エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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※恐怖公とその眷属が登場します、苦手な人注意!

短め


蓼食う虫も好き好き

『ええ、今からそちらの黒 棺(ブラックカプセル)へ向かいますので。……ああ、それはこっちで配慮しときますから大丈夫ですよ。それでは』

 

これでよしと。向こうにもアポは取ったし、準備万端だ。

 

それにしてもさっきの食堂の一件は恥ずかしかった。エントマちゃんと間接キスだなんて俺進歩しすぎだろ……。逃げるように撤収したが、とっても楽しかった。これからも、食事をする時は部下達に同伴出来るようにしよっと。

 

「楽しい食事会でした」

「それは重畳でございます」

「また一緒に食べましょうね」

「ハッ、機会があれば是非に」

「ただ、ハンゾーさん達とほとんど会話出来ませんでしたね、すみません」

「いえ、とんでもない」

 

(男女の仲に割ってはいるのは……)

(我等は暖かく見守る事しか出来ぬ)

(エントマ殿程の器量良しに、見初められるとは。流石と言うべきか……)

 

 ちょいと一緒になってみて分かったが……。エイトエッジアサシンは寡黙な仕事人という印象だ。もう少し、彼らが何を考えているかもある程度分かるようになればなぁ。長く付き合っていけば分かるかもしれんし、こういうのはあせらずじっくりね。さて、精神が安定し、腹も膨れたところで次の目的地へ。

 

「第二階層の黒棺へ行きます。あちらに少々入用がありましてね」

「それでしたら、リング・オブ・アインズウールゴウンで……」

「ダメですよ、それじゃハンゾー達が置いてけぼりじゃないですか」

 

 勿論、終始空気になってくれてたハンゾー達も連れていく。今後、俺直属の護衛、又は部下になる者にもリングオブアインズウールゴウンを貸与できるようモモンガさんに頼んどかないとな。

 

「第九階層から第二階層は少々遠いですが、私に良い考えがあります。付いてきて下さい」

 

 ハンゾー達に同行を促した。着いたのは九階層廊下の一角、一見ここには何もないように思えるが……。ふんぬ、スキル『虫の知らせ』による罠探知だ! 

 

「ああ、あったあった」

「これは……転移の罠ですか」

 

これは転移魔法が込められたトラップだ。敵対者が知らずに範囲内に入ると、対象者と周辺の奴らを強制的にテレポートさせる。この罠の転移先は第二階層。任意で発動する奴なんて俺ぐらいだろう。

 

この罠はギルド屈指のトラブルメーカー、るし★ふぁーさん考案だ。こいつは侵入者への嫌がらせの為に作られた代物。散々命懸けで突破し、ようやく第九階層にたどり着いたと思ったら第二階層に逆戻り!ってな具合に使う。実にあの人らしい嫌がらせっぷりである。

 

第九階層までたどり着けた敵はいないから使わず終いだったがな。せっかく転移阻害や罠無効化を掻い潜れる特別仕様にしたのになぁ……。

 

「はい、ハンゾーさん達には、これも」

 

彼らにアイテムを人数分渡した。羽の形を模したアクセサリーが特徴の"飛行のネックレス"だ。フライの魔法が込められており、これで空が飛べる。それなりにレアだが、結構持ってるのでハンゾー達に渡しておこう。当然だが、俺は自前の翅で飛べるのでいらん。

 

「飛べるようになれば、何かと便利でしょう、今後は自由に使って下さい。早速、転移してから必要になるので準備の方をお願いします」

「ありがとう……ございます」

 

その微妙な間は一体何を意味しているのか。

 

「無知で申し訳ありません、転移先で必要になる理由をお聞きしたく……」

 と、ハンゾーが頭を垂れて尋ねてきた。ああ、モモンガさんの護衛だったからあんまり行ったことないのね。

 

「黒棺は小さな眷属達が大量にいます。単に、踏み潰さないようにする為ですよ」

「成程、承知しました」

 

(我々と恐怖公の為に何程の配慮を……。本当にアバ・ドン様は……)

 

何かハンゾー達から力強い視線を感じる。まぁ、穏やかな気配だし良いや。

 

転移の罠を発動し、みんなで第二階層、黒棺へ転移する。まさか罠としてでなく移動用途して使う日が来るとは、世の中分からんもんだね。

 

 到着すると案の定、女子は皆嫌うあの眷属達でいっぱいだったので、自前の翅で空を飛ぶ。俺の翅は騒音対策してるので羽音はない、地味に便利。ハンゾー達も飛行のネックレスを使いこなし、滞空したまま転移してきた。眷属が俺達に道を譲る。モーゼが海を割るかのように、眷属達が左右に分かれ道が出来ていく。

「お待ちしておりました、アバ・ドン様。本当に、本当にお久しゅうございます……」

 

その先で、俺を出迎えてくれたのは二足歩行するでっかいゴキブリ。杖とマントを着こなし威風堂々たる風貌である。どうやってるのか不明だが、昆虫特有の脚で跪き、俺の事を出迎えてくれた。そう、ご存知恐怖公だ!

 

「本当に久しぶりですね、恐怖公。まぁ、闘技場で目が合いましたけど」

「はい、アバ・ドン様の勇姿、我輩の眼にしかと焼き付けておりましたぞ」

「本当なら、特等席でも良かったんですけどね。私の作った身体で何かと不便をかけてしまいまして……」

「滅相も無い!」

 

恐怖公は矢庭に顔を上げた。どうやって動いてるのか我ながら謎だなぁ。

 

「我輩は領域守護者の一角を担えた事、至高の御方々よりこの御身体を賜った事を心から誇りに思っておりますぞ!創造なされた我が身は、かけがえの無い宝でございます!」

「恐怖公……」

 

恐怖公が胸を張って(正確には前胸腹板)宣言した。

 

泣かせる事言ってくれるじゃないか……。こんなに良い奴なのに、不憫な思いをさせちまったなぁ……。

 

「ありがとう、恐怖公」

「勿体無き御言葉……」

 

最早お礼を言うぐらいしか無い自分のボキャブラリーの無さにちょっと落ち込む。そんな中、眷属達がひしめき合い微かに騒めく。此処は虫がぎっしり詰まってて癒されますなぁ。

 

 

「あ、これお土産です。みんなで味わうと良いでしょう」

 

俺がどこからともなく取り出したのは、人間大サイズの酒瓶。中にはたっぷりと"最高級植物性油脂"が入っている。食材アイテムの一つで、料理スキル持ちが主に使うことになる。

 

「おお、我々の大好物ですな!感謝致しますぞ」

「これぐらい安い物ですよ」

 

ゴキブリは主に雑食性だが、特に栄養価の高い物を好む。その中でも油は群を抜いて食いつきが良いのだ!後は砂糖とかチーズとか肉もいける。もし与えるなら、小さくて柔らかめなものが良い。というわけで凝固する事もない油がオススメ。覚えとけよ!

 

眷属達を潰さないように、油は隅っこにそっと置いておく。

 

「ところで……アバ・ドン様の後ろに居られるのは護衛の方々ですな?」

「そうです。あ、命名したし、自己紹介しときましょうか」

「畏まりました。恐怖公殿、私はチームリーダーのハンゾーと申す」

「ナガトです」

「サンダユウです」

「ドウジュンです」

「これはご丁寧に……。ハンゾー殿、ナガト殿、サンダユウ殿、ドウジュン殿。お互い至高の御方に仕える身、良き関係を築いていきましょうぞ!」

 

お、ルプーと違ってちゃんと区別出来るようだ。流石恐怖公。

 

「後はコキュートス殿とエントマ殿、餓食狐蟲王殿がいれば、主要な蟲モンスターが勢揃いですな」

「おや、中々タイムリーな事を言いますね、恐怖公」

「と、申しますと?」

「実はですね、一つ大事な用事があって来たのですよ。これはまだアインズさん以外誰にも言ってないのですが、一つ計画を考えてまして……」

「……差し支えなければお聞きしたいですな」

「ハンゾーさん達も関係する事だから聞いておいて下さいね」

「ハッ!」

 

俺は、皆が注目するのを確認し、考えていることを話した。

 

「私直属の独立部隊を作りたいのです」

 

恐怖公と眷属、そしてハンゾー達が目を見開いた気がした。みんな瞼無いけどな!

 




ほんとはもうちょっと恐怖公と会話させたかったんですがまぁ次回辺りに(´ω`)

書いてから気づいたけど、シズとユリが宝物殿入ってるからリングズ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンで複数人転移出来るかも……orz

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