条例牴触問題の、とりあえずの解決策編です。
なお、今回のお話のやり方は、条例への抵触、警察からの補導を回避できることを保証するものでは、一切ありません。
良い青少年の皆さんは、このような案を実践しようとはせず、成人についてきてもらうか、成人するまで待って、おおっぴらにキャンプを楽しみましょう。
【千葉県青少年健全育成条例】(抜粋)
(深夜外出の制限)
第23条
保護者は、特別の事情がある場合を除き、青少年を深夜(午後11時から翌日の午前4時までをいう。以下同じ。)に外出させないように努めなければならない。
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俺のソロキャンプが、この条文に
俺と父親はこれに対して、ある作戦を立てた。
この条文で言うところの「特別の事情」を、できるだけ自然に見えるように「でっち上げる」ことだった。
まず、両親に
ざっくりいうと、「私達両親は、この子の
これをキャンプの際には
だが、コレだけではまだ全然不十分。
具体的にどんな「特別の事情」をもってソロキャンプするのか。
それをこそ、でっち上げる必要がある。
そしてそれを、俺と両親が…主に世帯主である父親が、設定として共有している必要がある。
ここで父親から、「ちょうどいい、お前の大学入試に
つまりは、こういうことだ。
「俺は来年度には高校3年になり、受験を控えているが、文系科目は多少得意なものの(国語は学年3位だぞ)、全体的な成績は良くなく、正直、ロクな大学に受かる自信がない。学校からの
スポーツ系部活に属してるわけでもないし、体育系科目も優秀というわけではないので、スポーツ系の推薦も受けられない。
しかし、俺にはやりたいことがあった。
夏休みに、小学生のキャンプの手伝いをしたのがきっかけで、アウトドア活動の面白さを感じるとともに、自分が
どうしても…教師になりたい!!
しかし、今の成績では大学合格自体が微妙。
そんな中、近隣の国公立大学の教育学部で、『AO入試』が行われていることを知った(AO入試って何だっけ…まぁそのうち調べよう)。
これならセンター試験の必要科目も、苦手科目を回避できるし、千葉県内で小学校教員として働き、地域に
これだ。これを受けるしかない!!俺はそう心に決めた。
そして俺自身がAO入試で、他の人にない『セールスポイント』を
まだ初めて数カ月(ホントは1ヶ月ちょっとだが)だが、これは一生モノの趣味になると確信してるし、なにより、子どもの教育でも社会でも、役に立つ。
とくに、災害発生時、発生後においては最強の知識と経験になる。
子どもたちを災害から少しでも守れる力になりうるのだ。
我が千葉県を含めた関東地方、東海地方は、地震が多い。過去の震災は対岸の出来事ではない。今まさに自分の足元で起きても不思議ではないのだ。
…などといいながら、まだ初めて数カ月。しかも来年度は本格的に受験勉強に没頭せねばならない。
つまり、『今』。
キャンプ技術を学び、かつ実践して
だから!今!キャンプをしなければならないのだ!!
今なんだ!!
しかし例えば、それならどこかの地域サークルにでも参加して講習とか受ければいいんじゃね?とも思える。
それも確かに手かもしれないが、あまりに時間がない。そうした団体に入ることは、大学入学後に自分のさらなるスキルアップのために考えていけばいい。
リアルな話、今必要なのは入試面接時の『インパクト』だ。これが最重要。
『キャンプの技能を身につけるため、高校2年の秋から○○のキャンプ活動サークルに入って頑張っています。』
よりも
『高校2年でキャンプに目覚め、親の承諾を得ながらソロキャンプやってます。今は一人で設営から撤収までひととおり出来ます。』
の方が、はるかにインパクトは強い。
むしろ前者だとあからさまに『それ、受験対策なんじゃね…?』と思われる可能性が高い。
そして後者は『親御さんから信頼されてて、それにきちんと
とにかく、強烈な
両親も、なまじ息子の成績を知っているせいで、おぼろげながらも『バカ息子が千葉県
だから俺は、今、ソロキャンプをやる必要があるのだ。」
×××
「───という感じでどうだ?」
父親はそう言うと満足げに、キンキンに冷えたマッ缶を飲んでいた。
父親は食事と風呂を急いで終えた後、ずっと俺との作戦会議に付き合ってくれていた。
そして、ほとんどのプランは父親が
ちなみに( )書きのところは念の為に俺が入れといた注釈な?
「… … …。」
俺は
俺が18歳未満だということを、「大学の受験対策で必要」という方向から、見事に
実際の俺は、今のところは
実際に選択肢の一つに入れてしまえばいいだけだ。まぁ行かんけど。
しかも俺がキャンプを始めたきっかけである「災害時対応スキルの必要性」も盛りこんであって、必ずしも全部が全部、
むしろあまりの筋書きの良さに感動して、うっかり「そうか…俺、小学校教師になるために生まれてきたのか…!」とか一瞬本気で思っちゃったまである。
まぁ、客観的に見ればツッコミどころは多いかも知れないが、結局のところ、今回の作戦、「ソロキャンプの経験がAO入試にホントに役立つの?」とかいうことは、実はどうでもいいのだ。多分あんまり役には立たないだろう。
しかしとにかく「親も含めて、息子が有名国公立大に合格するために必死になってる」感がひしひしと、なんなら「思考が若干イタいし、ヘタに邪魔したらコイツの親までギャーギャー言ってきてめんどくさそう…」くらいに、お
「これでも補導してくるような真面目な警官だったら、残念だが諦めろ。笑って迎えに行ってやるし、学校にもこの設定でちゃんと説明してやる。」
このとき父親が言った「ここまでやってダメなら諦めろ」の言葉には、素直に従う気になった。
「押してダメなら諦めろ。」
俺の人生訓だ。
だが。…だがな。
押さないうちから諦める主義じゃ、ないんだぜ…!!(心の中でドヤァ
しっかし…。
こんだけのことをよくもまぁ、スラスラと思いつくよな…!
なんていうか、さすが俺の父親というか。
思考の斜め下っぷりは、やっぱ、俺なんかよりよっぽどひどいんじゃないの。
…だ、大丈夫だよね…?なんか会社で
…っていうか…マジでAO狙ってる人がいたら、マジごめんなさい…!!実際のところ、俺なんか、とてもじゃないが狙えない高レベルの大学です…どうかこんな発想しかできない最低クソ親父など
「さて、このプランをより完全なものにするために、いくつかお前に約束と、了承をしてもらう。」
突然父親の顔が厳しくなった。ちょっとドキッとする。
「…え、…何?」
「言うまでもないが、酒とタバコは絶対禁止だ。それで補導されても知らんし、そんなことをしたら、家に帰って来れると思うな。」
なんだそんなことか。
「了解。大丈夫だ。ていうか、マジでしねぇよそんなこと。」
俺は目は腐っているかもしれないが、不良じゃない。酒もタバコも
…あ、平塚先生が結婚できないのってそれが原因?やだ一刻も早く禁煙外来
俺は父親と同じく手に持っていた、飲みかけのマッ缶をあおった。あァ…キクぜぇ…!
「それと、お前にとっては不本意かも知れんが…、事前に近くの
当日も、状況確認ということで、現地までお前の様子を見に行く。そのくらいやって、俺達の本気度を見える形で対外的にアピールしなきゃな。
なに、お前の邪魔はしない。短時間で、すぐに帰るよ。あと、往復の交通費、出してやろう。これもアピールのためだ。」
「え…!?それくらい全然いいし、むしろ助かるけど、でも、クルマでも結構かかるぜ…この距離…大丈夫なのかよ…?」
「ま、近くに道の駅とかもあるし、風景も良さそうだからな。ドライブと、久しぶりに直売品の買い物でもして、ついでに寄るさ…、って、お前それ、うちのクーラーバッグじゃないか…!?」
父親はバックパックの横に置いておいたソフトクーラーを見とがめた。
「ああ、水を4リットル、運ぶのに使いたくて…だ、ダメ…?」
父親は、ちょっと考えて、ふむ、と軽く溜め息をついた。
「…ま、いいだろ。大事に使えよ。けっこういいやつだからな、それ。イクルー(Iqloo)製だからな。」
へぇ、そうなん。この字、イクルーって読むのか…。
いいやつなのか。ありがとござまーす☆
「それと、警察がウラをとるために学校へ連絡する可能性もある。それとなくAO志望を学校にも示しておけ。なに、あくまで志望だ。入試直前までにいくらでもひっくり返せる。」
「了解。」
作戦会議終了。
父親と俺は顔を見合わせて、ニヤリと笑い合い、マッ缶をカツンとかち合わせた。
…すげえだろ…
まぁ…なんか、何気に大学受験以降の進路のレールを一本、うまいこと言いくるめられて
×××
キャンプ前日の夜。俺が部屋でワクワクドキドキしながらバックパックに荷物を詰め込んでいたところへ、父親から電話がかかってきた。今日は遅くなるという。
『あ、夕方ころに、現地の駐在所に電話で事前連絡しといた。うまくいったぞ。
駐在さん、かなり好意的に受け止めてくれてな。キャンプ場の近くの区長さんにも話しておいてやるってさ。ちゃんと
マジか!!やった、これで勝つる!!!!
俺はガッツポーズを取った。
『なんか変わったしゃべり方の人だったな…なんだっけ、広島弁?そんな感じでな。』
あっそう広島弁!いいね広島!!広島大好き!!広島弁しゃべる娘って超かわいいよね!!
『それとな…一応伝えとくが、なんか親戚で、お前の高校に勤めてる人がいるらしい。雑談の中で言ってたんだけどな…ひょっとしたら、学校にも情報行くかもだぞ。ただまぁ、警察側が好意的に受け取ってくれてるから、問題はないと思うけどな。』
…ん???
ちょっと
広島弁…?総武高の教師…?
…覚えてる限り、そんな教師は一人しかいない。
「…ちなみにその駐在さん、名前は…?」
『えっとな…
… … … オゥ……!!
いやまぁ…別にいいんだけど…いいよな…?うん別に大丈夫…作戦変更不要…。
しかし、なんだ。
ほんのちょっぴりだけ、月曜日以降…嫌な予感がするぞ…?
補足というか弁明というか、すこしだけ書きます。
つい先日、「フリースクールでの学習を義務教育を履修したものとみなす」という法案が、超党派(政党の枠を越えた国会議員たちの集まり)によりまとめられ、来年の通常国会に提出される見通し、とのニュースが流れました。
保護者が学習計画を立て(民間団体によるサポートができるようになればいいかもですね)、教育委員会に申請をして認められれば、学校に籍を置いたまま、一定期間、学校に出席させない(その間はフリースクールで勉強)ことができ、学習計画を実施すれば、義務教育の修了を認める、ということのようです。
そうすると、これまでもフリースクールと深く関わっていたキャンプ(レジャー的な意味のキャンプではなく、自然とふれあい、野外活動のノウハウを教える、教育的キャンプ)が、義務教育においてこれまで以上に大きな役割を持つようになるかも知れません。
キャンプのノウハウを持っている人が、それを活かすために教育学部を目指す、教育学部の学生が、自分のスキルアップのためにキャンプを学ぶ、というのは、わりと現実的にアリな話なのかもな、と、個人的には思ったりしています。
それに原作での八幡の動向といい、ひょっとしたらひょっとすると、八幡が教師になる未来の可能性もゼロではないのかも…?