デレマス二次   作:(^q^)!

4 / 12
四話

 知り合いに会えるというだけの事がここまで嬉しいとは思わず、しばし呆然としていると高垣先輩は困ったような笑顔を浮かべて再度、どうかしましたか? と聞いてきた。

 

「あ、いや、すいません」

 

 とっさに言葉を繕いつつ、高垣先輩が座る席を開けた。高垣先輩は礼を言いながら席に座り、授業の準備を始める。それを横目にバッグからプリントを取り出し、枚数を確認してから高垣先輩に先週の分のプリントを渡した。にっこりと笑顔でお礼を言う姿はまさしく記憶の中の人物と同じで、どこか差異があるようには見えなかった。

 

「これ、先週頼まれてたプリントです」

 

 そう言い渡すと高垣先輩はお礼を言ってプリントに目を通し始めた。あらゆる仕草に違和感はない。まだ一か月ほどの付き合いとは言え欠片も違和感を感じないところを考慮するとやはり同一人物であるのだろう。いや、逆にここまで違和感が無いというのはおかしくないか? こんなに違和感がないのは誰かが中身に入ってたりしないか? よくよく見ると何だか高垣楓って字も違く見えてくるぞ。髙垣だっけ? 高垣だっけ? 楓だっけ? 諷とか颯じゃなかった? 何だか風って字ってこれで正しいのかわからなくなってきた。垣のつくりって旦じゃなかった? 

 

「どうかしましたか?」

 

 一人唸っていると高垣先輩がそう声をかけてきた。いつの間にかプリントに目を通し終わっていたようだった。

 

「いや、風ってこんな字でしたっけ?」

 

 さらっとプリントの余白に字を書くと高垣先輩も眉根を寄せて悩み始めた。

 

「そう言われるとそうですね……虫の上にある払いがあったような無かったような……虫の居所が悪いですね」

 

「几だか几だか冂だか八だったか厂だったかわからなくなりますね……」

 

「そんな感じの漢字だった気もします……」

 

 お互いにわけがわからないという具合に肩をすくめるとちょうどチャイムが鳴った。これ以上は授業中にする話でもないだろう。ノートを出して授業に備える。授業中もチラチラ高垣先輩を窺うが、特に違和感はない……。そのまま授業は終わった。特に何か起こるわけでも無く普通に終わり、さあ帰るぞと思い準備をしていると高垣先輩から声をかけられた。

 

「今日は寄って行く?」

 

 どこに? いや、今日「は」と言っているということは普段は寄ったり寄らなかったりという感じなんだろうか。しかし、これ幸いと寄らないという風にすると後々辛くなる気がする。この前提であるならば何回かに一回は寄らなくてはならないのだ。後々自分の所作に違和感を感じられてから行く運びになり、ぼろが出るということが起こりかねない。であるならば、ここは寄るという選択をしてしまった方が良い。結局はこの世界における自分の状況について確かめなくてはならないのだ。今ここで確かめるのは遅いか速いかの問題というやつである。早期に問題を知ることは準備期間が長く取れるという点で有利だ。

 

「はい、そうしようと思います」

 

「じゃあいきましょうか」

 

 高垣先輩はそう言うと、鞄をもって歩き出した。それに追随して歩く。高垣先輩が進むルートは自宅への道だった。何故高垣先輩が自宅を知っているんだろうという疑問が湧くが、この世界では知る機会があったというだけだとしたらそれを聞くことは違和感を与えてしまうだろう。それにしてもなんで自宅に向かっているんだろう。寄っていくかと聞かれたはずだが何故だ? 自宅近辺はスーパーがいくつかあるくらいで何かわざわざ寄るようなところは思いあたらない。

 

 ついに自宅まで着いてしまった。そのままハイソなマンションに入って行く高垣先輩をしばしいぶかしげに眺めていた。

 

「……どうか、しましたか?」

 

 高垣先輩はその行動に疑問を覚えたようで振り返り、不思議そうに聞いてきた。いろいろと聞きたいことがあるのはこちらも一緒だが、それを素直に行動に移すのはリスクが高すぎる。そのくせリターンは少ないのでとりあえず誤魔化すことにする。

 

「すいません、ちょっと今日の晩御飯について考えていました」

 

「今日は肉じゃがをメインに何かにしようかと思ってます」

 

「へえ、そうなんですか」

 

「ええ、サラダと汁物は任せてしまってもいいですか?」

 

 ん?

 

「え? ああはい、わかりました」

 

 適当に返してしまったがいろいろおかしいぞ。この会話ではまるで一緒にご飯を食べるような感じだ。しかもそれぞれの手作り料理が夕食のような雰囲気だ。楓さんをちらりと見ると特に何かを気にした様子もない。つまりこれが「今日は寄って行く」の寄る場所で行われることなのだろう。

 

 困惑しつつもついていくと高垣先輩はエレベーターに乗った。一緒に乗ると高垣先輩は3のボタンを押した。三階に何かあるのだろうか。自宅のある二階の様子は特に何かある様子ではなかった。外から眺めた様子からも何某かの店があるようには思えなかったが……。エレベーターが三階に到着し、するりと外に出る。特に二階と変わった様子はない。疑問を浮かべていると、高垣先輩が数ある扉の一つに鍵を差し入れた。

 

「どうぞ、上がってください」

 

「あ、はい。おじゃまします」

 

 高垣先輩は何と同じアパートに住んでいた! 全く予想していなかった事態に乱れる思考の収拾がつかない。

 

「あら? ごめんなさいね。お野菜が思ったよりないわ」

 

 ボケっと突っ立っているとキッチンにいた高垣先輩がそう声を上げた。

 

「自宅にジャガイモとかあったんで取ってきます」

 

「申し訳ないけどお願いしますね」

 

 そうして高垣先輩の家から一先ず外に出て、自宅に帰ってから混乱はとめどなく溢れた。

 

 なんで高垣先輩の家でご飯食べることになってるの? なんで高垣先輩と同じマンションに住んでんの? なんでご飯作る感じなの? なんでそんなイベントが通例みたいな雰囲気なの? なんでなんかいい雰囲気になってんの? なんでごく自然に上がりこんだの? なんで断らなかったの? 馬鹿なの死ぬの?

 

 何はともあれあまり時間をかけすぎると高垣先輩に悪い。ジャガイモと、ニンジンと、玉ねぎあたりが肉じゃがに使うものだろう。あとはサラダ用にトマトとかレタスとかきうりが必要だな。

野菜をボウルに入れて高垣先輩の部屋に戻ると先輩はごそごそと部屋を掃除していたようだった。

 

「野菜持ってきましたよ」

 

「ありがとうございます。……ふふっ」

 

 ふと、高垣先輩が笑った。普段ミステリアスで、凛々しい姿が多いだけに初めて見た自然な笑顔は強烈に頭に焼きついた。

笑顔の理由は聞いても答えてくれなかったのでなんとなく疑問に思いながらも手早く夕ご飯の用意をしている最中にスマホが鳴った。

メールの受信を知らせる音は元々の世界の曲だった。

 

「良い音楽ですね」

 

 高垣先輩がそう言ったところで気が付いた。この曲について聞かれたらどうしよう、と。歌手の名前を言ったところで検索にかかるはずがない。散々調べたので知っている。かと言って曲名を言っても検索に引っ掛かるわけでも無い。

 

「え、ええ、俺も最初のシャウトで盛り上がる感じとか好きでして」

 

 一先ず相槌を打ちながら言い訳をいくつか考える。同人の音楽なんですよが最有力でネットで適当にダウンロードしたから詳細わからないが最終兵器だ。ディテールに懲りすぎるとあらが出るからむしろ徹頭徹尾ふわふわした言い訳がいい。

 

「シャウト? どんな感じでしょうか?」

 

 頭でごちゃごちゃ考えていると、高垣先輩がそんな言葉を漏らした。

ちょうど、着信音はシャウトをしている真っ最中だったのにもかかわらず、そう言った。流石におかしい。

とは言え、高垣先輩がそんな変な嘘をつくとも思えなかったので気のせいだったことにしてスルーした。

 

 夕食を作り終えたので机に対面に座り、ご飯を食べ始める。

 

「明日は授業がありましたね……じゃあお酒は避けておかないといけませんね」

 

「そうですね」

 

 和やかにご飯を食べている途中に、高垣先輩がこんなことを言った。

 

「そう言えば、夢はまだお変わりありませんか?」

 

 夢? ここでいう夢とは、つまり将来叶えたいことということだろうか。そんな類の事を話した覚えなんて欠片たりともないので前の自分というか、この世界の自分が話したのだろうか。

さてここで、なんと答えるべきか。ぶっちゃけてしまえば前の自分の夢なんて全く予想もつかない。部屋がファンシーな自分だったらどんな夢持ってるかを想像すればお花屋さんとかメルヘンな物しか出てこない。どうしよう。

 

「ええ、そうですね」

 

 できることなんて曖昧に濁すことくらいだった。真面目に聞いてくる高垣先輩に不真面目に答えて申し訳ないという気持ちでいっぱいになるがかと言ってどうこたえるのが正解だったかなんてわかりはしない。

 

「……そうですか。やっぱり、そうですよね。そのために大学まできたのですから……」

 

 そうだったのか。なんとなく大学行っとかなきゃって感じじゃなくて確固たる思いがあって大学に来たのか。新事実に驚く自分を置いて高垣先輩は話を続けて紡ぐ。

 

「芸能プロダクションの、アイドルのプロデューサーは大変なお仕事だとモデルのお仕事中に聞きました」

 

 え?

 

「それでもやりたいというなら、私がアイドルに転向しても」

 

 高垣先輩が何やら続けて言っていたが、声が小さくて聞き取れなかったことと、驚きが大きくて聞いていなかった。プロデューサーになるのが夢だった? そんなことは考えたこともなかった。しかしこの世界の自分はそれが夢であるようだ。いつ元に戻るかもわからない以上、この世界の自分の夢を棒に振るのも申し訳ない気がした。いや、自分に対して申し訳ないって何だろう。

 

「高垣先輩」

 

「……えっ、な、なんですか?」

 

 まだ少しぶつくさ言っていた高垣先輩に面と向かって頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

 

 高垣先輩は少し面食らったように瞬きした。その後何かに納得したよな顔をしてから、はいといって笑った。




こんな感じだったっけ?
まあいいか。
アニメでは一枚絵とは言え南条君映ったし、怪盗公演や新規カードが来たぜヤッターって感じ。

飛鳥君はCDおめでとう。まだかもりくぼォ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。