エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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途中投稿ごめんなさい!こちらが修正版。

書き直してる内に次の展開をどうしても三人称でやりたくなったので短めです(´ω`)


三巻編
同乗


モモンガさんを始めとする異世界調査組の旅立ちを見届けた。あの人ならきっと上手くやってくれるだろう。

 

さあ、いよいよもって俺はナザリック副総括としての業務をこなさねばならぬ時が来た。ナザリック地下大墳墓副総括兼『黙示録』最高司令官兼宝物殿領域守護者代理とかいう何か凄まじく壮大な役職を得てしまったのだ。色々とやるべき事があるだろう、気合を入れねば!

 

と、思ったのだが。

 

「想定外なまでに暇ですね……」

「アバ・ドン様のお手を煩わせないようにぃ、みんな一丸となってますからぁ」

「……優秀な部下が持てて私は幸せ者ですよ」

「光栄ですぅ!」

 

エントマちゃんがとても嬉しそうで何よりです。専属メイドだったり秘書だったり護衛だったりと大忙しなエントマちゃんと違い、俺の場合はナザリック内の管理はアルベドが完璧にこなすし、宝物殿に侵入者が現れた場合は放った蟲のアラームですぐに分かるようになってる。

 

せめて食堂の皿洗いでも手伝おうと試みるも、ものすっっっっっごく丁重にお断りされるし、みんな優秀すぎてやる事が無い!いや、常にエントマちゃんが傍にいるから超幸せだけど!

 

シモベ達の重すぎるとも言える忠誠心はプレッシャーだが、エントマちゃんが傍にいれば何のそのだ。惚れた女の子の前で無様な姿を晒してたまるかぁ!

 

「派遣した者からの報告が待ち遠しいですよ」

「はいぃ」

 

そうそう、モモンガさん達とは別行動で異世界へ派遣した部下がいるのだ。シャルティアとハンゾー率いるエイトエッジアサシン達、現地人拉致組。パンドラズ・アクターとソリュシャンによる、王国情報収集組だ。

 

 俺の親衛隊なのに、ハンゾー達が旅立つのはどういうこっちゃと思うだろうが、彼らは偵察に拉致に暗殺にと色々と適任なんだなこれが。それと、シャルティアの血の狂乱に対するストッパーという重要な役割も持っている。

 

俺のスキルでパワーアップしているとは言え、ハンゾー達がシャルティアに勝てる訳が無いのは分かっている。そこで、暴走シャルティア用に最強の秘策を二つ程用意した。上手く機能するかは少々賭けだが、少なからず効果はあるだろう。

 

パンドラとソリュシャンは、商人に扮して王国で情報収集をする。二人は本をメインに据えた行商人を演じるつもりらしいが、パンドラは何を企んでるのやら……。

 

「では、個人的な用事から手を付けましょうか。エントマさんも付いてきて下さい」

「畏まりましたぁ」

 

自分なりにやる事はあるっちゃある。そっちからこなしていくとしよう。早速、《メッセージ/伝言》でアウラに連絡を取った。

 

 

 

 

 

 

 

所変わって第六階層の闘技場。何かしら実験をするならここが一番だ。

 

「アバ・ドン様!ようこそおいでくださいました!」

「アウラさん、また闘技場を使わせて頂きますね」

「はい、好きなだけお使い下さい!」

 

アウラが元気良く答える。お言葉に甘えて、好きに使わせて貰おう。

 

「何をなされるんですかぁ?」

「一言で言うならリハビリですかね」

「差し支えなかったらぁ、私もお手伝いさせてくださいぃ」

「私もお役に立てるなら!」

「助かります」

 

まず、一部のスキルを検証したいと思う。模擬戦の際、いつもの蟲攻撃は問題なく機能したが、他の技は試さず終いだった。モモンガさん曰く、現実化した事で魔法の影響やらなんやらに色々と変化があると言っていたので、俺なりに確認がしたいのだ。

 

「少々大きめの蟲を呼び出すので私の側を離れないで下さい」

「畏まりましたぁ」

「わ、分かりました」

 

アウラの表情が若干引きつる。もしかして蟲は苦手なのだろうか。……ぶくぶく茶釜さんも苦手意識持ってたからかもしれない。だとしたら、これから見せる光景はかなりショッキングなものになるな……。

 

「<上位蟲召喚・超変異体千鞭蟲>」

 

スキルを発動させると、地面が振動する。どうやら呼び出せたらしい。

 

俺のモンスターが地中から這い上がろうとしているのだ。……断じて卑猥な意味ではない。

 

揺れ具合から、その力強さが窺い知れた。エントマちゃんやアウラが巻き添えにならない場所に呼び出したので、事故は起こらないと思うが……。

 

「キィィィィィィィィ!」

「わー!?」

 

 アウラがびっくりしている。大きな金切り声を上げて地中から這い出したのは一匹の巨大ムカデ型モンスターだ。高さは2メートル幅は4メートル。体長は大よそ200メートルといったところか。うーむ、でかい! 

 

頭はオレンジ色、足の色は全て真紅に染まっている。昔、日本に多く生息していたトビズオオムカデに長い牙を付け足した姿と考えると分かりやすいだろう。

 

トビズオオムカデは肉食性なので、ゴキブリやバッタ、ガ、ネズミなど小動物を捕食する。恐怖公逃げて!……まあ、敵味方の区別はちゃんと付いてるようだ。おまけに、大きな身体で闘技場を損壊させないように身体をくねらせて装飾に接触しないよう這い回っている。賢い子だな。

 

そんな超変異体千鞭蟲が、全身で俺達を囲むように佇む。

 

ムシツカイが呼び出せるモンスターに千鞭蟲という蟲がいる。本来はその名の通り、長い身体を活かして鞭のように振り回すのがメインだが、その上位に位置するムシマスターとして呼び出せるのがこいつだ。 デカァァァァァいッ説明不要!!

 

ぶん回す事も出来なくは無いが、最早普通に使役するのが一番である。

 

 レベルは俺のスキル込みで70ってところか。呼び出すと敵からも味方からも嫌な顔をされるという不憫な子だ……。HPの高さと素早さを活かした壁役が出来る良いヤツなのになぁ。

 

「おっきいぃ!」

「うひゃー……」

 

よし、エントマちゃんには好評っぽい。アウラは若干引いてるけど……。

 

「上手く行きましたね。どれ、乗ってみましょうか」

「これに乗るんですか!?」

「ええ、アウラさんだってビーストテイマーとして騎乗する事はあるでしょう?」

「そ、そうですけど……」

 

超変異体千鞭蟲を呼び出した理由はこれだ。いつか、俺が外へ出るようになった場合、上位者として何かに騎乗した方が良いんじゃないかとモモンガさんからアドバイスを貰ったのだ。あの人も騎乗する機会があれば魂食い(ソウルイーター)に乗るかもしれないと言っていた。

 

俺の目の前で頭を差し出す超変異体千鞭蟲を撫でる。体表から何か分泌してるって事はなさそうだな。実はヤスデでした!なんてオチだと俺の体が分泌液まみれになってしまう。頭は平べったいし、触覚が丸まってるのでムカデには違いない筈だが、現実世界をかなぐり捨てたファンタジー世界なので、そういうヤスデがいる可能性が無きにしも非ずだ。

 

「みんなで乗ってみましょうか」

「えぇ!?アバ・ドン様と同乗するなんて無礼はぁ……」

「ああ、そんな気構え無くて良いですよ。場合によっては他の人を乗せる事もあるかもしれませんから、第三者の意見が聞きたいんですよ」

「……わ、分かりましたぁ」

 

エントマちゃんはムシツカイなので、彼女の意見は間違いなく参考になるだろう。

 

「アウラさんも乗ってみますか?」

「いえ!私はその……フェンに乗って並走しようと思います!」

「なるほど、私は騎乗に不慣れですから、参考にさせて頂きますよ」

「こ、光栄です!」

 

流石にムカデに乗るのはキツイよなぁ。何にせよ、アウラは様々な魔獣を使役するビーストテイマーだ。その中のお気に入りの一匹であるフェンリル、通称フェンに乗る姿は良い見本になるだろう。お手並み拝見ってヤツだ。

 

「じゃあ闘技場を飛び越えて、ジャングルを走り回ってみましょう。千鞭蟲、木々を踏み倒さないように気をつけて下さいね」

 

キチキチっと、小気味の良い牙の駆動音が聞こえる。返事をしたのだと直感で分かった。

 

 

 


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