東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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前回のあらすじ
イシューが翔聖達を別世界へ送った。
イ「物を壊すなよ⁉︎絶対壊すなよ!?」
翔「それ逆の意味にならない?」


60 何故戦闘が始まるんだ…

数分前…

 

 

 

「そんじゃ、散歩にでも行ってくるか」

 

「突然ね」

 

博麗神社の外で黎人は外に出ようとしていた。

 

「まぁゴチャゴチャ言うな。それに…バイト先も探さねぇといけねぇし」

 

「…あれ?既に決まってたんじゃないの?」

 

黎人は既に霧雨店でバイトしている。なので探す必要は無いはずだが…

 

 

 

「ああ、解雇された」

「…そう、やっぱり役立たずだったのね」

「もうちょい言葉選べ!!」

 

 

どうやら、バイトは解雇されたようだ。

 

「なんか…1人にして欲しいんだと」

「…へぇ……」

 

前に魔理沙との騒動があって以来、店長は色々と考え込むようになった様だ。その原因となるものについて、黎人は心当たりは無い。

 

 

「まぁ、誰でも考え込む日は来るし、そういう時に無茶して触れあおうとする必要は無いだろう。そっとしておくべきだろうな」

「…そうね」

「そういうわけで適当に歩き回るから、暫くしたら直ぐ帰…」

 

話すのに夢中で足元を見ていない。それがいけなかった。

 

 

 

《ツルッ》

 

 

 

「…へ?」

 

突如襲う浮遊感。その正体を黎人が知るのは、自分の体が既に倒れている時だった。

 

 

足を滑らせたことに

 

 

 

 

 

「あべべべべべべ!!?」

「ちょ、黎人!?」

 

超高速で転がり落ちていく。霊夢が彼に追いつこうとするも、距離が縮まらず、最下部まで来てしまった。

 

 

 

 

 

◇現在

博麗神社の前で翔聖と秦羅を連れ、話し合っている。

 

「そうか、別世界から来たのか…珍しいこともあるんだな。因みに俺は斐川 黎人て言うんだ。そんな訳で早速一つ頼みがある。

 

 

 

 

 

取り敢えず殴らせてくれ。痛くしねぇから」

 

 

「嫌だ」

 

 

即効拒絶。当たり前である。

 

「いいから殴らせろ!俺の気がすまねぇんだよ!!」

「どんだけ自分勝手なんだ。転がってきたのを止めただけだろ」

「あんな止め方あるか!少し控えろよ女だろ!?」

「僕は男だ」

 

やいのやいの言い争っている黎人たちの傍らで、翔聖は霊夢と話していた。

 

「別世界ねぇ…同じ私がいるなんて信じられないわ」

「まぁね。僕も、違う霊夢だとはなかなか思えないし…」

 

容姿が全く同じで存在が違うというのは、なかなか受け入れがたいものだろう。

 

「向こうの私はどんな風なの?」

「うーん…あまり良く表現できないけど、一言で言えば優しい…かな」

「そう、羨ましいわね」

 

霊夢がそう言うのは、自分とは全く違うなと思ったからだ。黎人に余り優しく接することは出来ない。互いに文句を言ったり、キツく当たってしまう。無意識にそうしてしまうから、余計に悔しい。

 

「…霊夢」

 

なにやら複雑な顔をしている霊夢を見て、何か声をかけようとする。

 

 

 

 

 

 

「ヘイヘイヘーイ」

 

が、逆に声をかけられた。後ろを振り向くとそこには…

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの姉御に、ナァンのようですかァ!?」

 

 

青い髪の怖い男が立っていた。

 

 

 

 

 

 

「ヒッ!あ、あの…ゴメンなさ…」

 

突然の事で驚き、慌てて謝罪しようとすると…

 

 

《どご!!》

「なにやっとんじゃお前は!!」

 

黎人がそのガンつけた男を殴った。

 

 

 

「いてててて…」

「悪いな、こいつ誰彼構わず喧嘩しようとするからな」

「いや、いいけど…誰?」

「刃燗(ばらん)、見ての通り不良だ」

 

 

刃燗と言われた男は頭を抑えながら立ち上がる。

 

 

「…いきなりすぎっすよ、アニキ。俺ぁ馴れ馴れしく姉御に話しかけてるのが嫌でして」

「その感覚がダメだ、て言ってんだよ。つーかお前、惣一のところはいいのかよ」

 

(…惣一?)

 

「そっちの方は終わりましたよ。そんでここに寄ったぐらいで…」

「…ハァ…」

 

刃燗の話は少し頭を痛める。思わずため息をついた。

 

「なぁ、惣一と言う奴はどこにいるんだ?」

 

秦羅は惣一の居場所を聞いた。

 

「…?惣一に何か用か?」

「いや、ある男からお前と惣一に会っとけと言われてるからな」

「…まぁいい。アイツなら」

「ちょっと待って下さい、アニキ」

 

 

黎人が惣一のいる場所を教えようとした時、刃燗が止めた。一体何事だろうかと全員が刃燗の方を向く。

 

 

「俺は納得できませんよ!何ポッと出でエラそうな口叩いてんだよ!そんな調子で惣一さんの所になんか行かせられねぇ、すよ!!」

 

……

………

…………

 

「いや何言ってんだよ。いいか?誰も彼も手柄求めてやってるわけじゃねぇ…」

「それでも話が見えて来ないんすよ!大体『ある男』て誰すか⁉︎アニキは心当たりあるんすか⁉︎」

「…いや1人心当たりがいるが、そいつかどうかよく分からん。なぁ秦羅、そいつの名前とか分かるか?」

 

 

依頼主の名前を聞く。刃燗は不透明で不安なようだ。

 

「確か…イシューと言ったな」

「…………誰?」

「知らねぇんじゃねぇっすか!仮に敵かもしれねぇのに惣一さんとこ行かせねぇ、すよ!」

 

頑固として惣一のところに行かせようとしない様だ。

 

(……あの男を知らない?アイツはこの世界の住人じゃ無いのか?)

 

秦羅は黎人たちがイシューを知らないことに驚いた。てっきり知っているものと思っていた。

 

「だからなぁ…」

 

黎人が刃燗を説得しようと試みるが、効果がない様子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら、戦ってみれば?」

 

 

 

 

 

 

「「「……は?」」」

 

霊夢の言った言葉に、刃燗以外の男性陣から疑問符が出る。

 

 

 

「そんなゴチャゴチャしてて話が進まないんだったら、戦いの中で審議をするのが手っ取り早いでしょ。ほら、拳で語り合う、て奴」

 

 

 

女性なのに内容はかなり乱暴である。

 

 

 

「いやあのな?そんな事しなくてもちゃんと話せば…「イイっすね!それで決着つけやしょうぜ!」おい刃燗!」

「ま、小手調べにちょうどいいか」

「はは…まぁ、できる限りはやりたく無いよね」

「おいテメェら何やる方向で」

「いよっしゃーー!!博麗神社前でたいせんじゃあぁ!」

「話を聞けゴラァァァ!!!」

 

黎人の言うことに耳を貸す人などいなかった。

 

 

 

 

 

「それじゃあ黎人&刃燗チームと翔聖&秦羅チームで対決。ルールは弾幕ごっこと同じ。スペルカードと能力は自由ね」

「てめぇ…関係ねぇからって呑気に監視役かよ」

「しょうがないでしょ。3対2じゃあんまりだわ」

 

博麗神社で戦闘準備は既に整っている。黎人は不満そうだが…

 

「いよっしゃぁぁ!!気合い入れていくゼェェェ!!!」

「うわー…怖いな……」

 

 

刃燗はかなり気合が入ってる。翔聖はその様子に若干ひいている。

 

(おい)

「うわ!え…何…?」

 

秦羅に引っ張られ、若干体制が崩れた。

 

 

(あの刃燗という男は、僕がやる)

(え…?何で……?)

(なんとなくだ)

(それだけ!!?)

 

 

秦羅の作戦(と言えるかどうか怪しいが…)を聞いた。何故かは分からないが、翔聖は従うことにした。

 

 

「それでは、ヨーーイ…ドンで始めるわよ」

「ややこしいことすんな!!」

 

開始の合図かと思い、若干ずっこけかけた。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ本当に

 

 

ヨーーイ…

 

 

ドン!!」

 

 

霊夢の合図と同時、刃燗は姿を変えた。手に黒いオーラが漂う。

 

 

「オラァ!!」

 

「え…うわ!」

 

 

刃燗が翔聖に拳を振りかぶる。

 

 

 

 

 

《ガキィィィン!!》

 

 

だが、その拳は防がれた。秦羅の刃によって

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりスピード型だったか。念を入れといて良かった」

「てめぇ…」

「だが…速さで僕に勝てると思うなよ」

 

 

秦羅は《神速で移動する程度の能力》、エネルギーを消費する代わりに神速で移動することができる。対して刃燗は《捷疾鬼を憑依する程度の能力》、夜叉の如く高速で移動することができる。

 

つまり、どちらもスピードが速い。

 

 

「上等だぜぇ!!」

「フッ!!」

 

2人の超速バトルが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「ったく…あの刃燗(バカ)と言い霊夢(びんぼうみこ)と言い、自分勝手しやがって…」

「そう読むんじゃないよね?」

 

その場に残った黎人が悪態をつく。翔聖はそれにツッコミを入れた。

 

 

 

 

 

 

 

「まぁしかし、こうなった以上は仕方ねぇ。とっとと終わらせる」

 

 

そう言うと、黎人は「火」の力を発動。両手に双剣を持つ。

 

 

 

 

 

 

 

「…悪いけど……負ける気は無いよ」

 

翔聖は刀を抜き、構える。

 

 

 

 

 

刹那

 

2人の刃がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4人の戦闘様子をモニターで見ている男がいた。今回翔聖たちを送った張本人、イシューだ。彼はこの戦いを鋭い目で見つめ……

 

 

 

 

 

「どうして戦闘が始まるんだ……普通に協力して欲しかったのに…」

 

 

…訂正、涙ぐんで見ていた。まさか協力して欲しい相手と戦うなんて想定してなかっただろう。

 

 

 

 

 

《ガチャ》

 

「失礼。どうですか、調子は」

 

後ろの扉から部屋に入るものがいた。それは、イシューの兄であるディルに仕える…

 

「エルサか」

 

魔術師、エルサだ。ディルの指令を受けて様子を見に来たのだ。そして相変わらずの黒いローブを着ている。

 

 

 

「何やら問題が生じているようですが…大丈夫ですか?」

 

先ほどイシューが言っていた言葉が聞こえたらしい。イシューは立ち上がった。

 

 

「心配ない。彼等以外にも、あの世界に行ってもらった者もいる。『彼女』なら上手くやっていくだろう」

 

どうやら翔聖たち以外にも送った人物がいるようだ。

 

「それに…『アイツら』も準備は整っているようだ」

「……!」

 

 

エルサが目を見開いた瞬間、イシューは別の扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには、異形な雰囲気を司った3人の男たちが待ち構えていた。

 




無理矢理感はある。反省はしている、だが後悔はしていない(キリッ)

さて、黎人&刃燗vs翔聖&秦羅の決着は如何に!?

最後に出てきた3人は次回紹介します。

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