エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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蟲生の始まり

 ユグドラシルの終焉と共に、俺の命の灯火も掻き消えた。

 

 ……筈だったのだが。

 

 これは泡沫の夢という奴だろうか……。今の俺は、集中治療室の薬品臭いベッドではなく、金持ちのボンボンが使うような、ふかふかのベッドに横たわっている。

 

 死んだと思っていたが、意識を失っていただけ……?

 死亡確認されて葬儀の準備でもしてるのかな?

 

 それともここがあの世だとでも言うのか。分と煌びやかな部屋だが、俺は天国へ逝ける程良い行いをした覚えが無い。しかし、俺はこの豪華な部屋に見覚えがあった。

 

所々に設置されている、様々な虫型のオブジェは……。

 

だが、考えていても意識が朦朧とする。だるいので、脳内のまどろみに身を任せ、一眠りしようか。

 

が、俺の意識は部屋に入ってきた人物を目にすることで一気に覚醒することとなる。

 

「失礼します。お水の交か……ッ!? アバ・ドン様!? アバ・ドン様!!

 お目覚めになられましたか!」

 

「……えっ?」

 

俺は気の抜けたような返事しか出来なかった。驚きのあまり、思考がショートしたとでも言おうか。だが、次の瞬間にはまるで静かな水面の如く平坦なものになる。そこから更に驚きに思考が彩られ、頭がパンクしそうになる。

 

うぐぐ、脳内がジェットコースター状態だ。なにこれこわい。

 

俺が眠るベッドの横で、従者のように傅く一人の少女。

 

甲殻類を組み合わせて作り上げたようなお団子ヘアー。

 

和服とメイド服の相の子のような衣装。

 

胴体を巻く赤いワーム。あどけない幼さ。

 

スラッとした可愛らしいおみ足に張り付く数々の呪符。

 

ナザリック地下大墳墓で奉公する戦闘メイド、プレアデスの一人。俺が愛してやまなかった、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータその人であった。見間違える筈も無い。

 

「体のお加減はいかがでしょうか?」

「あっと、少し眠い……です……えと、ここは?」

 

 初対面の相手に接するよう、ついつい敬語になってしまう。何か自分の声に違和感を覚えるな。寝覚め特有の低い声をもっとひどくしたような……。あ、でも割とイケボ。

 

「ここはナザリック地下大墳墓、アバ・ドン様の個室でございます。

 第6階層にて、お倒れになっているところを、階層守護者であるアウラ様の使役獣が保護致しました」

「あー……」

 

見覚えがあると思ったら、ここはナザリックの地下か。は? 俺ログインした覚えないんだけど? いやちょっとまて、階層守護者で、アウラってペロさんのリアル姉貴であるぶくぶく茶釜さんが生み出したNPCだよな?

 

何がどうなってるんだ?

 

と、慌てふためくがすぐさま沈静化、どういうこったい。

 

それよりも、今度は別の意味で意識がショートしそうになる。

 

やっべ、エントマちゃんめちゃんこ可愛いぃぃぃぃぃい! こんな喋り方だったのか。

 

 甘えたような口調と仕草、食いしん坊が特徴だった筈だが。お仕事モードって奴なのだろうか。だがこれはこれで……。一見可愛い人間の少女のように思える彼女は全身が蟲で形成された蜘蛛人(アラクノイド)なのだ。この人間的な見た目、表情、声。全てが虫による擬態! しかもフジュツシとして高い能力も有している。

 

生物の中には異種同士の生物が協力し、支えあう、共生という生態系がある。彼女の姿形は相利共生(片利共生?)の究極系とも言える美しさだ。虫同士の共生はクロシジミとオオクロアリが有名だろうか。おまけに、完璧と言っても良い程、人間の美少女に擬態する事に成功している。枯葉に擬態するアケビコノハを想起させる程の完成度である。

 

源次郎さんが作ったNPCだろうという突っ込みは無粋と言わせて頂きたい。そもそも現実じゃ虫を見ることすら中々出来なかったんだから。

 

懐かしい……俺も、アインズ・ウール・ゴウン(以下AOG)に加入した際、独自の虫系NPCを作ろうと思ったのだが、エントマちゃんとコキュートスを見てボッキリ心が折れた。こいつら作り込みすばらしすぎるんだよぉ!!

 

俺はあれ等に並ぶNPCを作れる気がしないと確信したね。

 

その後、るし★ふぁーさんがゴキブリ型NPCを作ると聞いて、リアルなディティールを作るのに俺が協力した。女性陣から大顰蹙を買ったが、あれは必要経費だったのだ。

 

 その結果生まれたのが無限ゴキブリ召喚が可能な巨大ゴキブリ、恐怖公だ。

 

というわけで、俺専用のNPCは強引に言えば恐怖公かもしれない。

まぁ、実際はるし★ふぁーさんだと思うけど。

 

んんん、それにしてもだ。自分が一押ししてるアイドルと生で会話できたらこういう気持ちなんだろうか。なんで、NPCであるエントマちゃんが俺とコミュニケーションを取る事が出来ているのか。大いに謎だが、そんなもん後回しだ。

 

死ぬ前に見せてくれた夢だと言うならばこの粋な計らいに感謝せねばなるまい。こっちのほうが懐かしの我が家と言っても差し支えない。ここで、エントマちゃんの傍らで死ねるというなら、俺はかなり救われる。

 

「聞きたいことが……あるんですが……」

「は!なんなりと!」

 

おお、従者然としたエントマちゃんの凛々しさよ。

 

 やはり、自分の声じゃないようだ。徐々に状況が飲み込めてきたおかげで、色々と気がついてきた。何か体の違和感が尋常じゃない。

 

「鏡、持ってきてくれません?自分がどうなってるか見てみたい……」

「こちらに」

「はやっ」

 

俺の部屋に置いてあった姿見を即座に持ってきてくれた。目の前に写る自分の姿に俺はいよいよもって驚きが限界突破しそうになった。上半身を起こし、俺は改めて鏡を見る。

 

「………………………………うん、いつもどおりの姿だ」

 

たっぷりと間を置いて、天を仰いだ。辛うじて発する事が出来た台詞がこれだ。

 

といっても、現実のしがない研究員ではない。

 

特撮ものの怪人然とした人型の肉体。色は全体的にメタリックな緑色がベースで。見る角度によって、様々な色がグラデーションをする。

 

背面脇腹付近から生える、昆虫のそれに近い細長い四本の副腕。そして、両肩から伸びる対の鎌。

 

これは背中から見れば分かりやすい。背骨に該当する部分が、カマキリの胴体になっており、肩から鎌を覗かせ、仕舞い込まれた昆虫の(はね)を背負うように有する。

 

そして顔は、クワガタを模した特撮の怪人を思わせる鬼貌であった。顔には、左右対称に四本の角が生えており、外側の二本は甲殻により形成された角、内側に形成された短い角が触覚という設定で、勇ましくそそり立つ角は昆虫王者の風格を漂わせる逸品だ。

 

「はい!紛れも無く貴方様は至高の御方であられる、アバ・ドン様でございます!」

 

エントマが喜色の孕んだ声色で肯定してくれた。

 

俺の容姿は、ユグドラシルオンラインでの姿、『アバ・ドン』に相違無かった。

 

さて、この状況をどう説明すべきなのか……?

 




アバ・ドンの見た目を分かりやすく纏めますと、
仮面ライダークウガのラスボス、ン・ダグバ・ゼバに、
4つの虫的な腕を脇腹経由で背中から生やして、肩からカマキリの鎌を。
背中に仕舞い込んだカマキリ系の羽が生えています。
色は全身がアカガネサルハムシみたいな緑ベースの綺麗なグラデーションです。

気になる人は是非検索してみてね!
ダグバ様はかっこいいし、アカガネサルハムシはめちゃんこ綺麗です!

つよい(確信)

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