テントとタープは一番最後に考えよう。
ペグは…やっぱスタピのソリッドスティックかなぁ…。
寝袋は…やっぱモンブリアンで。3シーズン用か冬でもイケる用か…二種類必要なのか…?そもそもソロキャンプのベストシーズンは秋から冬というしな…(GW、夏休み、SWが終わってファミリーキャンパーが少なくなるから)。
いやいや、このへんは全部あとまわしだ。最後の最後まで知識と情報を分析してから。
焚き火…そうだ焚き火台。「モノリス」(MONOLITH)のファイヤーフレーム、買うならアレだな…!
椅子とテーブル…は、持ち運ぶ手段がないから今はパスだな…ということは地べたスタイルか…地面に敷くシートが必要だな…。
あ、OSOTOの折りたたみミニテーブル、A4サイズ、これなら持って行ける…デザインもカッコイイなぁ…。
そうだ…寝るときのマットはどうする…やっぱ無難な
料理用のナイフ、まな板、箸やスプーン、フォーク…なんでキャンプ専用品だとあんなに高いの…?小ささにプレミアム付き過ぎだよ…誰の胸だよ…?
あ、食材をどうやって持ち運ぶ…?クーラーボックスってどのくらいの大きさがいるんだろ…?ソフトクーラーでいいよな…?保冷剤は…?
あと水の持ち運びも…。
あ。ぎゃー。忘れてた。夜の
ランタン買わなきゃだったわ…でも光量とか燃料とか、どうしよう…マントル式は敷居が高そうだな…あとデカくて重そう…。そうするとLED式かなぁ…ギェントス製…?もっと軽いのないかなぁ…ブラッドダイヤモンド製…?高ぇよ…。
… … …
…ていうか、どうやって持ち運ぶ…?
バックパック…?何リットルのを買えばいいんだよ…どのメーカーのがいいの…?多分コスパ高いのはモンブリアンだよな…?
っていうか、キャンプってホント、こだわろうと思えば荷物が(欲しい物が)どんどん増えていくな…。
×××
「はぁ…車と金が欲しい…。」
スマホで欲しいキャンプ道具を調べていたら頭が痛くなってきて、ぽつりとそうつぶやいたのを、彼女は聞き逃さなかった。
「
「おいおい…『ついに』って何だよ…。俺はこんな目はしているが極めて
「そうね、厳密には法令に違反しているわけじゃないところが、余計に
雪ノ下は片手をこめかみに当ててため息をついた。お褒めの言葉をどうもありがとよ。
「え?ヒッキー、クルマの免許取りたいの?」
携帯をいじりながらポッキーを食べていた
「あー、いやそういうわけじゃ…いやまぁ、でも、…そうだな。でも免許取るだけじゃなぁ…。」
車が使えれば、行動の幅も広がる。
ただ、もちろん前提として、免許を取るためにも、自由に使える車を手に入れるためにも、やっぱり金はかかる。
やはり働くしかないのか…?
さすがに専業主夫になって、ヨメに「ソロキャンプしたいから金くれ」とは言えないしなJK…。
あ、JKって「常識的に考えて」の略ね。今俺の目の前にいる謎の生物たちのことじゃないからね。
まぁ、趣味のために金を稼ぐ、と割り切るなら、働くのもいいのかも知れない…。
しかし、最低限、キャンプできるくらいの休みが安定的に取れる仕事じゃないとな。コレ絶対。売上げとか締め切りとかの心配がある自営業や自由業は無理だな。いや勤め人でもなかなか難しそうだが…。
それに…どのみち、自動車の免許が取れるのは18歳になってからだ。
「…まぁ、早く大人になりたい…のかな。」
誰に対して言うでもなかったその俺の言葉に、謎の生物たちは固まった。
「…ヒッキーどうしたの…?なんか真面目に将来のこと考えてるっぽい…!」
「由比ヶ浜さん、私達は高校2年生だし、確かにそういう時期ではあるのよ?」
「そ、それは分かってるよ!あたしだって、まぁ、ちゃんと真面目に考えてる…よ?」
なんで最後が疑問形なのかな由比ヶ浜さん。
「けれどたしかに、この男がそんな
んなわけ無ぇだろ。
人は変われないんだ。
変われるとしたら、心が傷つくことの回避本能で行動が変化するか、もしくは…
欲に
はい、今まさに俺がソレ。
しかし。
この二人に
話した後の会話がありありと予想できるからだ。
「大人になりたい、働いてもいい」→「なんで?」→「金が欲しいから。あと車に乗りたいから」→「なんで?」→「キャンプ道具が欲しいから」→「なんで?」→「キャンプがしたいから」→「誰と?」→「ひとりで」→「は?」
ってなもんだ。
それまでは「なんで?」なのに、いきなり「誰と?」ってナチュラルに問われるだろうってのがポイントな。
どうせキャンプはみんなでやるものっていうイメージだろう。俺も先月までそうだった。
だが、「ソロキャンプ」がいかに魅力的かをこいつらに語ることなんてできない。まだ俺やったことないもん。
「まぁ、…ちょっとやりたいことがあってな。いっぱしに稼げるようにならないと難しそうなんでな。」
「へー、何何?」
由比ヶ浜が食いついてきた。
確実に「誰と?」って聞いてくるのはコイツだよな…。こんな部活入ってるけど、基本的にリア充側の人間だしな…。
「…秘密。」
とにかく今はペラペラしゃべる時期じゃない。漫画家や小説家になりたいって思った時と一緒だ。
自分に、しかるべき準備が整うまで、心のオモテに出してはいけないのだ。そうでないと、せっかくの意気が周りからの意見で潰されてしまう。
俺は、せめてミステリアスに見えるようなニヤリ笑いでそう答えたのだった。
雪ノ下と由比ヶ浜は、眉をひそめながらお互いに顔を見合わせた。
と。
完全下校時間を知らせるチャイムが響いた。もうそんな時間か。夢中で調べ物してるとあっという間だな。
「んじゃ、行くとこあるんでお先。」
そう言うと俺は、通学バッグをひっ
「あ、ま、また明日ねー!」
と、背中の向こうから聞こえてくる由比ヶ浜の言葉に、軽く手を上げて応えた。
×××
…ふぅ。ジャストタイミングなチャイムだった。
明日、しつこく聞かれるかなぁ…なんか別の話題を考えとかないとなぁ…。
さて。
行くとこがある、と言ったのは本当だった。
今日はこの後、ためしに行ってみたいところがあった。
だが、その前に。
俺はそそくさと駐輪場へ向かった。だが、いつも自転車を
外は昨日の下校時より、少しだけ薄暗い感じがした。
日が傾くのが早くなったな…。
行く手に、見慣れた人影がポツリと
「すまん、待たせちまったかな。」
人影に軽く手を上げて声をかけた。
「ううん、僕も今出てきたところだった、から…。」
小柄で
近づくにつれ、その表情がはっきりしてきた。