イシューが翔聖達を別世界へ送った。
イ「物を壊すなよ⁉︎絶対壊すなよ!?」
翔「それ逆の意味にならない?」
数分前…
「そんじゃ、散歩にでも行ってくるか」
「突然ね」
博麗神社の外で黎人は外に出ようとしていた。
「まぁゴチャゴチャ言うな。それに…バイト先も探さねぇといけねぇし」
「…あれ?既に決まってたんじゃないの?」
黎人は既に霧雨店でバイトしている。なので探す必要は無いはずだが…
「ああ、解雇された」
「…そう、やっぱり役立たずだったのね」
「もうちょい言葉選べ!!」
どうやら、バイトは解雇されたようだ。
「なんか…1人にして欲しいんだと」
「…へぇ……」
前に魔理沙との騒動があって以来、店長は色々と考え込むようになった様だ。その原因となるものについて、黎人は心当たりは無い。
「まぁ、誰でも考え込む日は来るし、そういう時に無茶して触れあおうとする必要は無いだろう。そっとしておくべきだろうな」
「…そうね」
「そういうわけで適当に歩き回るから、暫くしたら直ぐ帰…」
話すのに夢中で足元を見ていない。それがいけなかった。
《ツルッ》
「…へ?」
突如襲う浮遊感。その正体を黎人が知るのは、自分の体が既に倒れている時だった。
足を滑らせたことに
「あべべべべべべ!!?」
「ちょ、黎人!?」
超高速で転がり落ちていく。霊夢が彼に追いつこうとするも、距離が縮まらず、最下部まで来てしまった。
◇現在
博麗神社の前で翔聖と秦羅を連れ、話し合っている。
「そうか、別世界から来たのか…珍しいこともあるんだな。因みに俺は斐川 黎人て言うんだ。そんな訳で早速一つ頼みがある。
取り敢えず殴らせてくれ。痛くしねぇから」
「嫌だ」
即効拒絶。当たり前である。
「いいから殴らせろ!俺の気がすまねぇんだよ!!」
「どんだけ自分勝手なんだ。転がってきたのを止めただけだろ」
「あんな止め方あるか!少し控えろよ女だろ!?」
「僕は男だ」
やいのやいの言い争っている黎人たちの傍らで、翔聖は霊夢と話していた。
「別世界ねぇ…同じ私がいるなんて信じられないわ」
「まぁね。僕も、違う霊夢だとはなかなか思えないし…」
容姿が全く同じで存在が違うというのは、なかなか受け入れがたいものだろう。
「向こうの私はどんな風なの?」
「うーん…あまり良く表現できないけど、一言で言えば優しい…かな」
「そう、羨ましいわね」
霊夢がそう言うのは、自分とは全く違うなと思ったからだ。黎人に余り優しく接することは出来ない。互いに文句を言ったり、キツく当たってしまう。無意識にそうしてしまうから、余計に悔しい。
「…霊夢」
なにやら複雑な顔をしている霊夢を見て、何か声をかけようとする。
「ヘイヘイヘーイ」
が、逆に声をかけられた。後ろを振り向くとそこには…
「ウチの姉御に、ナァンのようですかァ!?」
青い髪の怖い男が立っていた。
「ヒッ!あ、あの…ゴメンなさ…」
突然の事で驚き、慌てて謝罪しようとすると…
《どご!!》
「なにやっとんじゃお前は!!」
黎人がそのガンつけた男を殴った。
「いてててて…」
「悪いな、こいつ誰彼構わず喧嘩しようとするからな」
「いや、いいけど…誰?」
「刃燗(ばらん)、見ての通り不良だ」
刃燗と言われた男は頭を抑えながら立ち上がる。
「…いきなりすぎっすよ、アニキ。俺ぁ馴れ馴れしく姉御に話しかけてるのが嫌でして」
「その感覚がダメだ、て言ってんだよ。つーかお前、惣一のところはいいのかよ」
(…惣一?)
「そっちの方は終わりましたよ。そんでここに寄ったぐらいで…」
「…ハァ…」
刃燗の話は少し頭を痛める。思わずため息をついた。
「なぁ、惣一と言う奴はどこにいるんだ?」
秦羅は惣一の居場所を聞いた。
「…?惣一に何か用か?」
「いや、ある男からお前と惣一に会っとけと言われてるからな」
「…まぁいい。アイツなら」
「ちょっと待って下さい、アニキ」
黎人が惣一のいる場所を教えようとした時、刃燗が止めた。一体何事だろうかと全員が刃燗の方を向く。
「俺は納得できませんよ!何ポッと出でエラそうな口叩いてんだよ!そんな調子で惣一さんの所になんか行かせられねぇ、すよ!!」
……
………
…………
「いや何言ってんだよ。いいか?誰も彼も手柄求めてやってるわけじゃねぇ…」
「それでも話が見えて来ないんすよ!大体『ある男』て誰すか⁉︎アニキは心当たりあるんすか⁉︎」
「…いや1人心当たりがいるが、そいつかどうかよく分からん。なぁ秦羅、そいつの名前とか分かるか?」
依頼主の名前を聞く。刃燗は不透明で不安なようだ。
「確か…イシューと言ったな」
「…………誰?」
「知らねぇんじゃねぇっすか!仮に敵かもしれねぇのに惣一さんとこ行かせねぇ、すよ!」
頑固として惣一のところに行かせようとしない様だ。
(……あの男を知らない?アイツはこの世界の住人じゃ無いのか?)
秦羅は黎人たちがイシューを知らないことに驚いた。てっきり知っているものと思っていた。
「だからなぁ…」
黎人が刃燗を説得しようと試みるが、効果がない様子。
「だったら、戦ってみれば?」
「「「……は?」」」
霊夢の言った言葉に、刃燗以外の男性陣から疑問符が出る。
「そんなゴチャゴチャしてて話が進まないんだったら、戦いの中で審議をするのが手っ取り早いでしょ。ほら、拳で語り合う、て奴」
女性なのに内容はかなり乱暴である。
「いやあのな?そんな事しなくてもちゃんと話せば…「イイっすね!それで決着つけやしょうぜ!」おい刃燗!」
「ま、小手調べにちょうどいいか」
「はは…まぁ、できる限りはやりたく無いよね」
「おいテメェら何やる方向で」
「いよっしゃーー!!博麗神社前でたいせんじゃあぁ!」
「話を聞けゴラァァァ!!!」
黎人の言うことに耳を貸す人などいなかった。
◇
「それじゃあ黎人&刃燗チームと翔聖&秦羅チームで対決。ルールは弾幕ごっこと同じ。スペルカードと能力は自由ね」
「てめぇ…関係ねぇからって呑気に監視役かよ」
「しょうがないでしょ。3対2じゃあんまりだわ」
博麗神社で戦闘準備は既に整っている。黎人は不満そうだが…
「いよっしゃぁぁ!!気合い入れていくゼェェェ!!!」
「うわー…怖いな……」
刃燗はかなり気合が入ってる。翔聖はその様子に若干ひいている。
(おい)
「うわ!え…何…?」
秦羅に引っ張られ、若干体制が崩れた。
(あの刃燗という男は、僕がやる)
(え…?何で……?)
(なんとなくだ)
(それだけ!!?)
秦羅の作戦(と言えるかどうか怪しいが…)を聞いた。何故かは分からないが、翔聖は従うことにした。
「それでは、ヨーーイ…ドンで始めるわよ」
「ややこしいことすんな!!」
開始の合図かと思い、若干ずっこけかけた。
「それじゃあ本当に
ヨーーイ…
ドン!!」
霊夢の合図と同時、刃燗は姿を変えた。手に黒いオーラが漂う。
「オラァ!!」
「え…うわ!」
刃燗が翔聖に拳を振りかぶる。
《ガキィィィン!!》
だが、その拳は防がれた。秦羅の刃によって
「やっぱりスピード型だったか。念を入れといて良かった」
「てめぇ…」
「だが…速さで僕に勝てると思うなよ」
秦羅は《神速で移動する程度の能力》、エネルギーを消費する代わりに神速で移動することができる。対して刃燗は《捷疾鬼を憑依する程度の能力》、夜叉の如く高速で移動することができる。
つまり、どちらもスピードが速い。
「上等だぜぇ!!」
「フッ!!」
2人の超速バトルが始まった。
「ったく…あの
「そう読むんじゃないよね?」
その場に残った黎人が悪態をつく。翔聖はそれにツッコミを入れた。
「まぁしかし、こうなった以上は仕方ねぇ。とっとと終わらせる」
そう言うと、黎人は「火」の力を発動。両手に双剣を持つ。
「…悪いけど……負ける気は無いよ」
翔聖は刀を抜き、構える。
刹那
2人の刃がぶつかり合った。
◇
4人の戦闘様子をモニターで見ている男がいた。今回翔聖たちを送った張本人、イシューだ。彼はこの戦いを鋭い目で見つめ……
「どうして戦闘が始まるんだ……普通に協力して欲しかったのに…」
…訂正、涙ぐんで見ていた。まさか協力して欲しい相手と戦うなんて想定してなかっただろう。
《ガチャ》
「失礼。どうですか、調子は」
後ろの扉から部屋に入るものがいた。それは、イシューの兄であるディルに仕える…
「エルサか」
魔術師、エルサだ。ディルの指令を受けて様子を見に来たのだ。そして相変わらずの黒いローブを着ている。
「何やら問題が生じているようですが…大丈夫ですか?」
先ほどイシューが言っていた言葉が聞こえたらしい。イシューは立ち上がった。
「心配ない。彼等以外にも、あの世界に行ってもらった者もいる。『彼女』なら上手くやっていくだろう」
どうやら翔聖たち以外にも送った人物がいるようだ。
「それに…『アイツら』も準備は整っているようだ」
「……!」
エルサが目を見開いた瞬間、イシューは別の扉を開けた。
そこには、異形な雰囲気を司った3人の男たちが待ち構えていた。
無理矢理感はある。反省はしている、だが後悔はしていない(キリッ)
さて、黎人&刃燗vs翔聖&秦羅の決着は如何に!?
最後に出てきた3人は次回紹介します。