「さ、サンドウィッチ……?」
「喰種としてのレッスンだ。やって見せよう」
お店で正式にシフトに入る前。
店長は僕の目の前で、それを実践してくれた。
レタスチーズサンドを手に取り、かじりつく。
数度咀嚼しながら頷きつつ、飲み込む。
「……すごく美味しそうに見えます」
「じゃあ、やってみたまえ」
ちなみに僕が食べた際のリアクションは、ちょっと省く。……トーカちゃんが大爆笑していたというだけで、自ずと結果は知れるだろう。
「普通にマズいじゃ駄目なのかよ……ッ、しかもそれでも飲み込んでるし……、くくっ」
「ふふ。なかなか表現に富んでるね。
……コツとしては、食べる、のではなく飲み込むこと」
口内全体に不味さが広がるより先に飲み込む。咀嚼はふりで10回前後。
あとは演技を表情付けをするらしい。
それが一番難しそうだと、直感的に僕は思った。
「練習すれば、いずれ友人と食事もまた出来るようになるだろう。味は、保障しないがね」
「……頑張ります」
でも、その一言だけで力が入るあたり、我ながら結構現金だった。
「私、先に行ってます」
「じゃあ、しばらく練習しようか。本当なら吐き出した方が我々は健康的なんだけれど、君はおそらく大丈夫だからね」
「お、お願いします……」
もっとも、その練習も十分前後くらいしか持たなかったのだけれど。
でも店長は「初めてにしては進歩したね」と笑ってくれた。
下の階に下りる前、僕はあることを聞いて見た。
「……ところで店長。このバックルって、一体何なんですか?」
「クインケドライバー。……ある種類の"喰種"の能力を押さえ込む為に開発された、CCGの道具だ。
もっとも採用はされなかったようだけどね」
「へ?」
「君も見たろう? 私の変身した姿を」
脳裏に蘇る、リゼさんと仮面ライダーとの戦い。
「装着するだけで、我々は赫子の元となるRC細胞の活動を、著しく押さえられてしまう。
だが代わりに、その状況を精神力で克服すれば、普通の喰種ではありえない力を身に付けることが出来るようになる。まあ、普通はやりたがらないけれどね」
当面、食欲が押さえ込めないような時はそれを装着なさい。
そのアドバイスは、ある意味僕にとって救いのようでもあった。
「ただし――同時に、角砂糖状のものか、必ず肉を食する事。押さえているだけであって、なくなったわけではない。肉体が渇望している以上は先延ばしにしかならないことを、忘れてはいけないよ」
「……はい」
同時に釘を刺され、僕は少し肩を落した。
下の階に下りると、トーカちゃんが僕を面倒そうな顔して手招き。
「お、おう! カネキィ! 暇だから遊びに来てやったぜ!」
「ヒデ! 東洋史のレポートどうしたんだよ」
「終わってないぜ☆ ってか、ずっと休んでたお前が終わってるって方がおかしいんだっての!」
ツッコミを入れるヒデに、僕は少し胸が軽くなったような錯覚をした。
ああ、これが日常だ。僕とヒデがいる、平和な日常。
ただトーカちゃんが「頭良いのか?」みたいな目を向けて来るけど、それには肩を竦めておく。
実際問題、精神的に鬱屈していたから、現実逃避がてらノートの写しを見て、ずっとレポートしていただけだ。
カプチーノをトーカちゃんに頼んで、ヒデはそれとなく僕に話しかける。
「さっき霧嶋さんにお礼言っておいたけど、お前も言っておけよ」
「?」
「アレだよ、アレ。『車の事故』に巻き困れて、俺等大変だったって話しじゃん。西尾先輩まだ入院中らしいけど、俺達は霧嶋さんが看病してくれたって話しだしさ」
「あ、うん。……わかってるよ」
カバーの情報を信じ込んでるように、ヒデは僕にそう言う。
事故のことは覚えてないと言う彼の言葉を、どこまで信じていいものか――いや、駄目だ。だって、ヒデは友達なんだから。
友達の言ってることを信じられないようじゃ、僕の人生はたぶん真っ暗だ。
出来上がったらしいので取りに行くと、変な顔したウサギだか猫だかわからない絵をクリームに描きながら、トーカちゃんは続けた。
「バレないようにしろよ、あのツンツン頭。店長が何考えてるかわかんないけど、本当はあんなの、あり得ないから」
人間を看病することは、イコールで
それを示しながら、彼女は僕の目を見る。
「もしアイツ気付いたら――その時は殺すから」
「……あの、依子ちゃんみたいに?」
一瞬、その手が僕の首に伸びかけて、しかし場所を思い出したのか彼女は躊躇した。
「妥協してくれてるっていうのは、わかるよ。ただ……、ね」
「……アンタに致命傷を負わされたニシキが、アンタらを襲わない保障なんてないのに」
「その時は、僕が命に変えてもヒデを守るよ。
まあ、ちょっとまだ弱いけどさ。……それくらい責任が、持てるようにはならないと」
「……チッ」
舌打ちをして、トーカちゃんは僕から顔を背ける。
「…………なんで、こーゆーとこばっか似てるのか」
「?」
「なんでもない。ほら、持ってって」
突き出された珈琲カップを、僕は慣れない手つきで運んだ。
※
人生初のアルバイト生活だったけど、やっぱりというべきか、慣れない。
もちろん労働が初めてっていうこともあるけど、それ以上にこれが文字通り、僕の生活に直結しているのだ。人間として生きるため、喰種として隠れるため双方に。
だからこそ、働いてる緊張感はそこそこ出てしまうわけで。
……逆に大学の講義が、想像の倍以上はかどるのは想定外だった。
霧嶋さんの勉強を見はじめると、普通に彼女も勉強はできると思った。ただ公式を覚えたりするのが苦手な気がする。
読解力は、たぶん人並み以上。
僕の高校時代の成績より良いかもしれない。
「はい、いらっしゃいませ!」
「あら、新人さん?」
そんなことを考えながら食器を洗ってると、親子が来店してきた。
綺麗なお母さんと、可愛い女の子。十二、三歳くらいだろうか。
「笛口です。ほら、
「あっ! ……、こんにちわ」
「こんにちわ、ヒナミちゃん」
「……ッ」
顔を赤くして、お母さんの背中に隠れる女の子。
人見知りがちょっと激しいかな。
「――あ、リョーコさんにヒナミ! いらっしゃい。店長二階で待ってます」
「あらトーカちゃん。じゃあ、行くわね」
あんていくの奥へ進む二人。それを見れば、嫌でもその素姓に想像が付く。
「……店内で話したりしないの? お客さんなのに」
「……へぇ、勘は悪くないじゃん。でも、”荷物”受け取りに来ただけだし」
「荷物? って、えっと、たぶんだけど……」
「……そ。アンタや、アタシらと一緒。狩れないから、自分で」
トーカちゃんの場合は、あんていくに所属してるからという意味で。
僕の場合は、倫理的にもそれが許さないし、そもそも出来っこないしやる気もないから。
なのに、それはどういうことだろう。
「何か決まりとかあるのかな。他にも。女性限定で駄目だとか、色々」
「ぴょんぴょんうっさいんだよッ、知りたきゃ直接聞け!」
その表現は如何なものだろう。
「そーゆー喰種もいるって、そんだけ。メンドクセーなッ」
それだけ言うと、トーカちゃんは足早に進んで行く。
「……ヒトを”狩れない”喰種?」
その言葉は、どうしてか僕の頭にこびりつくように残った。
※
「えっと、マスクですか?」
「そう。仮面だね。君もそろそろ一つ持って居た方が良いだろう」
「それって……」
なんとなくだけど、脳裏に過ぎる「仮面ライダー」の文字。
あの夜、姿を変えた店長の顔には、フクロウのような、あるいは哲学者のような仮面が装着されていた。
「トーカちゃん。次の休みに、カネキ君のマスク作りに付きあってあげてくれないかな」
「は、はぁ!? なんで私が休日に、こんな奴と!」
照れ隠しとかじゃない。凄い嫌がりようだ。好かれる様なことをした覚えも無いし、印象が最悪である自覚もあるけどさ。
ところが店長は「その休日に勉強を見てもらったりしていないかい?」と切り替えして、ぐぬぬぬ、と彼女の口を封じたりしている。
「カネキ君一人じゃ迷子になるかもしれないし、ウタ君と二人きりじゃ、慣れてないと怖がっちゃうでしょ」
「……た、確かに私も最初はヨモさんと一緒でしたけど。でもまだマスクなんて必要は――」
「四方君からの情報だ。捜査官が二人、
「「――ッ」」
僕とトーカちゃんは、息を呑んだ。
喰種捜査官。小説やテレビでも取り上げられたりする、喰種専門の対処を担当する捜査官だ。無論それには、喰種殲滅という任務も含まれているはず。
「万が一を考えれば、すぐにでもあった方が良いしね。頼むよ」
「……おい、クソ野郎」
僕の方をじろりと睨んで、というか、ホラー映画じみた笑顔を浮かべて言う。
「土曜午後4時半に、新宿東口。
遅刻したらぶっ殺すから」
とてもじゃないが、まともな反応が返せなかった。
そんなことがあって、今日こそがその土曜日。
時間は既に、一時間くらい遅れてる。
「……何かあったかな?」
純粋に心配になる。店長があんなことを言った以上、警戒してしかるべきだろう。まあ警戒した所で、僕が役立つかはまた別な話なんだけど。
と思ったら、ごん、と尻を蹴られる。
倒れるくらい強くやられたので、普通に倒れる。生憎と普通、文系の学生は貧弱なのだ。
「「……」」
軽く睨み付けられる。そして僕も言葉が出ない。
「……の、飲む?」「……お、おう」
ミネラルウォーターを手渡したら、不承不承という感じでもらってくれた。
ともかく、無事で何より。
歩き飲みしながら、道中の彼女はひたすら無言だった。僕の方も気の利いた会話をできるだけのコミュ力もないのだけれど。
しかし……、こうして見ると、私服が新鮮だ。
ヒデじゃないけど、元々彼女は可愛いのだ。ちょっと年下ではあるけど、多少はドギマギしそうになる。
そして、こうして見てると、とてもじゃないが喰種だとは思えない。
普通の、可愛い女の子って感じだ。
「……何?」
「へ? あ、えっと……、今日どうしたのかなって」
「アンタに関係あんの、それ」
凄まれても困る。
「一応、店長も言ってたしさ。物騒じゃん、だから何かあったのかなーと、心配してたんだけど……」
一応本当のことを言うと、彼女は顔を背けながらも口にはしてくれた。
「……友達と、遊んでた」
「友達ね」たぶんあの子だろう。
「カラオケボックスに、あれほど水が頼めることを感謝したこともなかった」
「あはは……。ちょっと、延長したのかな、じゃあ」
「ねだられた。……悪かったよ、連絡できなくて。
っていうか、そもそもアンタのアドレスなんて持ってないし」
「あー、そうだね……。じゃあ、後で交換する?」
「……あ?」
再度の恫喝。流石にそれ以上、僕も何かを言う事はできなかった。
いや、それでも連絡先の交換くらいは悪く無いと思うのだけど。実際、「こっち」関係の連絡先は店長のアドレスだけだし。古間さんとかは、仕事が忙しくてシフト代わるタイミングで聞きそびれてたし。
トーカちゃんの案内する道は、どんどん複雑になっていく。
複雑というより、あまり一般的なヒトを寄せ付けないというか。
階段を下りて行くと、ショットバーのような、独特な店構えの場所に。
「ここ」
「……見るからに、えっと……」
「気持ちは分かる」
少しだけ意地悪そうに笑うトーカちゃん。
扉のリングを持って、二度叩いてノック。
室内は、外同様にちょっと趣味が……。ゴス系? 僕としては、あんまり受け付けない類のものだった。
「ウタさーん、いますかー?」
反応はない。
壁にかけられた、ピエロのようなマスクを見る。こういうのが、店長の言ってた――。
「う、うわああああああああああああああああああッ!」
そして、そのマスクの下にあった、布がかけてあった人形? が立ち上がり、僕は腰を抜かした。
倒れる僕の顔を覗きこむ張本人。心臓に悪すぎる。
「だいじょうぶ?」
「……ウタさん、何やってんですか」
「サプライズ。びっくりさせようと思って」
この店の店主と言われて納得が出来る、独特な服装の店主。
体には所々タトゥーが入れてあって、瞳は、完全に僕等の赫眼のそれだった。
そのまま何をすることもなく、ウタさんというらしい彼は店の奥へ。
倒れたまま動けない僕に、ため息一つついてからトーカちゃんは肩を貸してくれた。
「――ウタさん。私達のマスクを作ってくれるヒト」
「ウタです……」
なんだか、調子が読め無いヒトだと思う。
しっかしピアスにタトゥーに、眼が常時っていうのも怖い……。一応名乗りはしたけど、我ながら震え声だった。
彼は僕の顔を下から覗き込み、一言。
「変わった臭いがするね」
反射的に西尾先輩のことを思い出す僕。
「……ウタさん、そいつ怖がってる」
「あ、ゴメンゴメン。君のマスクが要るんだよね」
「あ、はい。お願いします」
「ふぅん……。芳村さんとか蓮示から聞いたけど、ハトがうろついてるんだってね。
「!」
そして、その一言が聞き捨てならない。
あれで、大人しい……? いや確かに僕等は喰種のことを意識しないで生活できていたわけだし、リゼさんというイレギュラーがなければ一生気付かないでいたかもしれないのだけど。
それでも、西尾先輩みたいなヒトがいるあの場所が大人しいのか?
僕の反応を見て、ウタさんは言う。
「そっちは平和だよ。”あんていく”が管理してるっていうのが大きいんだろうね。1区から4区なんて人が住むところじゃないし、13区は血の気も多いし。
あー後、共食いとか、見ていく? 結構ウチでは見モノだけど」
それは、流石に遠慮します。
座ってと言われて、僕は彼の手前の椅子に腰を下ろした。
サイズを計りながら、ウタさんは丁寧に下絵のようなものを複数描きつつ、僕の顔の、というより骨の輪郭を確認していた。
「質問いい? ゴムとか金属とかのアレルギーは」
「と、特には。あー、でも全体を被うタイプはちょっと」
「うん、うん。それじゃ大仏は無しだね」
大丈夫なのか、このヒトに任せて。
「……眼帯かわいいね。好きなの?」
「いえ、えっと……、こっちの眼が全然制御できないので。空腹が強くて」
「お腹一杯にしないの? 食べる?」手元で目玉をゴロゴロしないで下さい。
「え、遠慮します」
「んん、じゃあ何聞こうっかな。……彼女とか居る?」
「え!? い、居た事もないですッ」
「んー。……カネキ君は、アレだよね。お姉さんタイプ? 甘えたいっていうか、可愛がられそう」
「ど、どうなんですかねぇ……」
言われて気付いたけど、本性を現す前のリゼさんとかも、確かにそういう傾向はあったかもしれない。
あくまで、傾向があるってだけだけど。
「カネキ君としては、年下より年上?」
「いや、同年代であれば、そこまでは……。結構ぐいぐい来ますね」
「そっちの方が、モチベが上がって良いのが出来るからさ。
そういう意味じゃ、トーカさんとかどうなの? 可愛いし、格好良いし」
「へ? あー、いや……」
確かに怖いけど、優しい部分もある。
でも、僕個人は嫌われてばっかだと思うし、そこのところどうなんだろう。
「……いえ、彼女は、きっと強いから」
「ん?」
「よくわかんないです」
「強い、ね……。ぼくは努力家だと思うけどな」
「努力家?」
ウタさんは、トーカちゃんの方を見ながら小さな声で僕に言う。
「”あんていく”皆がそうだと思うけど、終わりの無い綱渡りなんだよね。僕等が人間社会に、隠れて共存するっていうのは。一瞬で全てがゼロになるのに、人間と関われば関わるほど、横の風も綱の震えも大きくなる。
そういう意味じゃ、トーカさんはずっと、すっごく細い綱の上を歩いてる。
仕事も、友達も、学校生活もね」
「……ですね」
そうだ。考えてもみなかった。僕なんかよりずっと喰種なのだ、彼女は。その上で普通に学校生活を送ってるなら、そこにかける緊張感とかは並じゃ利かない。
「……自分たちの身を危険にさらしてまで、誰かと関わるって、どうしてなんでしょうね」
店長に聞きそびれた事を、僕はこの場で口にした。
ウタさんは少し考えてから答えてくれた。
「何だろう、確かに人里離れた方が安全なんだけどさ。……でも、ね。
たまーに人間のお客さんとかも来て、常連さんも居るんだけどさ。
うまく言えないんだけど……、ドキドキして、楽しいんだよね」
そうして際寸が終わり、僕らは夜道を歩く。
「……アンタさぁ、ウタさんに完全にビビってたでしょ」
「さ、最初はね。……でも、良い人だよね」
でも、そんなあの人でも人を殺して食べているんだと言うことが、どうしてか受け入れるのが難しい。
ふん、と鼻で笑うトーカちゃん。気のせいじゃなければ、ちょっとだけ僕に歩調を合わせてくれたようだ。
「……あ、そういえば今日行ったマスクって、どういう目的で使うの?」
「は、はぁ? アンタ知らないで来たの!?」
そんなに、今日一番の声を上げて驚かれても困るんだけど……。
何で肝心なこと教えないかな店長、と愚痴りながら、彼女は続ける。
「……あんていくに居る以上、捜査官と闘り合う回数は少なくもないし。そこで闘っても、戦闘不能にしたりしても殺したりしないのよ、ウチは」
「はぁ……」
「で、その時素顔がバレたら、面倒なことになるでしょ」
「面倒?」
「馬ァ鹿」
こっちを振り向きながら、彼女は怖い笑顔を浮かべて言った。
「――顔と正体が一致してたら、どう考えてもヤバいでしょ」
トーカちゃんは、怖そうに凄んで言った。
言ったんだけど……、どうしてか僕は、口元が緩んだ。
「何だよ」
「いや、ごめん。えっと……」
「何か変な事あったか。あぁ?」
近場で凄まれても、僕としてはちょっと困る。
いやだってさぁ――。
「ちょっと
「!」
トーカちゃんは、目を見開いて硬直した。
あー、うん、数秒もしないで怒鳴られる未来しか見えない。
なので、その先が来る前に僕は話題転換。
「そ、そうだ! どこか寄りたいところとか、ある? 一応未成年じゃないし、少しくらいなら夜、駅付近ならうろついても大丈夫だと思うけど……」
どうやら作戦は成功したらしく、トーカちゃんは怒鳴る事はなかった。ただ、なかったけれど、腕を組んで、半眼で黙り込む。
あれ、これはこれで何か失敗したかな?
周囲を散々見回した後、トーカちゃんは僕に言う。
「アンタ、それどう見えるか分かってて言ってるわけ?」
「へ?」
「……まあ良いか」
そして背を向けて、一言。
「アンタ、キャリーバッグね」
そんなこんなで、僕がその日地元の駅で解放されたのは、夜の十時を回った時間帯。
トーカちゃんを家の近くまで送り届けた後だった。
ライダー化するに当って、原作とはちょっとだけアレに対する結論が違うので、割とお兄さんぶるカネキ。
そして外堀を(本人に自覚なく)徐々に埋められそうで、ちょっとだけ警戒気味のトーカ。ただし花より団子ゆえ、名より実をとる;