エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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案の定長くなったのでまたもや分割。
日刊を維持するか、書き溜めて一気に投稿するか迷う(´ω`)

素敵な挿絵付き、反り投げさんありがとう(*´ω`)


面接

プレアデスのユリとルプスレギナは、一時間ほど前にアインズとアバ・ドンの呼び出しを受けた。指定された時間通り、執務室へと向かう。

 

曰く、面接をするから執務室に来て欲しいとの事。

 

何はともあれ、至高の御方の招集ならば一秒たりとも待たせる訳にはいかない。自分達の業務をキリ良くこなした後、全力疾走はせず、されども最高の速さで目的地を目指す。メイドなら誰もが持つ、ナザリック地下大墳墓の景観を損なわないテクニックだ。ユリが発する雰囲気のせいか、その空気は緊張感が漂っている。

 

「ユリ姉、面接って何するっすかね?」

 

そんな中でも我関せずと、思った事をそのまま口にするルプスレギナ。

 

「アインズ様とアバ・ドン様は到着次第話すと仰っていたわね」

「そこまでは私も知ってるっすけど……」

「これ以上の事は分からないの。ほら、今は至高の御方の下へ向かう事を優先しなさい、ルプス」

「はいっすー」

 

面接と言う以上、自分達が敬服する方々と向かい合って話をするのは間違いない。それは大きな栄誉であると同時に責任重大だ。ユリは、そんな中でもマイペースな妹に呆れるも、少し緊張が解れた。本人に言えば、調子に乗るのは間違いないのでこれ以上は何も言わないが。

 

ルプスレギナも、言われた通り執務室へ向かう事に集中する。

 

 程なくして、執務室の入口が見える。出た当初と寸分も変わらぬ速度で扉を目指していると、反対側の通路からよく知る人影が二つ向かってくる事に気がつく。

 

「……セバス様」

「デミウルゴス様もいるっす」

 

対面したのは、自分達の上司である家令のセバス。第七階層守護者デミウルゴスだ。四人は、ほぼ同時に執務室前へ到着した。この二人が自分達と同じく呼び出されていたのは知っていたが、いざこうして揃ってみると、些細な用事で無い事は否応に分かる。

 

(あー、完全にアインズ様とアバ・ドン様に向けて集中してるっすねー……)

 

ルプスレギナは何か聞けないか一瞬だけ考えてすぐにやめた。既に扉一枚を隔てて、偉大なる主の前に立っているのだ。私情は捨て、他の三人と同じく、まだ見えぬ至高の御方の意向に全意識を傾ける。

 

「失礼します。アインズ様、アバ・ドン様。招集を受けた四名全て揃っております」

 

デミウルゴスが扉をノックする。この中では一番地位が高い。同格のセバスも候補に入るが彼は執事である為、先を譲った。

 

『入室を許可する』

 

扉越しにアインズの許可を貰うと、四人は入室した。

 

(うひゃー、偉大な方々が揃い踏みっす……)

 

 

【挿絵表示】

 

 

 目の前の光景は、ルプスレギナを以てしても極度の緊張に苛まれる。執務用の机の前に設置された、横に細長い簡素な金属製テーブルと2脚の椅子。そこに腰掛けるのは入室者四人が心から忠誠を誓う至高の二柱、アインズとアバ・ドンであった。

 

屹立する巨大な山脈を思わせる絶対者のオーラと、自分達を見抜く鋭い視線に、ルプスレギナは自然と汗が流れた。

 

他の三人は汗こそかかなかったが、彼女と同じく緊張していた。"面接"と言う以上、結果次第で栄えある至高の御方勅命の任務に就けるのは間違いない。それがどういった内容かは明かされていないが、二柱の命であるなら刹那の迷い無く拝命するだろう。

 

「どうぞ、おかけになってください」

 

アバ・ドンは、禍々しい相貌からは想像出来ないほど穏やかな口調で着席を促した。アインズ達に向かい合うように、等間隔に設置された4脚の椅子。人数分用意されたそれに、各々が腰掛ける。アインズ達から見て左から、ルプスレギナ、ユリ、セバス、デミウルゴスの順だ。その動作は一切の無駄が無く、優雅さを感じさせるものだった。

 

(アインズさん、自己紹介する前の俺より良い姿勢してるよ……)

(本当ですね……入社面接した頃を嫌でも思い出すな……)

(玉座の間の時とはまた違ったハラハラ感です)

(アバさん、お互い腹を括りましょう)

(そうですね。……圧迫面接にならないよう気をつけよう)

 

個人メッセージを用いて、威厳を崩さぬよう内緒話をする二人。シモベ達が感じた極限まで張り詰めた空気は、単純に二人も緊張していた為に生じたもの。緊張のあまり、アバ・ドンの副腕の一つが机を等間隔に小突く姿は、シモベ達の焦燥感を煽りに煽った。完全に手遅れである。

 

至高の御方の言葉を静かに待つと、まず最初に言葉を発したのはアインズであった。

 

「さて、この四名に集まって貰った訳だが、私が外へ旅立つにあたって、同行するに相応しい者を探していたのだ」

 

四人は微動だにしなかったが、表情に僅かな変化が見られた。場の空気は一見変わらなかったように思えるが、その胸中は驚嘆で渦巻いていた。

 

「……ええええー!?……あっ」

 

だが、ルプスレギナだけ留める事が出来ず、つい声を上げてしまった。視線を向けずとも分かるほど、他の従者三人から剣呑な空気を感じ取った。至高の御方に割って入り、声を荒げるなど言語道断だ。だが、アインズとアバ・ドンは対して気にしてない様子だった。

 

「ルプスレギナさんが驚くのも無理はありません。何しろ今までの方針からはかけ離れた行動ですし」

「……」

 

まさにその通りである。デミウルゴスは理由が見出せなかった。慎重な行動を心がけていたアインズが、突如として打ち出した大胆な作戦。わざわざ危険を冒してまでナザリックの頂点が旅立つ理由とは?デミウルゴスは敬愛する二人の言葉に集中すると共に、この計画の狙いが何なのか、思考を重ねた。

 

「私は外の世界で冒険者に扮し、情報の収集と通貨の確保を行う。これは私とアバ・ドンさんが共に決めた事だ。セバスに諫められた一件とは全く違う。我々が行動する上で必要不可欠な計画である事を理解して欲しい」

「無論、私達も危険性は重々承知しています。だからこそ、こうして同行者を決めようとしているのですよ。先程書いて貰った用紙と本人の能力を考慮し、最終的に貴方達の誰にするかという段階まで来ました。最終選考という訳ですね」

 

 驚愕の次は歓喜。数多のシモベ達の中から自分達が選ばれた事実は、四人にとって至福であった。何しろ、冒険者として活動する以上、常にアインズに付き従う事になるのだ。ルプスレギナは危うく飛び上がって大喜びするところを辛うじて留めた。これ以上失態を演じると、ユリからの手痛い制裁が待っているだろう。たとえ制裁が無かったとしても至高の御方の前で恥を晒す事は、ルプスレギナとしても絶対に望まぬ事だ。

 

「では、この段階まで選ばれたお前達から、直接話を聞きたいと思う」

「皆さんの発言を許します。左から順番に行きましょう、まずはルプスレギナさん、外に出るに当たって何に気をつければ良いと思いますか?」

「はい!アインズ様をお守りする事が大事だと思います!怪しい奴が近づいてきたら速攻で始末します!」

「次はユリさんどうぞ」

「外の世界は未だ未知の部分が多く、ご不便を強いられるアインズ様の為、身の回りの御世話をさせて頂く事も重要になります」

「続いてセバスさん」

「アインズ様と交流を重ねようとする者が現れると思います。その者がどういった考えで接近するのかを見極め、時には捩じ伏せ、時には円滑な関係が築けるよう行動致します」

「最後はデミウルゴスさん」

「三名の意見も勿論の事、利用価値がある者の確保を念頭に入れます。効率良く情報収集すべく、何らかの組織を掌握する必要が出てくるでしょう。冒険者として名声を得る為にも、足がかりになる団体が必要かと」

「なるほど、皆さんは既に確たる考えを持っていますね。頼もしい限りです」

「うむ」

 

満足そうな二人の様子に、自分達の回答に不備が無かった事を理解した四人は胸をなで下ろした。

 

(デミウルゴスは散々意見が出た後によく思いつくな……)

(頼もしいけど恐ろしい……!)

 

この手の意見は最終的に出尽くして、似たり寄ったりな意見になりがちだ。喉がカラカラになるほどの緊張の中、はっきりと各々の考えが出るのは従者足るものであった。アインズとアバ・ドンは四人の回答に満点をあげたい気持ちだった。尚、アインズがカラカラなのは元からだが、一方でアバ・ドンはちょっと水が欲しい等と考えていた。

 

「お前達が私と同行する心構えが出来ているのは理解できた。さて、次は少々答えるのが難しい質問になるが……」

 

アインズの前置きに少々身構えるが、既にどんな言葉にも答えてみせる覚悟は出来ていた。

 

「主観的で構わない。お前達から見て、選ばれた他の三人についてどう思う?」

 

ルプスレギナは「あ、これヤバイやつっす」と、心の中で呟いた。

 




次回は一人称

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