マイ「艦これ」「みほちん」(第1部)   作:しろっこ

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 埠頭では突如奇襲してきた深海棲艦との睨み合いが続く。しかし司令には単純に敵対できない不思議な感情が芽生え始めるのだった。



第61話<睨み合い>(改)

『ワカラナイ』

 

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マイ「艦これ」「みほちん」

:第61話<睨み合い>(改)

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 しかし、わざわざ彼らから見たら『敵』である我々……すなわち美保鎮守府の本拠地に乗り込んで来るとは大した度胸だ。

この特長ある深海棲艦の真の目的は、いったい何だ?

 

 昼間の戦闘の実力からすれば、このまま攻撃して我々を駆逐しても良かったはずだ。実際こちらの哨戒部隊は、まったく役に立たなかった。

 

 今宵この鎮守府では、のんきにパーティーだったから彼らにとっても絶好の攻撃チャンスだったはずだ。

それなのに、なぜ最後まで攻撃しないのだ?

 

 こちらの葛藤など知るよしもない深海棲艦は徐々に集まる艦娘たちを見て、変わらず不敵な笑みを浮かべていた。

 そもそも野次馬のように集まる美保の艦娘たちは、ほとんど艤装を付けていない(例外的に一部の艤装や砲塔を持っている子は居るが)。

 

仮に着けたとしても陸上からでは、その威力を十分に発揮できない。もしかしたらそれは相手も同じかも知れない。

 

 ただ今の状況では明らかに我々が一方的に不利だ。現に深海棲艦たちは海の上にいて全員武装しているのだ。大淀さんが顔面蒼白になるのも分かる。

 

 唯一、海上にいる北上だって艤装なしの上に、さっきの魚雷破裂のダメージを受けてたまま、しゃがみこんでいる。とても攻撃などできないだろう。

 

 仮に艤装した艦娘が、この港湾内にこれから展開するのは難しいだろう。敵に狙い撃ちされる可能性が高い。

現に大淀さんは一部の艦娘を湾内に展開しかけていたが結局、中止した。ここは既に鎮守府内だ。後から対応するには不利な上に危険だ。

 

 それに、この狭い範囲内で撃ち合えば結果は明白だ。こちらは陸側からだから射程が取れないので飛び道具は使えない。

 仮にある程度、相手にダメージを与えることが出来たしても、こちらの施設への被害も同じように大きくなるだろう。現に一発目の魚雷だけで鎮守府の各所に影響が出たくらいだ。

 この状況下では、とても全力では戦えない……喉元に突きつけられた短剣の如き。

 

「おいおい、これって……」

 一方的な「万事休す」ではないか?

 

 白い肌の深海棲艦は、ずっと腕を組んで人形のように海上に浮いている。やがて夜の美保湾に少し風が出てきた。埠頭に寄せる波がチャプチャプ音を響かせている。双方それなりの人数なのだが皆、押し黙って睨み合っている。

 

 もしかして連中は、この状況を作り上げた上で我々に、このまま降伏を迫ってくるのではないか?

仮にそうだとしても司令として彼らの本当の目的などは聞いておくべきだろう。

 

 意を決して私は呼び掛けた。

「私が、この鎮守府の司令だ。お前たちの要求は何だ?」

 

 夜の港湾内に私の声がエコーして妙に響き渡った。まるで何処かの野外劇場みたいだ。その場の全員が海上に注目する。

 

いつの間にか探照灯を持った比叡は地面にへたり込んでいるが、それでも灯(あかり)は持ち続けている。偉いぞ比叡、頑張れ。拡声器が無いのが惜しい。

 

 他の艦娘も探照灯を持って後から追加している。睨み合いが続く中で湾内は、次第に明るくなっていく。白い肌の深海棲艦は更に眩(まばゆ)く輝いていた。『彼女』は、しばし夜の風に、その長い髪をなびかせていた。それは本当に敵なのか?

 

(いかん、思わず見とれてしまう)

……そのくらい、神々しさすら孕(はら)み始めていた。

 

 それは他の艦娘たちも同様らしい。多くの艦娘が呆けたような、何かにひきつけられるような表情を浮かべ始めている。

 

そして敵の手下共もまた、この場に偶然展開しつつある『彼女』の神々しいまでの雰囲気に感動すら覚えているようだった。何だろうか? この状況は……。

 

 やがて相手は私の呼びかけに反応するように表情を動かした。

『ワカラナイ』

 

「は?」

 初めて響く敵の肉声。妙に響く。それは湾内にエコーしているのか? それとも私たちの脳内に直接、話しかけているのか? いずれにせよ状況は不明だ。

 

 しかし、相手が発した言葉の意味が理解出来ない。

 

『ナニモ、ワカラナイ』

 『彼女』は再び言った。

 

「いや分からないのは、お互い様というか」

堪(たま)りかねた私は思わず返した。(私は何、敵に突っ込みいれてんだ?)

 

 しかし何だろうか? この妙な……どこかで感じたような印象。

 

「そうか!」

 私はハッと気付いた。これは、この数日間、美保で感じた艦娘たちの反応パターンとそっくりだ。

思わず鳥肌が……怖い方じゃなくて本当に武者震いがした。

 

(もしかして敵は新手の艦娘なのか?)

 

「いやいや違うぞ」

私は慌てて否定した。どう見ても相手は艦娘ではなく深海棲艦なのだ。

 

 私が鳥肌の立っただろう両腕を押さえていると誰かが袖口をつかんだ。

「ん?」

 

「……」

寛代だ。この娘は、こういうときには、何故か近くに居るんだな? お前は。

 

「大丈夫だ、単なる武者震いだから」

 それでも寛代は無言のまま私の袖口をさらに強くギュッとつかんだ。

つい私も空いた手のひらで寛代の手を握り返した。本当に不思議な子だよな……。

 

「さあ深海棲艦、どう出る?」

 私は改めて海上を見て言った。

 




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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは「美保鎮守府」の略称です。

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