仮面ライダーハイセ   作:黒兎可

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トーカちゃんおっとこまえ

※今回演出上? ちょっと改行多めです


#029 休業/明滅/日入

 

 

 

 

 

 落ち着かない。

 

 何だかよく分からないけど落ち着かない、というのが私の今、思ってること。カネキがアヤトたちに連れ去られて、数日。初日は学校を休んで、依子から心配の連絡を貰ったりしたっけ。

 

「……はぁ」

 

 そして私は、私たちは今、あんていくの2階に居る。

 私にニシキ、ヒナミにカヤさんや古間さん。死体集めで夜に動いている四方さんを除けば、現状のフルメンバーとも言えた。

 

 今日、11区で起きている一連の事件に関して……、アヤトも関わっているだろうそれに対して、店長から「あんていく」の方針を伝えるということだ。

 

 それを聞き、私は居ても立ってもいられない。

 

 髪留めを握り、私は深呼吸。

 

「……アヤト、カネキ――」

 

 私の伸ばした「手」は、二人に届かなかった。

 アヤトは心が届かず、カネキは事象として届かず。

 

 手の隙間、すり抜けて行く二人に、どうしてかお父さんの背中がダブる。

 

 ……本当は、何で落ち着かないのか分かってるんだ。ただ、それを認めるのが怖い。

 それはたぶん、カネキに「お父さんの」ドライバーを手渡したというのも少なからず影響していて―ー。

 

 久々に見たアヤトの荒れ様と、意識が朦朧としていただろうカネキのあの顔。

 

 テレビのニュースでは、11区の避難区画の状況が更に大々的に告知されている。日に日に酷くなる状況を想い、私は両手を合わせて、口元を押さえた。

 

 弱音は吐けない。

 でも、それでもどうしても。

 

 どうしても、ただ座っているだけで震えが止まらなくなりそうで。

 

 ぽっかりと胸に開いた穴が、もっと寒くなるような気がしていた。

 

 そんな私の手に、ヒナミが自分の手を重ねた。

 

「……ヒナ?」

「……お姉ちゃん」

 

 不安そうに、でも、それでも笑おうとしているヒナミ。

 それに少しだけ元気を貰って、私はちょっと笑った。

 

「落ち着け、酷い顔してんぞ」

 

 私に缶コーヒーを投げてくるニシキ。思わず反対側の手で掴むと、アイツは少しだけ笑った。

 

「見た目ほどヤワじゃねぇだろ、アイツ」

「……ん」

 

 コーヒーを両手に持ち替えて、視線を落す。

 

 古間さんとカヤさんがなにやら話し合っているけど、ちらちらと私を見ているから励まそうとしているのかもしれない。……まあカヤさんに脳天チョップ喰らったりしてたけど。

 

 ただ、少しほっとしても。

 長続きするようなものじゃないってことを、私は知っている。

 

 それが何だか薄情みたいで、私はたまらなく嫌だった。

 

 そして、扉が開かれて、店長が入ってくる。外行きの服装だった。

 そして帽子を投げて、慣れた様に帽子かけにひっかけた。

 

「とりあえず揃っているみたいだね。後から数人来るが、早めに始めよう。

 11区で起きている一連の大事件について、我々のとるべき対応だが……、まず、連れ去られたカネキくんについて一つ、言うべき事がある」

「……」

 

 店長は私達の顔を見回して、淡々と口を開いた。

 

 

 

「――もう、カネキくんとは会えない覚悟をした方がよい」

 

 

 

 それを聞いた私は、さっきまで無理やり押さえていた震えを、押さえることが出来なくなっていた。

 

「もう、会えないって……、どういうことですか」

 

 それでも私は、怖がりながらも店長に聞いた。

 

「……今回、動いている相手。組織の名は『アオギリの樹』。Domination through power(力による支配)を主義として謳っている者達の集りだ。周辺の喰種たちを、強きも弱きも無視して取り込み、文字通り弱肉強食を強いている。

 囚われた彼の生死に関して、断定は難しい。最悪のケースもありうる、とだけ言っておこう」

 

 最悪のケース――。

 

 私がそれを連想するより先に、ヒナミが涙ぐみながら言う。

 

「……やだ、私。

 お兄ちゃんと会えないなんて、そんなのいやだよ――」

「おぃコラジジィ! 適当言ってるんじゃねぇ……」

「西尾くん……」

 

 カヤさんがの言葉も振り切って、ニシキは叫ぶ。

 

 私は、思わず「止めて」と言った。

 

「……チッ。

 でも、可能性はあんだろ、その口ぶりなら。

 じゃあ、行くんだろ? 助けに! なぁ?」

「……現状、アオギリには特に戦闘に特化した喰種が多い。その根城に潜り込み助け出すのは容易ではない。

 加えて現在、CCGでもアオギリ掃討のために動きがあると聞く。そうなればもう手も足も出せまい」

 

 助けるには危険すぎる、と店長は言う。

 

 私は――それを聞いて、ふとリョーコさんの時のことを思い出した。

 店長に止められ、捜査官を襲って。鈍っていて一人も仕留めきれなくて、命からがら逃げ出して。

 

 傷の調子とか見たり、今後どうしたらいいか考えていた時、アイツはズケズケと私の家に上がりこんで来たんだ。

 

 ――僕は、トーカちゃんが死んだら、悲しいよ。

 

 アイツの身の上を少し聞いて、そして目の前でリョーコさんが死んだと言って。

 それでなお、人も喰種も殺せないと言った上で、アイツはそう言ったんだ。

 

 何もできないのは、もう嫌なんだと。

 

 そう言われた時、私はちょっとだけ嬉しかった。どうしてだか、全然違うと思うのに、カネキにどこか自分を重ねていたからか。

 

 だから――私だって、アンタが死んだら、悲しいのよ。

 少なくとも、それを言ってやるまでは、アイツに死ならたら嫌だ。

 

 お父さんのドライバーについてだって、まだ、何にも話してもいないのに――。

 

「私達が全滅する可能性が高い以上、勧める事はできない」

「……おい、じゃあ何だよ。見捨てるのか、アイツを――!」

 

「――私は行く」

 

 その言葉は、不思議なくらいすんなり出てきた。

 

「例え誰が行かなくても、私は行きます」

 

 沢山、迷惑もかけられて。

 沢山、借りもアイツに作った。

 

 そんな毎日が思いのほか嫌いじゃなくって――だから、そのためになら。

 

「例え、一人でも」

 

 私だって、何も出来ないのは嫌なんだから。

 

 私の言葉に、ニシキが続く。

 

「俺も行く」

「? アンタ」

「でかい借りがあんだよ。それ返す前に死なれちゃ、胸クソ悪ィ」

 

 メガネを一度直して、ニシキも店長を見る。

 

「……ッ、ヒナミも、手伝いたい!」

 

 更にヒナミまで声を上げて、立ち上がった。

 

 店長は、そんな私達を少しだけ眩しそうに見て、目元を覆って。

 

「……覚悟があるなら、受け取った。

 誤解のないよう、先に言うべきだったね」

 

 そう言って、いつもの微笑を浮かべた。

 

 

「私は、元より『一人で』カネキくんを助けにいくつもりだった」

 

 

 その言葉に、私達は息を飲んだ。

 

「……だが、皆の気持ちはよく分かった。

 命の保障は確約できないが――それでも、私達に命を預けてくれるなら、我々は全力で君達を守ろう。喰種同士、助けるのが『あんていく』の方針だからね。

 それともう一つ」

 

 入ってきなさい、という言葉に、扉が「オゥ!」と独特のイントネーションとともに開かれ――。

 

 

 

「アモーレ!」

 

 

「な!」「テメェ、何で――」

 

 

 

 現れたのは、濃い紫のスーツに身を包み、オーバーな仕草で悲しみを表現する月山だった。

 ハートブレイク、とか言いながら月山は嘆かわしいと言わんばかりに首を左右に振る。

 

「無二の友人であるカネキくんが、訳の分からない組織に連れ去られ危険な状態とは――許すまじ(ノン・ギディング)

 

 お前が何を言ってるんだ、みたいな感想はきっとニシキと共有してる。

 

「知ってるだろう。美食家、月山くんだ。

 彼が居れば、よりカネキくんを助けられる可能性は上がる。協力を打診したところ、快諾してもらえたから――」

「私は反対です! コイツ、カネキを喰うことしか頭にないっ。

 大体、テメェ何で生きて――」

「イートユアセルフ、君のアドヴァイスに従ったまでさ♪

 お陰で本調子とはいかないが腕もくっついてこの通り……。そして意外な発見」

 

 一度顔をかくして、ヤツはばぁ、と開いて舌なめずり。

 

「――僕は意外と美味しかった。

 普段から良いもの食べてるからかねぇ。なかなか新しい発見だったよ」

 

 そう言って、月山は私たちの前に一歩。

 

「そういう訳だから、参加させてもらうよ。僕の(ヽヽ)カネキくんを取り戻すためにも、ね」

「アンタのじゃねぇだろ」

「僕の親友(ヽヽ)さ。それとも、何だい霧嶋さん――」

「アンタにやるくらいなら、私が貰うわ! このキザクソッ」

 

 思わず反射的に叫んだから、自分が何を言ったのか失念していた。というか何を自分が口走ったのか気付いてなかった。周りがどんな顔をしてるか、この時は頭が回っていてない私。

 そして月山が、初めて見るくらいきょとんとした表情を浮かべていた。 

 

「……心配するなトーカ」

 

 そして、開きっぱなしの扉の向こうから、四方さんが顔を出す。

 その後ろに「や」「おっす、情熱の赤いバラ」とウタさんとイトリさんが顔を出していた。

 

「下手なことを仕出かさないよう、俺が見張る」

「四方さん、それになんでイトリさん達まで――」

「店長から頼まれごと。はいはい、これ資料と」

「作ってきました」

 

「うん、ありがとう二人とも」

 

 店長はイトリさんから資料を、ウタさんから紙袋を受け取り、中を確認する。

 

「……四方くん、CCGの動きは」

「住民の避難が終わり次第、ということだそうです。時間としては、今晩中にも」

「うん。わかった。

 我々は、CCGの”アオギリの樹”総攻撃に紛れてカネキくんを助けに入る。各自、準備をしておきなさい」

 

 店長はそう言うと、「私はバイクの準備をしてくる」と言って、外に出て行った。

 

「俺もバトルオウル見てくる。じゃあ……」

 

「蓮ちゃん、ネーミング相変わらず可愛いよねぇ」

「やっぱりピュアだよね。で、どうする?」

「私は、パスかなー? 基本的に情報屋だし、準備もないし」

「ぼく行こうかな。体ナマっちゃうし」

「っ! ウタさんも!?」

 

 私の驚きに、ウタさんは「うん」と軽く笑い、別な紙袋からあるマスクを取り出した。

 

「ヒナミちゃん被る? ヘタレマスク」

「うわ! そっくり!」

『ヘタレコンギスタ!』

「なかなか面白いわよね、この鳥ー」

 

 ウタさん達がヒナミに構ってる。なんだかこれはこれで、ちょっと面白い光景だった。

 

 そして、ちらっと聞こえる古間さんとカヤさんの会話。

 

「俺様もたまには暴れたいんだけどねぇ」

「あなたは留守がいいわ。それに殴る蹴るより、主目的が違うじゃない」

「それもそうか、なんだかなー」

「ま、せいぜい私を退屈させない程度には鍛えてればいいんじゃない?」

「お? そのケンカ腰も久々だなぁ」

 

 笑顔に青筋を若干浮かべながら会話する二人。

 なんとなく冷や汗をかいて、私は視線を逸らすと。

 

「月山。貴未のこと忘れたとは言わせねぇからな」

「ふぅン? 正直言えば、僕も興味はないんだけどね」

「何だとテメェ!」

「ま、止したまえレットビーフランク! 今はカネキくんを助けるための仲間じゃないか。

 もし気が治まらないというのなら、これを使いたまえ」

「あん? これって――」

 

 突然ニシキに何かのチケットを手渡す月山。「僕は今、機嫌が良いからね♪」と鼻を鳴らすのを見てると、どうしてか余計に腹が立った。

 

 私は私で、着替えのため一度部屋を出ようとして――。

 

 

 

『芳村さん、これで良いんですね。彼等とは。……娘さんは――』

『……私は、仮面ライダーだからね。この呼び名を「彼」から引き受けた時、そう誓った』

 

「……ッ!」

 

 扉の向こうで会話する二人の声が、わずかに耳に届き、足が止まった。

 その話は、きっと私達に聞かせることなど考えていないからこそのものであって。

 

『私も、天秤にかけるくらいにはカネキくんを助けたい。

 例え――』

 

 ――彼がどんな状態になってしまっていても。

 

 店長の言葉に滲んだニュアンスに、私は、また手が震えた。

 

 

 

 

   ※

 

 

 

 

 

 

 

――二週間は前だろうか。

 

 

 

 

 

「あの、ヤモリ……、さん。僕は何をすれば――」

「ん? ああ、そうだね。少し特訓を受けてくれればいいんだ」

「特訓?」

「僕の部下はこれを受けて『合格できたヤツ』って決めてるんだ。じゃ、行こうか」

 

 バンジョーさん達の下を離れた僕。彼等が無事に解放されたことを祈りつつ、今はヤモリの誘導の方へと、流されるまま行っていた。

 

 ヤモリに案内された先。本来はダンスホールか何かなのか、広々としたその場所。白黒チェックが張り巡らされた地面に、所々あったのは「赤黒い」斑点。

 

 この時点で薄ら寒さを覚えても良かったかもしれない。

 

 この場所には、椅子が一つ。

 空のバケツも一つ。

 

 ただ、妙に血なまぐさい臭いがどちらからも漂っていた。

 

「僕の部下は、ヘマしたら色々やるんだけど……。まあ、それでも(ヽヽ)使うかな、これは」

 

 指差す中央の椅子。それに、僕は思わず後ずさり。

 笑いながら、ヤモリは僕に何か説明を始めた。

 

「カネキくん、クインケドライバーを持っていたよね。あれの用途は知ってるかい?」

「喰種の能力を押さえる、でしたっけ」

「うん。でも、それじゃ半分不正解」

 

 これなーんだ、と言って彼は、注射器を取り出した。中には、緑色の液体。

 

「えっと……?」

「普通わかんないかな。俺もコクリア送りされなきゃ知るはずもなかったし。これは”喰種”の解体や手術に使う、Rc細胞抑制液。ある生き物の血を元に作る、CCGの医療機関特注品さ。手に入れるのはちょっと大変だけどね」

「抑制剤……?」

「これを喰種の体内に打ち込むことで、喰種の能力を大きく押さえることが出来る。クインケドライバーに似てると思わないかい?」

 

 確かに、似ている。ただその方向性が違うような、と思って居るとそれにはヤモリから回答がされた。

 

「実はね。これを運用する際、両方をセットで使うことが前提になってるんだ」

「両方を――?」

「ドライバーは、Rc値を一定に保つ効果がある。で抑制剤と併用することで、本来の倍以上に抑制液の効果を引き伸ばすことが出来るんだ」

 

 で、この液体だけど。

 

「普通、喰種の身体は刃物を通さない。多少頑丈になったところで、Rc抑制液の効果があってもかなり頑丈な道具じゃないと傷一つ付かない。

 じゃあ、どうすれば効果があると思う?」

「効果……。ひょっとして、身体の内側とかですか?」

 

「――正解」

 

 

 ヤモリがそう言った瞬間、僕の左の視界は、緑色の液体の反射する光に包まれ――僕は、激痛に絶叫した。

 

 

「さあ、洗礼だカネキくん――」

 

 君は最悪を乗り越えて、僕の「友達」になれるかな?

 そう言いながら、彼はニタリとイビツナな笑みをうカベテ――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――声がする。

――声が聞こえる。

『フエグチって医者が使っていたものなんだけどね、このペンチとか。

 僕等に合わせて作られているものだから、なかなか頑丈でね――』

――声が聞こえる。

『ドライバーもちゃんと動いてるね。うん。

 1000から7ずつ、数を引いて言うんだ。わからなくなったら、ヒントもあげるよ。

 指だ。さあ、想像してごらん?』

――声が聞こえる。

『よしその調子だ。さぁお食べ、体力が足りないだろう。持たないよそのままじゃ――。

 早い所「生やして」続きをやろうか』

――声が聞こえる。

「エトちゃんが探してたんだけど、カネキくん……。全く相変わらず趣味悪いねぇ」

『いぃんだ。一目見た時から、ピンと来てたんだ。俺と彼は――一緒だ』

――声が聞こえる。

『僕はね。他人を痛めつけるのは結構好きなんだ。でもどうしてそれに目覚めたかというのは、また別さ。僕は洗礼を受けたんだ』

――声が聞こえる。

『母さんが殺されてから一人で生きてきた。一体どれくらいの喰種が、この世界で失って生きてるんだろうって。そう思ったのは、ネジのイカれた捜査官のお陰だ』

――声が聞こえる。

『"ピエロマスク"達の情報を持ってなくて殺処分って時に、そいつが俺を痛め付けた。その時思ったよ、この世の全ての不利益は「当人の力不足」で説明がつくって』

――声が聞こえる。

『痛みの中で、僕は覚った。俺は相手と一緒だと。痛めつけられる側だから怖いんだ。痛めつける側と一緒になれば、怖くないって。そして、俺は俺の中身を作り変えた』

――声が聞こえる。

『一瞬のスキを突いて、立場が逆転したんだ。あの時の悦びと、今までの自分と違って冴え渡ったあの感覚!

 これが忘れられなくて、僕はこうやってるんだ。君も、いずれ「立ち上がる」時が来るかもしれない』

――声が聞こえる。

『君のその再生能力は、リゼの力だ。俺よりもすごい喰種なんだよ、君は。

 そして君にとっては嬉しい事だろうね――先日、嘉納が逃げたことで確定した。奴は、君の「きょうだい」を作ってるんだ。

 嗚呼素晴らしい――君は一人じゃないんだ』

――声が、聞こえる。

『トビムカデって知ってるかい? 日本じゃ最大クラス。大きいのは20センチくらい。

 後でとってあげるから――ね?』

――とおくで誰かの笑い声が、聞こえた。

――僕だった。

「あ゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ぼは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛はばは゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛ばは゛ばは゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛ばばは゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛ぼは゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛は゛ばは゛は゛は゛――」

――適度に回復させられる肉体に引っ張られ、僕は正気だ。

「ころしてください」

 このまま狂ってしまえれば、どれだけ楽だろう。

 

 

 ヤモリがいなければ、この場所は僕以外、誰も居ない。

 あれほど戦う為に使っていたクインケドライバーが、今、僕に死線を彷徨わさせている、一つの鎖となっていた。

「……ひとりは、さみしいな」

 

 瞼の裏に、みんなの顔が浮かぶ。バンジョーさんたち、店長やヒナミちゃんや先輩、あんていくのみんな。

 

 トーカちゃんは、無事だろうか。責任、感じてないといいな。

 出来れば寂しそうな表情じゃなく、楽しそうに笑っていて欲しい。そうじゃないと、何か嫌だな。

 

 ヒデ、最近会ってないな。……無事かな。何か、変なことに巻き込まれたりしてないかな。

 

 

 

 

『――傷つけるより、傷つけられる人間に、だったかしら?

 滑稽じゃなぁい。ね――研くん』

 

 

 

 

「り……、ゼ、さん?」

 

 

 

 

 混乱する意識のなかで。

 覆われてほとんど見る事ができないはずの視界の中に。

 

 いっそ優しげに、愛しげでさえあるように、リゼさんが僕の頬を撫ぜて笑った。

 

 

 

 

 




「……何で、下の名前なんですか?」
『あら、やっぱり「覚えて」ないのね。……ちょっとメランコリ』
「?」

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