東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ

ガイラたちが退いた。
ガイラ「何人たりとも俺を止める事はできん!」
良也「少しは止まろうとしろよ!」


65 探索

「く……うぅ…ん」

 

黎人が目をさますと、見知った天井が目に映る。というのも、見覚えしかない。

 

 

「博麗……神社……?一体、何で此処に」

 

 

 

《ダダダダダダ……》

 

「起きましたかアニキィィィィ!!!」

 

突然、刃燗が飛びかかり…

 

 

 

 

「ウルセェ!!」

 

《バコーーン!!》

 

 

バレー選手よろしく、スパイクをぶち当てた。

 

 

 

 

 

 

 

「……漸く起きたのね、寝坊助」

 

 

 

非難するようにいう言葉、それを機に黎人はさっきまでの一連の流れを思い出した。そう、最後の記憶は霊夢によって地獄を見せられたことだ。

 

 

 

「…寝坊助、て……お前があそこまで気絶させたんだろうが…」

「さぁ、知らないわね」

「て…テメェ」

「そんな事より、事態はとんでもないことになってるのよ。みんな居間に集まってるからさっさと来なさい」

 

黎人の文句を聞き流して、台所からお茶を取り出して居間に向かう。仕方ないので黎人もそれに従った。

 

 

 

居間に着くと翔聖、秦羅、惣一が机の周りに座っていた。

 

 

「惣一…?何でお前が……」

「……えーと…とりあえず、これまでの流れを説明しておきますね」

 

 

◇ 青年説明中

 

 

 

「成る程な……大体分かった」

「どこの破壊者よ、それ。全く、呑気に寝てるからおかしな事になるのよ」

「いやだからてめぇのせいだ、て言ってんだろ!?」

「当てこすりも大概にしなさいよ。あんたが間抜けなのが全部悪いの」

「間抜け言うな!!」

 

 

 

 

 

「え…えーと…」

 

黎人と霊夢が口喧嘩を始めてしまって空気について行けない翔聖。当たり前だ。

 

「…相変わらずですね…」

「…いつも喧嘩してるのか?」

「えぇっと…喧嘩というか…互いに文句言ってるのはいつもらしいです。どっちも我が強いので…文句を言い合う中になってると…」

 

 

 

 

翔聖は、始めて霊夢を見たときの事を思い出した。あの時、霊夢は向こうの世界の霊夢を羨ましそうな顔をしていた。

 

霊夢にとって、今の現状は本当は望んで無いもので…もっと、素直でありたいと思ってるんじゃないのか…

 

 

 

 

突如、刃燗が翔聖の隣に座る。忘れていたが、彼は秦羅にやられて動けなかった。彼も屈辱はあるのだろう。

 

「まぁでも、俺が倒れている間にそんな大事故が起きたと分かりゃ、これ以上好き勝手させねぇ。俺も参戦するぜ」

「刃燗…」

「だがさっきのケリはまた後でつけるつもりだからな…忘れんじゃねぇぞ…」

「…………」

 

 

どうも、根には持ってるみたいだ。

 

 

「……何でお前は喧嘩ばかり……」

「悔しいからだ!」

「…あ、そう……」

 

刃燗のストレートさに秦羅も若干引き気味だ。

 

 

 

「まぁ、刃燗さんの流儀ですからね…拳と拳で語り合い、互いを高め合う…そうして進化していく、というのは……他の誰にもない真っ直ぐな取り柄です」

「流石惣一さん!分かってますねぇ」

 

 

刃燗にとって、友情とはライバル、競い合い絆を深めていくのが彼の絆の在り方である。それは、多くの人を惹きつける流儀だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ですけど見知らぬ他人に強面で脅すことは感心しませんから。この戦闘終わったらじっくり反省会ですよ」

「………………」

 

((怖…))

 

 

 

 

「何で惣一さん、刃燗に厳しいの?」

「あ、お前しらねぇんだっけ…アイツ、妖怪の山で特訓して貰ってるんだ。だから、惣一との間に小さな主従関係が存在するんだと」

「へぇ……そうやって成長するのね…」

「後、惣一は教え子に厳しいという事は驚いた」

 

 

 

『黎人と』は主従とは思ってないから厳しい面は見れなかったが、『刃燗と』になるとそうではないらしい…後、性格的な問題でもある。

 

(問題児と分かれば厳しくなるのかもな…)

 

 

 

 

 

 

 

「とにかく…奴らに警戒しないといけないわけだ」

「そうですね…あのまま何もせず終わる事は無いと思いますので…」

 

黎人と惣一はこれからの方針について話し合う。このまま行けば、必ず仕掛けに来るだろう。対策は練っておかないといけない。

 

だからこそ、黎人は一つ聞いておきたいことがあった。

 

 

「ところで……神力、て何だ?お前らも使ってた様だが……」

 

そう、神力についてあまり知らないのだ。秦羅から敵が神力の力を手にしていることは聞いたが、それが何なのかが分からないのだ。聞こうとするのは無理もない。

 

 

 

「…そうだな……そこから始めるか…」

 

秦羅は神力について説明をする。

 

 

 

 

 

神力

 

神の力を得る力。目の色が赤か金色になる。金の方が強力。

 

 

 

 

 

絶神力

 

神を超絶する力。元の瞳と反対色の瞳になる(秦羅のオッドアイは例外)。使用後かなり疲労する。

 

 

 

 

 

 

「神力…絶神力……頭が…」

「…無理もない。こんな一気に言われても困るだろう。」

 

 

黎人は思わず頭を抱える。彼は暗記系は得意ではない。一気に覚えるというあまり慣れてないことをしようとしたからか、頭を痛めたようだ。

 

 

 

「簡単に言えば、絶神力の方が強いというわけだ。まぁ、気にするな」

「……あれ?そういやお前ら使ってたよな。大丈夫か」

「あれだけ休憩時間があれば疲労は回復する」

「あ…それもそうか」

 

 

黎人は自覚してないが、数時間は寝ていたのだ。その間に回復できるのは当然のことだ。

 

 

(だが……『あれ』がない今どこまで持つのか怪しいがな)

 

 

秦羅は、一つだけ問題がある。今のところは問題無さそうだが…ガイラのような強敵相手に耐え切れる自信は無い…

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、敵の居場所を突き止める為、別れて探索する事にした。

 

 

 

チーム分けは、くじ引きで

黎人、翔聖チーム

秦羅、惣一チーム

刃燗、霊夢チーム

に別れた。

 

 

 

 

〜翔聖、黎人チーム〜

 

「……で、人間の里に聞きに行ったは良いものの…」

「何の情報も得られませんでした」

 

 

人里で『大きなライオンを見なかったか』と聞くと、

 

『はぁ?大きなライオン?そんなのこの人里にいたら大騒ぎだっつーの』

『ライオン……て何…?新手の妖怪?』

『ねぇねぇお母さん!あそこにいるの、女の更衣室に突っ込んだ人だ!』

『コラ!見ないの!!目が汚れるから!』

 

 

と言った感じで何の情報も得られなかった。

 

 

(くっそ〜〜……何で余計な情報が回ってんだよ…)

 

「考えてみれば…ライオン、てゆーか動物は幻想入りしないか」

「絶滅危惧種なら別だろうがよ…つーか何で人里に来たんだ?」

「君が言ったから」

 

 

『取り敢えず人里に行ってみようぜ!そこなら有力な情報が手に入る筈だ!』とカッコいいセリフを残しておいてこのザマである。

 

 

 

 

翔聖は一つ聞いてみたいことがあった。いずれ、黎人に聞いてみたい事が

 

「ねぇ、黎人」

「……ん?何だ…」

 

頭を抱えている黎人に声をかけた。

 

「霊夢のこと…どう思ってる…?」

「……?どう、て……何が?」

 

黎人はさっぱり察しがつかないようだ。

 

「あ、えーと……なんか、常に口喧嘩してるなー、て……」

 

『どう』の意味なんて答えれる訳が無い。それでも必死で答えを探そうとする辺りかなり良い性格だ。

 

 

「……別に………問題無いんじゃねーか?」

 

「え……?」

問題無い、と黎人は言った。その意味が全く分からない。もっと仲良くなりたいとか、穏便に過ごしたいとかあるんじゃないか……そう思う。

 

「口喧嘩…て言うのは……俺たちが言い争っているところか?だったら、あれは日常茶飯事だ。平和に、仲良く……慎ましく暮らすなんて、少なくとも俺には無理だ。

 

どーも俺はよ…相手の嫌なところばかりが目に映るんだ。霊夢で言えば、服が異常だとか、面倒くさがりとか、金にがめついとか……な。そういうところに、文句を言うことを止められない。

 

もちろん尊重はしている。幻想郷の管理をたった一人で、しかもあの年でやるんだ。そこまで出来る女性なんて俺の元いた世界に1人たりともいないだろうよ。

 

文句=否定じゃ無い。そのスタイルは、多分霊夢も同じだ。他人の俺が言うことじゃ無いが、口はキツ目だが俺を嫌悪してるわけじゃない。

 

それで良いんじゃないかと思っている。これからも、文句を言い合いながら共に協力する関係で行くのは悪いと思ってない。お前のとこの霊夢は知らんが、俺たちにとってはこれがベストだ」

 

そう、確かにそうだ。今の状態は険悪ではない。寧ろ良好だ。世の中には、険悪なんてものじゃない、それこそ目の敵にしている関係もある。だから、黎人は恐らくこのままでやっていこうと感じているのだ。それは、決して間違っているとは言わない。

 

 

 

だが…霊夢は違うのでは無いか…?本当はもっと素直になりたくて、もっと良い方向に進みたいんじゃないか?

 

翔聖のこの気持ちは、黎人には届いてない。これから霊夢にとって望まれる方向に進むかどうか、疑問に感じる。

 

 

 

〜惣一、秦羅チーム〜

 

「紅魔館辺りにも、いませんでしたね…」

「あぁ、椛によると妖怪の山にもいないんだろ」

「えぇ…」

 

 

彼らは紅魔館の近くを探していた。だが、その近くには無かった。あらかじめ椛にも頼んで、妖怪の山に何か変な建物が無いか聞いてみたが、無かったようだ。

 

 

 

「人里には黎人さんたちがいますから…残りは…」

「魔法の森、迷いの竹林、地霊殿…他にもいろいろあると思うが、1番怪しいのは森だな」

「森…と言うことは…」

 

 

 

 

〜霊夢、刃燗チーム〜

 

「ん〜…どこにもいないわね」

「そうっすね…あ、あれって確か、霧雨魔理沙の家ですよね。そっちに行ってみませんか?」

 

 

彼女らは、魔法の森を見ている。ただ、広いところを足で見るのはかなり大変なので空を飛んで見ていた。

 

すると、魔理沙の家が見つかったので魔理沙の家にお邪魔するように入った。

 

 

「ライオンねぇ…そんなの見たこと無いぜ」

 

案の定魔理沙も見たこと無いようだ。

 

「しかし参ったわねぇ…紫がいれば少し楽なんだけど…」

 

そう、境界の力があれば、探索には時間がかからない。だが、気分で動く紫が常に働くとは限らない。で、頼らずに動こうとはするが思うような成果は出ない。

 

 

 

 

加えて、不味い事が起きる。

 

 

 

 

「くはぁ…な、なんかキツイ、すね…」

 

刃燗の調子が悪めなのだ。

 

「あぁ、そうか…元々普通の人間だもんな。瘴気に当てられたんだろ」

「瘴気…?」

「魔法の森に流れる独特な空気だ。大抵の人間は気分が悪くなるんだ。まぁここは若干弱いほうだけどな。まぁ取り敢えず、お前だけでも外に出して、回復させるか」

 

 

そう言って刃燗を連れて行こうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた」

 

 

 

 

突如、天井が突き破られた。その上から男が降りかかってきた。その男は…ガイラだ。

 

 

 

「な…なんだぜ…?」

 

 

 

 

 

 

「生憎だがお前に用は無いのだ。大人しくしていろ。怪我したくなければな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ブー、ブー》

 

 

 

突如、黎人が持っていた端末がなった。それは、惣一が渡した、非常事態に反応したときに通知するもの、各チームに一つずつ持っていた。

 

 

 

「番号は…3番」

「え…3番って…」

「あぁ、霊夢のところだ」

 

 

 

黎人・翔聖は1番、惣一・秦羅は2番、そして霊夢・刃燗は3番の端末を持っている。そして、異常事態が起こったチームの端末番号が通知されるのだ。

 

 

そして霊夢が行った場所は、魔法の森。

 

 

 

 

 

「くそ!急ぐぞ、翔聖!」

「うん!」

 

 

 

黎人と翔聖は魔法の森に向かう。

 

 

 

 

 

(くそ…間に合ってくれよ…)

 

 

 




指令に基づき、霊夢の所に来たガイラ。事態は最悪、果たして黎人らはガイラたちの策を止める事が出来るのか⁉︎

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