マイ「艦これ」「みほちん」(第1部)   作:しろっこ

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執務室の私は秘書艦から鳳翔さん他、艦娘の説明を受けた。


第10話(改2.5)<美保の艦娘たち>

 

「まずは艦娘の名前から覚えないとね」

 

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マイ「艦これ」(みほちん)

:第10話(改2.5)<美保の艦娘たち>

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 私は冗談半分に言った。

「見事な采配だナ。いっそ、このまま君が指揮官を続けた方が良くないか?」

 

だが彼女は「いえ」と緩やかに否定した。

「私は秘書艦ですので」

 

(この反応が人間臭いんだよな)

私は、そう思った。

 

 艦娘は感情を持った武器だ。本人が情緒不安定になれば能力が下がる。

 

機嫌を損ねたら言うことを聞かない……あの舞鶴の彼女のような艦娘も少なくない。

 

「あの子……名前は何だっけ」

思わず私は呟きながらメモ帳を取り出した。半分、照れ隠しだ。

 

 そんな私を見た祥高さんは軽く会釈をして自席に戻ると静かに書類の整理を始めた。

 

 私はパラパラとメモ帳をめくったが舞鶴の頃の記録は残っていなかった。

 

「ふう」

諦めた私は手を休めて窓の外を見た。

 

 キラキラと輝く美保湾。その向うに青白く浮かぶ大山。時折、訓練をする艦娘たちと戦闘機が海上を横切る。

 

「艦娘……か」

感情があることで本来の性能以上の能力を発揮することも、まれにある。だから艦娘の扱いには通常の兵器以上の慎重さと感情的な配慮が不可欠だ。

 

そんな私も指揮官とは名ばかりだ。決して彼女たちの扱いに長けてはいない。特に舞鶴の一件があってからは艦娘の機嫌を取りながら恐る恐る指揮を執ってきた。

 

その是非は分からない。だが今のところ艦娘たちには概ね好評なのだろうか。

(その結果としての美保への着任だと信じたいな)

 

 もちろん私の手法が保守的な軍人仲間から陰口を叩かれていることも知っている。

 

 そのとき私は頭を掻きむしった。つい舞鶴で艦娘を轟沈させた嫌な感情が甦ったのだ。

 

驚いた祥高さんが視線を向けた。

 

「……止めよう」

私は呟きながら立ち上がった。

 

「思い出すのも嫌になる」

彼女は黙っていた。

 

(あの艦娘を沈めた感覚は当事者でないと分かるまい)

艦娘と人間(指揮官)が一対一で個室に居ると沈黙に耐え切れず取り留めの無いことを喋りだす子も居る。

 

笑い話か漫才のようだが、いろいろ思い出す子も居るのだ。

 

かと思えば祥高さんのように黙々と作業をする艦娘もいる。

(艦娘も、いろいろだ)

 

 私は窓枠に手を置いて窓を開いた。美保湾の潮風が緩やかに流れ込む。

訓練をする艦娘や戦闘機が良く見えた。

 

この美保鎮守府は決して満足とはいえない艦娘の規模だ。しかし代理の指揮官(祥高さん)でも十分な抑止力を持つようだ。

 

 私はチラッと彼女を見た。つかず離れずといった絶妙な距離感。

 

そのとき、ひらめいた。

 

 ひょっとしたら、この重巡『祥高』は、その能力の高さゆえに、こんな辺境の地に追いやられているのだろうか?

(軍隊という閉鎖した組織ではよくある話だが)

 

……同期の出世を妬んだり、イジメの仕返しで背後から撃つと言うウソみったいな話は、表にならないだけで意外に多くある。

(特に陸軍は酷いらしい)

 

まして相手が艦娘となれば、よけい煙たがる人間は少なくない。

(秘書艦のように自然に「間」が取れる艦娘は、かなり高スキルだと思うが)

 

時折、その秘書艦の視線を感じながら私は妙に長い「間」を持ったことを誤魔化すように彼女に言った。

 

「あの駆逐艦『寛代』は私を迎えに来ていたようだが」

「……はい」

 

私はイスに深く腰をかけると頭の後ろに手を廻した。

「米子駅では結局30分くらい待っても出会わなかったぞ」

 

それを聞いた祥高さんは困ったような顔をした。

「申し訳ありません提督。実はあの子、よく乗り過ごすのです。今日も安来(やすぎ)の方まで行ってしまって慌てて引き返していました」

 

「それで、たまたま同じ列車に乗り合わせたのか?」

私は笑った。

 

「やれやれ……無線が付いていなかったら果たしてどこまで行ってたことやら」

呟きながら再びメモ帳を開いくと早速、書き付けた。

 

『寛代』:通信特化。性格は、そそっかしい……と。

 

そんな私を見た祥高さんは言う。

「提督、何度も伺うのですが……お怪我の方は?」

 

私は軽く手を振った。

「大丈夫だ。いきなり地上戦に巻き込まれたんだから仕方がないよ」

 

そして提案する。

「個人的に私のことは提督より『司令』が良いんだが。まぁ強制はしないが」

「畏まりました。主な子たちには呼称の共有します」

 

 ホッとした私はメモ帳を閉じた。どうも提督ってのは落ち着かない。まして、この美保鎮守府の規模では、なおさらだ。

 

そこで思い出して、付け加えた。

「しかし急だったからな……手持ちのカバンくらいしか持ち出せなかったよ」

 

壁際にある黒ずんだ鞄を見詰めて言った。

「着替えや他の書類は、さっきの空襲で、ほとんど焼けてしまった」

 

「え!」

いきなり彼女は叫んだ。今度は、こっちがびっくりした。

 

「それでは、すぐにお着替えと関連書類を手配します!」

「あ……そう」

いきなり素早い反応だな。

 

 祥高さんが内線で連絡を取ってから直ぐに『鳳翔』(ほうしょう)さんという軽空母の艦娘が挨拶に来た。彼女は、とても落ち着いた雰囲気の艦娘だった。

 

「まるで……お母さんだな」

思わず呟くと彼女は静かに微笑む。

【挿絵表示】

 

 

「いえ、そんな……祥高さんより若いんですよ」

「え?」

そりゃ、またビックリ。

 

……後から知ったのだが実は彼女、他の艦娘たちと、さほど年齢は変わらないらしい。

 

秘書艦は言う。

「急で申し訳ないのですが司令の着替を準備して下さい」

「承知しました」

(2人とも所作に滞(とどこお)りがない。彼女も秘書艦に匹敵する感情の安定感がある)

 

今後は鳳翔さんが司令部の庶務全般を担当してくれるようだ。

 

 着替えが来る間、私は上着を脱いだ軽装のまま祥高さんに案内され執務室の向かいの部屋に入った。

「ここが美保鎮守府の作戦司令室です」

「なるほど。移動も便利だな」

 

思わず本音。舞鶴も呉も広いから、こういうのは逆に新鮮だ。

「今朝の作戦も、ここから指示しました」

「フム」

 

見ればメモを張り付けた黒板や無線機が所狭しと置かれている。だが窓もあって日本海や大山が見え、眺めが良い。

 

黒板のメモを見ながら彼女は言った。

「簡単に所属艦娘の説明を、よろしいでしょうか」

「ああ」

 

 秘書艦は書棚から写真付きのファイルを取り出して『戦艦』という頁を開いた。それを見た私は思わず反応する。

「あ、この艦娘は、さっき出会った山城だな」

 

今朝の戦闘で空港へ艦砲射撃をした娘だ。

【挿絵表示】

 

 

祥高さんも言う。

「はい。彼女は火力が充実しているんですが性格にムラがあります。ちょっと被害妄想的で……」

 

私は苦笑した。祥高さんや鳳翔さんとは真逆の性格か。

 

 また頁をめくっていくと『駆逐艦(特型)』という見出しの頁に見覚えのある艦娘。

「この子は寛代だな」

「はい」

 

最初に出会った駆逐艦、寛代。

「小さいながら通信や索敵に特化しています。基本的に大人しい子ですが少々、慌てん坊です」

 

「そうか。これからも失敗が多そうだな」

その言葉に彼女も苦笑した。

 

さらに頁をめくる。

『重巡・その他』という見出しの頁に秘書艦担当として重巡『祥高』さんが載っていた。

 

「君は見た目よりタフだな」

率直な感想を言うと彼女は苦笑いを浮かべる。

 

「恐縮です」

 

(彼女の性格か……)

私は考えた。

 

多少のことでは動じない。それは司令部付きとしては最適だろう。

 

 ただ祥高という名前は何処かで聞いた覚えがある。鞄に入っていた虎の巻ともいえる海軍資料が焼けていなければ直ぐに分かったんだが。

 

 さっきの舞鶴の艦娘に秘書艦と、どうも最近、艦娘の名前を良く忘れる。まるで浦島太郎だ。

 

 とりあえず着任して分かったのは、この程度。美保鎮守府は駆逐艦が多数で、まだ主要な戦艦や空母がほとんどいない。

 

「なるほど『小さな鎮守府』というところか」

私は呟いた。

 

 しかし朝の戦闘での迎撃力や破壊力を見ても、やはり艦娘の威力は尋常ではない。艦娘の戦いぶりから陸軍や空軍が悔しがるのも無理もない。

 

また海軍内でも艦娘について敬遠している提督も少なくない。だが軍人は与えられた場所で任務を遂行するのみだ。

 

敵も待ってはくれない。早く、個々の状況を覚えて対応しなければ……。

 

「どうか、されましたか?」

祥高さんが聞く。

 

「いや、何でもない」

私は少し笑って応えた。

 

「まずは艦娘の名前から覚えないと」

「そうですね」

私の言葉に彼女も微笑んだ。

 

 

 

以下魔除け

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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほちん」とは
「美保鎮守府:第一部」の略称です。

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