東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
劉が現れた。


94 大目玉

「軍人ってのはどいつもこいつも大した事無いねぇ…あっという間にやられる」

 

妖怪の山でロッタと戦っている惣一は、かなり窮地に立たされている。電磁波によってGARDERが使えないと言うだけでかなりキツいと言うのに、ロッタの異常すぎるスピードとその蹴りの威力で追い詰められている。先程から一方的にやられてばかりだ。

 

「自業自得って奴だよな。自分で勝手に武器を使えなくして、今にも死にそうになってるし。情けないね〜」

 

ロッタの言う事に何も言い返さない。言い返せる言葉が見つからないのだ。GARDERを封じている電磁波を発生させたのは惣一であり、そのせいでコテンパンにやられている。ロッタの言う通り、自業自得であると彼は思った。

このまま何もしなければ、ロッタにやられてしまう。何もしないと言うことは、自殺する事に等しい。そう思い、何とか出来ないともがくが、全く動けなかった。

 

「…ん?」

 

惣一に迫るロッタの様子が突然変化した事に気付いた惣一は、ロッタの見ている先を見る。見えたのは早苗と、その近くにいる1人の男だった。

 

「あれは確か…劉さん?」

 

惣一はその男の事を知っている。かつて、幻想郷を滅ぼそうと企む1人の男と立ち向かう時に、自分や黎人を助けに、彼やそれが仕えているイシューが来たのだ。

その劉がなぜここにいるのだろうか。見たところ、その近くにイシューの姿はない。たった1人でここに何をしに来たのだろうか。

 

「…誰だ?テメェ」

 

ロッタは劉に尋ねた。記録にもない人物がなぜここに来ているのかと。

ロッタは邪魔が入ると不機嫌になる。今回の目的は目の前の軍人である惣一の相手であり、それを関係ない人物が邪魔して来ると、彼はイライラしてくる。

 

「名前は劉だ。素性は明かさねぇ。語るだけ無駄だ」

 

劉は名前だけ言った。自分の素性は詳しく話そうとしない。正確には、話す必要がない。ロッタは自分の事をベラベラ話すことはしたくない性格なのだ。

 

「…劉?変な名前だな。外国の奴か?」

「聞いてなかったか?語るだけ無駄と言ったはずだが」

 

ロッタの質問をあしらう。その話題を掘り返さないように。

その様子に、ロッタは少しイラつく。自分を邪魔した挙句コッチの質問には答えない。その姿は、こちらをナメているとしか見えない。

そのイラつきのまま、ロッタが攻撃を仕掛けようとしていた時だった。

 

「ぬあーーー!人を蹴り飛ばすとは卑怯だぞー!弾き飛ばしてやる!」

 

先ほど劉が蹴り飛ばしたファトラスが現れ、大声で叫ぶ。思いっきり蹴られたのが効いているのか、顔に蹴り跡がついている。

大声で叫んだあと、ファトラスは空中にジャンプしてその場で回転、地面に着陸し、思いっきり加速して劉に迫る。先ほど早苗にやった攻撃だ。あれの威力を知っている早苗は、避けないと危ない事は知っている。

劉は避ける素振りを見せずに、ただそこに棒立ちしているだけだ。あのままでは攻撃をモロにくらってしまう。何とかしようと動き始めた時にはもう遅い。既にファトラスは劉の目の前まで迫り

 

《ドゴォォォン》

 

「ぐぼおおぉ!!?」

 

爆発した。

 

え、と早苗は気の抜けた声をだす。一体何が起こったのか全く分からない。

劉がやられてしまうと思った時にはファトラスが爆発して吹き飛んでいた。劉は何もしていないと言うのに。

 

「さっき蹴った時に、時限爆弾をテメェの身体にくっつけていたんだよ。アレに気づかねぇとは、見た目通り鈍い奴だな」

 

劉が倒れているファトラスに向かって話す。その話を聞いて、早苗は納得と一緒に、身体に爆弾をつけられて気づかないファトラスの鈍さに驚いた。

劉はファトラスに向かって歩いていく。追い討ちをかけるつもりだろう。ファトラスは当然離れようとする。

 

「…う!?う、動けな…」

 

だがそれは出来なかった。離れようと体を起こそうとしても、ヘタリと倒れてしまい、その後は体をヒクヒクさせるだけで特に逃げるような動きはしなかった。

 

「逃すわけねぇだろ。シビレ罠だ。あらかじめ設置していたんだよ」

 

劉は既にファトラスの近くに来た。ファトラスが逃げたりしないようにシビレ罠を設置した所、その効果はかなりのもので、ファトラスは全く動けない。

ファトラスの近くまで来た劉は、ファトラスの体に何か仕掛けようとしている。一体何をするつもりなのかと、早苗と惣一が思うと…

 

「あべべべべべべ!!!?」

 

ファトラスの悲鳴が聞こえた。かなり苦しそうな声で、何をすればそんな声が出るのかが知りたいほどだ。

 

「どうだ?効くだろ、この装着式スタンガンは。電池が切れるまで電気を浴びせ続けるんだ。取り外す事は今のお前は出来ないだろ?」

「あああああああああああああああ!」

「普通は拷問に使うが、折角だから使ってみた。光栄に思えよ。この電撃を受ける機会はねぇぞ」

 

(……この人、ドSだ)

 

悪意のある表情をしている劉を見て、早苗が萎縮してしまう。動けなくなった敵に容赦ない追い討ちをかける、それも苦しめのダメージを与えるもので。その姿を見ると、彼の加虐性を嫌でも思い知る。幻想郷で最強の妖怪と言われている太陽の畑の妖怪並みのサゾだ。

 

すると、劉が左手を上に上げた。何をしているのかと思うと、ロッタの足がその腕に当たった。

 

「不意打ちとは適切だな。俺もそうしてる」

「チ…!」

 

ロッタはファトラスに攻撃をしている劉の頭を蹴り飛ばそうとしていた。さっきの様子は隙だらけだと思ったのだ。

しかし攻撃しようとした時、アッサリと避けられた。劉はその事を予想していたし、最初から警戒していた。だからロッタが仕掛けた瞬間に、腕で彼の攻撃を防いだ。

 

ロッタの足を押し返して、ロッタを飛ばす。後ろに飛ばされたロッタは、再び彼に向かって蹴りを繰り出す。今度は頭を払うようにではなく、真っ直ぐ蹴り飛ばすように。

風を切るように伸ばした足は、劉の体を捉える事は出来なかった。ロッタの出した足を、劉の足で防がれているからだ。

 

「…テメェ…!」

「奇遇だな。俺も足技は得意だよ」

 

ロッタの蹴りの威力は、並大抵のものではない。ダメージを与えるだけに留まらず、相手を遠くに飛ばすほどだ。

そのロッタの蹴りを、足で止める事はかなり難儀だ。半端な力で防ごうとしても、防いだものが砕かれてしまう。それが可能である劉の足の力の強さを知るには充分だ。

劉に防がれたロッタは、続けて攻撃を仕掛ける。流れるように次から次に蹴りが劉に向かって繰り出されている。油断すると、急所を深く蹴られてしまう。

劉はロッタの猛攻を防いでいた。蹴りを躱し、流し、受け止める。連続で繰り出されている蹴りを受ける事はない。

 

ロッタの攻撃をかわし続けているが、ロッタは勝つ算段が付いている。蹴りの強さを測る時の基準が存在する。足の長さだ。足が長ければ長いほど有利になる。遠心力がかかりやすくなり、威力が上がる。

器用にロッタの攻撃を捌いている相手に、蹴りを直接入れるのは難しいと見たロッタは、彼の蹴りを防いでいる足に致命傷を与える戦法でしかける。

ロッタの蹴りを弾き、劉が蹴りをかましてきたのに合わせて、ロッタは劉の足をめがけて蹴りを繰り出す。バチン!と大きな音がなり、その結果劉が足を引っ込めた。

 

「甘い!」

 

一歩下がろうとする劉に、彼の速度より早く彼に近づき、勢いをつけて彼の頭に蹴りを繰り出す。足は完全に劉の頭を捉えており、確実に1発入る。

 

だがその時、一瞬で劉が遠く離れ、ロッタの蹴りが空振る。

 

「な…!?」

 

信じられないと言うような顔をするロッタ。その腹を目掛けて劉は銃を放つ。盛大に空振りをして大きな隙があるロッタは、その銃弾を避ける事は出来なかった。

 

「うっ…!?」

 

腹に銃弾をくらったロッタは、一歩だけヨロリと後ろに動いたが、直ぐに持ち直した。そのまま後ろに倒れるような体では無い。

だがしかし、ロッタには疑問点がある。先ほどは完全に劉の頭を蹴り飛ばせるほどの間合いだった。だが急に劉の位置が後ろに行き、彼との距離が開いた。

劉が後ろに動いたわけでは無い。彼の足は動いたわけでは無いからだ。何らかの力を使って後ろに飛んだというのも納得はいかない。では一体どうして劉は後ろに動いたのか。

 

「不思議に思っているようだな。何で俺があんなスピードで距離を開けたかって。言っておくが、俺は後ろに移動したわけでは無い」

 

劉の言葉を聞いて、ますます訳が分からなくなる。彼は後ろに移動していないと言うが、先ほどは間違いなく動いていた。だが劉が嘘ついているとも思えない。すると再び劉が話し始める。

 

「水の中に腕を入れると、腕が伸びたり縮んだりしているように見えた事はないか?光の屈折の効果だ。水の中に入る光が折れ曲がる事で実際の位置とは別の場所にあるように見える。

俺の能力は『屈折を起こす程度の能力』だ。光を強制的に曲げて実際の位置とは違うところに存在するように見せたり、大きく見せたり小さく見せたりすることが出来る。もっといえば、姿を消したり増やしたりする事も出来る」

 

劉の話を聞いて納得した。要するに足が届くような位置に見えた劉の姿は、屈折によって見せられた偽物の劉の姿であり、蹴りを繰り出す寸前に能力を解除した事で、彼が本来いる位置を見せられる。その事で、一瞬で彼が移動しているように見えたのだ。

 

「…成る程ね。理解したよ。

けどネタバレが過ぎるな。自分の能力を相手にバラすと言うのは」

「別に構わないぜ。俺の能力を知ろうと知るまいと、どうする事も出来ないだろうしな」

 

喋りながら劉は、銃を放つ。倒れているロッタに追い討ちをかけるつもりだ。

だがロッタはそれをくらったりはしない。その回避速度なら、銃弾よりも速く動ける。

ロッタが避けたのを見て、劉は能力を発動する。すると劉の姿は綺麗に無くなった。屈折の能力を使って自分の姿を消したのだろう。惣一の目にも、早苗の目にも彼の姿は見えない。

当然、ロッタにも見えない。劉がいまどこにいるのかが、全く分からない筈だ。

 

だが、ロッタはある一点に向かって蹴りを放つ。するとその蹴りは何かを捉えたようで、手応えを感じた。

 

「俺の場所を見抜いたか。なるほど、勘ばかりはどうしようもないか」

 

ロッタの足を押さえている劉の姿が現れた。咄嗟の事で正面から受け止めるしか出来なかったようで、両手でロッタの足を防いでいる。

読み通り、というような表情をロッタは見せた。視界で誤魔化す術を持っているのならば、目で確認できる情報は当てにならない。ならば、目に頼らないで敵の位置を特定する方法を考えるべきである。

ロッタは、勘で敵の位置を特定する事にした。確信のないやり方でリスクが大きいが、彼の勘はかなりの確率で当たる。実際、目に映らない劉の位置を見事当てたのだから。

 

劉が後ろに飛んで彼との距離を開ける。先ほどと同じような展開だ。ロッタの見える彼の後退の速度は、本当に彼の速度なのかは信用できない。

だが後退したのは確かだ。足を押さえている劉の手が、真っ直ぐ自分を押し飛ばすように力を入れていたのだから。

 

そして、敵のいる方向さえ分かれば、攻撃は当てれる。

 

ロッタは劉に向かって伸ばした足を少し後ろに引く。まるでサッカーの選手が、ボールを蹴ろうとしているように。

すると後ろに引いた足の先が、紅く光り始めた。

惣一や早苗がロッタの足の変化に驚く中、劉はロッタが何をしようとしているのかを冷静に観ていた。

 

だがその直後、変化は訪れた。

 

「蹴り技『バーストストライク』」

 

ロッタは真っ直ぐ蹴りあげる。するとロッタの足に見える赤い光が、まるでボールのように、高速で劉に突っ込んでいった。

 

「なに…!?」

 

ロッタの足から放たれるその高速の弾幕を避ける事は出来ず、劉はその弾幕を受けた。劉にぶつかった時にその弾幕は大きな爆発を引き起こした。

 

「破裂するタイプの弾幕…!?」

 

弾幕の爆発によって起こされる爆煙から、劉が飛び出してきた。流石に無傷とは行かず、先ほどの爆発による怪我が所々に見られる。

爆煙から飛び出してきた劉に、ロッタは追い討ちをかける。再び彼の足が赤く光り、今度はその足を上に持ち上げている。

持ち上げた足を斜めに落とすように振る。

 

「蹴り技『バーストストライク』」

 

先ほどと同じような弾幕が、再び劉に向かって飛んでいく。高速で向かっていく弾幕に劉は太刀打ちできない。

 

そう、思ったのは数秒間だけであった。

 

ニヤリ、と劉が笑う。まるで己が企んでいる通りに事が進んだとでも言っているかのように。

 

「ほらよ、今日の目玉技だ!」

 

劉が手を地面に叩きつける。すると彼の立っている地面から…いや、正確には彼が叩きつけている地面から青い光で書かれた紋章が現れた。

ロッタの放った弾幕がその紋章の中に入った瞬間に、何に当たった訳でもないのに爆発する。遠くで爆発したために、劉はその被害を被る事は無かった。

 

目の前で起こった事が信じられないというようなロッタ。そんな彼の足下に、劉と同じ紋章が現れる。

 

すると、その紋章で大爆発が起きて、ロッタはその爆風に巻き込まれた。

 

「ぐあああああああああ!!!」

 

その爆発をモロに受けたロッタは、苦しそうな声を上げている。弾幕があった訳でもないのに、突然爆発が起きたのだから。

 

惣一と早苗は、目の前で起きている事を理解する事は出来なかった。

 

 

 

場所が変わり、博麗神社前。黎人は必死で入り回っている。誰かに追われている訳ではない。だが、ここで立ち止まる事は大怪我に繋がるのは確かである。

ふと、黎人が何かに気づいたように視線が変化した。すると黎人はそのまま斜めに飛び上がる。

 

すると、先ほどまで黎人がいた場所に何かが落下し、地面に大きなヒビが生えた。

 

「…チッ、見た目の割には、とんでもない威力を持ってんな」

 

小さな声で愚痴る。地面に落下したものはかなり小さなものだ。だがそれは地面にヒビが生えるほどの威力を持っている。それが不可解である。

 

「あら、言われた事は無いの?見た目で判断しようとするなって」

 

上空から黎人に向かって声をかけられる。敵は上空から黎人に話しかけているのだ。

黎人は着地して座っている状態から立ち上がり、声のした方を見る。

 

すると上空に、リーフが笑いながら見下ろしていた。

 

「ふざけやがって。さっきからチマチマした攻撃ばかりじゃねぇか」

「あら、苦し紛れ?その割にはあなた随分苦しそうじゃ無い」

 

黎人の悪口を軽く聞き流し、リーフは袖を引いて腕を前に出す。

 

すると、リーフの腕から小さな棘が生えてきた。その棘は鋭く尖っており、その腕に触れればその棘に刺さって怪我をする程に。

そう思うと、その棘はリーフの腕から飛び出し、黎人に向かって飛んでいく。

黎人は別の場所に飛び移ってリーフの攻撃を回避する。先ほどのように地面に強い衝撃を与えている。

先ほどからリーフが繰り出してきた攻撃はそれだ。しかも当のリーフは空中にいるから黎人の位置からでは攻撃する事が出来ない。一方的に攻撃されているばかりだ。

 

「理解できて?私は『体から棘を出して、それを飛ばす程度の能力』を持っているの。その威力はさっきから見てれば分かるでしょ?喰らえばタダじゃ済まないわ」

 

リーフの腕から、再び棘が生える。リーフは体力が持つ限りはその攻撃を続ける事が出来るのだ。

一度リーフの体力が切れるまで耐えて見るべきかと考えはしたものの、リーフはあまり疲れてはいない様子だ。彼女の体力が尽きるのを期待するのは無理そうである。

 

「体から棘が生えるとか、気持ち悪くねぇか?少なくとも俺はヤダな」

「それは偏見と言う物よ。何も滑らかな物が良いとは限らないわ。美しい花には棘があると言うでしょ?

私は棘のあるバラのように美しく戦うわ。見るものを魅了して、ズタズタにするのよ」

 

高らかにリーフは語る。彼女はバラに強く魅了されていた。棘という危険な物を持ちながら、多くのものを魅了するバラに美点を感じ、リーフはバラのように戦うと決心していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや…バラと言うよりサボテンに近いんだが…」

 

 

 

 

 

 

突然、空気が固まった。

 

 

「お、おい!なんて失礼な!」

「キサマ、直ちに訂正しろ!」

「いや待て、流石リーフ様だ。落ち着いていらっしゃる」

 

驥獣と一緒にいる男たちから色々な声が聞こえる。失礼なことを言ったことに謝罪しろと焦って言う者がほとんどだったが、1人の男のセリフに落ち着いた。

リーフは特に顔色変えずにいる。黎人が言ったセリフに腹を立てていないようだ。それならリーフが取り乱さないで済む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ね!この虫けら!!」

 

 

 

 

訳ではなく単に怒りのスイッチが入るのに時間がかかっていただけであった。

 

 

「ぬおおおお!!」

「「「取り乱した!!」」」

 

 

 

 

リーフが黎人に向かって棘を飛ばす。気のせいか先程よりスピードや威力が高い。リーフの怒り狂っている表情からしても、黎人を殺そうとしている事が分かりやすく察知できる。

 

「サボテンとはよく言ったわね!この私の美貌をあんな植物で例えるとは!その罪、その体で払わせてやるわ!」

 

大声で叫びまくるリーフ、その姿に優雅さは微塵も無い。今の彼女はどっからどう見ても醜い者にしか見えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美貌って、ほぼ50のババアが言うセリフじゃねぇだろ!」

 

 

 

 

 

再び空気が固まった。

 

 

 

 

「お前幾ら何でもそれは酷いぞ!」

「し、しかし…リーフ様は眉1つも動かしていない」

「こ、これが強者の余裕というやつなのか…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「消えて無くなれ!このウジ虫風情が!!」

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉ!棘の本数が増えた!」

「「「怒りで冷静さを失った!!!」」」

 

リーフの飛ばす棘の本数が増える。しかも威力も跳ね上がった。先ほどから黎人が失言をする度に威力が上がっていく流れになっている。案外彼女は、感情に左右されやすい性格なのだ。

 

「アイツ、女性の地雷を的確に踏む才能でも持ってんの?」

 

その様子を見て、霊夢は呆れてそういう事しか出来なかった。

 

 

「このままじゃまず…うお!?」

 

逃げながら何か解決策を見つけようとしていたが、急に棘の追いつくスピードが跳ね上がり、黎人は間一髪避けることが出来た。だが飛んで避けた所を更に狙われている。その攻撃は避けれそうになかった。

 

(…仕方ないか…)

 

黎人は何やら考えたが、棘はあっという間に彼のいる場所に落下した。

 

 

「ハァッ…ハァッ…わ、私とした事が取り乱してしまったわ…けど、呆気ないわね、斐川黎人。時間にしてほんの数分で沈むなんて」

 

暫く経って冷静を取り戻したのか、焦って余裕を見せようとしている。だがその言葉に説得力が全く無いのは言うまでもない。

地面から大量に出ている土煙、その中に黎人はいる。あの大量の棘を食らったのならば、ただでは済まない。

 

「…!?」

 

だがリーフは気づいた。大量の土煙の中に、1人の男が立っている事に。

有りえない、としか思えない。彼はまともにあの棘の攻撃を食らっていたはず。死んだとは行かずとも、致命傷を負った彼が平然と立っているなんて信じられない。

 

「あー…()()能力だけは使いたく無かったんだがな。仕方ねぇ、発動したからには、存分に使わせてもらうぜ」

 

土煙の中から現れたのは、間違いなく黎人だ。だが、いつもの彼ではない。

目は緑色になっており、緑色のマントをしている。その手には何も持ってはいなかった。なんの武器も持っていない。

だが、彼女はもう1つ気づいた。彼の周りにだけ、棘の刺さった跡が全くない事に。何らかの方法でその棘を消したのだろうか。

 

「見せてやるぜ、『木』の進化した形態、『森林』だ。この能力で、テメェをぶっ潰してやるよ」

 

黎人とリーフの戦い、こちらはいよいよ本番に入ったようだ。

 

 




漸くいい流れになって来た…第3章の1戦目は残り2話と予定してます。

黎人の新たな能力『森林』の技とは!?

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