東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

66 / 127
前回のあらすじ
黎人&刃燗 対 翔聖&秦羅の戦いが始まる。
イ「どうしてこうなった…」


61 不安定な状況

神の三児の1人、イシュー・ムラフェル、通称『暗闇の有権者』。ディルのような神々しさは感じられず、代わりに感じるのは、威厳。大きな体と低めの声は、どちらかというと魔王を思わせる。

 

そして…その下には、3人の従者が存在する。

 

 

 

 

 

 

 

 

「改めて聞くが…準備は整ったか?」

 

 

イシューが語るその部屋では、部屋の端で座り込む男が1人。そして、真ん中の机の周りに2人いた。その内の1人は何やら黒い大きなバックを背負って立っている。もう1人は手ぶらで座っていた。

 

イシューの声に反応し、やがて机に座っていた男が立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

「準備は整ったか…だと…………

 

 

 

 

 

 

 

それはコッチのセリフじゃボケェェェ!!!」

 

 

突如その男はイシューの胸ぐらを掴んだ。

 

 

 

「準備が出来たのはもう数十分も前の話なんだよ!そっから何時になったら動くのかと思えばこんなに待たせやがって!!なんか準備をしてるのかと思えばスクリーンを見てるだけじゃねぇか!!あのまま薄暗い部屋で待たされる気になってみろボケゴラァァ!!!」

「お、落ち着いてくれ、『(りゅう)』…」

「落ち着けるかアホンダラァァァ!!!!!」

 

 

劉と呼ばれた男を宥めるのに数十分かかった。

 

 

 

 

 

「ハァッ…ハァッ……死ぬかと思った」

「次同じ事をやったらマジで殺すからな」

「やめてくれ」

 

ようやく解放され、イシューの呼吸が再開された。

 

 

 

「取り敢えず作戦会議か⁉︎だったらとっとと始めるぞ!」

 

劉の声かけにより、机の周りに集まる。

 

 

 

 

「……おい…」

 

1人を除いて。先ほどから部屋の隅に座っている男は微動だにしない。

 

「おい『ドガン』!集合かけてんだろうが!!」

 

劉が声をかけるもその男…ドガンは動かない。何故なら……

 

 

 

《ズン!ズズン!ズン!ズ、ズズン!》

 

 

大音量で音楽を聴いているからだ。ヘッドホンの為外の声は全くもって聞こえない。

 

 

「また『静聴モード』かよ…仕事中は控えてほしいんだが…おいイシュー、ヘッドホン取り上げてこい」

「嫌だ」

「おい」

「だって取り上げたら半殺しにされるジャン…?」

「トラウマ植え付けられとんのかい…」

 

泣きながら首を横に振る姿は、注射を嫌がる子供のようである。

 

「まぁいい、アイツは後回しだ。後で伝えればいいだろ」

 

 

劉はドガンを無視し、会議を進めた。

 

 

 

 

「…と言うことだ」

 

イシューが今までの流れを全て説明した。敵の動き、その為にとった対応…そして現状

それを全て聞いた後、劉が口を開けた。

 

 

「お前どんだけ考えなしなんだよ」

「ガハッ…」

 

 

容赦の無い一言がイシューの胸を貫いた。

 

 

「そりゃテメェに落ち度があるよ。翔聖や秦羅に協力を頼んだなら黎人や惣一に話を通すべきだろ。そう考えれねぇからお前は何時まで経っても間抜けなんだろうが」

「もう止めてくれ…私のライフはとっくにゼロだ」

 

劉の毒舌が次から次に飛び交う。イシューは今にも闇に染まりそうだ。

 

 

「ハァッ…おい『清嗣(きよつぐ)』、テメェも何か言ってやれよ」

 

 

劉同様、机の近くで立っている男…清嗣に話しかける。その風貌はかなりスマートで、モデル体型だ。

 

 

 

 

 

「正直……イシューはどうでもいい」

「ゲハァ!!」

 

……さっきからイシューに傷つけるようなことしか出ていない。

 

「それよりも……人里の南西の端見たか?」

「は?それが?」

「いたぜ…」

 

 

 

何やら真剣な眼差しで呟く。彼の口からは意外な事実が…

 

 

 

 

 

 

 

 

とでも思っていたのか?

 

 

 

 

 

「超可愛い子が。俺は今日、あの子のために戦う」

「黙れクソたらし!!!」

 

言われたのは可愛い女の子でした。

 

 

 

「安心したまえ!仕事はキッチリこなす!だが華なき戦場では本気が出せない!!仕事ついでに口説いてもいいよね答えは聞いてない」

「聞けよ!つーか戦場に華もクソもねぇだろ!もっとマトモにやれよ!!」

「そんな事言うなよ。折角特注のカメラも用意したんだから」

「その荷物はカメラだったんかい!!」

 

 

どんどん話が逸れていってる件

 

 

 

「どうして誰も私の話を聞いてくれないんだ…」

 

誰も話を聞いてくれず、遂には泣き出すイシュー。本当にリーダーなのか。

 

 

 

と、そこへ流石に哀れだと感じた劉が肩に手をかける。

 

 

 

「心配すんな。誰もお前にリーダーシップなんて求めてねぇから」

「酷すぎる!!」

 

余計心の傷が深まるイシューだった。

 

 

 

 

 

 

 

「毎度思うが…よくこれで組織が成り立つな」

 

 

エルサはこのチーム力の無さに思わず脱力した。

 

 

 

 

 

 

「まぁとにかく、俺たちは暫く待機。あっちが何とかならねぇと動けねぇだろ」

「あぁ」

「何上司ヅラしてんだよ。テメェのせいでややこしくなってんだろうが」

「……はい」

 

後ろで散々に言われているイシューは若干小さく見えた。

 

「ところでこの戦いはどう見る?」

 

エルサは劉に黎人たちの戦いの推測を聞いた。

 

 

「あぁ……取り敢えず、有利なのは黎人だろう」

 

それの答え…すなわち有利なのは黎人だと言う。

 

「…何故だ」

「つーか何でも有利に立てるんだよ。複数の戦闘スタイルを持っているなら、相手や状況によって戦い方が選べる。あの『五行を司る程度の能力』の真骨頂はそういうことだろう。だから、戦闘の士気は黎人の方にある。

 

 

 

 

 

 

『素』の戦闘ならな」

 

『素』…すなわちなんの変哲も無い戦場なら黎人が有利だと言われるが、有利不利だけで勝敗は決まらない。

 

 

 

勝敗を決める1番の要因は、『強さ』だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社の上空で、物凄く速い2人の戦いが勃発していた。守森 秦羅と蛾溪 刃燗だ。その2人の速さは常人には見えないだろう。

 

 

 

「チッ……」

 

博麗神社の屋根に飛び移り、秦羅は上空にいる相手の様子を見ている。

 

 

 

「まだまだいくゼェ。爆撃【ナックル砲】!」

 

刃燗が殴るように拳を振る。

 

(……!危ない)

 

危機を察知した秦羅はその場から離れた。

 

 

 

《ドゴォォォン!!》

 

すると屋根が一部分欠けた。刃燗の拳から強力な弾幕が放出された。

 

 

「コラァァ!!私の神社ァァァ!!!」

「あ、スンマセン!!」

 

 

何やら屋根が壊れたことに博麗の巫女はお怒りのようだ。それを謝る刃燗はさっきまでの空気が打って変わる。

 

 

(それにしてもあの威力…どうやらスピードが速い訳じゃなくて勢いが強いのか)

 

秦羅はそんな事を考えている。と言うのも、スピードと言うのは最高速度ではなく敏捷性…すなわち動きの切り替わりを指す場合が殆どなのだが、刃燗の場合、最高速度だけが速いだけで切り替えは出来ない。だがその代わり、威力はかなり高いのだ。

 

 

「さ、まだまだ続くぜ!」

「…………」

 

 

 

博麗神社の中庭では、黎人と翔聖の戦いが続く。翔聖は刀を次から次に振るうが、黎人もそれに対処する。スピードは若干黎人の方が高いようで攻撃は当てられない。

 

 

(スピードで勝てないのなら…)

 

翔聖は距離を取る。そして、剣先を黎人に向けた。

 

 

「聖光【マテリアルセイバー】」

 

すると剣先から極太のレーザーが放たれた。

 

「レーザーだと⁉︎」

 

レーザーは黎人のいた場所を飲み込む。だが、黎人が飛んで回避するところを見た翔聖は、追いかけるために翼を出現させた。翔聖は『翼を出現させる程度の能力』を持ち、それを使って飛ぶことが出来る。

 

「なに!!?翼!?」

 

黎人が気づくのがワンテンポ遅れて、その刃を受けるも耐えきれず、地面に叩き落された。

 

「やった!!?」

 

翔聖は楽観するのも束の間、雰囲気が変わった。

 

 

「剣をガンガン使っていく相手だと思っていたが、どちらかというと高威力の弾幕を使うタイプか……なら、『コレ』だ」

 

 

黎人が使ったのは、「水」。弾幕を1番放つことが出来る形態だ。黎人の手には双剣の代わりに拳銃が握られている。

 

 

「お返しだぜ!水符【ウォーターキャノン】!!」

 

黎人は翔聖に銃口を向けて引き金を引くと、水の巨大なレーザーが放たれる。

 

「え、うそ!?」

 

翔聖は避けようとするも、反応が遅れたため飲み込まれてしまう。

 

 

 

 

「……チッ、アイツ」

 

秦羅は横目で翔聖の戦闘の様子を見ていたようだ。翔聖が、あの水のレーザーに飲み込まれていくのを見て、若干舌を打つ。

 

 

「どうだ?俺のアニキ強いだろ⁉︎何たって世界一だからだ」

 

 

世界一かどうかは知らないが、刃燗がそう思ってしまうほど黎人は強い。そして、目の前にいる刃燗もかなり強い。このままでは負けるだろう。

 

 

 

「仕方ないか……」

 

秦羅の口からそう聞こえた瞬間、雰囲気が変わったことを刃燗はハッキリと感じた。ここからが本気だと

 

 

 

「先ずは詫びる。お前らを少し舐めていた。最初があれだったんで強いとは思っていなかったが、奢りだったようだ」

 

『あれ』というのは黎人が転がって来た事だろう。

 

「それは…バカにしてんのか」

「逆だ。賞賛する。お前なら、本気で戦っても良いようだ」

 

そう言うと、秦羅は力を込めた。刃燗は彼の霊力が急に跳ね上がったことが分かった。そう……彼は奥の手を使ったのだから。

 

そして、刃燗はもう一つの異変に気付く。

 

 

 

秦羅の瞳が、青と紫のオッドアイになってる事に…

 

 

 

 

「ハァッハァッ…危なかった」

 

レーザーに飲み込まれた翔聖は無事だ。軽傷はしてるもののそんなにダメージは大きくない。威力は強かった筈だが…

 

 

(いや、そうか…相殺したのか)

 

 

地面につけられた後を見るとある一点を通り越したところで無惨に散らばっている。恐らくレーザー系のスペルを放ち相殺したのだろう。だから、軽傷で済んでるのだ…と

 

 

 

「凄く…強い……」

「……あ?」

「秦羅や輝月さんとか…色々強い敵とは戦ってきたけど…君も…いや、黎人もかなり強い。危なかったんだ。

 

 

 

だから…本気で戦う」

 

 

 

その言葉に若干寒気を感じた黎人は構えを取り直す。その時、黎人が感じたのは、翔聖の急上昇する霊力と

 

 

 

 

 

翡翠色に変わった翔聖の瞳に対する違和感だった。

 

 

 

 




本気を出した秦羅と翔聖、この結末は如何に〜〜〜!?


最後の2人の瞳が変わったのは、来翔さんの小説を見れば分かります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。