東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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どうも、ゆっくり狼牙です。
折角の夏休みなのにダラダラしてます…
少し部屋の掃除でもしようかな
あ、それでは、ゆっくりしていってね。


15 「木」の力

前回のあらすじ

死にかけの黎人、新たな力「木」発動

黎「まだ、死ぬわけにはいかねぇ。」

 

 

 

「お遊びの時間はこれまでです。部屋に戻りましょう。」

 

咲夜はフランに帰るように言った。目の前の死体は、ピクリとも動かない。

 

「…マダ、アソビタリナイ」

 

フランが口を開いた。

 

「ですが妹様、遊び相手はもう亡くなったのです。これ以上」

「ダッタラ、サクヤァァァ。アナタガアイテニナレバイイジャナイ。」

 

フランは狂気の笑顔で咲夜に向かった。

 

「妹様、それは」

「ダイジョウブ。アナタハコワサナイヨ。サクヤハ『オネエサマ』ノダイジナヒトダカラ。」

 

覚悟を決めるしかない、と咲夜はナイフを取り出した。

 

「ウフフフフ…アッハハハハ。」

 

フランが咲夜に向かった時

 

ーーガシッ

 

腕に緑色の紐ーー蔓みたいなものがフランの右手に巻きついた。フランと咲夜がその根本を見ると、

 

「遊び相手は…俺だろうが。」

 

傷だらけの黎人が立っていた。

 

無茶だ。咲夜は思った。フランの攻撃を受けて生きているなんて奇跡だというのに、再びフランの前で立つなんて自殺を望んでいるようなものだ。

 

だが、咲夜は黎人の身体に違和感を感じた。胸の紋章には先ほどまで無かった「木」が書かれており、その文字が緑色の光を発している。目は緑色になっており、そして、何より

 

(傷が…塞がっていく…?)

 

傷口が緑色の光を発しながら、小さくなっていった。一体何が…咲夜は疑問に感じている。

 

 

 

覚醒した時、黎人は不思議な感覚を覚えていた。薄れていく疲労感、そして痛みがひいていく。ある程度動けるようになり身体を見ると、傷のところが緑色の光に包まれている。みるみるうちに傷が塞がっていき、動きに支障が無くなっていった。右手には緑色の鞭みたいなものがある。身体を見ると、胸の紋章の上に「木」と書かれてある。

そこで、黎人は気づいた。この「木」の力は、治癒能力ではないか、と。

 

「ダイジョウブ。アナタハコワサナイヨ。サクヤハ『オネエサマ』ノダイジナヒトダカラ。」

 

その言葉に前を向くと、フランが咲夜に攻撃しようとしている。咲夜も、ナイフを取り出していた。それを見た瞬間、右手にあった鞭をフランの右手に巻きつけた。

 

「遊び相手は…俺だろうが。」

 

 

 

 

傷が完全に塞がった。このことに、咲夜もフランも、水晶を通して観ているレミリアたちも驚いていた。

 

「…傷が治った?」

 

ポツリと呟いた言葉、別に誰かに言おうとしたわけではない。

 

「何してるの?レミィ。」

 

だが、偶々誰かに聞かれたみたいだ。紫色の長髪とパジャマもしている、魔法使いパチュリー・ノーレッジがレミリアに尋ねる。

 

「あぁ、パチェ。これ見てくれる?」

 

パチュリーに水晶を見せた。

 

「…この男、新聞に出てた?」

「そ、斐川黎人だったかしら?この男なんだけど…」

 

レミリアはパチュリーに今までの戦闘の様子を説明した。

 

「『火』『土』そして今の『木』。これらは結局何の集まりなの?」

 

レミリアは頭を抱えると…

 

「それなら一つ思いつくのがあるわよ。」

「…⁈分かったの?」

「えぇ、しかも全部で『5つ』なのよね。だったらほぼ間違いないと思うわよ。これはおそらく…」

 

パチュリーがレミリアに自分の推測を話す。

 

 

「……」

 

フランは何も喋らなかった。ただ、立ち上がっていた黎人を観ていただけだった。

 

「さぁ、第2ラウンドだ。言っとくが、これからが本番だぞ。」

 

手に持っている鞭に力を加える。

 

「フフフ…マダアソベソウネ……レイト。イイワ、モットタノシミマショ。」

 

フランが右手に巻きついている鞭を掴むと、

 

ーードカン

 

それを爆発させた。黎人は不思議に思った。突然フランの様子が豹変した事に。この部屋にいたことも何か関係があるのだろうか…

 

フランはスペルを発動する。

 

「禁忌『クランベリートラップ』」

 

フランから赤い弾幕と青い弾幕が2つずつ展開された。それぞれが、黎人を囲むように動いている。すると、その弾幕から小さな弾幕が黎人に向かって発射される。正確には青い弾幕が黎人を狙い、赤い弾幕は黎人の周りに向かっている。

黎人は一瞬で「火」に変わり、弾幕を避けた。そして、フランが目の前に見えた時、双剣を振る。だがフランは飛ぶことでそれを回避。追いかけることは可能だが、先ほどのミスもあり再び「木」になる。そして、鞭を思いっきり振った。フラン目掛けて伸びていくとき、先ほどの弾幕に当たって…

 

鞭は爆散した。

 

「もろっ!!」

 

あんな小さな弾幕で壊れるのかよ、と黎人は思った。そんな程度だと倒すどころか、攻撃ができるかどうかまで怪しくなっていった。

 

(どうやって攻撃すればいいんだよ…)

 

破壊されたところが元に戻った。どうやら回復するのは自分だけでは無いようだ。だが、攻撃手段は分からなかった。

 

「ワスレテナイ?サッキノスペルカードノコト」

 

ふっと周りを見ると、さっきの4つの弾幕がいつの間にか黎人の周りにあった。容赦なく小さな弾幕が黎人に向けられて発射される。黎人は両手をクロスして、来るべき衝撃に耐える。

 

 

すると、

 

ギュウウウウン…

 

手に持っている鞭ー正確にはその柄に弾幕が吸収された。

 

「……?」

 

もしかしてと思い、大きな弾幕の方に向かって柄を突き刺すと、

 

思った通り、弾幕が吸収された。更にその鞭を振ると、壁や窓など、その鞭が通過したものが、まるで爆発にでも巻き込まれたように崩れた。

 

「ソンナ…ワタシノダンマクガ、キュウシュウサレルナンテ……」

 

フランは驚きのあまり、ボウっとしていた。だがそれも一瞬。すぐにレーヴァテインを出して黎人に突っ込んだ。黎人は鞭を横に引っ張ってそれを受け止めた。先ほど吸収した弾幕のおかげで鞭は大破せずに済みそうだ。

 

「コンナノミトメナイ…アンタナンカブッコワシてやる‼︎」

 

咲夜は、フランの狂気が急に消えた事に驚いた。フランの左腕が、鞭に触れていた。どうやらフランの狂気が吸収されたようだ。

 

「…どうやらこれは、弾幕や相手の『気』を吸収して強化されるものらしいな。だったら都合が良い‼︎」

 

黎人は体当たりをしてフランを吹き飛ばす。途中で止まったフランは、黎人の方を向く。

 

「フラン…もう遠慮する必要は無い‼︎お前の全力をぶつけろ‼︎」

「……!!!!」

 

「全力」…それはフランが一番避けてたもの。本気で戦った時、相手だけでなく世界や仲間まで壊しかねない。それはフランが望まなかったし、レミリアにも警告された。だがこの男は確かに「全力で来い』と言った。

 

「じゃあ…遠慮なく行くよ。黎人‼︎」

 

フランは上にレーヴァテインを構えて、黎人に突進する。

黎人も柄を持って、それを受け止めた。

 

《ドゴオオオン!》

 

大きな土埃を立てた。その中、フランと黎人の鍔迫り合いが続いたが、徐々にフランの力が弱まった。黎人はそれを押し切って、おもいっきり鞭を振るった。

 

「オラアアアァァァ‼︎」

 

フランに命中した後、その場でフランは倒れた。

 

 

 

 

 

 

「…うー…ん」

 

目を開けるとよく見た自分の部屋の天井だった。

 

「起きましたか?妹様」

 

横には心配そうな顔をした咲夜と、後ろで様子を見ている黎人がいた。

 

「あれ…私?」

「良かったです。妹様。なかなか目覚めなかったので、起きるかどうか、心配だったのですよ。」

 

安堵した表情で咲夜が言った。

 

「黎人…さっき、何したの?」

 

フランは黎人に尋ねた。一体何をしたのかと。

「簡単に言えば、お前の狂気を根こそぎ吸い取った。あの時全力で来るように促したのはお前の狂気を表に出やすくするためだ。」

 

黎人は説明を始める。

 

「因みにその後鞭を当てたが、あれは吸収したものを一気に外に出すというものだ。一応勝負だったからお前に当てたが、お前に移ったわけじゃないから、安心しろ。」

 

フランには疑問が一つあった…

 

「黎人…何でそんなことをするの…?」

「……」

 

どういうことだと黎人は沈黙する。

 

「だって、それは確証があったんじゃないんでしょ?そもそもやる必要無かったじゃん。わざわざ狂気まで吸収しなくても倒せたはずだよ。なのに、…な、のに…」

 

フランは泣いているようだ。

 

「どっして…ウッ…私に全力でやっでいいっで言ったの?だっ…ヒック…だって、本当に壊れぢゃうがも、しれながったんだ。そんな…ウウッ、そんなこどを、どうして」

「それはな」

 

黎人が口を開いた。咲夜はフランのそばにつく。

「俺が倒れてた時に、お前言ってただろう?『誰もいない』って。あの時お前が、自分の狂気を嫌ってたんじゃないかと思ってな。」

 

咲夜がハンカチでフランの涙を拭いた。

 

「お前の言う通り、わざわざやる必要は無かったかもしれない。だが、ほっとけねぇんだよ。そう一人で悩み続けてるのを見ると」

 

黎人は頭をボリボリと掻く。我ながら恥ずかしいセリフだなと思っていた。

 

「そんなことで苦しむ必要は無いんだ、フラン。お前の好きなようにやっていい。うまくいかなかったら、俺が相談してやる。また、遊びに来るしな。」

 

黎人は扉に向かった。

 

「とりあえず、お前の姉に会いに行く。言いたい事があるしな(文句)。またいつか会う。今度あった時、今度はお互い楽しく遊ぼうな。」

 

扉を開ける。

 

「……黎人っ‼︎」

 

振り向くと、指を絡めながら「えっと…」と悩むフランがいた。

「今日は…その……

 

 

 

ありがとう!!!」

 

 

 

 

しばらくして、黎人は扉を閉めた。その時、フランと咲夜は確認した。扉を出る際…

 

 

 

 

黎人は確かに笑っていた。

 




如何でしたか?
少し「木」について解説

「木」には治癒能力及び、吸収能力があります。
なんとなーくの思いつきです。何か参考に…て訳じゃないです。
黎「少し特殊って感じだったな。」
確かにそうだね。鞭ってあんまり使われないし。

黎「ま、とりあえずこれでフラグ回避だろ?」
…………
黎「は?まだあんのかよ。」
言っておこう。お前がそれ言う時点でフラグだよ。
黎「ウソダドンドコドーン」
使い回し⁈

さて、次回はパチュリーの話を聞くことになります。
黎人の能力…これは一体何を表すのか。

それでは次回までゆっくり待っててね。

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