東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
大技をリヴァルに叩き込んだ。
黎人「アッチィィィィ!手が超イッテェェ!」
翔聖「ですよね…」



72 空飛ぶ戦艦、作動

聖槍が確実に当たった。それは間違いない。どう足掻いても致命傷は確実だ。

煙の中から1人の男が飛び出る。それは勿論、先ほどの攻撃を受けたリヴァルに他ない。

後方に吹き飛びながら段々と地面に近づいていく。足が地面に着いた後、彼はそのまま滑るように後ろに下がる。滑る足から金属音が響く。

スピードが段々と弱まり、やがて完全に止まる。黎人も翔聖も、彼の様子もジッと見ていた。しばらく待った後…

 

「…グハ!ゲボォ!ア…」

 

彼の口から大量に血が流れている。高威力の弾幕を喉に食らっているのだ。それは当たり前である。跡がつく程度で済んでるのが奇跡であり、本来なら即死しても可笑しくない。

 

「……ハッ…ハッ…」

 

口から流れる血が収まり、リヴァルは息を整えている。既に虫の息かと思える。

 

「…そうか……まさか弾幕を凝縮して、自分の力を加えることで、この威力を生み出しているというわけか…」

 

途切れ途切れにリヴァルは呟く。時々掠れてよく聞こえないが、賽は投げられたことは明らかだった。

 

「この俺に…このような布石を打つとは…

この俺が…このような策にまんまとハマるとは…

この俺が…このような傷を負うとは…

 

この……この………

 

 

 

 

 

身の程を弁えぬ愚か者がァァァァ!!!」

 

突然リヴァルが張り上げる大声、そのボリュームと勢いに、黎人も翔聖も一瞬怯んだ。

リヴァルは自分の手を首に添える。すると、見る見るうちに傷が塞がっていった。

 

(な…!?傷が!?)

 

「いいだろう…!そこまで俺を怒らせたいのなら、この俺が直々に恐怖を叩き込んでやる!

この俺に刃向かう愚かさを!骨の髄まで思い知るがいい!虫けらどもぉ!!」

 

 

 

先ほどまで傍観していたリヴァルがいよいよ戦闘の場に出てきた。これは黎人らにとって一歩前進した。どうするにも、先ずはリヴァルを戦場に引きずり込まないと先に進まなくなる。

だがそれで万事解決ではない。むしろ此処からが本番なのだ。黎人らはリヴァルの力をまだそんなに知ってはいない。対してリヴァルはある程度情報がある。つまり、現段階では不利である事に変わりない。

もし流れを持ち込むなら…力で押し切る以外ない。一気に敵を追い詰める程の力、今はそれがひつようなのだ。

 

やがて、リヴァルが動き出す。

 

「さぁ来いシュライダー!お前の出番が来たぞ!」

 

リヴァルの声と同時に、奥から2つの飛行物体が飛んでくる。それは、真っ直ぐ翔聖を目指していた。翔聖は刀でそれを防ぐ。そのお陰あってか、飛んできた物の正体を知る事が出来た。

 

「な…⁉︎剣…⁉︎」

 

そう、翔聖に向かって飛んできたのは剣だった。しかも、かなりの大きさがあり、かなり重い剣だった。その剣がひとりでに翔聖に向かって飛んできたのだ。

 

「意味がわからんと言いたげな顔だな。教えてやろう、それは『シュライダー』!多くのエネルギーを詰め込んだ剣だ。俺の能力から得た余りある生命エネルギーを用いて宙に浮かぶ事が出来る。言わば浮かぶ剣だ」

 

シュライダーと呼ぶ剣を動かして、翔聖に斬りかかる。宙に浮かび剣を握る者がいないため、大きく軌道を描いて襲いかかる。それ自体がまるで生き物のように動く。

 

「…!チャンス!」

 

翔聖に攻撃してるのを見て黎人は攻撃チャンスと思い、リヴァルに向かって走り出す。そのまま『火』の剣で斬りかかった。

 

《ガキィィン!!》

 

その剣はリヴァルの肉体を捉えず、何かに阻まれていた。

 

「な…⁉︎」

「たわけ!一言でも()()()()を使わないとでも言ったか?」

 

リヴァルの手にはいつの間にか刀があった。その刀で黎人の剣を防いでいる。しかも…

 

「…!二刀流か!」

「そうだ。いや、シュライダー二本と俺が持つ刀を合わせて四刀流というところか」

 

二本持っているのだ。リヴァルはシュライダー二本と刀二本、合わせて4本の剣を持っている。手数ではリヴァルの方が多いのだ。

 

「俺をあれだけ苛立たせたのだ。せめてもの抗いで俺を興じてみろ!」

 

黎人の刀を弾き、二本の刀を用いて右から左から刀を振るう。黎人もそれを防ごうとするが、あまりリーチのない小刀ではマトモに受けきれず、弾き返される。

 

「どうしたどうしたどうした!その程度で俺の暴虐を止めるとか笑わせる!もっと抗ってみよ!」

 

次から次に刀を振る。圧倒的にリヴァルの方が有利となり、黎人が押し負けている。後ろに下がりながら刀を避け、受けた剣は弾かれて…の繰り返しだ。

 

「黎人!っく…」

 

黎人が押されているのを見て、翔聖はシュライダーを弾き飛ばした。遠くの方に飛んで行ったのを確認して、黎人の方に駆けつける。救援に向かうようだ。

 

「ふん…物の点検ぐらいはしっかりしてろ。仕込み弾、発射」

 

シュライダーの剣先が翔聖に向けられる。その後、強力な発砲音が響き渡り、剣先から真っ直ぐと光が飛び出す。それは、翔聖の足を捉えた。

 

「うあ!ぐはっ…」

 

足を撃たれ、バランスを崩して地面に倒れてしまう。前に走っていた勢いのまま暫くの距離だけ滑り込み、勢いが止まった時にバタリと倒れてしまう。

 

「翔聖!」

「よそ見は禁物だ愚か者」

 

倒れこんだ翔聖の方を一瞬見たため生まれた隙を、リヴァルは見逃さなかった。

刀を持ちながら人差し指を立て、肩に当てる。

 

「閃光『ボルトフラッシュ』」

 

轟音と共に閃光が走り、指先から雷が真っ直ぐ飛び出す。その雷は黎人の肩に風穴を開けた。

 

「ぐあ!アグッ…ゥ…!」

 

肩から大量の血が飛び出し、フラフラと身体が揺れる。既に右腕の感覚がほぼ無い。

剣を収め、リヴァルはおぼつかないように動く黎人の髪を掴み看板に叩きつけた。そしてそのまま倒れた黎人の胸を踏みつける。

 

「ガッ…ァア!」

「たった一瞬の隙でここまで圧倒する様になるとはな。所詮貴様らは凡人だ。この俺と同等の場に立つ事がどれほど不遜か思い知れ。

もはや只では死なさんぞ。その身に恐怖を刷り込み、自らで死を望むまで存分に痛めつけてやろう」

 

その足に力を入れながら右手を上げる。上空にはシュライダーが剣先を下に向けて浮かんでいる。このまま黎人めがけて落とすつもりだ。

 

「やらせない!光輝『エクスキャリバー』!」

 

翔聖は手に光の剣を持ち、リヴァルに斬りかかった。流石にリヴァルもその場から離れる。シュライダーも落とされなかった。

 

「黎人!大丈夫⁉︎」

「ゲホッ…ああ、何とか…な」

 

無事そうには全く見えない。だが、風穴が空いたはずの肩が段々と治っていくのを見て一瞬息を呑んだ。

 

「『木』か…そういえばその様な回復能力もあったな。すっかり忘れていた」

 

黎人の目は緑色になっている。リヴァルは彼の属する団体のダイガンからある程度情報を貰っており、その中身は把握している。だが、翔聖らがこの世界に来てから今まで全く使っていなかったので頭の中から抜けていた。

 

「それでどうする?もう一度最初からやり直すか?」

 

それでも実力の差は歴然としてある。何も考えず動いてはさっきの二の舞だ。

 

「…翔聖…もう1回行くぞ」

「…え?あ、うん!分かった!」

 

黎人が『火』となり、リヴァルに向かって走り出す。翔聖は黎人に向かって先程と同じ様にマテリアルセイバーを繰り出す。そして、その弾幕を黎人は凝縮して1本の槍を作り出す。

 

「喰らえ!聖槍『マテリアルロッド』!」

 

光の槍を真っ直ぐリヴァルに投げ飛ばす。グングンと槍は伸びていき、そのままリヴァルを貫く…ことは無かった。

 

《ギャギ!ギュルルルル…!!》

 

槍の先端を素手で掴み、握りつぶす。光の槍は先端から四方八方に分裂し、無残に散った。

 

「………そんな」

「同じ技が2度も通用すると思ったか。一度見れば弾幕の構造を把握して破壊することくらい可能だ。ましてこれはブッツケ本番のでっち上げ物、あれを壊すなど訳無い」

 

あっという間に先程の弾幕の対策をしてきた。その様子に、翔聖は軽くショックを受けてしまう。

 

「いい顔だな。ついでだ。お前らをもっと絶望させてやろう」

 

リヴァルの霊力が上がったかと思うと、リヴァルの目は金色に変わり始めた。

 

 

 

砦の塔の一室で、リヴァルの乗っている戦艦を作動させているコンピューターを止めようとしている惣一を、驥獣らは後ろから斬り裂こうと動く。だがその刃が届くよりも前に彼らが攻撃を喰らう。惣一を守ろうとする者たちによって。

 

「夢想封印!」

「殺人ドール!」

「現世斬!」

 

近づいてくる驥獣らを、弾幕で、ナイフで、斬撃で攻撃する。全力を尽くして挑まなければ驥獣は倒せない。

 

「ハァッ…ハァッ…これで…何体め?」

「…私たちだけで…5体めかと」

 

霊夢、咲夜、妖夢が倒した驥獣を合わせて五体倒したことになる。驥獣がかなりタフなのだ。中々倒れない。それを彼女らは頭では理解している。だが、中々倒れない様子に、焦りと苛立ちが募っていくばかりだ。

その中で、次から次へと驥獣を倒していく者が1人

 

「はぁ!!」

 

異世界の剣士、秦羅だ。彼の剣は迷うことなく驥獣を斬り裂いていく。彼の動きは驥獣らにとっても全く見えないほどだ。

 

「ハァッ…これで20か…」

 

彼の驥獣を倒す速さはズバ抜けている。あまりの強さで、驥獣もうっかり近寄れない。

 

 

 

 

 

そこへ…轟音が鳴り響き、天井が壊れる。

 

 

「………⁈一体…!」

「な…何が起きたんですか…⁉︎」

「……!」

 

戦闘途中でいきなりの異変に咲夜と妖夢は一体何事かと慌てる。だが霊夢は天井から降りてくるのを確認し、より一層警戒する。

秦羅も厳しい表情をしていた。瓦礫と煙で姿は全く見えないが、異様なまでの気迫と天井を破壊するほどの力強さ…この2つを持ち合わせてる人物は1人しか居ない。

 

 

 

 

土煙が晴れた頃には…剣を持つ獅子王がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…中々思うように行かない…!」

 

1人で戦艦の実行プログラムと戦う惣一は、中々成果が出ない様子に焦りを抱き始めた。あらゆるコンピューターは様々なセキュリティがかかっており、そこに無理やり入り込んで操作するにはそのセキュリティを突破しなければならない。そのセキュリティの突破にはとてつも無く時間がかかる。もとより、簡単に解けるように設定されてないから当たり前だ。

 

 

 

 

 

『処置 完了 イタシマシタ コレヨリ プログラム B7 ヲ 開始 シマス』

 

 

惣一の格闘を他所に、いよいよコンピューターから作動の合図が鳴り

 

 

 

外で黎人らが乗っている戦艦が動き始めた。

 




戦艦が作動しちゃった…さて、リヴァルの野望は果たして止められるのでしょうか?

次回もお楽しみに

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