東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
黎人が2回死んだ‼︎
黎「何回殺す気だ!」
目指せハーメルン内ギネス死亡記録
黎「嫌だそんなの!!」


63 獅子王と策略家魔術師

「ガイラ・ギガスト…?獅子王…?」

 

 

 

 

全く聞き覚えのない言葉、翔聖の頭には疑問符だらけだ。

 

 

「大雑把な乱入しておいて、よくも高々に語れるな」

 

秦羅はそれよりも、ド派手な演出に呆れていた。

 

 

 

「名乗りが高々で何が悪い。元より名乗りは誇りと共にあるのだ。決して間違ってはいない。

 

 

…まぁ、そんな話は良い。正々堂々戦い会おうではないか!」

 

 

 

ガイラは剣を前に突き出す。この男は、誇りと自信に満ちた戦士、名乗らずに戦うのは理に反するそうだ。

 

 

 

「さあ、前に出よ!斐川 黎人と言うものよ!背の低い坊主か⁉︎冷酷な雰囲気を醸し出した娘か⁉︎遠慮せず、来るがいい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

…………

 

 

 

「あ…あの……」

「ぬ?どうした坊主?まさかお前が斐川 黎人か?」

「いや、その……

 

 

 

 

 

あそこで伸びてるのが黎人だよ?」

 

……

 

「ゑゑ⁉︎」

 

 

 

まさか巻き込まれた男が目的の男だったとは…

 

「それから僕は男だからな」

「なぁにぃぃぃぃ!!?」

 

続けて秦羅が男だと知らされ驚く。驚き方が可笑しいのは気にしてはいけない。

 

 

 

 

 

「だから少し計画性持てと言ってるだろ⁉︎」

 

そしたら、投げられた男も戻ってきた。

 

 

「大体僕を無闇に投げ飛ばすなと言ってるだろ⁉︎いつもいつもお前は直感のみで動いて周りに迷惑かけまくってんだからな⁉︎」

「いや、それはあれだぞ。『人間は勇ましくこそあれ』と言うではないか」

「無いよそんなことわざ‼︎それに勇敢も度が過ぎると空振りまくるんだよ‼︎」

「いやぁ、俺の『ドジしまくる程度の能力』がここまで影響するとは…」

「そんな能力も無いよ‼︎自分勝手に設定を作るな‼︎」

 

 

 

 

(((なんだこのコンビ…)))

 

翔聖、秦羅、霊夢はなぜかコントを始める2人に呆然としていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……まぁいい、予定では斐川 黎人の力を測れとの事だが、こうなっては仕方ない。死体を持って『余りにも弱すぎたから殺してしまった』と言っておこう」

(いやいいのかそれ…)

 

ガイラは倒れている黎人に近づく。

 

 

 

「待ちなさい。それ以上踏み進む事は許さないわよ」

 

 

その行く先を霊夢が止めた。

 

 

 

「何の用だ博麗の巫女?お前と戦う予定は無いのだが…」

「そうは行かないわよ」

 

 

尚も立ち向かう霊夢、それもそうだろう。みすみす黎人を殺させるわけには行かないから…

 

 

 

 

 

「そいつを殺すのは私の役目よ」

 

 

 

 

………

 

 

あの、霊夢さん

 

「何?」

 

今、いい感じのこと書いてるんでそれに合わしてくれないと…

 

「知らないわよそんな事」

 

知らない、て…この小説の登場人物なんですからもう少しこちらに協力

 

「あら、『夢想封印』と『封魔針』と『たらい』のどれがお好みかしら?」

 

はい、すみませんでした‼︎

 

 

 

 

 

 

「そんな訳でそう簡単に連れて行かせるわけにはいかないの」

「お…おう、そうか」

 

ガイラも若干引いている。当たり前だ。

 

 

 

 

 

「だがそれで『はいそうですか』と引きさがる訳にも行かん。俺たちは元より斐川 黎人に用があるのだ。お前の言う通りには従えんよ」

「あらそう?だったら白黒つけるべきかしら?」

 

火花を散らす2人、一つだけ分かるのはどっちにしろ黎人は助からないということだ。

 

 

 

 

 

突如ガイラの目先に剣が突きつけられる。

 

「…その話はここまでにしてくれないか?黎人が目的かもしれないが…僕たちはお前らに用事があるんだ。ここで黎人を倒そうとするなら…僕が相手だ」

 

突きつけたのは、秦羅だった。

 

「…ほう、よもや俺の前に立とうとするとは…面白い‼︎その挑戦、受けて立つ!!」

 

刀と剣が交差し、戦闘が始まった。

 

 

 

 

(…ッ!重っ…)

 

「ハッハァ‼︎剣士としては強いようだが、力くらべなら俺の方に分があるようだなァ‼︎」

 

刀を弾かれ、次から次に斬りかかる。剣は刃が両端にあるため、『斬る』では無く『突く』ために用いられやすい。だが、ガイラはそれを『叩き斬る』感覚で振るっている。ガイラの怪力が合わさり、かなり重い剣となっている。秦羅が防戦一方の形になった。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ…1人で突っ走りやがって…それで、僕はこのチビと戦えばいいのかい?」

(ち…チビ……)

 

細身の男の言葉に翔聖は傷ついた。確かに翔聖は背が低いが、それは本人に軽々しく言ってはいけない。だが、この男は気にかけないようだ。

 

 

 

「え…と……無茶しない方が良いよ…?さっきの着陸でダメージ受けてたじゃん」

 

 

それでも相手を心配する辺り人間が出来ている。

 

 

「おいおい…僕を誰だと思ってんだ?有楽神 良也(うらがみ りょうや)だぜ?ならばそれなりのものの言い方、てのがあるだろう?」

 

いや知らない、と言いたくなる。聞いたことも無いし、そんなものがあるかどうかは分からない。

 

 

 

だが、翔聖は一瞬で表情を変えた。先ほどの傷が全て癒えたからだ。

 

 

「まぁ、僕は寛大だから許すとしよう。知らない事は罪だが腹をたてる物ではない。ならば、それを教えてやるのが、僕の役目だから」

 

 

良也の言葉は何処か酔狂で、何か偉そうだった。それが出来るのは、よほど自信に満ちたものだ。

 

 

「なんで…傷が……」

「そんな事も言わなきゃダメなのかい?ま、特別に教えてやろう。僕は『傷を完全に癒す程度の能力』を持ってるんだ。回復限界はあるけど、その範囲内であるならば倒れることはないよ」

「そんなチート並な能力が?」

「君はこの世界で何を見てきた?時や運命、死を操る能力もあれば心を読む能力もあるんだぜ?そうしたチート能力も持つことは何も不思議じゃないだろ?最も、生まれながらに持つとは限らないが…

 

さて、本当に僕とやるつもり?」

 

 

良也は本を取り出した。表紙に何と書かれてあるか分からないが魔道書だろう、と認識する。つまり、この男は魔術師だ。

 

 

「…そんなのは決まってる。僕は、お前たちを止めるために来たんだから」

 

 

 

 

 

 

「ハッ…大した自信だよ。だが、身の程知らずじゃないか?折角だから教えてやろう。身の振る舞い方を…」

 

良也は魔法を発動する。すると天候が怪しくなった。

 

「な…?」

「天候を操る魔法さ。言っとくけど、威力は半端じゃないぜ?」

 

良也が指を下ろした時、上空から雷が落ちる。翔聖は飛行して回避。

 

「何だ?随分慣れてるな。雷を使う相手と戦うのは初めてじゃないのか?」

「戦ったのは…1人だけ」

「そうか、じゃあ本気で行こうか」

 

指を次から次に動かすと、それに従って雷が落ちていく。辺りは雷の雨だ。次から次へと降っていく雷を避けていく。

 

 

「この雷の雨を全て避け切ろうと言うのか?努力は認めるが、それでは永久に勝負がつかないぞ。だいたいそれ、『絶神力』だろ?持久戦は不味いんじゃないのか?」

 

 

 

そう、絶神力はかなりの体力を消費する。絶神力を発動させたまま勝負を長引かせると、翔聖が不利になっていく。

 

だがその事を知っているのは、絶神力を使った事が有るもののみ。目の前の男は見ることもなかった筈だが…

 

(…そういえば、イシューさんが言っていたな…神力の力を取り込んだものがいる、て)

 

翔聖はイシューの言葉を思い出す。だから翔聖たちが呼び出された、と…

 

改めて、気を抜いてはならないと思い直す。

 

 

 

雷を避けながら、翔聖は剣先を良也に向ける。

 

「聖輝【マテリアル・セイバー】‼︎」

 

剣先からレーザーを放出し、良也に向けて伸ばす。高威力たるこの技で、一気に勝負を決めようとした。だが、そうはならなかった。

 

 

 

「ハッ‼︎来ると思ったよ。結晶『ダイヤの花弁』」

 

ダイヤのような青い光で花形の結晶を作り、レーザーを防ぐ。その結晶はビクともしなかった。

 

 

「そんな……」

「動揺してる場合か?危ないぞ」

 

良也に気をとられ、翔聖は気づかなかった。落ちていく雷が『軌道を変えて』自分を取り囲んでいることに

 

「な…!?」

「廃になって消えろ‼︎」

 

その雷は翔聖を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

「…!翔聖」

 

翔聖が雷に飲まれていくのを見た秦羅、魔術師…しかもズル賢いタイプだ。そうした相手は非常に戦い辛くなる。

 

「見事だなぁ。良也の魔法は、何時も度肝を抜く」

 

かと言って、翔聖に援護には迎えない。目の前にこの男がいるからだ。

 

「やはり良いものだな、魔法というものは。次から次へと突飛な戦略が出てくる。

 

生憎だが俺にはああいう事が出来なくてね。この剣のみで戦うことしか出来ないのだ」

 

ガイラは魔法使いでは無いのは確かだ。だが、剣士でもない。

出来ないのは魔法では無く技術の事だ。先ほどから力任せに剣を振るうばかりで、剣の振り方や体捌きは素人並だ。逆に、パワーは他を圧倒し、寄せ付けない物となっている。力のみで敵を倒す事が出来るタイプ…秦羅はそれに近い者として、勇儀を思い浮かべた。

 

 

とにかく、受け続けることは不利になるだけだ。如何にかしてこの状況を打開しなければ…

 

 

「それでは行くぞ!全力でひねりつぶす‼︎」

 

 

ガイラは次から次へと剣を振るう。受けては不味いと踏んだ秦羅は避けていく。その度に地面や木が破壊されていく。

 

 

 

「どうした‼︎このままでは時間ばかりが経過してしまうぞ‼︎」

 

そう言いながら攻撃の手は止めない。寧ろ早まるくらいだ。

 

 

「まだだ‼︎受けるのか無理なら…流す!!」

 

秦羅はその剣を受ける…かと思いきや滑らせて勢いそのまま流した。そしてそのスピードを使い、斬りかかる。

 

「なに!?」

 

ガイラが気づくももう遅い。秦羅の刃は既に目の前…否、その肌に触れた。

 

 

 

 

 

 

《ガキィィィン‼︎》

 

 

 

そのまま腕を斬り落とす…かと思いきや剣の勢いが止まってしまった。秦羅の刃は、ガイラの肉体を斬れなかった。

 

 

「な……⁉︎」

「残念だったなぁ小童ァ‼︎その軽い剣じゃ、俺は斬れんぞォ!!」

 

 

剣を持つ秦羅の手を握り投げ飛ばす。投げ飛ばされた秦羅は木に直撃、かなりのパワーだ。

 

 

「く…パワーだけならまだしも、硬さまで…」

 

筋力は硬さも含まれるが、刃を止めるほどの硬さなど秦羅は考えもしなかった。

 

更に、彼に最悪の追い討ちがかかる。

 

 

「…く‼︎しまった、神力が…」

 

そう、絶神力がきれてしまった。完全に体力切れだ。

 

 

「……そうか、残念ながらここまでか。まぁまぁ楽しかったぞ、秦羅。その激励の意を込めて、この刃で終わらせよう」

 

 

ガイラが、秦羅に向かって一歩ずつ近づいていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ゲホ……くそ‼︎」

 

雷に呑まれ、満身創痍の翔聖。何とか耐えたが絶神力もきれてしまい、ピクリとも動けない。

 

 

「あ〜あ!もう限界か?まぁ僕と戦ってここまで粘ったんだから誇っていいよ。安心して逝きな」

 

良也は魔法陣を発動する。翔聖を消す気だろう。このままでは…、そう思い抗うもあまり動けない。そうしてる間にも魔法陣は輝きを増していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ズギュン‼︎》

 

 

 

その良也のこめかみが撃たれる。

 

 

「な…!?なんだ…よ……これ……」

 

 

翔聖は全く動いていない。つまり、これは別の誰かがやったという事だ。一体誰が…

 

 

 

 

 

 

「失礼、勝手な判断ながら、貴方を敵と見なしました」

 

 

 

 

銃弾が飛んできた方、1人の男が立っていた。丁寧な口調で語るそれは、銃を抱えている。

 

 

 

 

「稲田 惣一、戦闘に参加させて頂きます」

 




てなわけで惣一くん参戦です。果たして彼らを追っ払えるのでしょうか?乞うご期待

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