※すさまじくヤバイ誤字訂正
母校の小学校。冬休みぶりに会う先生は、真剣な顔をして僕に話しかけていた。
「結構辛いわよ? 教育実習って。履修は来年か再来年になると思うけれど、大変なら高校とかに変えたほうが良いかもよ? あっちは確か今だと介護が免除されてたような、されてなかったような……」
「もう少し時間があるんで、そこは検討してみます」
「いやでも、カネキくんが先生を目指すか……。永近くんとか、あの子とかに進められたの?」
「あの子?」
「あの、前髪の長い可愛い子」
そういう訳ではないけど、教えるのには向いてると言われた旨を話した。先生はどこか、感慨深そうに笑った。
その後少し話してから、僕らは教室を出た。夕暮れ、クラブ活動帰りの子供達が荷物を運ぶ。
その中に、一度やった朗読会に来てくれた子たちを見かけ、僕は手を振った。向こうも覚えていたのか、それとも先生とセットだったからか、手を振り替えしてくれた。
学校を出た帰り道、ヒデからメールが来ていたので、電話を返した。
『おー、カネキどうだった?』
「中々難しそうってのは分かったかな? 流石に見学とかはしなかったけど、参考にはなったよ」
今日は午前の授業だけを受け、午後は一度帰ってからまた出た。事前に昔の担任だった先生とアポイントをとっておいて、進路や教育実習に関して相談をした。
先生は迷惑がることもなく相談を受けてくれたけど、新しいクラスが始まってからそう時間も経って居ないだろうし、忙しそうだった。そんな中で僕と面会なんてしてもらえたのは、ちょっと申し訳ない。
でも結果的に一時間ちょっとの会話だったけど、事前にいくつかまとめておいて正解だった。
それから、ヒデが僕のフォローをしていたのを見て、クラス換えの時にも気を遣ってもらっていたことも知ったり。クラス換えにも神経を遣うことや、俯瞰した時点でどれくらい子供たちのやり取りを見なければいけないのかなど、広がった世界は未知の領域だった。
「耐震の問題なのか、ちょっと補強してあったりね」
『あー、あったなぁそんな話……。っと、ちょっと待ってくれ。バイト先から連絡だわ』
「バイト? 何かやってたっけ」
『最近ちょっとなー』
「あんまり危ない事はするなよ」
『へーきへーきだっての』
電話を切ると、僕は嘆息する。ああいってる以上は信じるしかないけれど、ヒデはヒデで好奇心でどこまでも足を踏み入れていくところがある。喰種に関してもそうだ。なので、もしその関係だったらこれ以上は踏み込んで欲しくないのが本心だった。
ヒデに今、僕がやってることを知られれば、そっくりそのまま返されるのかもしれないけれど。
電車に揺られていると、トーカちゃんからメールが届いた。
「今日どうだった?」というのと「勉強、いつ見てくれんの?」という内容に、僕は少しだけ苦笑い。
「もうちょっと待って欲しいけど、トーカちゃんも期末までそう時間もないか……」
カレンダーを確認しながら返信する。……考えたら去年の十月から勉強を見ているし、八ヶ月近くは一緒に勉強してることになるのか(僕が捕まった一ヶ月は除いて)。そう思うと、確かに感慨深いかもしれない。
今日はきっと、ヒナミちゃんはお店の二階だろうし。とりあえずお土産に本か何か買っておこうかな……? たぶんイチミさん達が相手してるんだろうけど。
そういえば。「6区」と言えば、以前トーカちゃんと依子ちゃんが一緒に動物園に行ったのもここだったっけ。駅を降りながら、そんなことを僕は考えていた。
駅前のショッピングセンターのビル近く。少し待っていると、待ち合わせをしていた人物が現れた――。
「やあ、カネキくん」
「月山さんー―」
挨拶もそこそこに、僕は待ち合わせの時間を聞いた。
「向かう先はバーだから、それなりに遅い時間帯さ。そうだね……、夜は僕の家の車で送らせよう」
「助かります」
「ノン! 気にせずとも。僕らは無二の親友なのだから」
そう言う彼の目がギラギラと輝いているのを、僕は見逃さない。ある程度は信用を置いてはいるけど、このヒトは基本的に僕を「食べる」ことしか頭にないのだ。警戒はしておいて損はない。
これだってある程度信用を勝ち取ろうという発想のものだろう。それに対する僕の対応は、ある程度厳しいものにしていた。
「駅前までで構いません。それ以上は駄目です。もちろん、使用人の松前さんを尾行に付けるのもナシでお願いします」
「……もちろんさ!」
今あった間は聞かないことにした。
以前、一回やられかけたのを覚えている。あの時は月山さんに連絡を入れないとテコでも動いてくれず、かなり大変だった(最終的にはチエさんの協力を得てことなきを得た)。
それよりも注視すべき点は。
「……バー?」
「嗚呼。聞いてなかったかい? かの六区のミスター・オルカは、その名の通りのバーを営んでいたそうだ。
そんな訳で、今日は色々と準備をしていた。来てくれたまえ」
ここら辺は学校の関係上、時折交渉を月山さんに任せているせいでもあったか。バンジョーさんに警戒を頼んでいることもあって、ある程度は自由に行動させきれていないことにも成功はしていた。
「いえ、あの来たまえってー―って、松前さん?」
「ご無沙汰しております、カネキ様」
月山さんに誘導された先の駐車場に、黒いワンボックスカー。運転席には彼の使用人である松前さんの姿があった。メイド服ではなく、今日は普通にスーツ姿。ただサングラスを頭にかけている様はどこかSPっぽくも見える。
「以前話していた拠点を作ったのでね。せっかくだから色々と衣装の準備をしたのさ!
向こうではムッシュ・バンジョイも仕付けを行っている。さあ、カネキくんも早く! タイム・イズ・マネーさ!」
「時間そこまでないと思うんですけど、一体――」
「嗚呼、君の服は以前、ボーイ・リオと出かけた際に作ってあるのさ! 気にしないでくれ。
今回は松前に任せよう」
いや、なんでリオくんと一緒に出かけてるんですか、月山さん。
しかし、思えば彼と僕も体格は似通っていたか……。
いや、というより、まさか衣装合わせで先方を待たせると言ってるのか、月山さんは?
社内で困惑しつつ、僕は運転席に話題を振った。
「あの松前さん。待ち合わせの時間を指定して、間に合わないって社会人としてどうなんでしょうかね?」
「一般的なそれはともかく、習様が必要と判断した以上、それは必要な時間です」
微笑みながらそんなことを言う彼女に、僕はもうお手上げだった。
衣装合わせを任せると言われていた彼女に対して、どうでも良いというのも断り辛い……。
月山さんが拠点と言っていたのは、以前は何かの店だった場所のようだ。ガラス張りの一階が少し目立つ。
二階に上がると、バンジョーさんが頭を抱えてソファに倒れていた。……何があったんだろう。後で確認をとろう。
「か、カネキ、よぉ……」
「こ、今晩は。どうしましたか?」
「あー、月山が……、いや、後で話すわ」
「さあ、バンジョイくん! 立ちたまえ!」
「カネキ様も、お召し物を――」
「へ? あ、ワイシャツから替えるんですか?」
結局は「巻きでお願いします」と頼んだ上で、高速で支度をしてもらった。
眼帯は以前、ウタさんから貰ったもの。ちょっと海賊っぽいイメージがあるデザインだ。そしてカツラは、逆変装という意味合いもこめて、あえて外してコーディネートしてもらった。
「ムッシュ、もう少し肩を――」
「だ、だから俺は良いって言ってんだよ――」
そしてバンジョーさんが、ひたすらに困惑してた。月山さんがジャケットを選んでいる間、ひたすらにバンジョーさんは固まっている。
結局、店のある裏通り近くまで松前さんに送ってもらうことになった……。頭が上がらない。でも月山さんの指示次第では、断固として対決しないといけないのが悲しいところだった。
さて、それはともかく。
車を降りる際、何処から持ってきたのか珈琲の箱詰めを松前さんに手渡されながら、急ぎ足で向かう僕達。
空は既に暗い。流石にトーカちゃん達も家に帰ってる頃合か。
「時間大丈夫かな……」
「ちょっとヤバいかもな」
「ノープロブレムさ。紳士は焦らないものだよ、二人とも」
「テメェは少し焦れよ! 大体テメェが色々やらせっから遅れたんだろッ。
てか俺はムッシュでもバンジョイでも――うをッ」
「バンジョーさん、足元気を付けてください。
やれやれ、今日が初対面だし怒られないと良いな……」
ノン! と月山さんは手で指をはじく。
「あくまでも真摯に対応するのが、今回の君のスタンスだろう?
向こうもう決して邪険に出来ない内容であるならば、後は相性というものさ――カネキくん?」
やがて行きついた先。bar"ORCA"と書かれた扉には「本日貸し切り」のプレートが。
何度かノックをすると、舌打ちと共に「どうぞ」と声をかけられた。
「お、お待たせして済みません……」
「ケッ。……てめぇが親玉か」
サングラスをかけた女性が、腕時計をちらりと確認して「ホントギリギリよ」と苦笑いを浮かべた。
※
室内に居た人間は、三人。
カウンターの奥に立ってるバーテン風のヒトと、サングラスの女性。そしてこちらと対面するように、ソファに座った男性。明らかにいらだっているのは彼だった。
「あ、これ粗品ですが良かったら」
誰が受け取るか、という男性。女性が一応「これはご丁寧に」と言って受け取った。
手前のソファに腰掛けようとすると、月山さんが「こっちさ」と言って、僕を一人用のソファに座らせた。背後に二人が並び立つ。
「……ちょっとこれ、エスメラルダじゃない! なんでこんな高いの――」
へ? と思わず僕は月山さんの方を確認した。
紳士のたしなみさ、と彼はウィンクして口元に人差し指を当てる。
「えっと、別に他意はないそうです」
「……じゃあ、とっととはじめろ。何で俺達に連絡を入れて来たのか」
「たぶん、こちらの月山さんが話したように、しばらく拠点を構える事になるかもしれないので、その挨拶というのが一つ。
もう一つは――」
これです、と言って僕は彼らに、あるリストを提示した。
「……なんだこりゃ」
「コクリアから脱走した喰種について、写し書き……、全部ではないんですが、ある程度です」
ちょっとした対価です、と僕は彼らに笑った。
食い入るように資料をなめるように見る彼ら三人。それだけで、どれほど彼らがその情報を真剣に受け止めているかが分かる。
それと同時に、僕は確信する――おそらく、予想は大きく外れてないだろうと。
「……
「その反応を見て、ある程度は確信できましたよ。
……素性は明かせないんですが、知り合いの情報屋からの提供によると、その脱走した喰種のうち一人は、”鯱”と呼ばれる喰種である可能性が高いそうです」
「「「!」」」
明らかに三人とも、こちらの話を聞く空気が変わった。
「僕は今、鯱さんに会いたい。だからここまで来ました。
コクリアに捕らえられているという情報を聞いたのは後になってからだったんですが……、現状調べた範囲では、こんなところです」
「……情報の信憑性は?」
「月山さん」
「うん」
月山さんは、胸ポケットから写真を一枚。そこには、巨大な胴体を持つ頭のない獣のような「赫子」と、それと戦う一人の男性の姿があった。身の丈は大柄、全身は鋼のごとく鍛えられていて、走る姿だけでも重量感が伝わってくる。長い黒髪が特徴的なそれを、ひったくるように手に取り男性は見つめていた。
「……完全には信用できねぇが、少なくとも鯱さんがコクリア襲撃の時に、一旦は自由になったってのは理解した。
なら何で鯱さんは俺たちの所に帰って来ないんだ?」
「そこまでは流石に……。ただ聞いた話では、コクリアを抜け出した喰種の多くは、アオギリの樹に引き入れられ――」
言葉を続けようとして、男性は僕の襟首を勢いよく引き寄せた。
眼前に、睨む彼の目がある。
僕は、出来る限り真剣に見つめ返す。
痛いのには慣れたけど、敵意を向けられることにはそこまで慣れたくない。だからこそ、今こちらの話していることは真実なのだと、分かってもらわないといけない。
彼の腕を掴もうと慌てたバンジョーさんを制して、僕は彼をじっと見つめた。
「……テメェは、鯱さんがそんな連中の仲間になった、と?」
「……僕は、鯱さんのことについて名前、以外知りません」
再びの沈黙。
サングラスをかけた女性が「いい加減止めなさいよ」と僕らを引き剥がした。
「アンタも大人げないわよ。気持ちは分かるけど」
「……鯱さんは、芯の通った喰種だ。無駄な殺しも暴れまわることもしねぇ」
「そうなのかも、しれませんね」
あっけなくそう返した僕が以外だったのか、男性は不可思議そうに表情を歪めた。
僕は一度深呼吸してから、店内を見回して言った。
「良いお店だと思います」
「あん?」
「かかってる音楽も、店内の明るさとかも。初めて入ったヒトでも、メニューもわかりやすく出来てます。
そして何より、僕の知るお店と少し似た感じがします。
……慕われてるんですね、鯱さんは」
バーテンをしていた男性が、その言葉に意外なものを見るような目でこちらを見た。
どことなくだけど、僕はここから「あんていく」に近いニュアンスを感じていた。喰種や人間の交流の場、とまではいかないけれど、やってくるヒトに対して受け入れてくれるような、そういった懐の深さのようなものを感じていたのだった。
そして――。明らかに店員たちは、鯱を慕っていた。その彼らがそう言うのだ。決してその印象は、大きく外れる事もないだろう。
仮定ですが、と僕は一度、前置きした。
「鯱さん、強かったんですよね。SSランクなくらいですから」
「……仮にも俺達のボスだ」
「なら、そう簡単に殺されている、という可能性は低いでしょう。逃げている可能性もある。
とするならば……、仮にアオギリに所属するようなことになってるとしたら、そうしないといけない『何か』があるのかもしれませんね。心当たり、ありませんか?」
僕の言葉に、三人とも顔を見合わせた。
僕と主に話していた彼が、舌打ちと共に「あの小娘……」とつぶやくのが、わずかに聞こえた。
畳み掛けるなら、今だろうか――。
「――神代リゼ。ご存知でしょうか」
ぴくり、と男性の眉が動いた。
6区のリーダー。コクリアに収容されていた「
神代――すなわちリゼさんと同じ苗字。
イトリさんはかつて言った。「神代 利世」という喰種は存在しないと。だが、神代を名乗る喰種は確かに存在している。
仮にどちらかが偽名だとしても、関係性を疑うことは出来る――。
少なくとも「懐の深さ」が似ているあんていくで、一時でもリゼさんを受け入れていたのなら。この場所にかつて、彼女が居た可能性も決して少なくはないだろう。
リゼさんの足跡をたどり、11区、17区、18区と場所を転々としてきた僕らだったけど、ここに来てかなり大きな情報を得たのだ。
数年間囚われていた鯱が、アオギリの襲撃により抜け出した可能性も実際高い。
彼ともし話すことが出来れば、リゼさんについて何か分かるかもしれない――。
脳裏にちらつく、黒と白の双子。
ひょっとすれば、嘉納先生の目的も何か、透けて見えるはず。
「はい、どうぞ」
バーテンから差し出されたカップを、サングラスの女性が僕らの手前に置いた。
「アイ・オープナーです」
「頂きます」
目の前の男性は、驚いた顔で僕を見る。僕は気にせず、それを口に含んだ。
――頭を殴られるような痛みと、消化物を口一杯に含んだような滑りと濃さが、思考を一瞬シェイクする。
どこかに苦味、柑橘系のそれを強めたような後味を感じたことから、たぶんオレンジが入っているんじゃないだろうか。
軽く頭を押さえながら背もたれに身体を預けると、三人とも唖然としたようにこちらを見ていた。
「どうしました?」
「……いやぁ、ねぇ?」
「……マジで飲む奴が居るか。気分だろこういうのは。
大丈夫かお前」
むしろ、剣呑だった男性にさえ心配されてしまうくらい、現在の僕は酷いらしい。
決してボケで飲んだのではなく、気分として口に含んだのがちょっと堪えたか……。相手の好意だと思って飲んだのだけど、あくまで喰種的には「見るだけで楽しむ」という扱いだったらしい。
思わず口元に手を当てて、僕は愛想笑いを浮かべた。
「あー、でも法的にはアウトですかね……? 大丈夫なんでしょうか? あれ、喰種だと人間の法律は……?」
「カネキ、何言ってんだ?」
「真面目に検討する場所ではないかと」
バーテンの男性が、ヒゲをさすりながら苦笑いを浮かべた。
「……テメェ、あの小娘とどういう関係だ?」
調子を崩された、と言わんばかりの表情を浮かべ、目の前の男性は頭をガリガリ引っかいた。
誤魔化しはしません、と僕は前置きする。
「説明は省きますが色々と……、浅からぬ縁があります。こっちの彼は、かつて一緒の区でした」
「……苦労したんだな」
なんでか、こちらに向けられる視線に同情の色が宿った気がした。
リゼさん、ここでも滅茶苦茶やってたのだろうか……。
「鯱さんと会いたいってのも、あの”馬鹿ガキ”に関係してるのか」
「はい」
「なんで、会いたがる」
「会って、話をしたいんです」
「何を聞きたい」
「リゼさんについて。後は……、ここのお店について?」
「……」
「一応、最後のは冗談じゃないです」
確かにお店を見て鯱本人に興味が出たのも事実だけど。決してお世辞とかで言ってることでもないと言わないと、なんとなく剣呑な彼には伝わってるか怪しい気がした。
「……悪いが、話せることはない。最近、只でさえ物騒だ。
CCGが7区にある嗜虐集団の喰種御用達レストランを潰したって話もある。おいそれと信用するつもりもねぇ」
しばらく沈黙した後、彼は僕らに出て行けと言った。
後ろの二人に声をかけ、僕らは店を出る。
去り際、カップを手に取りバーカウンターに返すと、バーテンの男性が少しだけにこりとした。
※
「良いのか、ト……、トーカサンに言わなくて」
「……今言ったら、絶対試験に差し障りますから」
ある種現実的な僕の回答に、バンジョーさんは「何か違ぇだろ」と言った。
バンジョーさん、たまーにトーカちゃんにしごかれているせいか、それともアヤトくんを思い出させるせいか、いまいち反応がちょっとビクビクしていた……。あれで二人とも、根は結構良い子たちなんだけど、そこは難しいところか。
「でも、リゼさんが強かったのは、ひょっとしたら鯱ってヤローのせいなのか?」
「さあねバンジョイくん。しかし教育が行き届いているのだろう、個々の能力も中々高い」
「結構、武闘派なんですかね。お店の感じからすると、全然イメージ出てこないですけど」
少しだけふらつく僕を支えながら、バンジョーさんは「そうか?」と疑問符を浮かべた。
「店の連中、身体運びが少し変だったぞ。絶対、普通じゃねぇ」
「成長してるようだねぇ、バンジョイくん」
「だからバンジョイじゃねぇっての、イはどっから出たイは。
しかし……、レストランか。カネキが話してた、双子の喰種だったか? それって何なんだろうな」
その言葉と同時に、不意に僕の脳裏に浮かんだのは――。
「……どうしたカネキ、左頬押さえて」
「……いや、胸だけじゃなく足もちょっと撫でる形になってたかなぁと」
「?」
首を傾げるバンジョーさんに、僕は苦笑いを浮かべる他なかった。
電波受信:in ???
クロ「・・・////」
シロ「どうしたの?お姉ちゃん」
クロ「いや、なんかわからないけど、急に思い出したというか・・・」
電波受信:in 霧嶋家(マンション)
トーカ「・・・なんか、帰ってきたらカネキぶん殴んないといけない気がする」
ヒナミ「・・・!?」(うつらうつらしながら)