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一月後期:

ヒデ「・・・」 白髪になって、会話しながら顎を触るカネキを、少し目を細めて見ている。


#044 養親/浮上

 

 

 

 

 

「――んー、ま分かりやすいっちゃ分かりやすい子なんだけどね、アキラも。

 難しいけどな。タイムロスのジョークだって、ふざけたこと論理的に抜かす親父そっくりだし。

 マッドジョークの類だろ」

「ま、マッド……?」

「そそ、真っ戸(マッド)ジョーク。飲みに誘われたの断ったのもそうじゃないかね?」

 

 中島さんと今でも行く定食屋で、俺は篠原さんに相談をしていた。

 内容は、アキラについて。……丁度昼食の時間帯。アキラは「今日はナンが半額なのだ」と言って何処かへ足を伸ばしていた。

 

「部下としてあっちゃいかんが、たぶん試してる部分もあるんだろうよ。

 真戸と一緒だそこのところ。自分の直感に従って、お前を認められるか試してるんじゃないか?」

 

 その言葉には、なんとなく心当たりはある。実際に彼女は優秀であり、そして同時に真戸さんのようなセンスも併せ持つ。視点一つとっても、一辺倒な俺に対して彼女はフレキシブルに分析をこなしているのだ。

 

「てもまぁ、とっつきは悪くないんじゃないの? 父親のこともあるし。

 嫌われちゃいないだろうさ。ナメられてるかもしれないけど」

「……俺は、真戸さんがしてくれたように、アイツにも色々なものを与えたいです」

「何事もま、経験だわな。真戸だってあれで何人か見てるし。

 上下関係、年齢で抑え付けるんじゃなく、相手が敬語を使いたくなるようになれば良い、てな感じかね?」

 

 ジューゾーはお馬鹿敬語だけど、と冗談めかして笑う。

 

「こうやってメシ一緒に食べたり、呑んだりさ。死線を潜って行けば絆も出来てくる。お前と真戸もそうだったろ?」

「……」

「ま、さっきも言ったが経験だ、若人よ。それにアキラだって現場経験は浅い。

 お互い、補い合ってやってけ?」

 

 肩に置かれた彼の手が、酷く頼もしく、同時に自分のそれと比べてしまった。

 俺は……、まだ頼りないということか。

 

 あんかけを平らげながら、篠原さんは「じゃ、早い所ジューゾー迎えに行かないとな」と肩をすくめた。

 財布から札を一枚テーブルに置き、彼は席を立つ。

 

「亜門は、午後からマルの言ってたのに行くんだろ?」

「あ、はい」

「……くれぐれも、慎重にな?」

「……はい」

 

 篠原さんの心遣いに、俺は頭を深く下げた。

 

 

 

 会計を終え、俺は表に出る。

 先々月にとった免許により、俺はようやくこのバイク――アラタG3を運転できるようになっていた。赤と黒、淵に金が見える意匠はかなり堂々としており、バイクらしからぬ高級感さえある。

 鍵のかわりに腰に「レッドエッジドライバー」を巻き、中央のスロットに制御装置を取り付け、ハンドルを閉じる。

 

『――アラタG3! リンクアップ!

 ライドモード!』

 

 途端、エンジンがかかりライトが一瞬点灯。ヘルメットをつけてからまたがり、俺は、ハンドルを回す。

 エンジンが噴くがガソリンで動いている訳でないのか、マフラーから煙が立つことはなかった。

 そのまま足を閉じ、ギアを合わせ走り出す。

 

 法廷速度を厳守しながら、俺は運転に意識を集中した。

 

 

『――亜門、お前は”神父”から話を聞け。聞くべき内容はこっちで書いといてやる』

 

 先日、丸手さんから来た指令。23区の「コクリア」で、とある喰種から情報を聞き出すこと。

 俺が直々に指名されたのは、理由がある。出来ることなら、捨て去ってしまいたい理由が。

 

 道中、アラタのエンジン上部にとりつけられたタッチパネル式モニターに、通信が入った。赤信号で停車中、軽く操作をして相手を確認した。

 

「……アキラか?」

『嗚呼、そうだ。これから首都高だが、上等はどれくらいでだ?』

「数分とかからず、だ」

『……どうした? 何か不機嫌そうだが』

「……いや、何でもない」

「そうか」

 

 特に意識をした訳ではないが、声音や表情に出てしまっていたのだろうか。

 

 今、俺の中にくすぶっている違和感。苛立ち。それらは間違いなくあの男(ヽヽヽ)に端を発しているのだから。

 

 

 

   ※

 

 

 

 高速を利用すれば、当たり前だがさほど時間はかからない。

 23区も思えば久しぶりか……。いや、感傷に浸っている場合ではない。

 

 ETCで料金所を通過すると(驚いた事にカード装てん口が付けられていた)、降りてすぐの近場のコンビニに……、あれは何だ、スポーツカーか? 白と黒の、車内が狭そうな車の運転席で、紙パックの牛乳を飲んでいた。こちらの姿を確認すると「こっちだ」と軽く手を振っていた。

 

「乗れ。私が運転しよう」

「いや、運転しよう? そうするとアラタは――」

「まぁ見ていろ」

 

 運転席から出てくると、俺の反応も無視して彼女はドライバーを操作した。レバーを引き、ボタンを二つ押して再度閉じる。

 

『――ガジェットモード!』

「……? これは――は、はぁ!?」

 

 思わずうなる俺に、彼女は得意げに鼻を鳴らした。

 アラタのマフラー下にある二本の顎が前方に展開され、中央から二つに割れてハンドルが収納される。飛行する姿はクワガタのようだが、その状態から更に変形し、荷台の上に収まる程度の大きさの、謎の装置に変形した。途端、マフラーの部分や要所要所の穴から赫子が噴出し、ワイヤーのように固定された。

 

「元々はトランクにする予定だったのだが、いかんせん大きさ的に不可能でな。結果的にこういう運搬方法もある。見た目ほど重量もないしな。さ、乗ってくれ」

「わ、わかった……」

 

 車内は想像以上に狭かった。

 それなりに椅子を後ろに送って、ようやく頭がすれすれという具合だ。明らかに俺くらいの上背が乗ることを想定していない。

 

「ふふ。……失礼。肘が当たらないようにしてもらえると助かる」

「あ、ああ……。何とかならないのか、これは」

「諦めてくれ。私の趣味だ」

 

 いい車なのは認めるが、時と状況と場合を考えてもらいたかった。

 

 発進する車内。揺られながら、アキラは平然と話し始めた。

 

「そういえばだが、報告書は何故ダメ出しされたのだ? 必要最低限の情報は記載したと思ったが」

「……踏み込んだ情報や考察があるならば、列挙すべきだ。あらゆる可能性を考えることが、真相への手がかりになる。お前のやり方は確かに多角的な視点で見ているが、結論を決めたらそれに一直線だ。アテが外れたらどうする?」

「無駄だと省くべきではない、と?」

「車内のスペースのようにだ」

「……根に持たないでくれ。今度買い換える時は、他の人間のことも考える。

 だが上等。私は思うのだが、速度が足りないとは思わないか?」

「法廷速度は守れ」

「いや、こっちではない。捜査についてだ。何も勘を万能だと断言まではしないが、可能性を虱潰しに検証し続け、結論が出た頃に大惨事、はまずいだろう。それは間抜けのすることだ」

「長年続く捜査方針だ。アカデミーでもそう教わって……、いや、そうか。政道の反応からして、当時からか」

「嗚呼。無駄ならば省くべきだ。上等の報告書も読ませてはもらったが、要点をまとめれば可能性は二、三くらいに絞れるだろう。可能性の羅列は、時に結果への到達を困難にする」

「……なら、具体的にはどうなんだ?」

「そうだな。例えば――と、到着したようだ。これはまた後でだ」

 

 円筒状の建物の手前で停車。高く聳え立つ建築物には、わずかながらに未だ足場が残っている。内部はともかく、外部の壁の修復作業は半年経った今でも終わりきってはいなかった。これでもある程度の強度はあるが、まだまだ万全とは言いがたい。

 それが、現状の喰種収容施設「コクリア」だった。

 

「そのままドライバーを外してくれて構わない。解除時は普段どおり起動させれば良い」

「わかった」

 

 車内を出て、俺達は入り口へ向かう。局員の一人に手帳とバッジを見せ名前を確認。丸手さんから事前に話しが通っていたお陰で、そのまますんなりと内部へ入れた。

 いつ来ても、ここは酷く歪に感じる。光を反射する薄緑の壁は、しかし時折赤い色が見えるような、見えないような。

 

「まだ修繕途中ですが、最低限の機能は復活しております。

 ……、さて、こちらとなります。くれぐれもお気をつけて――」

 

 戸を開け、頭を下げる局員に礼を言ってから、俺とアキラは部屋に入る。室内は暗闇であり、こちら側に照明のスイッチがある。

 それを点灯させると、マジックミラーを通常のガラスのように変化した。

 

 

「おぉ、誰かと思えば。久しぶりじゃないか――いとしき我が息子」

 

 

 部屋の奥からこちらに歩いて来る老人に、俺は一瞬激しい憤りを覚える。が、アキラの手前だ。無理やり抑え付けて、奴と対面する位置まで歩いた。白髪に、少しやつれた顔つき。一見すればヒトがよさそうに見えるが、それが真実でない事を俺は、俺だけはよく知っている。

 

「(大丈夫か?)」

 

 今度こそ表情には出て居ないだろうが、アキラは何かを察しているのか、それとも事前に調べたのか。「心配されるほどではない」と断りを入れ、俺は奴の顔を見た。

 

 

 ドナート・ポルポラ。

 SSレートの喰種を。

 

 

 

   ※

 

 

 

「久しぶりだな鋼太朗。親なのだ、たまには顔を見せに来てくれても構わな――」

「黙れ。

 ……貴様を父親だと思った事はない。あの日から」

「…………ふぅ、恩知らずめ。

 ん? ふふ、おめでとう」

 

 唐突に、奴は微笑んで俺にそう言った。まるで子供がテストで良い点をとった時のようだ。虚を突かれた俺に、奴は続ける。

 

「パートナーが変わっている。お前より経験豊富そうには見えないから、おおかた昇進したのだろう。

 以前の、死神のような男はどうした」

「……休職中だ」

「そうか、手ひどくやられたのか」

「……ッ!」

「フハハハハハッ!

 相変わらず分かりやすい子だ。昔、みんなの分のドーナッツを一人だけで食べてしまった時のように」

「止めろ」

 

 隣でアキラが「ほぅ」とわずかにニヤリと笑ったのを俺は見逃せなかった。後でまた何やらつつかれそうだ……。

 

「それで、今日は何の用事だ?」

「……いくつか質問がある。貴様はそれに答えれば良い」

「そうか。だが鋼太朗――対話とは二人でするものだ」

 

 押し黙る俺に、アキラが「外すか?」と確認をとってきた。

 無論、お互いに既知の事である。喰種に対する取調べは二人以上で行うこと。時に喰種に対して激昂する捜査官や、洗脳される捜査官が居たと聞く。

 それを分かった上でこう確認をとってくるということは……、やはり何か、調べたのか?

 

 すまん、と言って俺は彼女に外してもらった。

 

「……賢い子のようだ。故に大変そうであるが。お前は何だかんだ言って真っ直ぐすぎる」

「……」

「初めての部下、といったところか。しかしお前も27か……。

 慕われているじゃないか」

「何?」

「会話の途中、ずっとお前の様子を気に掛けていたぞ。それに、目にどこかあの男のような鋭さも感じる。

 また妙な縁のようだなぁ、お前も。そうだな、味見はし――」

「……ふざけるな」

 

 これは冗談だ、と微笑み、奴はアクリル板の向こう側の椅子に座った。

 

「俺は、決して許しはしない。

 大量の捜査官と、引き取ったみんなを残虐になぶって喰らった貴様を――ッ」

「まぁ、落ち着け。せっかく外してくれた好意を無駄にすることもあるまい」

「……」

 

 俺も不承不承、奴に対面する形に座った。

 

 すん、と奴の鼻が動く。

 

「臭うな」

「……?」

「”王”の匂いだ。とすると……、鋼太朗、お前ひょっとして『レッドエッジドライバー』を持っているか?」

「――、何故貴様がそれを知っている」

 

 くつくつと笑い、奴は俺を見る。どこか哀れんでいるようにさえ見えるのが、酷く嫌な感覚を俺に味合わせた。

 

「そうかそうか、だがしかしそれ(ヽヽ)はまた運がないな。お前は『知らない』ようだ。

 それに一体何の意味があるのかを。そして――また皮肉な状況のようだなぁ」

 

 ――お前の記憶の奥底にあるものを、お前自身が滅多刺しにしているということに。

 

 奴の言葉を無視して、俺は手帳を開く。丸手さんから送られてきた質問事項だ。

 聞く内容は「アオギリの樹」について。看守と交戦した際にどんな赫子を使ったか。どうやって奴らは気づかれずここまで潜入したのか。あるいは、どうやってロックを解除したか。

 

 だが、奴はいずれも「知らない」としか答えない。

 

「少しは……、真面目に答えろ!」

「ならば、お前も真面目に考えろ。私がそんな、『誰かから言い渡された』言葉に答える気があると思うか?

 どうせ、どこかの陰険な特等捜査官に言われたのだろう。違うか?」

「……」

「嘘がつけんな、ハハハハッ!

 実際問題、私はそのアオギリ某という連中については、知らん。ここから外の様子を知ることも出来んからな。わかりやすい牢獄でないからなぁ、ここの層は」

「……音は? 何か聞こえなかったか」

「聞こえたが――聞きたいか? 久々に滾ったくらいだ。

 願わくばあの狂宴に加わりたかった……、ある意味で地獄だったよ」

 

 くつくつと笑いながら顔に両手を当てる。得られる成果はなかった。沸騰する怒りを無理やり押さえながら、俺は椅子を立った。 

 

 ちゃらり、と首から下げていた十字架が揺れる――。

 

 

「鋼太朗」

「……」

「追うべきは白ウサギだ。だが、真に探すべきはアリスだ。

 そうすれば、いずれ行き着く――」

 

 

 最後に投げかけられた言葉の意味を、俺が理解するまでには後しばらくの時間が必要だった。

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 帰りの車内、奴から聞いた言葉をちらりと漏らすと、アキラは何か意味深な反応を返した。

 

「白ウサギにアリス……? ”白”?」

「どうかしたか? アキラ」

「……いや、何でもない。

 それはともかく、アリスか。ルイス・キャロル、単なる戯言と片付けて良いものだろうか」

「知らん。どうせ、いつものデタラメだ」

「……私が言う義理はないが、冷静に判断しても良いと思うぞ」

「何をだ――ッ」

「そういう所がだ。多少察するが、傍から見ていてヒヤヒヤする」

「……善処しよう」

「そうしてもらえると助かる」

 

 そう言いながらも、アキラの様子は普段と変わりない。冷静に運転をしているように見える。

 低い車体のせいかい、しかしこの車の加速度は高い……。身体が軽く振り回されているような錯覚を覚える。

 

 俺が奴と面会している間、アキラはアキラでクインケの材料を選別していたようだ。地行博士の元にデータが送られるらしい。「所持許可が欲しいな」とは本人の弁だった。

 

「……、ハイセと言ったか。最初に目撃したのは上等だったな」

「? 嗚呼。性格には真戸さんも居た。フエグチを庇うように現れた。

 どうかしたか?」

「そうか。いや、情報は改めて洗わねばと思ってな」

「……奴については、おそらく俺が最も遭遇経験が多い」

「どんな奴だ?」

「…………言葉にするのが難しい」

 

 初めての遭遇は、フエグチを庇い。二度目の遭遇はラビットの元へ向かう俺の前に立ちはだかり。

 三度目はアオギリの樹強襲の際、多くの捜査官を無力化し――。

 そして四度目。三月の、あの事件。

 それ以降の目撃件数は、まちまちだ。だがいずれの場合も死者はほとんど居ない。捜査官、喰種双方において。目撃件数と被害件数が何ともいえないため、現在のレートはB~Aのあたりで決めかねているらしいと聞く。

 

 ――何も知らないで、憎しみあって、殺しあって……、そんな環の中に永遠に居るのは、きっと、間違ってる。

 

 そして、奴は言ったのだ。

 

 人間で、喰種で――仮面ライダーだと。

 

「変な喰種も居るものだな」

 

 アキラの感想は、酷く単純なものだった。だが、その視線は更に細められた。

 

 

 

   ※

 

 

 

 事故で渋滞が起きた。本来、そう何時間も移動にはかからないはずだったが、しかし……。

 パーキングで一旦休憩を入れた際、電話がかかって来た。

 

『――おお亜門か。真戸もそこに居るか?』

「丸手さん? あ、はい。あの、情報は――」

『それは別に今はいい。後で連絡しろや。

 とりあえず、1区来い。少し会わせたい奴が居る。六時までに来れるか?』

「会わせたい……? はい、わかりました。今首都高ですが、追って連絡を――」

 

 帰ってきたアキラにもそう告げると「まぁ、後何時間車上の人間か見ものだな」とよく分からない皮肉を言った。

 

 結局、着いた頃には五時半ギリギリといったところだった。

 小会議室で待っている俺達。紙の資料を取り出して、途端にスケッチを始めるアキラ。

 

「……」

「……クインケか?」

「嗚呼。思いついたからには、早いうちにな」

「そうか」

「嗚呼」

「……」

「……」

 

 会話が続かない。

 本来、そこまで沈黙が苦になる人間ではないのだが、どうしてかこう、妙な緊張感を抱く。真戸さんの娘さんだということもあるだろうが、ひょっとすると俺は、新人教育という慣れない立場で肩に力が入っているのだろうか。

 

 いかん、これではやはり試されている側だ。何をしているべきか……。

 タイミングが良いのか悪いのか。空が暗くなってくる頃合に、ちょうどお呼びがかかった。

 

 二人揃って部屋を出て、丸手さんの部屋に入る。

 

「失礼します」

 

「おお、来たか亜門。真戸。

 しっかし……、お前ら、なかなか笑える感じじゃねぇかそのデコボコ具合。クカカ」

「特等の中古二輪もなかなか傑作ですよ。以前のハーレーはどうされましたか?」

「おい、止めろアキラっ」

「あっ……、黙れッ!」

 

 かっと血が上ったその表情。その二輪がどんな運命を辿ったか、近くで目にした俺は心の内で合唱した。

 そして、丸手さんの机の手前に立つ青年。CCGのアルバイトの服を着用する彼は、見覚えのある顔だった。

 

「局員補佐の永近……?」

「何故ここに」

「いやー、どもッス」

 

 困惑したように笑う彼。20区で大学の講義がないタイミングで働いている、彼が何故ここに……?

 俺達の疑問に、丸手さんは鼻を鳴らして答えた。

 

「亜門、真戸。

 コイツは今日から『局員補佐』じゃなく『捜査官補佐』だ。使え」

「――は?」

 

 当の本人が疑問符を浮かべる。

 無論、俺達とて困惑は大きかった。

 

 意味がよくわからない、と続けようとすると「さっさと連れて行け!」と追い出される。アキラに促され、俺達はその場から外した。

 

 

 エレベータの中で、簡単に事情を確認する俺達。ともあれ、何らかの功績を上げたと言うことか。

 

「なんか俺もよくわかんないッスけど、よろしくお願いします」

「特等はああ見えて頭がキレる時もある。なにかお考えがあるのだろう」

「言い分酷いッスね」

「フィーリングだ。流せ。

 時に永近、腹は空いてないか?」

「あ、ちょーど良い具合に」

「ならば夕食はどうだ? 三人で」

「!」

 

 アキラのその言い様に、俺は思わず目を見張った。もっとも、

 

「亜門上等殿が奢ってくれるはずだ」

「!?」

「あ、いいんスか? でも20区じゃないと詳しくはないッスけど――」

「車で来たからな、送ってやる。上等はG3を頼む」

「……あ、嗚呼。わかった」

 

 困惑しながらも、俺は再度レッドエッジドライバーを腰に装着しつつ、1区の支部を出た。

 

 

 

 

 




亜門「一人千円までだぞ」
アキラ「ケチだな」
亜門「!?」
ヒデ「あ、なら中華屋なんスけど、リーズナブルなのありますよ?」

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