エントマは俺の嫁 ~異論は認めぬ~   作:雄愚衛門

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すみません!ちょっと長くなったので分割!
全貌明かせなくてごめんなさいorz

ナザリックNPCのやり取り書いてたら長くなりました!
ちくしょう!NPCの会話書くの楽しすぎぃ!


強くある為に

アバ・ドンの挨拶により、士気が高まったナザリックのシモベ達。程なくして、階層守護者の姉弟、アウラとマーレからメッセージでの知らせが届いた。

 

『アインズ様とアバ・ドン様が模擬戦で共闘する。見学は自由』

 

そう聞いて胸躍らぬ者はナザリックに皆無であった。この知らせは、守護者統括のアルベドと、防衛面の最高責任者を兼任するデミウルゴスにも伝わった。

 

アウラは闘技場へ赴くか否かは問わなかった。聞くまでもないからだ。ただし、アルベドの場合は鼻息荒くするその姿に引いた為である。

 

愛する主人の勇姿を想像したアルベドは、なけなしの理性で一時の妄想を振り払い任務を遂行。

 

デミウルゴスと短いながらも入念な打ち合わせをし、ナザリックの防衛面に最小限の影響しか及ぼさぬよう、主要な者達を闘技場へ集結させるプランを組む。

 

その後、階層守護者を中心とし、模擬戦の知らせは瞬く間に広がった。

 

先程の緊急招集にも劣らぬ迅速さで、玉座の間に集ったよりも更に多くのモンスターが集合した。

 

今、観客席をひしめくモンスター達は、各々がどれほど主の戦いが楽しみかを語り合っていた。されど、片時も目を離す事無く入場するであろう偉大な主を待ち焦がれていた。

 

(ムゥ、コレホド待チ遠シイトハ……)

 

特等席に佇む一体のモンスター。第五階層守護者、コキュートスだ。

 

自分と同じく、前衛を得意とする蟲王(ヴァーミンロード)、そして、我等が偉大なる主であるアバ・ドンの戦い。コキュートスがかつて無いほどワクワクするのも仕方の無い事であった。

 

暫く待っていると、ついにその時が来た。闘技スペースの入口から、現れた神々しい異形が二人。アインズとアバ・ドンだ。打って変わって、闘技場内は静寂に包まれた。

 

(オオ、ヤハリ見事ナ……)

 

コキュートスはアバ・ドンの戦闘装束に息を呑んだ。玉座の間で見せた、慈愛溢れる姿は鳴りを潜め、その身体は何回りも大きく見える。今ここにいるアバ・ドンに宿る闘志はまさしく戦士のそれだ。

 

だが、その真相は神器級装備により能力が引き上げられた事と、エントマの前で戦う為大張り切りしてるからだった。

 

『なるほど、魔将の召喚を……はい、ではそのように』

 

デミウルゴスはメッセージにより、主から戦いのあらましを聞いていた。

 

こういった役目を任されるデミウルゴスが羨ましかった。己の武を活かす機会が中々訪れぬ状況にやきもきしていたが、今この時だけは、心の外へ追いやる事が出来た。

 

「アバ・ドン様ぁ……私にぃ、手を御振りにぃ?」

「ユリ姉も言ってたじゃないっすか!あれ絶対エンちゃんに対してっすよ!」

「……えへへぇ」

 

(エントマガ色メキ立ツノモ無理ハアルマイ……。アバ・ドン様モ罪作リナ御方ダ)

 

コキュートスは敬愛する蟲王の伊達男ぶりに感心する。それでいて、あれほど純粋な愛情を持たれているとは、エントマは幸せ者だと、心の底から思った。

 

コキュートスはユグドラシル時代、アバ・ドンの戦いを何度か目にしている。当時、エントマの主である源次郎と、頻繁に決闘を繰り広げていた。自分の主人である武人建御雷がPvPの立会いをし、これに同行。

 

決闘の理由も無論知っている。だが、至高の方々が密約と決めた約束。何を言われようとも黙して語らぬ事を固く誓っている。エントマとアバ・ドンの関係は、その冷たい身体に反した暖かい目で見守っている。

 

当時の闘いは未だ、コキュートスの中に深く残っていた。

 

「ソレニシテモ懐カシイ。再ビ、アバ・ドン様ノ闘争ヲ拝見出来ルトハ……」

「コキュートスはアバ・ドン様の戦いを見た事ありんすか?」

 

つい先程、コキュートスに諌められたシャルティアは、独り言をしっかり聞いていたらしい。独特の間違った郭言葉で疑問を口にする。コキュートスは少し迷ったが、アバ・ドンの戦いを話すだけならば、主の意に背く事ではないと判断した。

 

「……見レバ分カル。アレハ、実ニ恐ロシイ」

「へぇ……」

 

武人たるコキュートスをもってして"恐ロシイ"それはシャルティアの興味を引くには充分な理由だ。が、それに及ばずとも、至高の御二方がどのような闘いを魅せてくれるか既に興味津々であった。

 

「ム、イヨイヨ始マルカ」

 

その一言を皮切りに、闘技場中の視線が、アインズとアバ・ドンへ更に集約して行く。

 

魔将によって、場内に召喚されていく雑多な悪魔達。闘技場の半分を覆い尽くすほどの大量の悪魔達が、目の前の獲物に舌なめずりをする。

 

アインズとアバ・ドンは、既に体制を整えていた。と言っても、そのフォーメーションはシンプルだ。前にアバ・ドンが仁王立ちし、後ろでアインズが魔法の詠唱に入る。

 

たったそれだけの動作である筈なのに、絶対的強者足る凄まじい存在感を放つ。今この時の主役は、間違いなくアインズとアバ・ドンであった。

 

少し昔話をしよう。

 

かつて、ユグドラシル時代のアバ・ドンは、とにかく自分が蟲であり続ける事にこだわった。フリーの頃は、ひたすら虫に関係する名前のスキルばかりをかき集め、バランスもへったくれもないひどい戦闘力であった。

 

そこに救いの手を差し伸べたのが、当時、ギルド長を襲名したばかりのモモンガだ。

 

「俺、蟲になりたいんですよ」

「いやもうなってるけど……」

 

アバ・ドンの、蟲に対するただならぬこだわりを感じ、理不尽なPKに遭っていた姿に自分を重ねたモモンガは、キャラビルドのアドバイスついでにと、アインズ・ウール・ゴウンにスカウトした。

 

「この"蜚蠊の超俊足"とかオススメですよ。パッシブスキルとして安定した効果があります」

「おおー」

 

モモンガが有する豊富なスキルの知識と、経験に裏打ちされた確かな実用性は、アバ・ドンを確実に強化していった。幸い、レベルもまだ大した値ではなく、パラメータ配分の軌道修正も容易だった。

 

アバ・ドンにとって、アインズ・ウール・ゴウンでの経験は全てが有用で、有意義で、そして何より楽しかった。課金による金額の消耗が尋常じゃなかったが、それも気にならなかった。今も尚、アバ・ドンにとって最も大切な思い出だ。

 

モモンガ、たっち・みー。恐怖公製作がきっかけで仲良くなったるし★ふぁー。蟲絡みのNPCで話が合った源次郎と武人建御雷。何故かウマが合ったペロロンチーノ。その姉のぶくぶく茶釜。ジャングルの製作に虫を添えて協力した、ブループラネット。

 

様々なギルドメンバーによる協力の下、なるべく蟲に関係していて尚且つ、実用性のあるスキルをどんどん身に付けていった。そして、アバ・ドンがLV100に到達し、神器級装備で身を固めた時……

 

怪物が産声を上げた。

 

かつて、ユグドラシル時代に誕生した蟲王は、闘技場にて、復活の狼煙を上げようとしていた。

 

魔将達は、偉大なる至高の御方に刃を向ける罪悪感と戦いながら、悪魔をけしかけた。まず先手を打ったのは、軍勢の中にいた地獄の猟犬(ヘルハウンド)の群れ。狡猾な狩人である彼らは、およそ20頭がかりで、魔法詠唱者であるアインズに獰猛な牙を突き立てようとする。

 

「通しませんよ」

 

その台詞を聞いた刹那、アバ・ドンは既に地獄の猟犬へ肉薄していた。襲い掛かる地獄の猟犬と、アバ・ドンの間にはそれなりの距離があった。それが瞬きをする間も無く急接近していたのだ。

 

「……転移魔法?」

 

シズは思った事をそのまま口にする。しかし、魔法を使ったような形跡は無い。

 

「いえ、あれはただ速く動いただけですね」

 

答えを教えてくれたのはセバスだった。

 

「ええっ!?見えなかったっすよ!!」

「初速から既に最高速に達していたようで……恐るべき加速力です」

 

レベル差があるとは言え、ワーウルフであるルプスレギナはおろかシズですら認識出来ない速さに、セバスは自身の鋭い眼光を普段よりも見開かせた。下手すると、セバスでも見失う程の瞬発力であったが、至高の二人に視線を集中していたおかげで、辛うじて認識出来た。

 

アバ・ドンの持ち味の一つはその加速力だ。

 

例えば、ジャンボジェット機やリニアモーターカー。そのトップスピードは目を見張るものがあるが、それでも、最高速に到達するにはそれなりの時間を要する。

 

だが、アバ・ドンにはそれが無い。蟲系スキルの恩恵により、加速力が極限まで引き上げられているのだ。アバ・ドンが動き出した時には、既に最高速度に到達している。

 

「隙だらけです」

 

瞬間移動に見間違える程のスピードで、地獄の猟犬達に接近したアバ・ドンは両主腕を平泳ぎの要領で水平に薙いだ。

 

すると、その動きに呼応するかのように、突如として蟲の群れが現れる。色も見た目も大きさも全てが異なる蟲の大群が、地獄の猟犬を全て貪り尽くした。

 

攻撃中も尚、蟲が動きを止める事は無く、主人の意に従い飛翔して行き、すぐに虚空へと消える。この一連の出来事が、ほんの一瞬で行われた。

 

傍から見れば、アバ・ドンが両腕を広げたと同時に、地獄の猟犬が何か色彩豊かな塊に飲み込まれたようにしか見えなかっただろう。

 

「すごいぃ……」

 

エントマは感動していた。先程見せた高速移動もさることながら、初めて見るアバ・ドンの技は、自分と同じムシツカイのそれだった。だが、決定的に違う事がある。

 

「私の蟲よりぃ、ずっと素直でぇ、速くてぇ、強いぃ……」

「ぞっとするっすね……でも、かっけぇーっす!」

 

ルプスレギナもその凄まじい攻撃に舌を巻く。

 

二人は、アバ・ドンと自分の格の違いを改めて認識した。エントマは、己の蟲を呼び出す時、若干のタイムラグが発生する。無論、咄嗟の一撃を防げる程度の微々たるものだが。

 

アバ・ドンの技の場合、一切の無駄が無い。攻撃しようと思えば即座に呼応し、用が終われば即座に消える。それでいて、威力は相手が一瞬にして消滅したかと見紛う程だ。

 

ただ、アバ・ドンの蟲攻撃の威力はそれほどでもない。せいぜいLV80の前衛職程度の攻撃力だ。単純な攻撃力で言えば、前衛として不適切であろう。

 

「アレハ、ムシツカイトイウ範疇ニ留マラナイ。最早一個(・・)ノ武器ダ」

「美しい……機能美という言葉の意味を初めて理解したでありんす」

「アア、シカシ……」

「しかし?何でありんす?」

 

シャルティアの疑問に対し、コキュートスが半ば躊躇うように言葉を発した。

 

「アノ技ノ真ノ恐ロシサハ、威力デハナイ」

 




モモンガ様は、死の魔法使いにこだわったキャラビルドをしてるのに対し、アバ・ドンは、蟲の力を表現する事にこだわったキャラビルドをしてます。モモンガ様のアドバイスをたくさん貰ってるので、実用的な仕上がりになりました。

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