No.10 リオwithあんていく ニシキさんとトーカさん
No.6 大レースバトル!in A with A 後半戦
※キャラ崩壊注意
※メタ発言注意
『10.エンタングル』
<――リオwithあんていく――>
今日の僕は、あんていくの非番。
カネキさんの協力の元、いつもなら
「大丈夫かなぁ、トーカさん」
お店を出る前、休憩室で見たトーカさんは肩で息をしながら、色とりどりの食物が所狭しと入れられた、人間のお弁当を食べていた。
大丈夫かと聞こうとしても追求は拒否するし、カネキさんなら何か知ってるだろうか……。
「待てよッ!! おい貴未!」
そんなことを考えながらの捜索中、というよりもその帰り道。20区へ向かう途中、ある学校? の入り口のあたりで、ニシキさんの姿を確認した。
彼は女のヒトと一緒に居て、何か口論したらしい。彼の制止を振り切って、彼女はどこかへと行ってしまった。
しばらく彼女の背中を見つめると、とぼとぼとこちらの、出口の方に歩いてくる。
「……あ゛?」
「こ、こんにちは」
「何やってんだシマシマ。こんなところで……って、探してんだったな。例の」
「あ、はい……」
「どうしようもなくなったら言えよ? 俺もまぁ、暇だったら少し手伝ってやらねぇこともねぇから」
色々と言い方が遠回り過ぎないだろうか、このヒト。
「んだよ。何ニヤついてんだよ」
「あ、いえいえ。……さっきのヒトって、恋人さんですか? ケンカしてたみたいですけど」
「チッ。何見てんだよ……。まーそーゆーことだ。人間だけどよ」
「へぇ……」
意外だ。なんとなくだけど、てっきりそういうのをとっかえひっかえしていたイメージがあった。あるいはみんな一緒に付き合ってるとか。
でもなんとなく、彼がなんであんていくで働いているのか。その一端を知ったような気がした。
「……オイ、何だその間は」
「へ? あ、いやいや、何でも」
「あー。たく……。
俺のコト良いっていう女居たらしくて、それで妬いてるんだよ。別にんなことどーでも良いってのに。そのうちどっか連れて行かなきゃ駄目だな、ありゃ。
レポート終わった後からご機嫌取りだ。ったくメンドクセー」
なんとなく、僕らは歩きながら話を続けていた。
「モテるんですね」
「へっ。まぁな。大体表面的なことしか見えてねーよーな連中ばっかだがよ」
「……あのヒトは、特別なんですね」
「ハァ……。
お前、付き合うなら喰種の女にしておけよ。色々面倒クセーことばっかだから。
記念日がどーのこーの、デートスポットも調べなきゃなんねぇし。知識ねぇからんなモン言ったって出てこねぇよ」
「トーカさんとか、学校に通ってると思いますけど……」
「ありゃ半分は人間の女みてーなもんだ。メンドクセーから止めとけよ。カネキ見てりゃわかんだろ」
「なんだかんだ言って、ニシキさんって真面目にそういうこと叶えようとしてますよね」
「うっせぇよ。テキトーだっての。ったくメンドクセー」
ニシキさんはそう言いながら、自販機で僕にも缶コーヒーを買ってくれた。
その時に見た手首のブレスレット。遠目で見た感じ、気のせいじゃなければあの女のヒトの腕にもついていたような気がする。
「仲直り、出来ると良いですね」
「シバくぞお前」
「なんで!?」
ニヤニヤ笑いながら軽くアイアンクローをかますニシキさんから、僕は軽く悲鳴を上げながら逃げた。
軽いじゃれあい、という感じではあったけど、戦闘態勢に入ってないと僕はあんまり強くないのだ。こういう恐ろしさには弱かった。
走っていると、不意にトーカさんの後姿を見つけた。
声をかけようかと思ったけど、彼女の隣にヒトが居たのを見て、声をかけるのをためらった。
僕やニシキさんには見せないような。かといってお客さん相手の作り笑いとも違う。そんな自然な笑みを、彼女は隣の少女に向けていた。
彼女たちは、同じ服を着ていた。ということは、つまりそういうことなんだろう。同級生、クラスメイト。
ただ、そういうよりは――普通に友達って言ったほうが、しっくりくる。
「でさ、アイツおかしいのよ。絶対何か隠してるって」
「えー、ホントに? ――」
……楽しそうだな。
学校か。……記憶の有無にかかわらず、そこはたぶん僕にとって未知のエリアだ。同年代の人間がたくさん集まって勉強している場所。まったくもって想像もつかない。
そんなところで、トーカさんはあの子たちと一緒に居るんだ……。
たくさん、人間のことも勉強したんだろう。じゃないと会話もかみ合わないはずだ。
あんていくでのツンとした一面でも、カネキさんの前で見せる照れ隠しの一面でもない。僕にとって今の彼女は、浮かべている笑顔以上に意外な一面だった。
毎日積み重ねているだろうその努力。彼女はとても頑張り屋だった。
「じゃ、またね。あ、これこれ。深夜に食べたくなったら食べて!」
「補習午後からなのにまた作ってきたのかよ……」
「せっかくだから彼氏さんと一緒に――」
「だー、もう違うっての! じゃ、またね」
「トーカさん」
「!? あ、アンタいつから――」
僕の存在に気づいて、明らかにトーカさんはあわてた。
「友達ですよね?」
「……悪い?」
「いえ。なんか、羨ましいなーって。楽しそうで。
でも、それ……」
彼女の手に握られている包み。たぶん中はお弁当箱が入ってるんだろう。
トーカさんは、それを隠すようする。
「馬鹿みたいって思ってるでしょ」
「いえ、そんなことは――」
そまま走り去る彼女。僕は今朝方、体調が悪そうにしていたトーカさんのことを思い出した。
「……友達が自分のために作ったものだから、がんばって食べていた」
それは……、何というか、哀しいなぁ。
トーカさんの優しさと、それだけで覆いきれない喰種の生き方が。
数日後。繁華街で。
「……おや? 君は先日の」
「!?」
前にヒナミちゃんと一緒に出歩いた日に、出会った捜査官の女性から声をかけられた。
「やはり君か。この間は助かった、礼を言う。父には好評で、後は本人用に作るだけなのだが」
「あ、いえ、どうも……」
「私は真戸アキラと言う。せっかくだ、礼もかねて軽食でも一緒にどうだ?
幸い時間が空いている」
捜査官の前で食事!? 何だその自殺行為は。
いや、でも変に抵抗したら危ないか? ヒナミちゃんが今日は居ないって言うのが幸いかもしれない。
レストランなんか行ったらそれこそ追い詰められてしまうので、僕はなんとなく、近くにあった喫茶店に足を運んだ。
……? って、あれは高槻泉?
「どうした?」
「あ、いえ、何でもないです……」
喫茶店の奥でパソコン? を広げて、彼女はなにやらカチカチとタイピングしていた。もう新作を作っているのだろうか……。
ウェイトレスのヒトに、僕はサンドウィッチを注文した。以前古間に伝授してもらって以来、いまだに時々練習している。味の判定含めて、ある程度はお墨付きだ。いくら捜査官でも、これを見抜くのはかなり難しい……、はず。
僕は珈琲とサンドウィッチ。アキラさんはチョコレートドーナッツとエスプレッソ。
「いただきます――」
手を拭き、両手にとって一口。
それと同時に口の中に広がる、この風味と味の酷さをどう形容したら良いだろう。舌にまとわり付く、この妙に臭みを伴う風味は……、塩だったか。後から来る何ともいえないまだるっこしい味わいは甘み。じゃきじゃきと弾力を伴い口の中にうっすら痛みさえ覚えるこれはレタス。そこからもれる水分が、ただの水とそう変わりないだろうに僕の口の中を不快感で満たす。続けて広がる、この吐瀉物めいた酸味。何だ、この独特なソースは……?
「なんだこれはぁ!?」
「!」
「野菜のシャキシャキ感、肉の旨みはもちろんだけど、全体を調和する、ほんのり香る風味……、あんまり体験したことのない味だぞ? ベースはサウザンっぽいけど、それでいてこう動物的な――」
味に付いて色々考えている僕に、アキラと名乗った彼女は意表をつかれたように妙な表情をしていた。
「そうだ、ブイヨンだ! 鳥のブイヨンをベースにしているんだ! だからこんなに美味しいんだ!
上手いことバランスがとれているんだ、よく考えられている!」
そんなことを言っていると、店の奥から店長らしきヒトが出てきて、僕の講評(?)に色々言ってくれたりした。将来は料理人になったらどうか、というようなことさえ言ってくれる。
しばらく店長と話した後、椅子に座ると彼女は微笑が引きつった。
「ずいぶんこだわりがあるんだな、君は……。いきなりしゃべったから、驚いたぞ」
「あ、いえ、すみません。どうにもこれには目がなくって。作るのはあんまり得意じゃないんですけど」
「ふむ。……喜んでくれたなら幸いだ」
その後しばらくして、なんとかやりすごして僕は彼女と別れる事が出来た。
なんとか乗り切った……。脳裏には魔猿様の得意げな顔が浮かぶ。
改めて思うのは、トーカさんはすごい。
僕は自分の身を護るためにこういうことをしたけれど……、彼女は自ら進んで、やっているんだ。友達のために。友達と居るために。
お店につくとすっかり夜で、トーカさんがちょうど出てくるところだった。
「あっ」
「……ん」
それだけ言って帰ろうとするトーカさん。僕は、なんとなくそれを呼び止めた。
「どした?」
「あの……、少し、一緒に歩きませんか?」
「……いいけど」
「カネキさん、今日は……?」
「なんか月山と一緒に出て行った。後でとっちめてやる」
「あ、あはは……」
「で、アンタは何か成果出たの?」
「んー、今日はいまいち……」
なんで一緒に歩こうと言ったのか。正直、僕にもよく分かってない。
ただ、なんとなく言わなきゃいけないような。聞かなきゃいけないようなことがある気がしたんだ。
以前に比べて、僕がマシになってきたと言うトーカさん。そろそろ研修もとれるんじゃない? と半笑いする彼女に、僕は聞いた。
「……トーカさん。僕は、馬鹿だって思わない」
「……?」
「前に、そんなこと言ってましたよね。人間の食べ物食べて、馬鹿だって思ってるだろって。
でも……、僕はそう思いません。だって、それだけ友達が大事で、友達の思いを無駄にしたくなって、思ってのことだから」
「……」
「そういうのって、すごく素敵なことだと思います。確かに僕らの身体には良くないのかもしれないけど……」
「……違うの、そうじゃないの」
トーカさんは、肩をすくめて、自嘲するように笑った。
「私は……、カネキにも言ってないんだけどさ? 人間みたいになりたかったの」
「……」
「ああいうことしてれば、もしかしたらいつか味覚が変わって、依子たちと本当に楽しむことが出来るんじゃないかって。結局、成果も何もないし。そりゃ、カネキでさえ味覚が変わってから、今まで戻ったって話も聞かないのにね。
みんなの中にいて、やっぱり思うのよ。私は――コイツらとは違うんだって。バケモノなんだって」
彼女の独白に、僕は言葉を続けられなかった。
「楽しかったけどさ。でも寂しかった。
形だけじゃなくって。私は……、私は、人間みたいになりたい。そしたら、依子たちのことももっと全部わかってやれるのに。本当に、友達になれるのに」
今みたいに、隠し事とかなくてさ、と。段々と、その語調が強くなっていく。
「そしたらきっと、もっと何かが見えてくるんだと思う。思いたいのよ」
「……」
「怖いのよ。一人になるのが。
カネキだって……、一人にしないでって言って。たぶんそれを聞いてくれたから、一緒に居てくれるんだと思ってるけど……。でも、それだっていつかふらっと、居なくなってしまうような気がする」
「……カネキさんのこと、好きなんですか?」
「……わかんない。たぶん、そうなんじゃないかって思う気もするけど。依存してる気もする」
居た堪れない、という顔をして、トーカさんは下を向く。
そして、僕は気づいた。嗚呼これは――嫉妬だ。たぶん嫉妬だ。
怖いところもあって、弱いところもあって。でも誰より人一倍頑張り屋で。カネキさんや店長に次いで、存在が僕の中で大きいというのもあるかもしれない。でもそんなひたむきな彼女の姿が、僕には眩しい。
でも、だからこそ僕は――。
「僕は、トーカさんが好きです」
「……え?」
戸惑うような彼女に、僕は「大丈夫」と続けた。
「だから、きっと大丈夫ですよ。カネキさんも、たぶん」
「……」
「トーカさんのそういう、ひたむきなところが僕は好きですよ。
だから例え全部が全部、純粋な好きとかじゃなかったとしても、努力して、きっとなんとかなります」
言いながら僕は、意識がはるか遠くに引っ張られるような錯覚を覚えた。
左目の奥の痛みなんかとは違う。身体が鉛のように重く、言うことを聞かない。腕なんかぶるぶると震えて、声もちょっと変になってきが気がする。
まるで、自分の身体が自分の身体じゃないみたいだ。
それでも、僕は笑顔を浮かべた。カネキさんがそうしているように。
しばらく押し黙ってから、力が抜けたような笑みを彼女は浮かべた。
「……ありがと、リオ」
「……いいえ!」
また明日、あんていくで。そう言って、彼女と僕は別れた。
マンションに向かう彼女を見送りながら、僕は電柱に身を預けた。
しばらく、ここから動けそうになかった。
隠し事をして、それを貫き通すってホント、大変なんだなぁと。僕は改めて、自分の好きになった
ちょっと、涙が零れた。
――――――――――――――――
『6.ルール無用さ? なんたって・・・』
<――大レースバトル!in A with A 後半戦――>
「大レースバトル、in アオギリ with あんていく~~~~!」
いえーい、だのひゅーひゅー、だのという声が、2つに分かれたチーム内部から叫ばれる。なおたまーに「まだやるの?」「トーカちゃんまぁまぁ」「茶番」「前回のアレどういうことだよカネキィ!」「トーカちゃんいけいけドンドンよ!」だの色々な呟きが漏れ聞こえていた。
そんな中、廃墟に臨時的に設置されたようなステージの端、司会者の女性はマイク片手に頭を下げた。
「このコーナーは私、高槻泉が司会を務めさせていただきます!
解説は芳村さんです!」
「どうぞよろしく。」
「さて! 今回の種目はこちら!」
ぱちん、と指を慣らすと廃墟の壁面に文字が映される。
――障害物二人三脚ー―
「また変化球で来ましたね」
「並の変化球ではありませんね。ん? ……なるほど。途中で私も抜けますので、その時はお願いします」
「あいさがってん。さて、今回の出場は各チーム三組ずつ! 助っ人は喰種に限り可、ということで、こちらのメンバーです!」
あんていく陣営からは、カネキとトーカ、古間と入見、そしてまさかの西尾と月山。
アオギリの樹側からは、ノロとタタラ、ナキとアヤト、そしてまさかのガギとグゲ。
「おやおや、瓶兄弟とか適任だと思ったんだけど出ないんですかね? 芳村さん」
「一応、本編で死亡扱いになっている人物は出せないシステムなのでしょう」
「なるほどなるほど。しかしそれでもガギとグゲというのは……。:reの時系列から引っ張ってこれなかったんでしょうか?」
「前半戦のミザくんの反応のせいでしょうね、おそらく」
「なるほどなるほお。さて、それでは各選手の意気込みをどうぞ!」
「吼え面かかせてやるよ、眼帯ィ」
「アニキィ、見ているかァ!」
「ふはははははは! まさにうってつけさ。掘ィ! 写真を頼むよ!
さて、足を引っ張らないでくれたまえ西尾くん!」
「あ゛? なんで俺がこんな奴と……。カネキ、行けそうか?」
「小学校の時、そこまで悪くはなかった、かな? ヒデが二回走ってくれたっけ。
トーカちゃん巻ける?」
「(カネキと二人三脚!? カネキと二人三脚!! 汗かいてんのに密着ってそれ――)
……まぁ、大丈夫なんじゃない?」
「どこで道を間違えたのかしらねぇ、あんなにお花咲かせちゃって」
「まぁまぁ、僕らと違って平和で良いじゃないか」
「ググ」「ガギ」
なお月山の台詞の後、会場から「おっけー任せてー」という気の抜けた声が聞こえるが、撮られる写真が必ずしも月山本人の意図したものである保障はどこにもなかった。
「さて、では各選手スタート位置に……? おっと!? ここでまさかの乱入者だ! 君達は一体誰だ!」
高槻泉の進行中に、突如ステージに飛びこんできた二人。黒と白のライダースーツに身を包んだ少女たち。髪まで色違いで、顔にはそれぞれ同じような顔をした男の子と女の子の仮面をつけている。
そして両者が、突然謎のポーズを決めた。黒は拳を握って構えて片方を腰に当て、白はそれに背中を合わせて。
「初代プ○キュアのごときポーズ、ありがとうございました。それで、お二人は……?
ふむふむ、なるほど。今回のレースに参加したい、と。それってひょっとして優勝商品目当てかな?」
選手達の中、カネキと肩をくっつけて少し顔を赤くしていたトーカが首を傾げる。
「そうそう。あれ、言ってなかったけ? 今回の後半戦、優勝者はなんと、ジェイル後の本編においてちょっと立場が優遇されるっていう――」
高槻の言葉に、カネキを覗いた一同に電流走る。
特に何か言葉を言ったりする訳ではないが、あきらかに全体の纏う雰囲気が変化した。より、刺々しいものに。
唯一さほど関係ないカネキが冷や汗をかくなか、謎の熱気を伴った一陣が位置につく。
「さ、それでは位置について、よぉい――ドン!」
ピストルの光、音と共にフラッグが振られ、選手たち各々が走りはじめる。息ぴったりのガギとグゲ、白と黒の乱入者コンビ。それらに続くのがタタラ、ノロコンビである。
それに遅れるはカネキ、トーカのペア。「大丈夫?」と気遣うカネキにトーカがひたすら無言で顔を逸らしているのが、微笑ましいと言えば微笑ましい。
「さてさて、この調子で進むは第一関門、喰種クイズだあああああ!」
「クイズですか?」
「そう! バラエティで同じみ、正解だと思うプレートに突っ込むアレです。正解なら普通に素通り、不正解なら……、フフッ」
高槻泉の含み笑いに、会場のギャラリーが震えた。
「問題は三問! 選択肢は三つ!
それでは行きましょうまず第一問! 原作『東京喰種』において、主人公である金木研は自身の変化をある有名な小説に例えましたが、その例えに使われた小説のタイトルは?
1.変態。
2.変身。
3.変幻。
正解は一つ! さあどれだ!?」
それぞれの回答が描かれたポップ。まず黒と白の二人は一時的に留まり、考える。
ガギとグゲはそんなことお構いナシに1に突っ込み、そして落とし穴のようなそれの中に落ちて――。
「ちなみに中は、アオギリの死神ドクター特性の赫子蟻地獄になってるから、充分注意してねー」
「「「「「!?」」」」」
蠢く赤黒い何か、口のついたそれの正体が赫子だと分かり、そしてその異様な姿のものにがんじがらめにされ動けなくなっているガギとグゲに、一同騒然。ガギグゲー! というナキの叫びもむなしく、あっという間に二人は底に飲まれていった。
もっともその二人の失敗を見て、黒と白のライダースーツのコンビは2に激突した。
「――飛び入りのお二人、大正解! 正解はフランツ・カフカの『変身』! ベルトも何もなく突然巨大な虫となってしまった青年と家族との軋轢と哀愁が、未だにどこか突き刺さるものがありますね~。個人的に安部公房とかもすきだけど。
さてでは第二問! 『東京喰種』~『東京喰種:re』までの主要人物の中で、喰種とある意味深い接点を持ちロクな目に遭ってない人物の名前には、ちょっとした共通点があります。それは次のうちどれ!
1.花。
2.悪魔。
3.金属。
正解は三つに一つ! さあどれだ!?」
再び足を止める黒と白のペア。後から追いついたタタラ、ノロの二人もまた足を止めて観察する。
と、遅れてやって来たカネキとトーカのペア。問題を見てカネキは、一瞬その表情(というか髪型や容姿)を本編未登場の佐々木のそれに変化させ、3番の扉を突き破った。
「――カネキくん、大正解! 流石主人公! ちなみにこれは本作作者の見たてた範囲では金木研、亜門鋼太朗、鈴屋什造、瀧澤政道、不知吟士に該当します。それぞれ金、鋼、鈴、青銅、銀にちなんでるって感じかな?」
「カネキくんは金木犀、捜査官の彼は悪魔アモンと全く外れている訳でないところもあるみだね」
「それでは第三問! 霧嶋トーカ選手も赤くなっている場合じゃないよ!」
「あ、赤くなってねーし!」と絶叫に驚いた表情を浮かべるトーカ。バランスを崩してよろけ、カネキの半身に抱き付くようにバランスを取りながら、なおのこと顔は照れる。
そしてそれを無視して、司会者は問題文を読み上げる。
「原作『東京喰種』と本作『仮面ライダーハイセ』において、書いた後に一番作者が後悔した変更点は次のうちどれ!
1.ヤモリのキャラ付け。
2.リゼの過去。
3.
「「「「「わかるかっ!?」」」」」
一斉に突っ込まれようとも、高槻泉は余裕の表情。月山あたりは露骨に「
そして3番を読み上げた瞬間、トーカがぐらりとその場で倒れかかった。
「おやおやどうしたんですかねぇ霧嶋トーカ選手? 選択肢のどこかに反応しちゃいましたかぁ?
あ、もしかして3番ですか? 3番。だってねぇそりゃ――」
「何言ってるんだ司会者! っていうか、違うし!」
「へ? ああ、つまりキッスは作者的にはおっけーだったと? 自分の恥を忍んでよく言えますねぇ。まぁ確かにここの作者もニマニマ笑ったり悶絶したり時に絶望にゴールしたりしながら書いたりしてるみたいですけどぉ」
「だから違う! い、行けばいいんだろ行けば!」
「と、トーカちゃん!?」
カネキの静止を振り切って、3番に走るトーカ。もっとも走る途中でバランスを崩して倒れ、一緒に壁の向こうにダイブする形になった。
そしてその向こうには――。
「あ、言い忘れていたけど最後の扉だけ、不正解はトリモチ式だから」
「な!?」
赫子よりははるかにマシではあるが、どちらにせよ動けないカネキたち。特にトーカはカネキにダイブするような体勢で絡まっており、動こうにも動けずもう軽く(色々な意味で)死にそうである。
対するカネキはといえば、すぐに戻ろうともがいているもののやはり餅に苦戦。赫子を出せば良いだろうが、しかし――。
「高槻先生、ひょっとしてこれ抑制剤とか入ってませんか!」
「ビンゴ!」
そんな訳で、自力、腕力により脱出せざるをえない状況だった。
対して飛び入りコンビも躊躇する。無論、Rc抑制剤が混入されているという情報からだ。
だが、そういう場に躊躇なく突撃する 者が二人。
「アニキイイイイイイイイ!」
「ば、バカナキ、ちょっと待て――」
アヤトをやや引きずりながら走るナキ。そのままヤモリと書かれた扉に激突!
「ー―正解! ナキ選手お見事!」
しかも、なんとこれが正解であった。
はっとしたように再び走りはじめる黒白コンビ。タタラとノロは、特にタタラがなんだかもう面倒そうだ。
それから離れた距離で、突如、爆発音が鳴る。
「――ああっと! 入見カヤ選手、ついに赫子を使ったぁ! 背中に展開される四つの羽赫! 前傾姿勢で走る姿はまさに死神の狼! すでに愚らんぐらんとなりかけながらも、尾赫できっちり掴まっている古間選手に付き合いの長さを感じます」
「仲の良さ悪さはともかく、息だけは合ってますからね」
「さーさーいよいよラストスパート! 勝利の栄冠を手にするのは、果たして、果たして――!
あーっと! 今、古間&入見ペアがゴオオオオオオオオオオル! 優勝はまさかの、序盤スローテンポだったこの二人に決定だ!」
一気に追い上げた二人がゴールを飾る。さり気に古間がカメラに向かってウィンクしているのが鬱陶しい。
続いて黒白のペア。ずっと目立たずいがみ合いながら走っていた西尾&月山ペア。遅れる形でナキ&アヤトペアという順番になった。
多少時間が経ち閉会式。
関係のないメンバーや乱入者二人、タタラなど「アホくさ」と肩をすくめてこの場を去った面々以外が残る。
「さーて、今回はちょっと意外な結果になりましたが、解説の芳村さん、どう見ますか?」
「カネキくんを有効活用できなかったのが問題でしょう。この手の企画のクイズ勝負で負けナシだったカネキくんですからね。たぶんトーカちゃんが本調子じゃなかったのも大きいかと。
ともあれ二人とも、優勝おめでとう」
芳村の言葉に、古間と入見は軽く手を挙げた。片方は「ふふん、当然さ」と。もう片方は「疲れました」と。
優勝コンビ二人を前に、何故か古間の方を見て舌打ちをする高槻。「何か?」と言われても、すぐさま営業スマイルを浮かべる。
そして前に出て表彰しようとして――ちらりと二人の足首を見た。
「あれ、千切れてますね」
「おや?」「あら?」
「んー、と、ちょっと待ってください。確かルルブが……、あー! えっと、ルール上本競技は『二人三脚』なので、足が四本になった時点で失格、とのことです」
彼女の言葉に対する驚き方の小ささが、年齢を感じさせる。
しかし、これには会場に残ったメンバーがざわざわとした。優勝商品どうなるんだ、とか、じゃあ誰が勝ったことになるんだ、とか。
「えー、えー、審議の結果、優勝は第二位ということになるそうです。さて……? あれ、居ませんねぇ」
既に立ち去ってしまった二人組の乱入者たちである。「仕方ないので、後日お渡しします」と言って、軽い感じでその場を締めた高槻泉だったが――。
まさかそれが後々、本作本編にまで引っ張るネタだとは、この時は誰も思ってはいなかった。
黒「へっくしょん」
白「お姉ちゃん風邪? ……へっくしょん」
締めがそれかよ、という感じですが、ネット版外編は以上となります。正式に各回のナンバリングタイトルを並べると・・・?
後1、2回、何か打ってから無印後半行きます