東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
刃燗、瑛矢にやられる。


92 惣一vs瑛矢

惣一は、あまり怒らない。その事を早苗は1番感じていた。

そんな彼が怒るものがあるとすれば、それは人を平気で傷つけたり平和を脅かしたりする事だ。彼は人の生活を脅かす事を最も嫌う。正しくテレビ上のヒーローのような信念だ。

そんな子どものように純粋で単純な思考は、早苗は嫌いではない。むしろそんな彼だからこそ好きなのだ。話し方や手際の良さはかなり上手なのに、意外と子供っぽいところを見るととても安心する。

そんな彼女も、彼に対して怖いものがある。それは、怒っている顔だった。

この時、惣一は珍しく怒っていた。ほんの少し前までは全く敵意が無かった筈なのに、今の惣一は恐ろしいほどの敵意を瑛矢に向けている。敵意を向けられた瑛矢は、その変化に最初は驚いたものの、漸く本気になってくれ、士気が高まっている。

惣一は許せなかった。仲間を傷つけられたり、人を平気で傷つけるその残虐性が。それが例え、かつて共に戦っていた人であっても。

 

「漸くやる気になってくれたか。お前が睨んでくるとは思わなかったが…それは嬉しい誤算だ。その目をしているお前と戦ってこそ…殺し甲斐があるってもんだ」

 

瑛矢は体を宙に浮かせる。もともと『チェバリアーマー』は『フライアーマー』を改良したものなので、宙に浮くことは可能なのだ。

 

「GARDER no_02 『フライアーマー』解除」

 

惣一も身につけているフライアーマーを起動して、瑛矢が昇った場所と同じ高さに浮かぶ。瑛矢はその様子をただ見てるだけだった。

惣一と瑛矢が空中で同じ高さに浮かんでいる。これから2人の戦いが始まるのだろうと早苗は思った。惣一に手を貸したかったが、彼女は先ほど瑛矢にやられていた刃燗の手当てをしている。

 

「『チェバリアーマー』の能力は覚えているな?」

 

瑛矢が口を開く。惣一にチェバリアーマーの能力を尋ねているようだ。

 

「5秒間、自分の普段より速く動く事が可能になる。起動した時に鎧が赤くなり、使用者の感覚が研ぎ澄まされる…でしたよね」

「そうだ。()()()()()()()()()()

 

惣一もチェバリアーマーの事は知っている。開発は出来たものの使用者がなかなかいなくて混乱していた当時の様子を覚えている。そして漸く見つけた適任者が、影虎 瑛矢だった。

その混乱時に能力のことを聞かされたし、実際装備してみた事があるので、その能力は分かっていた。だが、瑛矢の言っている事に何か引っかかる。

 

「どういう事ですか?」

「修正箇所が1箇所だけあるって事だ。発動時間は5秒間じゃなくて7秒間になっている」

 

使用時間が少し長くなった。それが惣一がGARDを抜けた後の変化だ。たった2秒だけ伸びたようにしか見えないが、高速移動を扱うものにとっては秒単位であってもかなり効果がある。瑛矢にとっての2秒間は、20秒間とほぼ同じ意味だ。

その事実を聞いて、惣一の表情は堅くなる。惣一もその事は理解できる。もともとの5秒間も開発当時はかなり長い時間だった。だからその2秒間の脅威は嫌でも分かる。

惣一は手に何かを持ち始めた。速さで対抗するのはほぼ不可能。だから別の方法で戦いに出る必要がある。その方法とは、チェバリアーマーの弱点を突く戦法だ。

 

「オクタヘドロンシールドか?防衛戦に出て時間切れを待つ寸法か」

 

瑛矢は惣一の手に握られている物を見抜いた。そこには、GARDERの中でも防御に特化した兵器『オクタヘドロンシールド』を展開するための端末が握られている。

瑛矢が身につけている『チェバリアーマー』の弱点とは、高速化の効果が切れた後の反動だ。機械によって肉体にかなり負担をかけた高速化なので、使用者はほんの少し反応が鈍る。更に一度発動すると、高速移動が切れた後、その倍の時間は再び発動することができない。瑛矢を倒すための隙はそこにしかない。

とすれば、チェバリアーマーのリミッター解除によって生じる高速移動の攻撃をしのぎ、効果が切れた時に攻撃を仕掛ければ良い。惣一の扱うオクタヘドロンシールドは、全方位からの攻撃を防ぐことが可能なので、その戦法にはうってつけだ。

 

「高速移動の後の反動による隙を突く、てのは間違いではない。だがお前も分かってんだろ?お前の持つそれも、弱点があることを」

 

瑛矢は慌てることなく、寧ろ笑いながら言った。瑛矢の言う通り、オクタヘドロンシールドにも弱点が存在する。チェバリアーマーと同じく使用時間に限りがあり、使用後しばらくは発動することが出来ない。使用時間は20秒間という、チェバリアーマーよりかは長いが、使用後は五分間発動することが出来ない。使いどころを誤ってしまうと、逆に痛い目を見ることになる。

そして、オクタヘドロンシールドは惣一の手に持っている端末を持っていないと発動できないのだ。もし端末を落とすとシールドを展開することは出来ない。その端末を落とすという事は、一気に敗北してしまうことに繋がりかねないほどの大失態なのだ。

 

「早い話、チェバリアーマーを使わずに、その端末を落とせば問題ないという事だ。それまでは通常状態での戦闘になる。とすれば俺の方が有利だ。近接戦闘ではオレに勝ったことが無いだろ?」

 

瑛矢の言っていることは正しい。惣一はどちらかというと遠距離からのサポートを得意としており、瑛矢は前線で戦うことを得意としている。空中とはいえ、近接戦闘となると瑛矢の方が有利だ。

だが、惣一は瑛矢の質問に答えることも動じることも無かった。彼自身、そのことを元から理解している。そして明らかに不利だからと言って、その場から離脱しようとする男でも無い。無理難題のような試練でも挑みに行く男なのだ。

 

「答える気は無い、か…じゃあ答えなくても良い。この戦いで見せつけてやる。俺とお前の差をな」

 

惣一が瑛矢の質問に答える気が無いことを察したのか、瑛矢もそれ以上話を続けようとしなかった。どのような理屈があったとしても、勝負は結果が全て、ならば決着をつける形で惣一に思い知らすしかない。

 

空中で瑛矢がレイソードを持ち、構えをとった。惣一も先ほど拾ったナイフを手に、いつ瑛矢が仕掛けてきても大丈夫なように準備を整えた。この2人の戦闘が、本格的に始まったことを早苗は思い知った。

 

最初に仕掛けたのは瑛矢だった。チェバリアーマーの噴射によって惣一の方に移動して、斬りかかる。惣一はフライアーマーを前進させ、瑛矢の勢いに正面から反発するようにナイフで受け止めた。足場のない空中だと踏ん張るものがないので、移動することで生じるエネルギーと押す力だけで立ち向かう術がない。

ナイフで受け止められたが、瑛矢は剣を傾け、惣一の持っていたナイフを逸らした。惣一の体制が崩れたところを狙って、瑛矢は剣を傾けた状態から第2撃を加えた。剣は惣一の体を捉えたが、惣一が身につけている防弾チョッキに防がれた。

先ほどの高熱弾幕はくらうものの、その防弾チョッキは物理攻撃に強い。もし斬撃で倒したいなら、もっと力を入れなければ不可能だ。

それは瑛矢は何となく分かっていた。普段の力で剣を振れば防弾チョッキを破る事は可能だが、剣を傾けた体制だとあまり力が入らなかった。惣一に斬撃を当てるならば、自分の力がフルで活用できるようにならなければいけない。

 

瑛矢の攻撃が防弾チョッキに防がれた時に、惣一は先ほど振り切ったナイフを、切っ先を反転して逆方向に振る。狙いは、瑛矢の首だ。チェバリアーマーの兜が外れたので、頭を狙う方が良い。

惣一が首を狙っているのが分かった瑛矢は、チェバリアーマーを空中で後ろに回転させ、ナイフを躱した。そして防弾チョッキに防がれた剣を持ち直す。

 

体の上下が元に戻ったとき、瑛矢は剣を真っ直ぐ惣一に伸ばす。

瑛矢がつく剣を、ナイフで受け止める。だが今度は勢いを踏ん張ることが出来ずに、後方に飛ばされてしまった。

後ろに吹き飛ばされている惣一を見て、瑛矢は好機と思った。吹き飛ばされている間は体制が不充分、攻撃を防ぐことは出来ない。そう思って攻撃を仕掛けた。

だが、その攻撃を繰り出せなかった。

 

(…!いつの間にかナイフから銃に持ち替えた…!?)

 

惣一はさっきまでナイフを持っていたのに、銃に持ち替えられていた。吹き飛ばす前はナイフを持っていたので、吹き飛ばされながら持ち替えたとしか考えられない。しかも、片方の手には端末があるから、片手のみで持ち替えたことになる。

惣一は、真っ直ぐ自分の方に近づいていく瑛矢に銃を放った。その銃弾を避けるために瑛矢は方向転換をしようとするが、あまり移動する方向がされなかったので、頰にかすってしまった。

 

移動する勢いを止めて、2人が再び向かい合う。一進一退の状態が続く。剣術など基本的な戦闘技術は瑛矢の方が高いが、判断力や創意工夫の面では惣一の方が優れている。瑛矢が攻撃を仕掛けて、それを惣一が巧みに躱す、という流れがさっきから続いている。

 

(…やっぱり、ただ攻撃を仕掛けるだけじゃダメか)

 

普通に攻撃を仕掛けるだけだと惣一にダメージを与えることが出来ないと瑛矢は察し、戦い方を変えることにした。先ほどまで持っていたレイソードを、両手で持ち替える。

 

「GARDER no_04『レーザブースト』解除」

 

手につけている手袋を起動する。手袋が青く光り、それに共鳴するように剣も青い光が灯った。

左足を半歩前に出し、身体を横向きにする。そして青い光を灯した剣を、顔の真横に持っていき、切っ先を惣一に向けた。

近接戦闘はあまり得意ではないが、そうなった時の対処を惣一は心得ている。だからこのまま仕掛けても逃げられてしまう。ならば、遠距離攻撃で揺さぶりをかける方が得策だと瑛矢は感じた。

 

「レイソード剣技『ガント』」

 

瑛矢の発言と共に、剣に纏っていた青い光が形を変える。先ほどまで剣から溢れ出すように光が出ていたが、その光が剣を囲むようになった。

 

すると、剣先から小さな光が惣一に向かって飛び出して来た。

 

(…!小さな光の衝撃波…ライフル!?)

 

その飛び出して来た光を避けるために、惣一は横に移動する。その光の速度はかなり高く、判断が半歩遅ければ間違いなく今の攻撃を受けていたかもしれなかったのだから。

惣一は少し驚いた。前も剣を振ることで光を飛ばすことは出来たが、その時は今のように小さな光を飛ばすことは出来なかった。その時点で嫌でも分かる。瑛矢も惣一と一緒にいた時よりかなり腕を上げていることを。

 

「上手く躱したな。だがそれがいつまで続くんだ?」

 

惣一が躱したことに、顔色1つ変えずに瑛矢が言った。惣一が今の攻撃を躱すことは想像できる。今の攻撃は当てる攻撃ではなくあくまで揺さぶりなのだ。

剣先を惣一の方に向けて、再び小さな光を放つ。小さな光を連射する様子はマシンガンのようだ。

惣一は横に動きながら距離を詰めれないか伺っていたが、その隙は見つける事が出来なかった。このままでは惣一の体力が尽きるか、瑛矢の光が途切れるかのどちらかしかない。そして1番考えられるのは、前者の方だった。

埒が明かないと察した惣一は、銃弾を瑛矢に向けて放つ。鎧があるので狙いは顔だ。

銃弾が顔に向かって放たれたのが見え、瑛矢は躱す…のではなかった。レイソードの剣から放たれる光を銃弾に当て、相殺する。銃弾に当たった時、小さな爆発が起こり、銃弾を粉々にした。

 

「GARDER no_09 『スケールン』解除」

 

レイソードの狙いが銃弾になった事で生じた隙に、惣一は胸のポケットにつけているスケールンを起動した。すると惣一の姿が消えていった。

 

「スケールンか…透明化した状態で俺に襲いかかろうという算段だろうが…つくづく甘いな、お前は」

 

瑛矢は惣一が消えた事をどうとも思わず、ただそのまま立った状態でいる。スケールンは装着者の身体を背景と同化させ、相手の視界から逃れるための兵器。なので、目で見つける事は不可能。だから使うのは、耳だ。姿が消えても、フライアーマーの出している噴出の音を消す事は出来ない。だから、耳を使って惣一のいる場所を想定する事は出来る。

 

特に何もせず、耳を澄ませる。少しの音も聞き逃さない。そういった構えが全身から感じ取れる。

ビュン、と空気が走る音がした。その空気の流れが変化したところに、何かがいると察した。

瑛矢は()()の存在の可能性がある領域全体に、レイソードの光を浴びさせる。先ほどの小さな光よりも大きな光だ。もしそこにいたら、逃れる事は出来ない。

 

瑛矢の放った光が何かを捉え、何かが焼けた音と小さな爆発音が響いた。もしかして惣一に当たったのかと早苗は心配したが、そうではなかった。

 

惣一は、いま光を放った瑛矢の後ろにいた。

 

(うそ…!じゃあさっきの光に当たったのは…)

 

惣一があの場にいたと言う事は、あの光に当たったのは別のものだということ。早苗はそれが一体何なのかを見た。

すると、何やら欠片のようなものがポロポロ落ちてきた。そのことから、あの光に当たったのは人では無かった事が分かった。

惣一は瑛矢に攻撃を仕掛ける直前に、爆弾を瑛矢に向けて投げた。そして自身は瑛矢の後ろ側に回る。因みに爆弾と一緒にスケールンを投げたので、爆弾が消えている。そしてスケールンを身につけていない惣一は透明になっていないので姿が見えるのだ。

完全に不意をついた。早苗はそう確信した。

 

 

 

 

 

「後ろにいるんだろ?」

 

 

 

 

だが、そうではなかった。瑛矢はそれがダミーである事を知っていた。そして、後ろ側に回り込む事を。

すると惣一のいるところが青く光りだした。レイソードから発されたわけでは無いのに。

 

「レイソード剣技『ボムトラップ』」

 

そして爆風を出した。惣一を包み込む形で。そこで爆弾のようなものだと初めて分かった。

爆風の中から惣一が落ちて来た。爆風に巻き込まれ、フライアーマーが破損したのだろう。惣一はそのまま地面に激突した。

その時に、左手から端末が放り出された。先ほどまで握っていたオクタヘドロンシールドを展開するための端末である。それを見て、瑛矢は好機とみた。チェバリアーマーに対処する術が無くなったのだから。

 

「GARDER no_10 『チェバリアーマー』解除」

 

チェバリアーマーを起動して、鎧が赤くなった。高速移動が可能になる状態になったという事だ。瑛矢は目にも止まらぬ速さで地面で横になっている惣一に目掛けて落下していく。

 

(決める…!これで俺の勝ちだ!稲田惣一!!)

 

レイソードを真っ直ぐ惣一に向かって伸ばす。惣一の体を貫こうとしていた。

 

瑛矢が勝ちを確信し、早苗が惣一を心配している中、惣一は何とも思わなかった。死を覚悟したから…ではなく、

 

罠にかかったのだから。

 

《ピリ…ビリリ…バリリリリリリ!!》

 

「な…!?ぐあああああ!!?」

 

突然、瑛矢の鎧が爆発した。電気を放ちながら、鎧が崩れていく。それを身につけている瑛矢は、尋常じゃ無い痛みを感じ、地面に落下した。先ほどまで加速していた勢いだけは働き、激突の際の衝撃もかなりのものである。

 

「…ッ!なんで、鎧が爆発して…」

 

地面に落下した瑛矢は痛みに耐えながら、瑛矢は何故鎧が爆発したのかと思った。先ほど瑛矢が仕掛けた『ボムトラップ』とは違い、鎧そのものが爆発したのだから。

 

「チェバリアーマー。かなり高性能な鎧ですが、大きな弱点が3つあります。1つ目はは使用者がかなり限られてしまう事、2つ目は使用時間が限られており、使用後は反動で暫く動けなくなること。3つ目は…使用時間中に起動を強制的に止めれば、その反動で爆発してしまうことです」

 

瑛矢が落ちる寸前に立ち上がった惣一は、瑛矢が倒れている隣で話している。その手には、オクタヘドロンシールドを展開するものとは違う端末が握られていた。

 

(…2つ目の端末!?まさか()()()、端末を2つ持っていたのか!)

 

瑛矢は理解した。戦う直前に惣一は、端末を2つほど持っており、そのうちの1つがオクタヘドロンシールドを展開するための端末だった。そしてそっちの端末をわざと落として、もう一方の端末を使用したのだ。

じゃあそっちの端末は一体何なのか。それを使用して何が起こったのだろうか。

 

「これは、起動した時に電磁波を放出して、機械の動作を一時的に停止させる端末です。私が地面に激突して、オクタヘドロンシールドの端末を落とした時に発動しました。タイミングが遅ければ、先に攻撃を食らってましたが…」

 

惣一の話を聞いて瑛矢は納得した。惣一の持っているそれは機械を止めるためのもので、それを発動したことでチェバリアーマーは強制的に停止させられ、それによって爆発したのだ。

 

「…まさか、最初からこれを…」

「いえ、空中戦では本気で勝つつもりで仕掛けました。爆弾のフェイクを見破られるとは思っていなかったので…ですが万が一の事態のためにあの端末を持っていたんです」

 

惣一としてはその端末を使うことは想定外だった。チェバリアーマーを起動していない状態の瑛矢には勝ちたかったし、フェイクも本気でやっていた。だが負けてしまった。惣一は瑛矢には実力で勝てない事を思い知った。

だが惣一はそうなった時の対処法をあらかじめ用意していた。そしてその対処が上手に機能した。最終的には瑛矢に一泡吹かせることが出来た。

 

「そんな端末…!作ったことなかったはずだ!そういう事は、理香が…!」

 

瑛矢は言った。そのようなものを作った事は無かった筈だと。まして惣一は戦闘部隊、機械を作るのはかつての親友、理香の役割だった。

 

「ええ、向こうの世界では理香さんに任せていました。けどそういうわけにもいかない。

少し前に、道具を用いて幻想郷を破壊しようとする人が現れ、一時期とんでもない事になりかけました。もしこの先に同じような手で幻想郷に襲いかかろうとするものがいた時の対処法として、先日発明したんです」

「……!」

 

だが惣一はそう言ってはいられないと思った。理由は、リヴァルとの戦闘の時だ。あの時は異世界からの助っ人と黎人のおかげで何とかなったが、

今後リヴァルのような敵がもし現れた時に対処できるように機械を止めるものを作っていたのだ。

 

「…そうか。()()()()()()()

 

瑛矢は納得したように言った。何がそういうことなのかは分からないが、惣一はその内容を尋ねようとはしなかった。

 

「だが使えないのは俺だけじゃねえ。お前もその機械が使えねぇ筈だ。近距離で俺が負けるわけねぇのが分かってんだろ!」

 

瑛矢が襲いかかる。電磁波で機械を止められているのは惣一も同じこと、ならば素手の勝負となる。なら近距離の戦闘で優れているこっちの方が有利だ。瑛矢はそう考えていた。

 

だが、瑛矢が拳を惣一の顔に当たる前に…瑛矢の腹に拳を入れられた。

 

「…近距離全般の戦闘ならその通りですが、素手の勝負なら私の方が慣れていますよ」

 

フッと力が抜けて、瑛矢は倒れ込んだ。レイソードも使えない瑛矢に残されている選択肢は素手の攻撃しかない。素手対素手なら惣一の方が優れていた。結果は、惣一の勝利だった。

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…」

 

惣一は呼吸が苦しそうだ。勝負には勝ってはいても負傷はしている。それも異常なほどに。

早苗はとりあえず彼を休ませないといけないと彼に近づいた。

 

「おやおや、随分コテンパンにされたんじゃないですか?将来の英雄くん」

「瑛矢の考えなし〜」

 

だがその時、その場にいた者ではない声が聞こえた。一体誰が喋っているのかと周りを探していると、空中に2人の人物が見えた。

声をかけられた先である瑛矢が顔を上に動かして、その2人を見た。彼らの事を、瑛矢は知っていた。

 

「ロッタ…!ファトラス…!」

 

 

 

場所は変わり、博麗神社の前。たくさんの驥獣を連れて1人の女性が立っていた。その女性は、ダイガンが率いる組織の幹部、リーフだ。

リーフは博麗神社に襲いかかろうとも霊夢に手を出そうともしていなかった。まるで、誰かを待っているようにも見えた。

その彼女の近くに、1人の男が到着した。

 

「漸く来たわね。『五行の男』」

 

その男は、斐川 黎人だ。先ほどまでのバイトからここまで直で来たのである。そのため服装もその時のものだった。

そう、リーフは彼を待っていたのだ。彼女の目的は黎人…正確には、彼の中にあるものだからだ。

 

「博麗神社の前で霊夢に襲いかかろうとしねぇところからすると、狙いは俺か」

 

黎人は博麗神社に襲いかかろうとする素振りも見せないリーフを見て、彼女の狙いが黎人だと察した。

 

「あら、見た目の割に頭は良いのね。いや、正確には敵意に敏感なのかしら」

 

感心しているように言いながら顔の色は変えないで、リーフは手に何かを持ち始めた。それは、鞭のようなものだった。

彼女が武器を手にしたのを見て、黎人は『火』の形態に変化した。これから戦いが始まると誰もが分かるだろう。

 

「リーフ エルジェント…冷酷女王よ。跪かせてあげるわ。五行の男」




瑛矢とのバトルは惣一くんが勝ちました。そして新たな敵との遭遇。

黎人の方は敵幹部の1人、リーフに会いました。この後果たしてどうなるのでしょうか?

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