エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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アイサツは大事って古事記に書かれてた。


挨拶準備

俺とモモンガさんは男同士の奇妙な友情を確かめ合い、これからのことについて再度話し合う。さっきまでの話は将来的な話。次に話すのは今からどうするかの話だ。

 

「アバさん直々、皆に挨拶をするべきでしょうね」

「ですよねー」

 

モモンガさんも最初に、第六階層の闘技場に守護者を招集し、顔見せした後、色々と聞き出したそうだ。となると、俺もナザリックの面々に顔を合わせた方が良かろう。

 

それに……

 

「俺、実質ナンバー2!?」

「そうなりますねぇ。覚悟した方が良いです。みんな忠誠心がガチですから」

「あ、やべ緊張してき……ふぅ」

「ああ……その感じ、俺も通った道ですよ」

 

モモンガさんが遠い目をしている。モモンガさんは、俺がアバ・ドンに生まれ変わるよりも一足早く、こちら側に来ていた。

 

それまでの期間はそんなに長い訳でもなかったが、短期間で相当な苦労を強いられてきたのは容易に想像出来た。俺ももうちょっと早くに来る事が出来ればなぁ。

 

しかし、モモンガさん曰く、ユグドラシルが終了と同時にナザリックが異世界に転移したと言っていたのだが、となると、ユグドラシル終了時期にご臨終した俺も、同じタイミングで転移してないのは何か違いがあるのか?

 

モモンガさんの場合はナザリックの中枢に居たからこそ、ロスタイム無しに転移出来たという説が濃厚だが判断材料は少ないので、何とも言えない。

 

 

 

 少なくとも、俺達のようにユグドラシルのプレイヤーが転移してきたとしても、時間差が生じる可能性が高い。俺の場合大した差にならなかったが、一年以上の差、もしくは何百年もの差異が出るのかもしれない。

 

まぁ、これ以上考えても予測の粋を出ないし、モモンガさんに至っては既に推測している事であった。あの人、自分の中身はただのサラリーマンですなんて言ってたけど、少なくとも頭の回転早いと思うわ。俺だったら真似出来そうに無いもん。

 

さて、話は戻る。

 

「試してみたんですけど、メッセージを個人仕様でやり取りすれば内緒話も容易に出来ます。なので、こっそりメッセージを使ってお互いフォローするようにしましょう」

 

メッセージ。名前のまんまだ。プレイヤー同士でボイスチャット等のやり取りが出来る。なんと、こちらではNPCと連絡出来たそうだ。連絡手段に最適だな。

 

となると、ゲーム時代と今で、魔法やスキルに何かしらの差異があると見て良い。

まぁ、モモンガさんは既に検証に当たっているのだが。さすもも。

 

「ありがてぇ話です。役に立てるか怪しいですが」

「いえいえ、居てくれるだけでも本当に違うし」

「そんなもんかなぁ?まぁやれるだけやってみます」

「了解です。それじゃ、俺はまず皆が跪いたら

"面を上げよ"と言うので、アバさんは……」

「ふむふむ……」

 

それから暫くの間、挨拶時の流れをおおまかに話し合って、主要な者達を玉座の間に集合させ、ぶっつけ本番と相成った。結構な数の無駄話が飛び交い、NPC達を置き去りにしているのだ。リハーサルする時間が取れなかったのは痛手だったが、自業自得であった、ジーザス。

 

さて、至急玉座の間に集合せよと命じられた守護者各位は、始めから、指令を待っていたのか、即座に集結した。速さが足りてる!

 

先程までとは打って変わって、現在の玉座の間には守護者統括のアルベドを筆頭に、各階層守護者とその精鋭達で埋め尽くされている。

 

モモンガさんは玉座に深く腰掛け王者の風格を漂わせている、気がする。一方の俺は第九階層の個室から引っ張り出してきた豪華絢爛な椅子に腰掛けている。人間時代でも1日中座っていられそうな座り心地だ。

 

俺の姿勢は背筋を伸ばし背もたれにもたれ掛からず、両主腕はひざの上に、唯一副腕はそのままだ。簡単に言えば、新入社員が面接中に行う正しい姿勢だ。

 

実質ナンバー2なのに何故この座り方をチョイスしたのか。自分でも謎だ。足を組むぐらいしといた方が良いのだろうか。でも俺敬語キャラだから案外良い姿勢の方が……もう手遅れだし思考放棄。別の事考えよ。

 

 今ここに集まっている面子が会社で言うところの幹部クラスだ。守護者は全員100LVなので中々強い。あ、ヴィクティムは違ったっけ。あいつ特殊すぎるからな……。

 

まず、目の前にいる守護者統括、アルベド。

 

 守護者のリーダー格であり、ナザリックのナンバー3だ。俺がいるからな。タブラさんが設定しただけに、とんでもねぇ程の設定過多なサキュバスだ。胸元の蜘蛛の巣型アクセサリーのセンスが素晴らしい。

 

色々とヤバイ設定が盛り込まれてる筈なのだが、モモンガさんが若気の至りで"モモンガを愛している"なんて設定に一部変えてしまったらしい。ヤッチマッタナー。その事を告げられた時の気まずさと言ったら……。

 

そりゃこんな事態になるとは予想だにも出来ないだろうし、本人も悪気は無かったんだよ……。めっちゃ気にしてたので、この件はそっとしておくのが良いだろう。

とりあえずギャップはあるからタブラさん的に無問題じゃね?

 

とは言え、設定をいじったせいでアルベドに何か齟齬が生じないかは気をつけねばならない。要チェックや!

 

第一、第二、第三階層守護者でトゥルー・ヴァンパイアのシャルティア。

 

取り巻きのベッピンさん達も集合だ。ぶっちゃけ弱いけどね、彼女達。しかーし、シャルティアは能力設定がガチビルドだから、守護者で一番強いんじゃなかろうか。

 

一番心配してるのは、ド変態のペロさんが設定したキャラだからそれが動き出す事でどんな事態になるかだ。超不安!要チェックや!

 

ところで、この世界には18禁に当たる行為を行っても、何も起こらないそうだ。ユグドラシルじゃエッチな行為は一発アウトだったのよね。ではどうやって、モモンガさんはそれを確かめ……俺は考えるのをやめた。

 

第五階層守護者、コキュートス。

 

超かっこいい。武人武御雷さんが作ったキンキンの冷気を放つ昆虫武人だ。率いる精鋭は、蟲型モンスターの他、氷系統に特化したモンスターも控えている。一緒に行軍出来たらさぞや幸せだろう。

 

ただ、そうも言ってられないのだ。

実は、コキュートスはエントマちゃんを巡る仮想ライバルだと勝手に思ってる。

 

本人の気持ちを知らんのに何を馬鹿なと思うが、蟲になってはっきり分かった。あいつ超イケムシ!俺も負けてない自信があるような無いような、な、無きにしも非ずだが、万が一そういう事になったら強敵間違いなし!要チェックや!

 

第六階層守護者、アウラ&マーレ。

 

ペロさんの姉であるぶくぶく茶釜さんが生み出した双子のダークエルフ姉弟だ。ビーストテイマーで男装女子な姉のアウラと、結構逞しいドルイド、女装男子の弟マーレだ。姉のアウラはシャルティアと犬猿の仲なのを除けばかなりまともだ。

 

問題は、所謂男の娘のマーレ君な訳だが、モモンガさんから貰ったっていうリングオブアインズウールゴウンを何故左手薬指に嵌めているのか?アルベドとシャルティアはともかくとして、君男だよね?モモンガさん多分ノンケだから!

 

……ぶくぶく茶釜さんの闇は深い。要チェックや!

 

第七階層守護者、デミウルゴス。

 

悪名高きウルベルトさんが生み出した悪魔だ。設定上、相当頭がキレるキャラクターなので、俺とモモンガさんがボロを出さないように最も警戒すべきNPCの一人だろう。しかし、その忠誠心はナザリックの中でも輪をかけてすごいらしい。一番貢献してるのは専ら彼であると言っていた。

 

いっその事、何すれば良いか困った時に相談するのも良いかもしれない。モモンガさんとは違う切り口で上位者として接すれば距離感も計りやすくなる。上手く行けば頼もしい味方になるだろう。要チェックや!

 

そして、その脇にプレアデスの面々、先頭には執事、セバスがいた。

 

AOG最強を誇る、たっち・みーさんが生み出したNPCだ。生活面の最高責任者という立場で、守護者と同格の待遇を受けている。眼光がカタギじゃないことを除けば分かりやすい程の執事キャラだなぁ。ナザリックでは少数の極善なカルマ値を持っている。それがどういった影響を及ぼすかは留意せねばなるまい。要チェックや!

 

つまり、守護者関係は全員要チェックだな。心の中のシャーペンがいくらあっても足りやしない。

 

(モモンガさん、第四はゴーレムだからしょうがないけど第八のヴィクティムは?)

(あーヴィクティムはちょっと……)

(そっか。じゃあ後はパンドラ……)

(……)

(いや、なんでもないです)

 

 危なかった、モモンガさんの黒歴史を穿り返してしまうところだった。いや、彼には宝物庫を守るという重大な使命が……。ま、まあそれは置いといて、個人メッセージは正常に機能するようだ。よしよし。

 

ユグドラシルの頃ならば、さして緊張する場面でもなく、その威容に感動する程度で済んでいたが、今はNPCではなくれっきとした一個の生命なのだ。緊張しない訳が無い。

 

それに、みんな跪いてる筈なのに、俺の事をじぃっと見つめる気配。俺には分かる、エントマちゃんだ。恐らく中の本当の顔が俺を見てるのだろう。

 

いや、運命の人だからとかそういうんじゃなくて、蟲王になったおかげで感覚が鋭敏になってるのだ。でもちょっと嬉しい。その表情から全てを読み取れる訳ではないが、き、嫌われてたりしないよね……?見つめられるのは嬉しいんだけどね。ほんと。

 

(さ、正念場ですよ。お願いします、アバ・ドン(・・・・・)さん)

(了解です。アインズ(・・・・)さん)

 

あ、こっからはうっかりモモンガさんって呼ばないように気をつける為、あえて呼び方を変えている。さー頑張るぞ。

 




今更ですが、当二次創作は書籍2巻の始まる少し前を想定しております。
あ、次回は明後日の夜。また従者視点です。視点ころころ変えてごめんなさいorz

http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51810940
アバ・ドンを描いて下さった方がもう一人現れました!ありがてぇ……ありがてぇ……。
何とロゴマークまで作って下さってます!カッキェー!

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