やはり俺のソロキャンプはまちがっている。   作:Grooki

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 【ちょっと比企ペディア】:焚き火について・ネイチャーストーブについて

【焚き火のマナーについて】

 

 焚き火をすると地面が汚れる。

 

 ゆえに、基本的に日本のほとんどのキャンプ場は、直火(地面の上で直接焚き火をすること)は禁止されている。

 

 他にも、土中の微生物を殺すから、Ph値が変わるから等の理由を挙げる者もいるが、最も大きな理由はやはり、「直火によって地面を汚すと、キャンプ場の管理者や、次にそのキャンプ場を使う人が迷惑をこうむる」からだと思う。

 

 直火が禁止されていない場合は、各キャンパーが焚き火の後始末を完璧に行うことが前提条件であるはずだ。

 

 「直火が禁止されていないこと」=「それまでの先客のキャンパーたちが、場に敬意を払い、後始末をきちんとして次のお客にサイトを引き継いでいる」ということではないかな、と思う。

 

 そのような状況のため、通常キャンプ場で焚き火を行う場合、各メーカーから販売されている「焚き火台」を使うことになる。

 

 「焚き火台」とは、脚のついた火床であり、地面からある程度離して火を炊くことができる道具である。

 

 よくあるBBQコンロは、炭火を料理に使用することに特化した焚き火台の一種、と言ってもいいかも知れない。

 

 「焚き火台」はサイズ、重量、材質などにさまざまな個性があるので、自分のキャンプのスタイルに合ったものを選びたい。

 

 例えば、車で運ばなければいけないほど重いが、ダッチオーブンを乗せても平気な頑丈なもの、バックパックに収納できるほど軽量でコンパクトなもの、など。

 

 ちなみに書き手は、軽量タイプを一個保有しているが、もう一個、頑丈なタイプのも欲しいなぁ…などと考えている。

 

 直火でなければ焚き火ではない、という向きもあるが、書き手個人としては、焚き火台をこだわりを持って選び、積極的に使う焚き火も、結構楽しい気がする。

 

 「場に痕跡を残さない」、というのも、なんかクールな感じがする。

 

 

【焚き火のメカニズム】

 

 軽く頭に入れておくと焚き火の段取り力アップにもつながりそうなので、薪がどのような段階を経て燃焼するかを記す。

 

(参考:「Fielder」誌(笠倉出版社)vol.19 15頁)

 

①〜100℃

 薪の中の水蒸気が放出される。同時に、薪(木材)の成分が熱により化学変化を起こし、可燃性ガスが発生し始める。

 

②〜300℃

 薪の中で可燃性ガスの生成が急速に進み、盛んに放出され始める。

 

 260℃あたりでガスに引火。

 

 300℃あたりで薪が割れはじめ、可燃性ガスがさらに噴出。燃焼と共に薪の炭化が始まる。

 

 この段階くらいで、耳を澄ますと薪から「シュー」という音が聞こえる。

 

③〜700℃

 いままでは主に薪から吹き出していた可燃性ガスが燃えていたが、このあたりから薪自体が燃焼を始める。

 

 700℃で可燃性ガスの放出が終わり、薪の中に赤く熱がとどまるような燃焼が始まる。

 

 この状態を「熾火(おきび)」、あるいは「(おき)」という。

 

 熾の上に新しい薪を置いて、空気を送ってやるとすぐに着火する。

 

 ちなみに、メラメラと上がる炎の温度は1000℃前後。直接炭火で肉を焼くとかなら別だが、鍋などを使って料理するなら、炎くらいの熱が欲しい。

 

 熾火は、焚き火の「スリープ状態」、のように考えるといいのかも知れない。

 

④〜灰

 

 熾火の状態がしばらく続くと、薪の燃焼は終わり、白い灰になる。

 

 完全に燃え尽きるまでには意外とかなりの時間がかかるので注意。

 

 

【焚き火の方法】(焚き火台を使用する前提)

 

 様々な道具、方法があるし、いちいち具体的に書くのは野暮にもなる気がするので、とりあえず書き手がよくやる方法を一例として記す。

 

 あとは各自、工夫されたい(笑)

 

 ちなみに…、原作第4巻の平塚先生による着火シーンは、書き手的には、ナシです。

 

 かまどがサラダ油でベトベトになるだろ…。

 

 西岡式(非常にエレガントな方法)で炭を組み上げて、ちゃちゃっと種火を放り込み、「お前はもう死んでいる」ってな感じで、さっそうと去っていった後に炭から静かに炎が上がる、みたいなのがカッコイイと思う。

 

 

①道具

 

 点火の道具としては、マッチ、ライター、または「ファイヤースターター」を使う。

 

 「ファイヤースターター」とは、「フェロセリウム」という黒くて柔らかい金属を棒状にしたもの。

 

 エッジが鋭いステンレス等の硬い金属板(ナイフの背など)でこの棒をシュッとこすると、火花を散らすことができる。

 

 フェロセリウム本体が濡れても、拭けばすぐに使えるのが最大のメリット。携行しているキャンパーは結構多い気がする。

 

 マッチ、ライターに比べると、点火に少しコツがいるが、難しくはない。

 

 使っていると玄人感が演出できて、イイ(笑)。

 

 キャンプ用品店、ミリタリーショップなどで売っている。1,000〜2,000円前後が標準的な相場。

 

 フェロセリウム単体の商品と、マグネシウムのかたまりにフェロセリウムの棒がくっついている商品がある。

 

 マグネシウムをナイフ等でコリコリと削り、出てきた粉を着火剤の上に()いてからフェロセリウムで火花を飛ばすと、マグネシウム粉に火花が当たってパチパチ…とはぜながら燃焼するので、着火がしやすくなる。

 

 

②着火剤、火口(ほくち)

 

 ティッシュペーパーが一番コスパが高く、使いやすい。街頭で配られているポケットティッシュの、使わなくて古びてボソボソになりかけている奴とかが最高。

 

 マッチ、ライター、ファイヤースターター、いずれでも簡単に着火できる。

 

 ゲル状の燃焼剤は、チューブから絞りだすタイプと、小袋に個別包装されているタイプがある。個別包装が使いやすい。数分間燃焼する。

 

 固形燃料(料亭の鍋物を温めているアレ)も便利。ファイヤースターターで点火するときは、外側の透明フィルムを破いて中に向けて火花を飛ばすとすぐに着火する。大体十数分燃焼する。

 

 着火剤があらかじめ用意できなければ、「乾燥してもろくなっているもの」「乾燥して柔らかい繊維(せんい)状のもの」などを身の回りから適当に探す。

 

 冬場のすすきの穂、かんなで木を削った時のくず、ホムセンで売ってる細い麻縄をほぐしたやつ、等はよく燃えた。

 

 

③薪の燃やし方

 

 一番最初に、緊急消火用として、水の入ったバケツ等をすぐそばに置いておく。

 

 よく乾いた落ち枝や市販の薪などを確保し、何段階かの太さに分けて、火床の脇に並べる。

 

 一番細いのはお(はし)より細いくらいのがいい。できるだけ大量に用意する。

 

 市販の薪は、必要に応じて縦に割り、太さの種類を分けておく。

 

 太さの上限は、焚き火の規模にもよるが、書き手の経験(ソロキャンプ)上は、市販の薪サイズより大きな薪は必要としない。

 

 まず、着火剤の上に一番細い薪、次に細い薪を少量乗せる。「#」(井げた)の形を意識しながら重ねる。

 

 薪の長さは、可能な限り、焚き火台の中に収まる程度に揃える。外にはみ出していると、燃えている途中で、突然ポロッと外にこぼれてしまい危険。

 

 風向きを確認し、風の吹いていく方向に人や燃えやすいものがないか確認する。

 

 着火剤に点火してしばらく待つ。薪から白い煙がもうもうと上がってきて消えなかったら、だいたいそのままスムーズに着火する。

 

 薪からパチパチとはぜるような音が聞こえてきたら着火はほぼ成功。炎がすぐに上がるので、後は適宜(てきぎ)、薪を追加して火を維持する。

 

 細い薪から、段々太い薪をくべ、火を育てていく。太い薪は1〜2本でいい。

 

 自分の頭よりも上に炎が上がらないように注意。コントロールしきれずに延焼・火災の危険が高まる。

 

 薪はキャンプ終わりまでには燃やし尽くすことを念頭に、薪をくべるときは気持ち少なめにする。

 

 キレイに灰になっているように見えても、まだ細かい炭の中に火が残っている(まず間違いなく)ので、バケツの水の中に入れて完全消化してからゴミ袋等に入れる。

 

 

【ネイチャーストーブ】

 

 ガスやガソリンではなく、枝や薪、木の葉など、自然に落ちているものを燃料に火を起こし、調理をするときに使う火器である。

 

 このSSで八幡が使用していた「ステンレス蒸し器の焚き火台」も、どちらかといえば焚き火台ではなく、ネイチャーストーブの部類に入るかも知れない。

 

 焚き火台とは違い、火床と地面との距離がほぼ無く、実質的に直火と同じくらい地面を汚す可能性があるため、日本のキャンプ場でそのまま使うのは不向き。

 

 しかしこれが使うと結構楽しいので、書き手の場合は、炊事場のあるキャンプ場なら、かまどの上で使ったり、コンクリ造りのテーブルや椅子が設置されていて独占できれば、別に金属トレイを持って行ってその上で使ったりする。それ以外では遠慮して使わない。

 

 

①ロケットストーブ

 

 単純に言うと、L字型の煙突構造になっているスト−ブ。

 

 横向きの炊き口(Lの字の短い横線の端)から薪を入れて燃やすと、煙突効果により上昇気流が発生して、縦向きの火口(Lの字の長い縦線の端)から勢い良く炎が吹き出す。

 

 非常に燃焼効率がよく、薪の消費量が少なく済むのがメリット。ネット上でも自作の方法が多く書かれていて、単独でも自作が比較的容易。

 

②ホボゥストーブ

 

 アメリカの大恐慌時代に、各地を転々とした渡り鳥労働者(ホーボー)等がよく利用した野外調理用の火器。自作が容易。これも煙突効果を利用している。

 

 ペール缶の上部、底部の外周に穴をいくつか開け、内部に、底からいくらか浮かせた火床をつけて、缶の上から薪等を差し込んで燃やす。

 

 缶の上部はそのままコンロとして鍋を置くなどして使う。

 

 構造が単純なので、薪にこだわらず、ゴミなどでも燃料にできる。

 

 

③「木こりのろうそく」

 

 北欧のきこりたちが生み出したらしい、ネイチャーストーブというか、丸太。

 

 よく乾燥させた、人間の(ひざ)くらいまでの長さの丸太に、チェーンソーで縦に切込みを3〜4本入れる。上から見ると「*」みたいな感じに。

 

 その切り込みの交差部分(丸太の中央部)に、燃焼剤とマッチの火を投げ込むと、丸太の中央から徐々にゆっくり燃えていく。

 

 見た目にすごく風情がある。

 

 燃えている間に、丸太の上に鍋を置いて熱で調理したり、周りで暖を取ったりする。

 

 軽く数時間は持つ。ぜひやってみたい。モロに直火に該当するけど…。

 

 

 

 

 エレガントな火起こし、火の保持ができることは、人間社会では十分、自慢できるスキルだと思うし、なんだか自分自身への肯定感も高まる。高まった。ふしぎ。

 

 安全に気をつけて、焚き火を大いに楽しみましょう。


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