東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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試験がもう直ぐあるな〜
黎「そっちは大丈夫なんだろうな」
大丈夫だ問題しかない
黎「ダメじゃねぇか!!」

それではどうぞ〜


44 戦場とは

前回のあらすじ

エルサ登場

黎「すげぇタイミングバッチリだったな」

エ「当然だろう、狙ってたからな」

黎「マジで!?」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「が…ウゥ」

エルサの後ろでは黎人が苦しそうにしている

内臓も潰れ、腹もきれている

何ともなってないほうがおかしいだろう

寧ろ死んでないだけ奇跡というべきか

 

「ハァッあんた…一体」

「大人しくしていろ」

黎人が何か尋ねようとしたのをエルサは遮る

「満身創痍のお前が、今動けば次は確実に死ぬ。大人しくしていろ」

「だが…」

「口答えするな」

 

エルサは黎人に手を向ける

すると黎人の周りに透明な結界が現れた

 

「これは?」

「見ての通りの結界だ。それは外から破ることはできない。内側からは出来なくはないが、今のお前には無理だ」

エルサはそのまま前を向く

「少し待っていろ。すぐ終わる」

そのまま歩き出した

 

 

 

 

 

(くそ…)

 

黎人は地面を叩いた

今度こそ…仇がうてると踏んでたのに

結局、何もできずに終わってしまった

自分の無力さを、不甲斐なさを

ただただ恨むしか出来なかった

 

 

 

 

 

 

「待たせたな」

エルサは鵞羅に向けて言った

「まさか…あん時の奴が、また俺の前に来るとはな」

鵞羅は昔のことを思い出していた

「思えばあん時からだ。テメェらが俺の野望を打ち砕く、てのは…」

「御託はいい。僕はお前を倒して『生き返らせた』奴について調べさせてもらうからな」

エルサは鵞羅に向けて言う

「そうか…じゃあ俺も一つ聞かせてもらおう。

 

 

俺を地面に叩き落とした奴は何処にいる!!」

 

 

鵞羅は声を荒げた

過去からずっと、自分の野望を打ち砕いた人物を憎んでいた

そして今の今まで、それを倒すために力を蓄えて来た

「知ってどうする」

「決まっているだろう。ぶっ殺すためだ!あの野郎は、俺の手で殺す…いや、それだけじゃ済まねぇ。存分に痛めつけ、俺の前に立ったことを後悔させてやる」

エルサはそのまま鵞羅を一瞥した

そして溜息を一つ

 

 

 

 

 

 

「思い上がるな」

 

 

 

 

 

 

放った言葉は

重く、強く、冷めたものだった

「お前がディル様を…?傑作だな。永劫それは叶わないさ。少なくとも、僕に勝てないお前では無理だ」

冷ややかに言い放つ

目の前のこの男では、ディルには叶わない

それは、エルサの目には明白だった

「無理だと…?じゃあ試してみろよ!!」

鵞羅はドスをもって駆ける

そのドスは真っ直ぐエルサに振り下ろされる

 

 

ーーギィィ…ン!

 

 

だが防がれた

エルサの手には20センチメートルの短剣

「それは…ダガーか」

通称ダガーをもっていた

「面白いだろ?似たタイプの武器を持ってる相手との戦いは」

エルサは挑発するように呟く

「は!!戦闘が面白いだと?そんなものはねぇよ!あるのは全てを奪う野望だけだ」

 

 

 

鵞羅は次から次にドスを振る

ダガーで防がれ、躱され、時には受け流される

「やれやれ、話の通じん奴だ」

突如、エルサはダガーを持っていない左手に力を込めた

手は握りしめず、指だけ曲げて何かを握るようになる

 

「ふっ!!」

そしてその手を鵞羅の右胸に突き出した

「ぐあ!!?」

鵞羅はバランスが崩れ、少し後ずさる

だが、その隙を逃す相手ではなかった

 

 

 

「まだだ」

ダガーを収め、右手も同じように構える

 

 

「狂拳『百八の掌狼』」

 

 

すると、妙な事が起きた

エルサの手が、光によって狼の顔に変わっていく

その手を突き出せば、まるで狼が獲物を襲うように飛びかかる

それが、一遍に何十匹かと襲いかかった

その数百八

 

 

「くそ!」

先ほどのバリアーを出す

だが威力はその上を行き

バリアーは霧散された

「ぐ……ヌアアア!!!」

鵞羅はその強襲を受け続けた

 

 

 

 

「ガハッ…」

鵞羅は跪く

あまりにも大きなダメージだったようだ

 

「勝負あったな」

エルサが鵞羅に向けて一言言い放つ

一歩、更に一歩と近づいていく

 

 

 

 

「勝負ありだと…?そうやって油断してると足元すくわれるぜ!!」

鵞羅は左手を突き出す

斬の風が吹く

そして、エルサの体を切り裂いた

「な……?」

 

「ヒャハハハ!如何に優れた拳闘士でも不意打ちは弱いようだな!!」

 

鵞羅が嘲笑う

エルサの上半身が地面に着く

それはそのまま動かなかった

 

「さて…残り者の始末といくか」

鵞羅は霊夢達に向かって歩き出した

 

 

 

 

 

 

 

突如鵞羅の足元に魔法陣が描かれた

「な…?」

突如のことで鵞羅は戸惑った

いつの間に仕込まれたのか

それ以前に誰が仕込んだのか

だがそれは直ぐに回答できるものだった

 

 

 

 

「拳闘士…?違うな。僕は術者だ」

術者…

魔法、忍術、占いを行う者

だからこそ幻や予知などは当然できる

「僕の能力は『幻を見せる程度の能力』。お前は最初から虚の世界に騙されてたんだ」

 

鵞羅は一度だけ、似たような事があった

約七年前、ディルを切り裂いたように見えた時

あの時はディルの能力かと思ったが…

「まさか…あれは、テメェの方だったのか」

その後すぐ、光が現れ

鵞羅はその場から消え去った

 

 

 

 

 

「た…倒した…の?」

霊夢の問いかけに

「違うな」

エルサは答えた

「あれは封印だ。君も使っているから分かるだろう。一ヶ月間『闇の間』に閉じ込めるだけだ」

黎人を囲っていた結界を解く

「な…んで」

黎人の問いかけに応じず

黎人に手を差し出す

 

 

 

すると黎人のいた場所に魔法陣が張られる

そこから光が黎人にまとわり付き

黎人の傷を完治した

 

「な…これは」

「その程度の傷治すなど造作もない事だ。お前よりも場数は踏んでいる」

エルサが立ち上がった

 

「さて…なぜあいつを殺さずにいたかだが…時間稼ぎのためだ」

「時間稼ぎ…?」

「そうだ」

エルサは手を組み始めた

これからどうなるのか、どうするべきなのか

全てを彼に語るのがエルサの役目でもあった

「はっきり言おう。お前は…弱い」

「な…」

エルサの言葉に反論したのは黎人

 

ではなく刃燗だった

 

「どういうことだ!アニキが弱いだと!!あの人は何回もこの世界を救った!!弱くなんか全ッ然ないぞ!アニキを馬鹿にすっとはっ倒すぞ!!」

刃燗がエルサの前に立ち睨みつける

霊夢も漸く立ち上がりエルサの方を見る

「私からしても可笑しいんじゃない?確かにあんたからすればそうかもしれないけど、黎人は私達より遥かに強いわよ。少し奢りが過ぎるんじゃないかしら?」

霊夢も睨んでいる

黎人が弱い、ということは絶対あり得ない

彼女達はそう思っているのだから

 

 

 

 

 

「本人はそう思ってはないようだが?」

その言葉に霊夢と刃燗は黎人の方を見る

黎人は視線を下に向けていた

鵞羅の前で何一つできなかった

それどころか、霊夢達を危険な目に遭わせた

彼は、エルサの言ったことが間違ってないと感じていた

 

 

「黎人…」

「充分分かってるだろう

お前は圧倒的に場数を踏んでない

経験すら無い

それ故に戦闘の振る舞いを知らない

それで戦ってどうなる?

 

稲田 惣一、 葉原 魏音、 そして薗田 鵞羅

数々の熟練者と戦って己の無力を感じたはずだ

不意を突くことはあっても勝てはしない

偶々助けがあり救われただけだ

これからもそうするつもりか?」

 

黎人は歯をくいしばる

惣一の時は早苗に戦いを止めてもらった

魏音の時はこいしに殺させるのを防いでもらった

鵞羅の時はエルサに救われている

何一つ、勝てた戦いはない

 

「気合があればこなせると思っているのか?

理想を並べれば奇跡が起こると思っているのか?

綺麗事に従えば勝つとでも思っているのか?

そんなもので戦いは成り立たない

戦場では感情も理も無に帰す」

 

エルサは黎人に近づく

これは呑み込まなければならないこと

知っておかなければならないこと

そうでなければ

 

 

 

 

 

 

 

 

「軽はずみな行動は死を招くぞ」

 

 

 

 

 

 

死を招く

戦場は生と死の境目

ここから先、その事実に目を向けない限り

黎人には幻想郷は守れない

 

 

 

 

 

 

 

「先ほども言ったが、奴が目覚めるまで一ヶ月だ。その間お前は力を蓄えろ。次は負けは許さない。もし、ヘコヘコと負けるようならば…力不足としてお前には此処を下りてもらう」

 

 

エルサは術をかけた

立っていた場所に魔法陣が展開される

次の瞬間、その場から消え去っていた

 

 

 

 

 

 

 

(俺は…)

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「もういいのね?」

「充分だ。悪いな、付き合わせて」

博麗神社の参道で黎人は準備をしていた

強くなるために

力をつけるために

「アニキ…お達者で」

「あぁ、お前らもな」

刃燗に手を振る

一ヶ月の間、留守にするわけだから

「黎人…」

霊夢は黎人の近くに歩き出した

「本当に、これでいい?もう引き返せないわよ」

黎人は戦う道を選んだ

その道はほぼ修羅の道

生き抜くことは容易では無い

「心配するな」

黎人は霊夢の頭の上に手を置く

「あ…」

「確かに過酷な道だが、絶対渡りきる。俺は、誰一人失う道は選びたくない。だから、また此処に帰ってくる。それまで待っていてくれ」

黎人は霊夢の頭を撫で、誓うように言った

必ず帰ってくると

絶対守る、とーーー

 

 

「そう、ね…わかったわ。気をつけなさいよ。絶対…帰って来なさい」

「当たり前だ」

 

黎人は博麗神社を後にする

霊夢と刃燗はその後ろ姿をじっと見守っていた

 

(黎人…今は側にはいられないけど…でも、また全てが終わったら、また一緒に暮らしましょう)

 

霊夢はその時自分に違和感を感じていた

なぜこうも黎人を意識するのか

それはずっと前から感じていた

だが…

 

 

 

(そうか…私は、黎人のことが……)

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

目指す先はとある山

そこには、一般の人間は立ち寄れない

だが、強さを求めるにはここしかない

「絶対…乗り越えてやる」

そう言って彼、斐川黎人は

妖怪の山に足を進めた




漸く妖怪の山まで行ったよ…
黎「ここは展開が遅いからな」
投稿ペースも遅いしね
黎「バカ野郎!!」

力をつける為に妖怪の山に足を運ぶ黎人
彼の前に立ちはだかるものとは…?
そしていずれ彼は鵞羅を倒せるのか?

次回にご期待下さい

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