惣一が一人で突っ込んだ。
上司「いいか!勇敢と自分勝手は訳が違うんだぞ!人の話も聞かず突っ走りやがって…」
……説教されてるそうです。
「馬鹿な…それは本当か⁉︎」
「恐らく間違いありません。証拠に、D-21地区での被害は尋常じゃないです」
GARD会議室で、軍長らは大混乱だ。というのも…1つの伝令が原因なのだが…
「信じられん…よもや、裏切り者など…」
◇
GARD本部近くの農場。1人の男が農作業している。そう、惣一だ。
「ふぅ…こんなところですね」
階級は中尉、いよいよ上に立ち指導できる立ち位置だ。更に彼は補給部隊も兼ねている。100人はいるであろう人の食料を作る為かなり多くの量を作らないといけない。それを1人でこなすあたり彼は人間離れしている。
「惣一くん!」
「…?あ、理香さん。それに茨田大佐」
「精が出るな」
入り口から理香と大佐の茨田が来た。
「今回はどんな感じ?」
「そこそこ…ですね。本当に作物は運任せですから」
今年はそんなに満足する域には達していないようだ。GARD本部近くにあるものの工場などは無いからあまり負担をかけては無いし、出来うる限りの手は尽くした。それでも、植物の調子や大地、空気の影響は受けるので文句無しの結果になるとは限らない。
「それよりも…お前には重要な事を言っておかないといけない」
茨田が真剣な顔つきでそう言った。
「近頃怪奇な事が発覚したらしくてな…6年前の殺人及び誘拐事件を覚えてるか?」
「はい、ダイヤを盗んだのがバレて…ですよね」
惣一が独断で救出に向かった事件。あの後上層部からお叱りを受け、以後慎むようにとは言われたが…ピンチとなったら飛び込んでくるだろう。
「あぁ、だが襲撃者はやってないと言いっぱなしなんだ」
「…認めたくない、てことじゃないんですか?」
「まぁ、そう考えたんだけどよ…それを抜きにしてもおかしすぎるんだよ、アレ」
さっきから茨田の言うことに違和感を感じている。
「と、言うと?」
「先ず死因が妙だ。体の至る所から傷がつけられ、内臓も潰れてる。だが…街のど真ん中でそんなこと出来んのか、て話だし、アイツの持ってるものでは不可能だろう。」
検死にかけた結果、死因は不明。書かれてあるのは一つ、『内部から破裂』である。突然体が爆発するということは今までなかったことなので更に分からなくなっているとのこと。
「何より…そいつが盗んだダイヤも無かったしな」
「な…⁉︎ダイヤが!!?」
もともとダイヤを盗んだ事がキッカケの事件。だがそのダイヤが無かったのだ。
「現場にも、あのビルの中にも無かった。あの犯人は持ってなかったし、本人も動揺している。みすみすダイヤを放置する奴には見えないし、更に混乱している。
もしアイツが本当に犯人じゃないとすれば、考えられるのは一つ…」
「第3者の介入…ですか…」
全く別の人物による犯行、それが1番考えられる事だった。現場に居合わせた男を犯人に仕立て、ダイヤを盗む…それが、何より理が通っている。
「あの後も次から次に奇怪な事件が起きてな…これらの足掛かりが掴めてねぇんだ。しかも、上層部の方では不穏な話が出てるらしい。厄介な事に成りかねない」
未解決な事件が次から次に起これば、人々どころか世界そのものに悪影響を及ぼすことになる。それは、絶対避けたいことだ。
「悪りぃ、長話したな。でも、用心しておく必要がある。近いうちにデカイ戦闘が起こるかもしれねぇ…その時に」
「その時は、守るつもりで行きます。」
何の悩みもなく惣一は言った。
「…ハッ、言うと思ったよ。だが気をつけておけよ。誰かの為に犠牲になる事は、人を救うことにならねぇ」
「承知しています」
茨田の言葉に頷き、惣一は部署に帰っていった。
それを見送る2人の後ろに人影がいたことに気づかずに…
◇
「さてどうしますか…」
惣一はこの後何をしようか悩んでいた。
「惣一、ヒマなら付き合え」
そう呼びかけたのは惣一の同期、瑛矢だ。
「瑛矢さん?どうしたんですか?」
「急かすな、取り敢えず場所を変える」
そうして移動したのは休憩所、主に話し合いの場として使われる。
「茨田さんから聞いたか?」
「!えぇ、つい先ほど…もしかして、瑛矢さんも」
「あぁ、聞いた。で、どう思った?」
瑛矢の意図がよく分からず、惣一は先ほどのことをそのまま言うことにした。
「第3者の介入は、間違いないと思います。でないと、あれは説明できな…」
「その先だ」
「…?」
意味が分からず、首を傾げる。
「第3者の介入のことなんざ分かりきってるよ。問題はそれが一体何者なのか、と言うことだ。見当もつかねぇのか?」
つまり、その第3者が誰なのかを聞いていた。惣一は暫く考えてみる。そこで…惣一は1つ、変な事に気づく。
「そういえば…何回も犯行を行い、『見当も』つかないはおかしいですね…あの誘拐事件でも、ダイヤをあの場で盗んだならあの現場の誰かはダイヤが消えたことに気づいても良いはず」
「…そうか……まぁ、その場の全員の意識がお前らの戦闘に向いていたからかもしれねぇが…」
「いえ、それにしてもおかしいです。確かにGARDERの『スケールン』なら消すことは可能ですけど、消えたことに誰も気づかないのは変ですし、その時気づかなかったとしても、暫く経てば直ぐ分かるはず…なのに今更、『ダイヤが見つからなかった』……まさか」
《ブー!ブー!》
『緊急警報!緊急警報!本部に襲撃犯発生!直ちに対処せよ!繰り返す……』
「!!すいません!この話はまた…」
緊急警報がなり、惣一は荷物を持って本部に移動する。瑛矢はその場に残された。
「やっぱり……そうなるか」
◇
《ガララ!!》
本部の扉を開けて惣一が見たもの、それは…
「な…⁉︎あなたは……」
大量の死体と白い布を身に纏う人物だった。
惣一は一体何者で、どうやって侵入したのか聞こうとしたが…『それ』は何も答えず惣一に襲いかかった。
◇
「ここまで崩壊するとは…GARDも呆気ないわね。ちょっと混乱したくらいですぐこうなるんだから」
GARD本部から少し離れたところから、混乱の様子を面白そうに眺めている女性…リーフがいた。だが、そこにいるのは彼女だけでは無い。
「仕方無い。寧ろこうなって当然ですよ。立派な組織であればあるほど、内部からの崩壊は大ダメージを受けるんですよ。内側に敵がいると思わなかった。そんな油断が牙を剥く」
白色の短髪の男。彼は嘲笑うかのように説明している。彼の手には一枚の紙があった。
暫くすると男はおもむろに立ち上がった。
「…さて、そろそろかな」
◇
「ハァッ…ハァッ……くそ!」
惣一は撃たれた肩を抑えて下がっている。『それ』が取り出したのは、ピストルだった。
(あのピストル…間違いない。GARDのものだ。だが、なんでこの人が……)
惣一がそんなことを考えている間にも、『それ』は次の動きに入ろうとしていた。銃を納め、懐からナイフを取り出して突っ込む。
(!不味い…)
そう認識してから、惣一は端末を取り出しボタンを押す。
「GARDER no-06『オクタヘドロンシールド』解除!」
正八面体のシールドを展開して防御。続けて小さな欠片を取り出して投げた。
「GARDER no-05『バクラン』解除!」
シールドを戻して端末の別のボタンを押す。すると、欠片が破裂して衝撃波を出した。
「!!クゥ…」
一瞬だけ怯み、惣一はハンドガンを取り出した。
「GARDER no-04『レーザブースト』解除!」
そのまま引き金を引く。すると、弾丸では無く光の球が、『それ』を貫いた。
その拍子に『それ』が被っていた布が飛んでいき、その下に隠れていた顔が見えた。
「な……!?そんな、なんで」
その顔を見て、惣一は驚愕していた。その顔は……
彼の同期、平田 理香だった。
「理香さん!何であなたが!!」
惣一は理香の体を掴み揺さぶるが、何も反応がない。強力な技を急所に食らったのだから、当然だ。そして、惣一は先ほどのことを思い出していた。
ーーいえ、それにしてもおかしいです。確かにGARDERの『スケールン』なら消すことは可能ですけど、消えたことに誰も気づかないのは変ですし、その時気づかなかったとしても、暫く経てば直ぐ分かるはず…なのに今更、『ダイヤが見つからなかった』……まさか
ーー内部に裏切り者がいて、その人が情報を操作した?
「まさか……理香さんが…?」
裏切り者がいるのではと惣一は考えていた。そして、それが理香だったのか…と考えていた。
だが、ジックリと考えている余裕は無かった。
「大人しくしろぉ!!」
突如、彼の周りをGARDの隊員が取り囲む。その事に気づくのが遅れ、惣一は逃げ場を失った。
「な…⁉︎どういうことですか…?」
「稲田 惣一。貴様がこのGARDを裏切ったと報告があった。そしてこの現状、最早疑う余地なしと見た!」
「待って下さい!私はそんな…!」
「口答えするな!大人しく武器を捨て投降しろ!現状が分からんではあるまい!!」
必死に説得しようとするが、聞く耳を持たない。
(ここで…終わる…?何一つ…救えないまま)
「嫌です」
「なに…?」
「私はまだ、ここで歩みを止める訳には行かない。まだ、使命が残っているのだから!」
惣一は再び端末を握る。
「バカが…撃て!!」
軍長の命令で一斉に射撃が起こる。全方向からの一斉射撃、避けるのはまず無理だ。
「オクタヘドロンシールド解除!」
惣一はシールドを展開して銃弾を防ぐ。だが、それには欠点がある。展開している間は移動することは不可。そして、耐久値が存在するのでいずれは破壊される。
惣一は一か八か、賭けをすることにした。
何らかの変化を目の当たりにした時、人はそれを予期しても衝撃が走る。その隙を狙う事にした。
シールドを破壊され、惣一は続けて展開する。
「GARDER no-02『フライアーマー』解除!!」
空を飛ぶ防具を展開。惣一は上空に飛び上がって逃げる。一瞬出遅れたが、隊員は直ぐに我に帰った。
「な…逃がすな!!追え!」
◇
「そんな…」
先ほど理香と会った場所。そこには1人の知り合いが倒れている…そう、茨田だ。
「何で…どうして、こんなことに…」
茨田や理香を失ったことで消沈する。それが、隙だった。
《ドギュン!!》
「がっ…は……!?」
側方から狙撃され、吹き飛ぶ。辛うじて急所は避けたが、それでもだんだんと意識が遠のいていき…
やがて、手放した。
「ハァッハァッ…やった…惣一を、倒した!」
遠く離れた場所で、惣一が倒れたところを見ていた男がいた。影虎 瑛矢だ。
「これで…俺は……漸く英雄に……」
彼はその念願を果たしたかの様な顔をしていた。
だから、後ろの存在に気づかなかった。
「馬鹿なことを…恥を知りなさい」
『それ』は、光を用いて瑛矢を気絶させた。一瞬のことで何が起こったか、瑛矢には気づくことすらなかった。
やがて『それ』は、倒れている惣一の近くまで歩み寄った。
「ひどい話ね。あなたの純粋な正義は…ここでは必要とされなかった。いや、寧ろ阻害になっていた。皮肉以外の何者でも無いわね。
救った人間が自分を裏切った時、その絶望は計り知れない。愚かな人は、そうやって想いを踏みにじる。
もしそうだったとしても、貴方は人を守ることを続けるのかしら?」
気絶している人間が、反応するわけはない。だが、無意識か意図的か、その手は強く握りしめていた。
そして、聞こえるはずのない声が聞こえた。
「まだ…救えてない。私はまだ、戦いたい。守りたい…」
それを聞いて、『それ』は笑った。
「本当に馬鹿正直者ね…守る義理があるのかしら。
本当に守りたいなら、あなたに居場所をあげるわ」
すると、『それ』と惣一は、黒色の空間に包まれた。
「ようこそ、幻想郷へ。此処は、全てを受け入れる。それはとても、残酷なことですわ」
てな訳で惣一は幻想郷入りしました〜
ちょっと無理矢理感半端なかったですけど…
さてさて少し番外編は暫くお休みして、次回はいよいよ来翔さんとのコラボです。楽しみにしててください!!