東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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いよっしゃアアア
割と早い段階で投稿できたァァァ!!!
てな訳で黎人vs神奈子です
果たして勝負の行方は〜?
ジャカジャン
黎「お宝鑑定かよ」


46 覚悟

前回のあらすじ

神奈子が黎人を挑発する

神「思い上がるなよ、雑種」

黎「それ神じゃなくて王のセリフだろ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さてと…まずはルール説明だ」

守谷神社の参道で、神奈子がルールを説明し始める

黎人は神奈子に向かい合うように立っている

 

神奈子が鈴を取り出した

「それは?」

「見ての通りさ。鈴を紐で結んである」

そう言うと神奈子は腰に鈴をつけた

 

「ルールは至ってシンプルさ。この鈴をとったらお前の勝ち。引きちぎろうが切り取ろうが構わない。1時間で取れなかったらお前の負けだ」

どこかのマンガにありげなルールだが、黎人に異論は無かった

 

「能力は自由。スペルカードも使っていい。鈴さえ取れれば修行を認めてやるさ」

「随分大きなハンデだな。いいのか?」

 

黎人の指摘は最もだ

鈴を取ったら勝ちということは、攻撃をそこに当てるだけで終わる可能性もある

しかも、激しい動きをすれば自然に落ちることだって考えられる

そこにスペルカード及び能力が合わされば、黎人の方が断然有利だ

 

だが、ルール変更は無かった

「あぁ、勿論さ。このハンデでも、お前が私に勝つことは無い」

「…そうかよ」

話はついたようだ

 

「それでは、私の合図で始めます」

惣一が2人の真ん中に立つ

右手にはストップウォッチが握られており、左手は高く上に伸ばされている

 

黎人は半歩前に出て構える

(腰にある鈴を取り上げるには、体術をフルに使って一気にやるのが得策。てことは、『火』が有効か)

黎人は最初、「火」で行くようだ

 

 

 

「始め!!」

惣一の左手が下された

 

 

 

すると、黎人は一気に神奈子の懐まで来た

そして、刀を思いっきり振りかぶる

(一撃で決める!!)

刀が鈴の紐に辿り着く寸前になった

 

 

 

ーーガシッ

 

 

だが、その刀を持つ手を掴まれ、止められてしまう

「狙いがバレバレだよ」

神奈子は腰を軸にして後ろに投げ飛ばす

地面に一回バウンドし、黎人は体制を立て直す

 

「単純だねぇ。バカの一つ覚えか?」

「チッ…ウルセェ!!」

スペル発動

「火符『熱戦ロッド』!!」

2つの炎の槍が神奈子の元へ伸びていく

「甘いね」

すると神奈子は、巨大な木製の柱である御柱を炎の槍にぶつけるように飛ばした

ぶつかった槍は消滅し、御柱はその勢いのまま飛んでいく

 

「そうなると思ったぜ」

黎人は御柱の上までジャンプ

着地と同時に御柱に沿って走り出す

端に辿り着き一気に飛びかかる

行く先は勿論、神奈子だ

「どうら!!」

飛んだ勢いのまま蹴りをかます

その足は神奈子の懐に当たるように思えた

 

 

 

ーーヒョイ

「…え」

神奈子は横にずれた

「いや、襲いかかってくると分かったら普通避けるだろ」

そしてそのまま

ーードゴォォォン!!

大木に直撃

大木は何ともなく、黎人の方がダメージを受けた

 

「がアアァァ…足が…」

(…コイツ、唯のバカだ)

足が震えている

まぁ、硬いものを蹴ったらそうなるが

 

「どうした?そんなものか」

「ウルセェな」

足の痛みが消え、黎人も構え直す

 

さて、先ほどから上手く攻撃が当てられない

というより距離を上手く詰められない

近づきさえすれば、あとは持久戦に持ち込めるわけだが…

 

(やったことは無いが、試してみるか)

秘策が思いついたようだ

双剣を握る

そしてスペルを発動する

「火符『熱戦ロッド・曲射』」

いつもなら真っ直ぐ標的に伸ばすのだが、

今度はカーブをかけて炎の槍が敵の元に伸びる

 

「へぇ…」

直線上を伸びるならともかく

曲がる弾幕は御柱では相殺できない

神奈子は後ろに下がって弾幕を避けた

標的を捕らえられなかった槍は地面に刺さり、消滅する

 

「読み通りだ!」

すると、それを読んでいた黎人が神奈子に向かって上から向かう

「どうりゃ!!」

刀を振り下ろす

 

「おっと…中々だね」

更にバックジャンプ

黎人との距離を離そうと試みる

 

「ここまで詰めれば充分だ!」

だが、先ほどの距離よりは近くなり、そのリーチなら「火」で攻撃できると踏む

顔に向かって刀を振る

 

「甘いね!」

その手は神奈子が掴んで止める

 

「さっきでもう学んださ」

黎人は上にジャンプして手を軸に回転

その勢いで神奈子の手から離れた

神奈子の後ろに着地し、そのまま攻撃を仕掛ける

後方なら防ぐ手は無い

黎人が決まったと思うのは当然で

 

「この程度かい?」

あまりにも浅はかだ

神奈子はしゃがんで黎人の攻撃を回避した

「な!!?」

「動揺するんじゃないよ」

一瞬の動揺で生じた隙を神奈子は見逃さなかった

回し蹴りを食らわして黎人を飛ばす

 

 

「グ…くそ」(何故だ、どうして当たらない)

秘策をうっても次から次に攻略されている

鈴を取る、たったそれだけなのに

どうしてそれすらも、いやそれ以前に攻撃から当たらない

訳が分からず困惑する

 

「そろそろこっちも仕掛けていくよ。御柱『メテオリックオンバシラ』」

神奈子がスペルを発動した

そして、無数の御柱が発射される

必死に避ける黎人

攻撃の手が浮かばず、立ち往生だ

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「中々攻撃が決まりませんね」

黎人たちの戦いを見て早苗が呟く

神奈子を敬っている彼女だが、あそこまで差がつくのは逆に不自然だ

一体何故そうなるのか、よく分からない

 

「ハハーン、そういうことか」

だが諏訪子は分かったようだ

「え?何がですか?」

「神奈子が彼の修行に承諾しない理由だよ。何となく見えたからさ」

早苗が何かと聞くと諏訪子が答える

「それ、て…どういう」

「まず攻撃が当たらないところからなんだけど…惣一は分かってるよね」

早苗が惣一を向くと、彼は頷いた

「どういうことですか?惣一さん」

早苗は惣一に聞いた

 

 

「黎人さんの動きには無駄が多すぎるんです。大きく振りかぶったり、踏み込みすぎたり。動きが単調なのも合わさって、先読みしやすいんですよ」

改めて見ると確かにそうだ

黎人が攻撃に出るときは明らかに振り幅が大きい

あれでは、何を狙ってるかはあからさまになる

 

「成る程…戦いとしては余りにも未熟、なんですね」

早苗の言葉に顔を顰める惣一

「いえ、確かに経験不足が故に無駄な動きが多い、というのもよくあります。まだ武器の使い方に慣れてない、ていうのが原因ですね。

 

ですが、黎人さんの場合はどちらかというと…」

惣一は早苗に自分の推測を言った

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ハァッハァッハァッ…」

時間にして50分経過した

これまで色々と試した

「木」を抜かした五行の力も全て使ったし

スペルも出来る限り使った

それなのに、一向に敵わない

 

「何故攻撃が当たらないとか思ってるんだろうな」

神奈子が語り始めた

「技術とかじゃないんだよ。それ以前のことがなってないんだ」

その意味が分からず黎人はただ聞いていた

「それ以前…?」

「あぁ、要するに

 

 

 

 

 

感情的になりすぎなんだよ」

 

 

ズバッと神奈子が言った

「怒りに身を任せすぎてるんだ、お前は。そうすれば動きは大振りになるし攻撃もワンパターンになる。だから防がれるんだ」

黎人は鵞羅と戦っている時から怒りという感情が抑えきれていなかった

両親を奪った相手に苛立ちが募っていく

神奈子はそれを見抜き、あえて挑発した

今の黎人は、些細な感情の揺れで動きがぎこちなくなってしまう

 

「気合とか技術じゃない。今のお前は、意地でも勝つという覚悟が無いんだ。そんな奴が誰かに勝てる訳が無い」

 

 

 

 

 

神奈子は何かを意図して言ったわけではない

あくまで黎人の弱さを指摘する為に言った

だが

 

その単語は、黎人にある言葉を思い出させた

 

 

 

 

 

 

 

『自分一人になっても、自分や他の人の為に生きる覚悟を持て。きっと辛く、苦しい事だが、お前にはそれを知って欲しい』

 

 

 

 

 

 

(あぁ、そうかよ)

 

黎人は立ち上がった

それは降伏ではなく、継続の意味を含む

 

「…まだやるのかい?」

「参った、て言った覚えは無いな」

黎人は「火」となり構える

「時間はあと5分だ。どうする?」

話している間に制限時間が迫ってきている

恐らく次が最後の挑戦だ

「よーく分かったぜ。実力では敵わない。だが、試合は諦めない」

双剣を握る

 

すると、黎人の周りに多くの炎の槍が現れた

(!!まさか…)

「いくぜ、火符『熱線ロッド・乱射』!!」

そして、その槍が一気に神奈子に襲いかかる

「ふん!!」

無数の御柱で炎の槍を相殺する

相殺された後の炎が霧散され、辺りが真っ赤に染まる

 

(この後、恐らく)

神奈子が考えているところの後ろに黎人が現れる

腰に刀が届きそうなところで

「やっぱりそう来たね」

体を回転してその刃を受け止める

神奈子の前スレスレで止められた

「どうした?さっきと同じじゃないか…がっかりするね」

「そうか」

 

ここで神奈子は異変に気付く

刀がまだ光っている

先ほどのスペル発動時と同じ様に

「…まさか」

「悪いな、まだスペルは終わってないんだ」

はたまた周りに炎の槍が現れる

しかも今度は神奈子を囲うように

 

「な!!?」

神奈子は焦った

御柱を出そうにもその為に霊力を使えば

今手を掴んでいる黎人に押し負ける

故に防ぐ術は無い

いや、それより…

 

「お前…自分が何をしているのか分かっているのか!?」

神奈子を囲うように、ということはその近くにいる黎人自身にも被害が及ぶ

この行為は、ほぼ自害に等しい

「あぁ、分かってるぜ。こうでもしねぇと、勝てねぇんだからな」

だが、黎人は迷わなかった

自らの望みの為に、自らを犠牲を出すことに躊躇いは無い

やがてその槍が神奈子達に襲いかかった

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「な…!?黎人さん!!神奈子さん!!」

その試合の様子を見て惣一たちは焦った

試合以前の問題だ

あれで傷を被れば修行なんて出来ない

急いで黎人たちのもとに向かった

 

 

そして、やがて霧が晴れるとそこには…

「全く…やってくれるよ。最初からこれを狙ってたのかい?」

そこには無傷の神奈子と黎人がいた

だが、既に勝負はついたようだ

黎人の手には鈴が握られていた

 

「まさか…あんたが弾幕を打たなくても、攻撃を受けさせたところで抜き取るつもりだったさ」

神奈子は弾幕を使い相殺することにした

自分一人ならまだしも、黎人という人間までを怪我させて鈴を守る意味なんて無い

それは神ゆえの使命だった

その隙を狙って黎人が鈴を取り

黎人の勝利で決着はついた

 

 

「こんな手を使うなんて…卑怯じゃないか」

「だろうな。だが、そんなのに構っている場合じゃないんだ」

 

ーーピピピ、ピピピ、ピピピ

 

惣一のタイマーがなった

そして、今1時間経ったということは

黎人の勝利が決まった

 

 

「セコイだとか卑怯だとか言われようが、俺は立ち止まるわけにはいかねぇんだよ」

黎人の言葉に神奈子は笑った

勝てない相手に試合で勝つ方を選んだ愚策に対する呆れと、目的を失っていない意志の強さに対する賞賛が混ざっているようだ

「いいだろう、約束は約束だ。修行を認めてやる」

たった今、修行の赦しがでた

「…あぁ、ありがとな」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

修行が決まり、その場にいた人達は守矢神社に帰っていく

その途中、黎人は足を止め溜め息をついた

考えていたのは、試合中に思い出した人のこと

 

 

 

 

「嫌な奴を思い出したじゃねぇか…クソッ」

 

やがて歩みを再開した




神奈子様つえーー…
てな訳で無理やり決着をつけさせました
この決着に納得のいかない方
本当に申し訳ない
黎「…こいつ謝る気ねぇな」

てな訳で次回から修行に入ります
…え?途中出てきた回想は誰か、て?
それは伏せときます(いずれ登場予定)

それでは次回もゆっくり待っててね

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