「ほいしょっと。うーん、ここなら面白い”画”、とれるかなー?
捜査官も多いし、ちょっと張ってよ」
※
――捜査官、一名重傷。
――犯人の喰種はウサギ好き?
「……アンタ、仕事中だっつの」
お店にあった新聞紙。ちょっと気になった部分があったので、読んで見ればこの調子だ。
いやそうな顔をしながら、僕からそれを取り上げるトーカちゃん。
「
「……単に、失敗しただけだっつーの」
腕を押さえながら、トーカちゃんは僕から視線をそらす。
「……投書した時に対応してくれたお姉さんとか、少し話したの覚えてる?
ヒナミちゃんの情報も、トーカちゃんの情報も、まだ全然集まってなかったみたいだったの」
「……」
「今なら、ストップ出来るんじゃない?」
そう言ったら、復讐だけじゃねえんだよ、と首元を掴まれて引っ張られた。視点の関係でカツアゲとかされてる気分だった。
「……私は昔から、所詮人殺しよ。全員殺すまで止めるつもりはない。
そうしなきゃ、ヒナミも元気になんないし……」
頑なにその姿勢を崩そうとしないトーカちゃんに、上手くかける言葉が思い付かない。喰種として生まれた彼女は、きっと現代人のそれと多少命の意味合いが違うのかもしれない。きっとその重さも。
ただそれでも、殺し損ねたというその事実が、彼女が
「復讐で救われるのは……」
「あ?」
だからだろうか。
僕の口は、自然と開いていた。
「……復讐『しようと』した人だけなんじゃないかな」
「……何言ってるの?」
「……いや、ごめん。何でもないよ」
思わず口をついて出てきた言葉は、トーカちゃんに理解されたかどうか怪しかったけど。
でも、言わないと駄目な気がした。他ならぬ僕自身、現在向きあっている問題でもあるのだから。
「ヒナミに珈琲淹れて来る」
「うん。……ヒナミちゃん、寝れてるかな。食事もあれ以来、まともに食べてないし」
「夜寝れないのはアンタのせいだろ。あの長ったらしいタイトルの本とか置いて行くから。
……メシは、あー、角砂糖入れるけど」
言いながら、トーカちゃんは僕に背を向ける。
「大体、食事のこと言ったらアンタの方だってどーなのよ」
地味に痛い所をつかれた。
未だに肉を食べるのに抵抗があるので、トーカちゃんからもらったアレは冷蔵庫の肥やし状態だ。西尾先輩に持ち逃げされて、仕方なしとばかりに譲られたアレ。ちなみに店長が印字したのか、消費期限までご丁寧に書かれて居たりする。
「今日も終わったら訓練だからね」
「…… 一週間連続で休みなし、ね」
「文句ある?」
「ないから睨まないで」
最近は慣れ初めて来たトーカちゃんの視線だけど、やっぱりそこのところ難しいなと僕は思った。
視線をそらしながら笑うカネキを鼻で笑って、私は階段を上る。
扉をノックすると、うーんと眠そうな声が聞こえた。
「ヒナ。ごめん寝てた?」
「お姉ちゃん……」
珈琲を置きながら、私は軽く注意。店長からも言われたことだけど、やっぱり成長期は食事をとらないと体が維持できない。だからしっかり食べろと。
ヒナミは、目の下にくまを作りながら、何とも言えない表情をして頷いた。
「髪、とかすから。後ろ向きな?」
「うん」
新聞をテーブルに載せて、私はヒナミの横に座った。
リョーコさんが置いてった櫛を手に取り、背中を向けさせる。
「ごめんな。しばらくは出られないから。……でも、私たちが上手い事やってやるから」
「うん」
毛先のゴムを解いて、丁寧に入れる。
さらさらとした髪質は、どこか弟の頭を思い出す。
「……字、いっぱい」
ヒナミが、ぼそりとテーブルの上のそれを見て呟いた。
「新聞っていうヤツ。新しい情報とか、色々書かれてるやつね」
「ほぉぉぉ」
変な声を上げたヒナミ。
思わず笑って、私は「やるよ」と言った。
「勉強してんでしょ。色々人間のこととか知れるし、面白いよ」
「ありがとう、トーカお姉ちゃん。
わかんない言葉あったら、お兄ちゃんに聞くね!」
「……私には聞かないのかいそーかい」
「たんぽぽ、お姉ちゃん読めなかったし」
「普通その字、その読みで使わないから。
……はい! これで良しと」
手鏡を見せると、ありがとうとヒナミはまた言う。
元気になったように見えるけど、半分くらい空元気なのが私はなんとなくわかる。
部屋を出て後ろ手で扉をしめて、私は拳を握った。
不意に店長の言葉が脳裏を過ぎる。復讐は、権利ではなく義務。
カネキの言葉もなんとなく同時に。復讐して救われるのは、復讐しようとしたヤツだけ。
「……んなの、カンケーないだろ」
舌打ちをしながら、階段を下りる。
「ヒナミ、このままじゃ表だって歩けないんだぞ」
捜査官を殺して、ヒナミの顔を知ってる奴を減らさないと、いつまで経っても安全に過ごせない。
言われなくったって分かってる。復讐したってリョーコさんは帰って来ない。綺麗事のように「復讐する理由」を並べ立てて実行しても、こちらのリスクを増やすだけ。
でも、だったら黙ってられるのか?
私は、そんなこともう出来ない。
この間確認したら、私たちの投書した情報に捜査官たちも踊らされていた。カネキの案だっただけにちょっとムカツクけど、この調子であとは、あの「真戸」とかいう捜査官さえ押さえられれば――。
キッチンに下りると古間さんから「すごい顔」と言われたりして、鏡の前で少し悪戦苦闘。カネキがその様を見てたりして殴ったり色々あったけど、仕事はいつも通りこなせたと思う。
そして裏口を閉めて、訓練の準備を始めたタイミングで、扉がノックされた。
「あれ、ウタさん?」
現れたのは、帽子にグラサン。でも首元の刺青には見覚えがあった。
「……ごめん、トーカさん」
「や……はい?」
そういえば、今店の一階に居るのって私とカネキだけで……。
「いや、違いますって、そんなんじゃ……」
「ていうか、どうしてお店に?」
仲良いね君達、と言いながらウタさんは手持ちのバッグの中から、黒い箱をテーブルに置いた。
「せっかくだから、付けてるところ見て見たいな」
「これ……、マスクですか?」
どうやら出来上がったので、届けに来てくれたらしい。
付け方も教わりながら、カネキはマスクを手にとり――。
ぴたり、と目を開いて動きを止めた。
「……上の部屋、静かすぎない? トーカちゃん」
「……寝てんじゃないの、ヒナミ」
「昼過ぎに行った時も反応なかったし、寝すぎじゃない?」
「……二人とも、見に行ったら」
ウタさんのそれに従って、私とカネキは上の階に上る。
わずかに嫌な予感が胸を過ぎる。そして、図らずもそういうのは当ってしまう。
ノックしても返事はない。
扉をあければ、本と新聞が中途半端に読み途中のまま。
シャッターの下りた窓は、開け放たれていて――。
「嘘、でしょ……?」
「……僕、奥の部屋も見てくる」
「お、お願い」
でも、それだって結果は変わらない。地下に行った形跡はないし、となるとやっぱり窓から下りたと考えるのが妥当だ。
迂闊だった。
自分に腹が立つ。
「蓮示君にも連絡しておく。店長はもう帰っちゃったみだいし」
「ウタさん、お願いします」
「カネキ君、今度付けてるの見せに来て?」
「あ、はい。ありがとうございました」
カネキと一緒に店を出て、走る。
頭に血が上って、色々と判断力が鈍る。
私は「喰種としての」全力で跳び上がり、カネキを置き去りにしてマンションの壁を蹴って上って行く。
「……っ、もしもし店長!? ――」
カネキが電話を誰かにしてるのを視界に一瞬入れて、私は走る。
「……ヒナミ、ごめんッ」
テーブルの上に置いてあったあの新聞。開いてあったページを思い出して、私はどうしたら良いかわかんなくなる。カネキが見て聞いていた時点で、想像してなきゃ駄目だったんだ。あの記事は、きっとヒナミにも辛いことなんじゃないかって。
嗚呼、どうして私はいつも――。
――慣れ合いとかうぜぇんだよ。やりたきゃ一人でやってな、クソ姉貴。
「――アヤト……」
そして唐突に、移動中異臭を感じた。
この臭いは、どこかで――。
「――ぁぁぁぁああああああああああああッ」
ヒナミの悲鳴が聞こえた。
私は民家を飛び降りて、歩く。
場所は、重原小の近く。
私達がCCGに投書した情報の場所。
その河原の下で、ヒナミは体育座りのように蹲っていた。
「……ヒナミ、帰ろ?」
「お姉ちゃん」
ヒナミは、言葉だけを続ける。
「新聞記事のあれ、お姉ちゃんがしたんだよね。ウサギ大好きだし」
「……」
「でも、きっと私が関わってるって思われる。お母さんを殺した人達だって追ってくるし、だったら――私は、逃げなきゃ」
虚ろに続けるヒナミ。その手の隙間から、私はあるものを見つけて、口が震えた。
「あ、アンタ……、何持ってんの……ッ」
それは、手。
左手。薬指には見覚えのある指輪。
「お母さん、の……」
「……ッ」
私は、私の作戦が甘かったことを認識させられた。
あの白い捜査官もこの場には来ていた。その時に何かやってるなとは思った。でもまさか、まさかこんなことしてるなんて思いもしなかった。
「どうして、なんだろ。
私達、生きてちゃ駄目なのかな……っ」
涙ぐむヒナミ。
私は――ヒナミを抱きしめる。
「……私達、この間CCGに行って来た。
で、二人して色々聞いたりしたんだけどさ。窓口の人間がおしゃべりで。聞いた限りじゃ、それでもあんまり情報が集ってなかった。似顔絵とかさえ見せられなかったし。
アンタの顔知ってるのは、あの夜に居た四人だけだと思う」
だから――。
「私が傍に居る。アンタを殺させはしない。
絶対守る……、約束する」
「……」
「私達が生きてて良いのかは全然わかんない。
でも、何か意味はあるんじゃないかって私は信じたい。カネキみたいに、全然わかんないのも居るしね」
「……うん」
※
『カネキ? ヒナミ見つかったよ!』
「本当!? よかったぁ……。それで、今どこに?」
『投書したところ覚えてる? あそこの近くの――ッ』
話していた途中、いきなり通話が切れる。
「……電池切れ? いや……」
嫌な予感がする。脳裏に、母さんが倒れた時の映像がフラッシュバック。
店長に、見つかったけど何か不自然だとメールを送る。
「やっぱりさっき、電話して正解だったかな……」
トーカちゃんが先行した時点で、僕は店長に電話を入れた。話を続けると、ヒナミちゃんの保護の分には力を貸してくれるとのこと。
「……見つかったことには一安心だけど、僕も行こうかな」
入れ違いになったらそれで良いかもしれない。
もし入れ違いにならないで、何らかのトラブルに巻き困れていたらと、それが心配で仕方ない。
そう思って居ると。
「――この下流の、重原の方ですね! 了解、こちらもすぐ向かいます」
「……ッ」
明らかに捜査官と思われる、見覚えのある長身の男性が電話をしていた。
片目にガーゼを付けてるのが見える。彼は川の堤防沿いを、走りだした。
「……ッ、ウタさん、使います」
慌てて服の裏ポケットに入れて持ってきた、マスクを取り出して装着。
人間らしくない、どちらかと言えば昆虫寄りの牙をむき出しにした眼帯のマスク。
普段付けてる側とは、反対側が露出した顔。「隠してるほうの眼が見たかったから」とはウタさんの弁。
普段と印象が大きく変わる。と同時に、脳裏に仮面ライダーの映像がフラッシュして。
「……僕はもう」
あの時みたいに、同じような思いはしたくない。
手すりをつかみ、僕はそのまま下に飛び降り、捜査官の前に立った。
「……何だ、貴様は」
真戸さんからの連絡を受けて、俺はそちらへ向かおうと足を進めていた。
そんな時、眼帯の喰種が降りて来た。
その姿は、見覚えがあった。
真戸さんが言った「眼帯はその場にたまたま居た喰種」という説を思い出し、頭を左右に振る。
「お前は、あの時の喰種だな。悪趣味なマスクだ――眼帯」
「行かせません」
「邪魔だ、消えろ」
そういった瞬間、この喰種は走り出してきた。
型は滅茶苦茶。殴り慣れて居ない緩慢な動作。
赫子を出して居ないこともあってか、そのパワーは弱い。
軽く胴体で受け、流し、俺はそいつを地面に叩き付ける。
そのまま締め落そうとして、蹴りの反撃を食らう。
「赫眼か。……らしくなって来たな」
俺はすぐさま、手元のアタッシュケースの制御装置を起動させる。赫眼が掌大の装置の中で開き、装着されているケースの形状が一瞬ドロドロと溶け、やがて棍棒状にまとまった。
『――ドウジマ・
独特な機械音が鳴り、形状が完成する。
クインケを見るのは初めてなのか、目の前の喰種は動きが一瞬鈍った。
「死ね!」
一撃が、ヤツの胴体にヒットし――。
電話を切った私の前に、白い捜査官は猫背の姿勢で現れた。
「やあ、数日ぶりだねぇ。あっちの彼も元気かい?
お嬢さん。いや――ラビット」
「ッ」
ケータイのストラップを見たのか、その視線は私の手元に集っていた。
くつくつと笑いながら、彼は足を進める。
「……あの時の彼が喰種かどうかは知らないが、私に隠れて腕を庇っていたことを見てどうにも気になってねぇ。あくまで直感だったが、色々作戦は展開したよ。
しかし、これでようやく理解した。流言で捜査を掻き乱したのは、笛口の娘のためか」
どうしてあれだけの情報から、私の動きを感知できたのだろうか。
「我々が明確な情報を得て居ない時点で、捜査員を分断させ襲いやすい状況を作る。
その上でなおかつ、直接娘の顔を見た我々を殺そうと。そうすれば、少なくとも以前の生活に戻れる確率は上がるだろうなぁ。だが――」
何ということはない。言ってる事が正しけりゃ、経験則か、あるいは狂気じみた執念だ。
「片腹痛いわ。反吐が出る。
バケモノの分際で、平穏な生活だとぉ?
なら、貴様等が私と娘から奪った、平穏な家庭は何なんだというのだ――!」
「ッ」
放たれた言葉に、私は動きが止まる。
他ならぬ、それは私が敵に対して持っている感情のそれに近いもので――。
「……そうそう、贈り物は喜んでくれたかな? 母親が恋しいだろうと思ってねぇ。
まんまと期待通り掛ってくれたが――ハハハハハハハッ!」
「……ッ」
「てめェッ!」
でも、その言葉に私はキレた。躊躇などかなぐり捨て、襲いかかる。
そのタイミングで、ヤツはアタッシュケースを起動した。
『――フエグチ・
「ッ!」
電子音で呼ばれた名前を聞き、私はやはり足が固まる。
そのタイミングを逃さず、ヤツは私の体にクインケをぶつけようとする。
ぎりぎりで我に帰り、私は踏み込んで飛び上がった。
「ほう、あの体勢からか。見事! やはりそこらの雑魚とは違うなぁ。
今日死ぬ運命でなければ、過日20区の”梟”のようにさぞかし厄介なものになっていたろう!」
しゃべりながらも攻撃は止まない。
そして、私の意図した通りにヤツの武器は、柱に刺さり、一瞬動きが止まった。
この狭い空間では、コイツは武器を振り回し難い。
大して私の赫子は近接が主体。間合いに潜り込めれば――。
そしてそのタイミングで、ヤツは武器から手をはなし、もう一つアタッシュケースを取り出していた。
『――フエグチ・
「は?」
展開した四枚の、花弁のようなそれに私の拳は防がれる。
弾き飛ばされ、私は足を止められた。
「……嫌ッ」
「――ッ、ヒナ!」
そして気付いた。この状況は、まずい。
「お前達も知ってるだろう? クインケを。その材料を――クク」
堪えるように笑う敵は、私達の目を見て、心底蔑むように声を上げた。
「――娘よどうだ
「いやだぁぁあぁあぁぁあぁあぁぁぁああぁああぁあぁあ――!」
「……こ、んのッ、ゲス野郎ォがッ!」
飛びかかる私を、絡めとるように
足をとられ、上を押さえられ、柱に叩き付けられ。
「力はともかく、学習しないなぁ。これなら眼帯の方がまだ冷静だったぞ。
直情的で感情に囚われ、それゆえ周囲の警戒がおろそかに成る」
だがしかし。
「そうであっても、力は上々だ。お前は良い
左脇腹を抉られるように一撃が入る。
臓器なども回復はするけど、今の状況とこの威力じゃそれどころじゃない。
「しかし夫婦そろって素晴らしい使い心地だな。
せめてもの情けだ。娘もそろえたら三人仲良く『混ぜて』やろうか」
くつくつと笑いながら、奴は私の体を更に抉る。
悲鳴を上げる私に、心底楽しそうに叫ぶ。もっと悲鳴を上げろと。もっと懺悔しろと。
「……クク。旦那は長かった。妻は一瞬だった。
お前は、どっちが良い? ラビット」
両手の武器を見せ、奴は趣味の悪いことをヒナミに言う。
「ころ、すぞクソ野郎……ッ」
「ふん、死体にたかるゴミが。さぞかしその眼も、クインケ起動時に映えることだろうが……、一体、何が貴様等を生きながらえらせようとする?
キジマという知り合いによれば、貴様等の多くのメンタルは我々に近しいと聞く。
なのに何故、呪われた生を生きようとするのか?」
目の前の敵のその問いかけに、私は――私の中の感情は、決壊した。
「……生きたいって、思って、何が悪いんだよ。こんなんでもな、祝福されて、せっかく、生んでくれたんだ。
ヒトしか喰えないなら、そうするしかねーだろ……、じゃなきゃ、どうやって生きていけば良いんだよ!」
何でもかんでも、お前たちは私たちに上から目線でものを言う。自分達が覇者であるように。自分達以外の誰も認めないように。
自分が喰種だったらどうかとか、そんなこと全く考えないで、ただ、死ねと、材料に成れと言う。
「……私達だって……」
脳裏には、依子の顔。
一緒に昼をとってるときの、あの気の抜けた笑顔。
「――アンタらみたいに、生きたいんだよ……ッ」
「……聞くに耐えん、が、一考はしよう」
逝け、と目の前の敵は私目掛けて赫子を振り回し――。
「……仮面を付けた悪鬼」
何度か殴り、往なし、ダメージを蓄積させて、俺はヤツを追い詰める。
こちらを赤と黒の眼で睨むこいつに、俺は聞いた。
「罪の無い人々を平然とあやめ、己の欲望のままに喰らう。貴様等の手で大切な相手を失った人間は、大勢居る。
残されたものの気持ちを……、怒りや、悲しみを、空虚を、想像した事があるか?」
見下ろしながら言う俺に、目の前のヤツは反撃せずに、ただ、無言で聞いている。
「……貴様の知り合いかもしれんが、ラビットという喰種が居る。
ヤツに仲間が再起不能にさせられた。……ほんの、数日前」
後日また面会に行き、あの惨状を知り、俺は、更に怒りが胸に灯る。悔恨が胸に残る。
「……彼が何をしたという? 捜査官だったからか?
ふざけるな。何故俺の同僚たちが、皆傷を受け、殺されなければならない――」
この世界は歪んでいる。
「――歪めているのは、
「……」
涙が流れる。だが、この敵は一切こちらに攻撃を加える動きが無い。
ソデで拭い、俺は睨む。
「……確かに、多くの喰種は道を誤ってる。
ラビットもまた、きっとそんな喰種の一人なんだと思います」
立ち上がりながら、奴は、言葉を続ける。
「僕は……色々あって、貴方の言う事の方がよく分かる。
だけど、それはきっと――片方だけの歪みじゃないのだと、思います」
「……何だと?」
「何も知らないで、憎しみあって、殺しあって――そんな環の中に永遠に居るのは、きっと、間違ってる」
意味のわからないことを続ける、少年の喰種。
俺が理解を拒否したのを見て、彼は言う。
「……だったら、分からせます。
”人間”として――”喰種”としてッ!」
その視線に乗った感情を、俺は、正しく理解できなかった。
武器が自分で名乗るのは、やってみて改めてシュールだと思いました;
武器イメージとしては、鎧武の無双セイバーのロックシード装着状態みたいなイメージです。起動するとロックシード(赫眼を組み込まれた装置)が発光して名前を名乗り、変形するみたいな。必殺技もたぶんあります。
そして制御装置だから取り外せますが、外すと変形が出来なくなります。
そして、いよいよ変身。