エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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ちょっぴり遅刻。モウシワケナイ(;´ω`)
引き続きさくさく進めます


眼鏡&鎧無双

宿を取り、定時連絡を終えたアインズ達。明朝、冒険者として依頼を受ける為に再び冒険者組合へ赴いた。組合に入ると、自分達に集まる数々の視線が突き刺さる。

 

(短期間だというのに慣れてきた気がするよ……)

 

我関せずと、さっさと受付嬢の前へ行く。

 

尚、対応はもうセバス(タッチ)ユリ(マイコ)任せだ。先日、アインズは楽をするか自分も頑張るかで葛藤した結果、どうあがいても二人に任せた方が良い事に気づいた。正確には現実を直視したとも言うのだが、アインズは開き直った。

 

「タッチ、仕事を持ってこい」

「畏まりました」

 

 アインズの態度は"銅プレートの新参者が偉そうに"等と思われそうだが、タッチことセバス(タッチ)が放つオーラのおかげで静かなものだ。セバス(タッチ)も強いのだから、偉そうにしてるあいつも強いのだろうという理論が働いてるのか、こちらを小馬鹿にしてるような気配は感じられない。

 

セバス(タッチ)が近づくと、受付嬢は仕事を果たす仕事人の表情を見せる。ほんのり頬を染めている辺り、仕事人として合格かどうかは疑問だが。

 

「おはようございます。依頼はございますか?」

「はい! タッチさん、おはようございます! あちらに貼り出している羊皮紙に依頼が書かれております! お選びになって、こちらまでお持ち下さい!」

「分かりました」

 

朝からハキハキと元気なものだ。それが仕事によるものなのかセバス(タッチ)によるものなのかは分からない。

 

受付嬢が言ってた通り、向こうの掲示板にびっしりと貼られた羊皮紙が仕事のタネのようだ。どんな依頼があるか確認する為、アインズとユリ(マイコ)も羊皮紙の前まで行く。適当に目に付いた紙を確認してみるも、何が書いてあるのか見当が付かない。

 

「知らない言語か……読めないな」

「でしたら、こちらを」

「うむ」

 

セバス(タッチ)が取り出したのは、以前自分が渡した文字解読アイテムであった。渡したままでどうしようと思っていたが、丁度セバス(タッチ)をお供にしたことで手元に舞い戻ってきた。心の中でラッキーと思いつつ、さも当然のようにアイテムを受け取り、周囲にバレないようにこっそりと使用した。

 

無事、文字が読めるようになり、一先ず自分達のランクで最も難易度の高い依頼は無いだろうかと三人がかりで探していると、革鎧を着用した冒険者らしき人物がこちらに近づいてきた。

 

髪は金髪。体は細めだが、ひ弱な訳では無い。首からぶら下げているのは銀のプレート、多少は腕に覚えがあるのだろう。アインズは心中で軽く警戒するが、彼の目的は自分ではなく、ユリ(マイコ)の方らしい。

 

「マイコちゃん!また会えたじゃん、俺ってば超ついてるぅ!」

「あら、この間の……ルクルットさんですね?」

「覚えててくれたのかい。嬉しいねぇ!」

 

想定していた展開の一つだと、アインズは思った。先日、ユリ(マイコ)には軽く挨拶回りをさせていたのだが、釣り針に引っかかったのは彼だったという訳だ。銀プレートの冒険者ならば、成果としてはまずまずだろう。

 

「いきなり告白するような殿方ですもの。印象に残りますわ」

「いや、俺さー、マイコちゃんみたいな美人さん初めてだもん」

「そう、お上手ですね」

「ほんとなんだってー!もー、マジ一目惚れっす!」

 

ユリ(マイコ)がルクルットを軽くあしらっていると、彼に続いて冒険者らしき人間が三人やって来た。

 

「ルクルット!この馬鹿!」

「いでっ!?」

 

仲間と思わしき男の一人が、ルクルットに制裁の一撃を見舞う。様子から察するに、こういった出来事はよくあるみたいだ。

 

「モモン様、彼の仲間が来たようですな」

「ああ」

 

 

 

 

ユリ(マイコ)のおかげで冒険者一行と縁を作る事が出来た。

 

チーム名は『漆黒の剣』。

 

チームリーダーで、剣士のペテル・モーク。レンジャーのルクルット・ボルブ。スペルキャスターで生まれながらの異能(タレント)持ち、二つ名『術師』持ちのニニャ。ドルイドのダイン・ウッドワンダーからなる四人組のチームだ。異能の概念については陽光聖典の捕虜から聞き出していたが、実際に目にしたのはニグン以来だ。

 

お互いに自己紹介を済ませ、今回の縁から周辺のモンスター狩りを手伝える事になった。実に幸先の良いスタートと言える。

 

(ニニャの異能は、魔法に対する適性。こちらとしては取るに足らぬ能力だが、彼らの口ぶりからして向こう側からすれば優れた力なのだろう。ここで何かしら恩を売れば、将来的に名声を高めるのに一役買ってくれそうだな)

 

「申し訳ありません、ルクルットが……」

「いえ、随分と情熱的で面白かったです」

「おほっ!もしかして脈有り!?」

「……ルクルット」

「確かにマイコ殿は美人であるが、迷惑を掛けるのは良くないのである」

「悪かったって。ペテル、ダイン。マイコちゃんもごめんな」

「お気になさらず」

「若い内はそういう事もあるものです。余程、見初められたのでしょう」

「そうなんだよ、タッチさん。ガチで一目惚れなんだぜ?」

 

(セバス(タッチ)ユリ(マイコ)のおかげで、今のところ、彼らとの仲は順調だな)

 

『漆黒の剣』とコミュニケーションを取りつつ、世界観についてそれとなく聞き出していく。セバス(タッチ)達のアシストもあり、順調にこの世界への理解を深めていくことが出来た。有用な異能持ちであるンフィーレアが、エ・ランテルで祖母と共に薬屋を営んでいる事等、彼らと話をしながら南方の森に向かっていると、一行をルクルットが手で制した。

 

「お出ましみたいだぜ」

 

アインズ達も、既にモンスターの気配は察知していた為、準備は万端だ。

 

「そうだな、タッチは昨日働いたから、私とマイコが行こうか」

「畏まりました」

「モモン様、ご武運をお祈りします」

「ああ」

「……!?」

 

アインズ達の様子に『漆黒の剣』は驚きを隠せないでいた。三人でもチームとしては少数だと言うのに、二人で充分に事足りるとでも言わんばかりの自信だ。しかし、彼らの行動には、言葉では表しきれない説得力のようなものを帯びている。

 

向こう側から飛び出してきたのは体長三メートル程の大きな人型モンスターと小型の人型モンスターが複数。

 

(ゴブリンとオーガ……容易いな)

 

ゴブリンが主に生息するとは聞いていた。一口にゴブリンと言っても、ユグドラシル時代のゴブリンの強さはまちまちで、レベル1からレベル50前後までに及ぶ。現れたのは、その中でも最弱の個体であった。オーガもアインズ達からすれば赤子程度の強さだ。

 

「では、行きます」

 

ユリ(マイコ)が先手を切り、ゴブリンの一角に凄まじい勢いで突進する。

 

「せいっ!」

 

彼女が右拳を突き出した瞬間、ゴブリンが爆散した。虚を突かれた形となったゴブリン達が、次々と正拳突きの餌食になっていく。その凄まじい攻撃力に、敵も含めて静まり返る。細身の美女が繰り出した一撃としては、余りにも強烈過ぎた。

 

(よし、予め確認してた通り、一見普通のパンチにしか思えない。威力の高さについては、印象付ける要素として丁度良いと思えば問題無いだろう)

 

アインズはユリ(マイコ)に問題が無い事を確認すると、背負っていた二本のグレートソードを抜き放ち、突進してくるオーガ達を三体両断した。片手で持つ物としてはありえない程の重量を、悠々と振り回すその姿も『漆黒の剣』に大きな衝撃をもたらす。

 

「モモンさん……マイコさん……貴方達はなんという……!」

「これ程とは、驚きである!」

「ヒュー!マイコちゃん超強いんだな、惚れ直すぜ!」

 

(こいつもすごいな……)

 

アインズは軽く感心した。ルクルットは、あの攻撃力を見せつけられてそうのたまう辺り、中々肝が据わっている。アインズは草食系な為、ああいった人物の精神には舌を巻くのだ。

 

無事、『漆黒の剣』には自分達が強者であるというアピールが出来た。これで、彼らを通じて、自分達の冒険者としての力が広まれば良い。

 

 

 

 

昼を少し過ぎた頃、近辺のモンスターがあらかた片付いた。開けた場所で食事を取り、帰還する事になった。本当なら、もう少しモンスターを狩るべきなのだが、アインズ達がほとんどのモンスターを駆逐した為、戦う相手がいなくなったのだ。現在、一行は昼食を取りながら、雑談を交わしていた。

 

「モモンさんとマイコさん、あれほどとは思ってもみませんでした」

「モモンさんは王国最強の剣士にさえ匹敵しますよ!」

「マイコちゃんのパンチもすごかったな!」

 

『漆黒の剣』が先ほどの戦いを手放しに称賛する。だが、アインズは少し困っていた。自分にも振舞われた食事だが、不要な上にそもそも食べる事すら出来ない。

 

(それとなく、セバスにごまかして貰おう)

 

今後もお世話になるであろう、部下への丸投げである。アインズは、人間時代の上司みたくならないよう、ほどほどにしなくてはならないとは思っているが、余りにも楽なので癖になりそうだと軽く恐怖する。

 

「皆さんこそ、素晴らしいチームプレイを見せて下さいました」

「お互いをよく理解なされているのですね」

 

実際、『漆黒の剣』が見せてくれたチームワークは中々の物だ。お互いの力量を理解し、モンスター達に対して安定した連携を取っていた。

 

「やはりタッチさんも、モモンさんとマイコさんに匹敵する程の力をお持ちなんですか?」

「はい、あの人は私より遥かに強力な拳撃を放てます」

 

ペテルの質問に、ユリ(マイコ)が答える。

 

「うへー……マジかよ」

「察するに、二人は師弟関係であるか」

「そんなところです」

 

セバス(タッチ)ユリ(マイコ)を、師匠と弟子だと予想したようだ。その設定は確かに違和感が無い。今後はそういう事にしておこうと、アインズは決めた。

 

「ニニャさんも二つ名に違わぬ良き魔法をお使いになられる。連携を重んじ、仲間を思いやる気持ちがよく分かりました」

「そ、そんな、照れます」

 

ニニャが頬を赤らめてむず痒い表情を見せる。この短期間で、彼は随分とセバス(タッチ)に懐いたようだ。今回、セバス(タッチ)は特に何もしていないのだが、不思議と人を安心させる包容力があるためか、ニニャは積極的にセバス(タッチ)と交流を深めようとしている。男同士だと考えると、少々危険な気配を感じると、アインズは危惧していた。

 

(いや、アルベド達のアンケート結果がトラウマになってるだけであって、そういうアブノーマルな考え方は良くないな……)

 

アインズは、今はシモベ達のアンケートについて忘れる事にした。

 

 

 

 

『漆黒の剣』と再会を約束しつつ別れを告げ、宿に戻った三人は彼らの印象について話し合う。時刻は目測で夕暮れ前だ。

 

「さて、タッチ、マイコ。お前達の主観で良い。『漆黒の剣』の印象について聞かせてくれ」

「一言で言わせて頂きますと"発展途上"といったところですかな。このまま彼らが道を踏み外さねば、大成する可能性が高いかと。互いが支え合う、良きチームとお見受けしました」

「人柄は良いと思います。ルクルットは少々しつこいところがありますが、仲間思いな一面もあるようで、悪党ではないと思われます」

「……お前達としても好印象だった訳だな」

「はい」

「仰る通りでございます」

 

幸い、良いチームと組めたようだ。将来性があり、人格もある程度信用出来る。彼らとは、この調子で引き続き仲良くしておこう。

 

「分かった。今後も彼らと一緒になる事があれば手助けしつつ有用な情報を聞き出せ。方法はお前達に任せる」

「畏まりました」

「はッ」

 

後は名声を高めるのに有効な、手強いモンスターが居れば良いとアインズは考える。

 

(カルネ村の村長が言っていた森の賢王とやらも興味があるな……)

 

「それとモモン様、ニニャさんについてお伝えしたい事が……」

「何だ?」

「彼……いえ、彼女は殿方に扮した女性のようです」

「は?……んん!成程、今この場で言ったのも、ニニャが男装しているのも、余計な問題事を避ける為か」

「左様でございます」

 

セバス(タッチ)は、ニニャの細かい動作や筋肉の付き具合から、彼女が女性であることを看破したのだ。別にアブノーマルな関係という訳では無かった。ちょっと驚いたが、アインズは懸念事項が一つ片付いた事にほっとした。

 

「ああ、それとマイコにはもう一仕事任せたい」

「はッ!何なりと!」

「今回の報酬がどの程度の価値になるか確認が必要だ。手始めに、彼らが言っていた薬師の店でも良い。この世界の物価を確かめてこい」

「畏まりました」

 

 




今週はリアル事情で若干更新ペースが落ちるかもです。来週本気出す(`・ω・´)

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