やはり俺のソロキャンプはまちがっている。   作:Grooki

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その30:デイキャンプ@フォレスターズヴィレッジ#5

 このキャンプ場、スゲえな…トイレはウォシュレットか…。

 

 焚き火をひとしきり楽しんだ後、サイト近くに建てられていたトイレを借りたのだが、リフォームしたからなのか、結構きれいめで、ウォシュレットまで付いてた。女性の利用客も安心かもな。

 

 それだけじゃない。受付をしたロッジにはちょっとしたカフェもあるし、200円でシャワールーム、300円で風呂が使える。コインランドリーもある。

 

 さらにオートキャンプ場では、電源がついてるサイトも一部あるようだ。電源って、家庭用の電気製品が使えるコンセントな。

 

 つまり、キャンプ場だけど、炊飯器や湯沸かしポット、電気カーペットなんかが使える。考えようによっては、すごく手軽にキャンプを経験できるわけだ。特に小さい子共がいる家族にとっては。

 

 これって多分、いわゆる「高規格(こうきかく)キャンプ場」ってやつなのか…?

 

 泊まりキャンプの時でも、ここなら安心してやれそうだな。

 

 トイレついでに、オートキャンプサイトの方も散策してみた。広場みたいになってるフリーキャンプサイトよりもさらに、森っ、て感じだ。周りは枝をキレイに間伐(かんばつ)してまっすぐ立っている木々に囲まれ、背の低い生け垣のような植え込みで区画分けされている。

 

 1区画あたりの面積は若干(じゃっかん)狭そうだが…ソロキャンプなら全然いいいんじゃないの。

 

 さて、自分のサイトまで戻ってきて、とりあえずテントに潜り込んだ。

 

 時刻。14時半。デイキャンプの終了まであと1時間半か。

 

 ガッツリと昼寝する時間まではないが、折角(せっかく)なので寝袋に入ってみることにした。

 

 テント内でまだ丸くなっていた銀マットを伸ばし、その上に寝袋を広げて入り込む。

 

 …枕がない…。寝転んで初めて気付いた。しまった。

 

 しょうがないのでバックパックを頭の下に敷いてみた。インナーテントの壁に当たり気味だが…まぁなんとか使えそうだ。

 

 銀マットを体の下に敷いているとはいえ、地面の固さは、やはり家のベッドに慣れた俺の身体にはややキツい。

 

 ええい何を軟弱な!これはもう、経験積んで慣れるのみだ!いつでもどこでも即座に眠れる体質に変えるのだ!!それのび太くんじゃね!?やだ、そう考えるとのび太って超アウトドア向きじゃん。アウトドアどころかいろんな世界行ってるけどね彼。さすが大長編20本以上やってるだけある。

 

 などとくだらないことを考えながら、ゴロゴロボケーッとしていたら、少しずつ寝袋の中が暖まってきた。

 

 …銀マットの外の床面をそっと触ってみる。案外冷たい。銀マットの上とははっきり温度差がある。銀マットすげえな…!

 

 … … …、

 

 … … …。

 

 違和感。

 

 なんだか違和感がする。寝てる感触に。

 

 慣れない寝方のせいか?…いや違う。ただ固い地面の上に寝転んでるだけなのに、こんなに違和感というか、乗り物酔いしかけてるような気持ち悪さを感じるはずがない…。

 

 しばらく寝返りしたりモゾモゾしたりしてるうちに気づいた。

 

 地面がわずかに傾斜してる…のか?しかも横方向に…?

 

 起き上がって、スマホに水平器(すいへいき)のアプリをインストールし、テントの床面に置いてみた。

 

 スマホ画面に、緑の液体に浮かんだひと粒の泡が映しだされたが、画面中央のサークルの中には留まるものの、ほんの少し、中央からわずかに横にずれていた。

 

 …やっぱ、傾斜してたか…!小さなスマホ画面では些細(ささい)な範囲に見えるが、多分テントの横幅全体でいえば、もうちょっと露骨な傾き具合だろう。

 

 テント張る前の確認が甘かったか…。こんなに体感するものなんだな…!

 

 スマホの時計を見る。15時を少し過ぎていた。

 

 大きく溜め息をついた。

 

 今からテントの位置替えをしても、すぐに撤収時間だな。

 

 しゃあない。それでもいい勉強になった。泊まりの時にはもっと細心の注意を払って、平らなところを見つけるようにしよう。それか、傾斜があっても縦方向になるようにして、頭を上にすれば気持ち悪さはなくなるはずだ。

 

 そうそう、こういうことなんだよ!失敗こそが先生だ。最初からその気持ちで臨んだのだ。今日はいろいろ小さな失敗をしながら、大きな学びをたくさん得たのだと思うことにした。まぁ、(はた)から見てれば初心者のヘタレ練習キャンプなんだろうがな。

 

 でも、今日は大満足な一日だった。うん。

 

 早めに撤収して、ロッジで少しくつろいでから、帰ろうかな。それくらいの心の余裕があってちょうどいいんじゃないの。

 

 俺は割といい気分でテントから出て、寝袋と銀マットを丸めて外のテーブルに置いた。

 

 焚き火台と炭は、きちんと水をかけて完全消化し、それぞれ袋に密閉してバックパックに入れた。小さな焚き火台だからか、消火後の始末が楽で大変よろしい。つってもほとんど真っ白な灰になってたけどな。

 

 さて、テントもサクッと片付けよう、と、手近なペグから引き抜こうした。

 

 …あれ?

 

 …あれ??

 

 … … …ぬ、

 

 抜けない…ぞ…?

 

 ペグは地面にガッツリ深々と()()()刺さったまま、俺がいくら力を入れても一向に抜ける気配がしなかった…。

 

 いや…、力を入れようにも…そもそも手や指でガッシリつかめる部分が地面からあまり出てない…!!

 

 あれ────……!!?

 

 え、ペグって打ち込み方、こうでいいんだよね?頭の先まで刺さないと、風吹いたらペグに引っ掛けてるガイライン(細い紐)取れちゃいそうじゃん…!?

 

 

 え?え?違うの?もっとペグの頭って出しとくべきなの!??

 

 引っ掛けているガイラインごと、強引に引っ張って抜こうとしたが、俺の腕力じゃビクともしない上に、ヘタに力いっぱい引っ張ったら、俺の腰の方がイってしまいそうな感じがして超怖い。

 

 必死に、抜けるペグから抜こうともがき、どれも全然抜けないまま、時刻、15時40分。

 

 

 

 … … … どっ、

 

 

 どうしよう… … …?

 

 

 … …??

 

 

 ま… …

 

 

 … … …

 

 

 ママ────────ッ!!!!!!!(スネ夫声)

 




ホントのところ、このキャンプ場のモデルとなったところの土質からいえば、よほど変なところに打ち込まないかぎり、抜けにくいということはないと思いますが、今回は八幡をヘタレさせたかったので、敢えて。

ちなみにテント内での傾斜のくだりは、私の実体験がもとです。生まれて初めての泊まりソロキャンプがそうでした。

想像していたより、僅かな地面の傾斜というのは身体に応えますね。

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