東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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黎「なんでこんなに遅れたんだよ」
モン○ンXが楽しすぎて遅れました
黎「ドアホォォォ!!!」

はい、ゆっくり狼牙です
今回現在までで一番長め
そして文才の無い自分が書く説教シーンがあります

どうも私には文才の神様は振り向いてくれないみたいです
それでもよろしいという方は
ゆっくりしていってね


40 絶望すること勿れ

前回のあらすじ

黎人と惣一の共同戦線

黎「ところでその『スキマポケット』てなんだ」

惣「紫さんが某猫ロボットを真似たとか…」

黎「なにやってんだよ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「何を考えているんだ、馬鹿かお前は!」

「ウルセェ!私は魔法使いになりたいんだ!」

「ふざけるな、反抗しかしないバカ娘が」

「止めろ!私はお前の子供じゃない!」

 

人里に、二人の口喧嘩が響き渡る。本当に飽き飽きだった。私は、魔法使いになりたかった。魅魔様の様に、綺麗で、カッコよくて、沢山の人を魅了する、魔法使いに。

 

「馬鹿馬鹿しい夢を見るのも大概にしろ!あんな所…」

「言うな!!!」

 

 

怒鳴り散らしたことでアイツは黙った。

 

「そんな魔法使いが嫌だったら、もう私と関わるのを止めろ。私はこれから、普通の魔法使い、霧雨魔理沙だ。私はもう、お前とは他人だ」

 

そう言って、箒だけ持って人里に出た。この時の私はどうしようも無く甘ったれていて、どうしようもなく我儘で、どうしようもないクソガキだった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「う……ん……?」

 

魔理沙は目を覚ました。少しボーッとしている。

 

 

「気づきましたか」

 

 

横から声をかけられる。見ると惣一が自分の前にすわっている。その後ろには黎人もいた。どうやら長時間寝ていたようだ。薬の効果が切れ、あの激痛はひいたようである。そのことに気づき、魔理沙は思い出した。

 

「そうだ!あいつらは…?」

 

先ほどまで戦っていた驥獣たちの存在を

 

「大丈夫だ。もう終わったよ」

 

黎人は安心させるように言った。だが、魔理沙は寧ろ悲しそうに俯いた。

 

「そうか…結局何もできなかったな」

 

魔理沙はあまり活躍できなかったことについてがっかりしているようだ。

 

「…あのな、魔理…」

「全くだ」

 

黎人が何か言いかけたところを遮られた。霧雨店の店長に

 

「あんだけ大口叩いておいて、随分ボコボコにされたじゃないか。もしこの場に黎人とそこの人がいなかったら…死んでただろうな」

「……‼︎」

 

死んでた。その言葉が魔理沙の感情に刺さる。魔法使いになろうと思って外に出て、師匠に鍛えて貰い、様々な異変解決で磨き上げてきた自分の力が、あの驥獣には全く通用しなかった。

せめて黎人の助けとなるよう援護するつもりが、逆に足を引っ張ってしまう結果になり、何の成果も上げることが出来なかった。その事実が、魔理沙を更に傷つける。

 

 

 

 

「所詮こんな程度なんだよ。お前はどこまでいっても後先考えないクソガキだ。そんな奴がデカいつらたてて俺を守るなんて胸糞悪い」

「お前だって余計な手を出してたじゃねぇか!!」

 

魔理沙の声が響き渡る。

 

「余計な手だと…?馬鹿か。俺は店の前で暴れまわっているのを止めただけだ。赤の他人の為に命張ろうなんて思わねぇよ」

「……!」

 

魔理沙は父親と絶縁状態だった。だから赤の他人ということになるだろう。

 

「もうお前と俺は関係のない赤の他人だ。そんなのに割り切りつかねぇお前こそ…」

「もう良いよ!!!」

 

魔理沙はその場から離れようとした。

 

「折角助けようとしたのに余計なお世話みたいな事言いやがって…そんなのこっちが願い下げだ!」

「おい!」

 

箒が壊れた為歩いて帰る。その後ろを黎人が追いかけた。

 

 

 

 

その場には店長と惣一のみが残った。

 

「霧雨さn…」

「……ロクでもねぇ父親だと思うだろ」

 

惣一が呼びかけたところで店長が口を開けた。

 

「あいつには、俺の稼業を継がせるつもりだったんだ。そうすれば不自由なく暮らせるだろう、と思ってな。だが、アイツはそれを望まなかったんだ」

 

店長は店の前で散らかっているものを片付ける。

 

「変だよな…子供の夢を否定するなんてな。でも、魔法使いという道は考えたくはなかった」

 

魔法の森

そこには幻覚作用を持つ瘴気が纏う。態勢の無いものが入れば気分が悪くなりその場にとどまるものなど殆どいない。そのようなところで魔法使いに没頭すれば。種族が「魔女」となり「人間」ではなくなる。店長はこれを恐れていた。

 

 

「すまなかったな。気分を悪くして」

 

そして、店長は店の中に入ろうとした。

 

 

 

 

「物凄く、失礼なことですが」

 

そこに惣一が呼びかけた。

 

「魔理沙さんはものすごく前向きな人だと聞いています。明るく、近くにいる人を笑顔にする。それは、私にはとても出来ません。その様な娘を持った事は、誇っていいと思います」

「……何故だ。俺は絶縁されたんだぞ」

「それでもです」

 

足が止まった店長に向かって目を向ける。

 

「魔理沙さんはあなたを助けようとしました。それはきっと、魔理沙さんの中で父親であるあなたの存在が少なくとも大きな意味を持っている、ということだと思います。例えどんな関係になろうとも、親子は親子です。決して断ち切ることの出来ない、『呪い』に近いかもしれません。絶縁しても、父親として娘を愛するということは…そんなに難しいことなんでしょうか」

 

止まっていた店長の手が動き出した。

 

「難しいだろ、俺には」

 

その言葉は少し濁っていた。そこには、不安があるのかもしれない。

 

「だが……そうあるべき、なんだろうな」

 

 

扉を開け、店の中に戻る。その後姿には、迷いがまだあるように思えた。

 

 

(……これは霧雨さんたちの問題。この先どうするかは、彼らが決めること、ですね)

 

惣一は先ほど魔理沙が走っていた方を見ていた。

 

 

(黎人さんは上手くいくでしょうか)

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「おい待てって言ってるだろ!」

 

魔法の森にて、先ほどから黎人は魔理沙を追いかけ続けていた。

 

「うるさい!ついてくるなよ!!」

 

突き放すように魔理沙は先々と進む。

 

「いい加減にしろ!!反発も…」

「ついてくるな、てんだろうが!!!」

 

黎人が魔理沙の肩を掴もうとした瞬間、魔理沙は黎人を突き放した。

 

ーードォォォ……ン

 

黎人は思いっきり大木にぶち当たる。

 

「てぇ……」

 

ーーボトッ

 

すると何かが落ちてきたような音がした。

 

「……え?」

 

急に青ざめる黎人。

 

 

ところで、木からよく落ちてくるものというと何があるだろうか。それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーBeeeeeeeee!!!!!

 

 

蜂の巣である。

 

「うおいいいいいいいい!!!?なんでこうなんだよぉぉぉ!!!」

「私が知るかァァァァ!!」

 

 

大量の蜂から逃げる黎人と魔理沙。1匹1匹がとても早く黎人と魔理沙に近づく。飛べない黎人と箒を持たない魔理沙は急ピッチで駆け抜ける。だが、走ってはいるものの段々と距離を詰められる。

 

 

 

 

「風よりも速く、走れェェェェ!!!」

 

 

ピッチを限界まで上げ、その場から撤退する。二人の足が全く見えなくなるほどだ。魔法の森で物凄く強い風が吹いたと噂されるのは後の話…

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……は、蜂なんて、幻想入りするものじゃねぇだろ……」

 

振り切り、その場に倒れこむ黎人と魔理沙。かなり息が上がり、顔色も悪い。

 

 

「…たく、お前といるとつくづくひどい目にあうぜ」

 

魔理沙が立ち上がり、声をかけた。

 

「……どういうことだ」

「そのまんまだよ」

 

黎人は上体を起こし、魔理沙の顔を見ると、魔理沙の目は怒りが篭ってるように感じた。

 

「知らなかったぜ…親父のところにバイトしてたなんて。そんな状況でよくも、家出した娘と平然と話したな……呆れたぜ」

 

黎人は何も言わない。魔理沙の言葉を聞いているだけだ。

 

「お前はいいよな……親父と仲がいいんだろ。肝試しをよくやった、て言ってたな。私は…そん時からお前に嫉妬してたよ。私に無いものが、お前にはあるんだからな」

 

魔理沙の視線は人里の方を向いていた。恐らく父親のことを思い出してるのだろう。

 

「もし…私を受け入れる親父だったら、どんだけ幸せだったんだろう。そう思うたびに…親父を拒絶した自分が苦しくなるんだ。だから…あんな奴と仲が良いお前が気に入らない」

 

魔理沙は父親を奪われた気がした。行き違いで絶縁し、娘として愛されることはもう無い。そこに黎人が父親の店で働いていることを知り、悲しくなり、辛くなった。我儘だということは知っているが、憎まずにはいられなかった。

 

「やれやれ……」

 

黎人は溜息をついた。黎人にとってみればほぼ言いがかりをつけられたものであるから当然かもしれない。だが、それ以外に気になることがあった。

 

 

「そんな被害妄想、何の意味があるんだよ」

 

 

 

 

「なんだと…!」

 

魔理沙は怒りを募らせた。自分の言ったことを被害妄想と言い切られたことに。魔理沙が何かを言う前に黎人が声をだす。

 

 

「親父を拒絶した…?何言ってんだ。親子の縁を切ったらしいが、お前は店長を助けようとしたんだろ。本当に拒絶したんなら見捨てる筈だ。お前がやったのは自分のやりたいことをやろうとしただけだ。今も昔もな」

 

 

昔とは、魔理沙が父親の元を離れようとした時のことだろう。

 

 

「お前に無いもの…恐らく『愛情』のことだろうが、本当に無いのか?本当に無いんならお前はとっくに死んでんだろ」

 

 

黎人は魔理沙を見る。その目には意思が宿っている。

 

 

「お前の言ってることは自己解釈で、思い違いで、一方的だ。それを被害妄想と言わずになんて言うんだよ」

 

「お前に何が分かるんだよ!!!!」

 

 

魔理沙は黎人の胸ぐらを掴んだ。魔理沙の心は大きく揺さぶられていた。

 

 

「さっきから何もかも分かってるような言い方しやがって!お前に親父に愛されない世界の何が分かるんだよ!」

 

「わかんねぇよ!俺は親父に慕われたからな」

 

 

黎人は魔理沙の手を払い、大きく息を吸った。

 

 

 

「お前は、自分に無いものばかりを言って自分を不幸だと言ってるだけだろ!」

 

魔理沙の目に涙が溢れる。

 

「無いものばかりだと…!」

「オヤジ、てのはあくまで一つの存在じゃねぇか!なんでそこまでこだわるんだよ!!」

「こだわって何が悪い!大体私にあるものなんて」

 

今度は黎人は魔理沙の胸ぐらを掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は人間の魔法使いなんだろ!何故それを誇れねぇんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙の目が大きく開かれる。それを見て黎人は手を放した。

 

「そんな称号、欲しくても得られねぇよ。欲しい奴はいくらでもいる。だが、それはほぼ不可能だ」

 

魔法使いは、危険な研究や実験を繰り返してなれるもの。それの過程で死に至るもの、挫折するもの、人間をやめるもの…数々いる。少なくとも、人間の魔法使いではいられない。正常な人間の魔法使いは魔理沙ぐらいなのだ。

 

 

「それに、お前は霊夢と一緒に異変に行くだろ。異変解決は誰だってできるものじゃない。しかも博麗の巫女はこの世界じゃ英雄に近い存在だろ。それと肩を並べる存在なんてトンデモねぇもんだろ」

 

 

更に黎人は次から次に魔理沙の長所を挙げる。

 

「無いものばかり悔やんだってしょうがないんだ」

 

 

黎人は振り返った。

 

 

 

魔理沙は自分の生きてきた道を振り返る。

多くの奴に会ってきた。昔から世話になり、ミニ八卦炉をくれたこーりん、自分を魔法使いとして鍛えてくれた魅魔

小さい時から仲良くした霊夢、異変解決に協力した、アリス、パチュリー、にとり…数えれば、キリがない

 

 

「例え大きなものを失っても、光を見失ってはいけない。だから、絶望するな」

 

 

そこで魔理沙は気づく。黎人は拳を握りしめていた。彼は父親だけでなく、自分の生きてきた世界を失った。帰りたくても、帰れない。その悲しみから目を逸らすために、帰る場所を見つける。ひょっとしたら、みんなの為に戦っているのは居場所を見つけるための手段なのかもしれない。その事実から目を背ける為に、言い訳する為に戦っているだけかもしれない。それを認めると、心底自分を嫌うことしかできない。

 

 

 

「それは…私に対して…なのか」

 

「わかんねぇよ。ひょっとしたら俺も、我儘なのかもな」

 

 

自嘲気味に笑い、その場から去ろうとした。

 

 

 

 

 

「……ぷっ……」

 

空気の抜けた音。黎人がその音に気をとられると…

 

 

 

「はっははははははははははは」

 

後ろで笑い声が響く。誰の、なのかは聞くまでもなかった。

 

 

「……何がおかしい」

 

「…いや、だってよ。私に説教したのかと思ったら、急に自己卑下に移りやがって……おっかしい奴だなお前」

 

 

笑いが止まらないのだろう。腹を抱えている。

 

「お前な…」

「いいじゃないか。あー、なんか馬鹿馬鹿しくなったな。とっとと帰って飯にすっか」

 

「あ、おい!!」

 

 

黎人が止めに入る前に魔理沙は遠くに駆け出した。

 

 

 

「……たく、掴み所のねぇ奴だ…」

 

黎人は何が何だか分からず、苦笑するしかなかった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

空を見上げる。妖精が遊びまわってるのが見える。さっきまでどんよりしてたのが嘘なくらいだ。

 

それにしても、変な感じだ。さっきまで嫌悪の感情を抱いていたのに。今やそんなのは全く感じない。

 

「…あいつは、本当にいい奴なのかもな。ひょっとすると、それが魅力か」

 

魔理沙は黎人のことに好感を持つようになった。霊夢や刄燗が黎人を慕う理由が分かった気がした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

嵐のような瞬間が終わり、黎人は帰ろうとしている。

 

「ていうか、蜂に追われてどこだかわかんねぇな」

 

見渡しても見覚えの無い場所。無我夢中で気にしてなかったが、帰ろうとなるととんでもない問題だ。

 

「仕方ねぇ、道を探すか」

 

そう言って、「水」の姿になる。すると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろを振り返る。「水」の探知能力で後ろの木にだれか潜んでるのが分かった。

 

 

「……誰だ、そこにいるのは」

 

黎人はそれに声をかけた。

 

 

 

「へぇ……見事なもんだな…それが、『五行を司る能力』か?」

 

(……!この声は)

 

黎人はその声に聞き覚えがあった。訛りなまった挑発的な声かけ。その声を、黎人は決して忘れてはいない。

 

やがてその男が姿を現した。

 

 

 

「……!!テメェは…」

 

黎人の目が変わる。獣のような、鬼のような激しい怒りを、今までの中で、黎人は激しく怒りに満ちていた。

 

 

 

やがてその男は日向に出て

 

その黒い革ジャンと金色の刈り上がった髪が顕となった

 




ぬあああぁぁ……
魔理沙への説教シーンがスゲェ薄い
納得のいかない方、本当にゴメンナサイ!

さて、最後の人物…
この小説の昔の話を読んでくれた方はピーンとくるんじゃないでしょうか?
なんでこいつがいるのか、この後黎人はどうするのか
次回も是非ご期待下さい

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