東方羅戦録〜世界を失った男が思うのは〜   作:黒尾の狼牙

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121 この時代で生きるにはあまりにも純粋すぎる

ある村があった。農作物が豊富であり、人間関係が豊かであるという、平和な村。ファトラスは、そんな村で生まれた。可愛らしいその顔は、村の中では人気となり、その村の和みキャラとして顔が知られていた。欲というものがあまりない彼は、周りの人間が笑っているのを見て、心から楽しくなってくれるような純粋な子どもであった。

 

しかし村はある戦争に巻き込まれた。戦で食料が不足した兵士たちは、食料が大量にある村から略奪していった。混乱によって慌てる村人たち、目障りだと感じた兵士たちは次から次に村人たちを処分していった。

 

地獄絵図とも言える景色の中、ファトラスは歩き回っていた。いつも穏やかだった村は、今や荒んだ景色になっている。家や畑は荒らされ、床には彼のよく知っている人らが血まみれになって倒れていた。

 

なぜ倒れているのかと、ファトラスは倒れている人間を、寝ている人を起こす時のように叩く。だが全く反応がない。それどころかいつもと感触が違うことに気づく。いつもに比べてあまりにも冷たすぎるのだ。

 

周りを見渡すと、同じように倒れている人がいた。そしてその近くにも人が倒れている。その近くにも、さらに近くにも…その中には、自分の親も混ざっていた。

 

キッカケがあったわけじゃない。いつものような日常が流れていきながら、村人たちは死んだ。突然現れた兵士たちによって。なんの理由があってこんな事をしたのか、ファトラスには分からなかった。

 

 

「そんなとこにぼうっとしてるんじゃねぇ!目障りなんだよガキ!」

 

 

火薬が爆発する音がなり、真っ赤な液体が溢れ出てくる。いまファトラスは左のこめかみを撃たれたのだ。普通なら1発で死に至る場所である。

 

この時ファトラスは、初めてその感覚を覚えた。今まで感じたことのない感触を。

 

それは痛みだった。

 

平和に暮らしていたファトラスにとって、全く縁のなかった感覚が頭に響く。

 

それと同時に頭の中で妙な思考が働いていた。

 

 

誰が狙撃したのか。

 

誰がみんなを殺したのか。

 

誰が村を襲ったのか。

 

あの兵士たちだ。

 

同じような服装をした人たちだ。

 

悪いやつだ。

 

ひどい人たちだ。

 

許せない。

 

成敗してやる。

 

殺してやる。

 

 

 

「…ウゥ…」

 

 

うめき声をあげながら地面にへばりつく。まるでもがいているようだった。実際もがいている。ファトラスは自分の中から漏れ出そうな何かに苦しんでいるのだ。

 

だがそれは抑えられず、むしろ次第に大きくなっていく。それが大きくなっていくにつれて痛みも大きくなっていく。

 

正確には、痛みが大きくなるにつれて自分の中で暴走しているものが大きくなっているようだった。

 

 

視界が暗くなる。自分たちの村を襲っていたものたちの顔がハッキリと見えなくなる。

 

ファトラスはそこで意識を失った。彼が目を覚ました時には、自分の村も兵隊も全ていなくなっていた。

 

 

 

 

 

刃燗の打撃を受けて、巨人はユックリと傾いていく。そのまま地面に倒れそうな勢いだった。

 

それを惣一は疑わなかった。体は麻痺しており、刃燗の渾身の一撃をまともに受けたのだ。これで平然と立っている方がおかしい。

 

 

だが、不可能という事ではなかった。

 

 

「なっ……!?」

 

 

驚くほかなかった。倒れると思っていた巨人が、足を一歩後ろに踏み込んで耐えたのだから。

 

顔は既に大きな被害を受けている。顔の形は曲がっており、そこから大量に血が流れ出ている。致命傷としかいえないものだった。

 

そんな状態で巨人は耐えている。その衝撃は先ほどまでとは全く比べ物にならない。

 

 

「ウウア…!アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

 

怒鳴り声を上げて、目の前にいる刃燗に向かって手を伸ばす。素早く伸びていくそれは明らかに殴り飛ばそうとしているものだった。

 

 

「…!刃燗さん!!」

 

 

惣一は刃燗に向かって声をかける。攻撃を避けろ、という意味で言ったのだが、それは刃燗には意味がなかった。

 

 

(くそ…もう、体が…)

 

 

刃燗は既に限界だった。腕には全く力が入らず、巨人の攻撃に全く反応が出来ていない。惣一の声も上手く聞き取れなかった。

 

 

拳が刃燗に入る。大きな音と一緒に刃燗は後ろに飛んだ。ダメージなら今までの中で一番なものだろう。

 

一気に遠くまで吹き飛ぶ。自分が吹き飛んでいるという実感も刃燗には無かった。高速の乗り物に乗っているように、風景が変わっているというぐらいにしか思えなかった。

 

 

やがて地面に近づいていく。その勢いのままでは刃燗は地面に転がりながら意識がなくなってしまう。

 

 

《ズザザザザ!!!》

 

 

だがほんの少し残った根性で、刃燗は転がりそうになるのを耐えた。足を地面につけたまま後ろに下がっていく。地面からは大量の土煙が上がっており、霧のようにかなり濃い。

 

 

「…っ!クッ…!」

 

 

惣一は銃を巨人に向ける。見るからにその巨人の行動は追い詰められた状態でのそれだ。あと一撃、それでこの巨人を倒すことが出来る。

 

 

「アッ…!アア…!!!」

 

 

だがその巨人の様子が少し変だった。輝かしく光り始めている。体を丸めるように動いているそれは力を溜めているようにも見えた。何をしようとしているのかと感じた惣一は、引き金を引くという動作を忘れてしまった。

 

そのせいで、手遅れになってしまった。巨人の奥の手を出させてしまうことになったのだから。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 

体を一気に伸ばす。すると溜まっていたものが一気に放出されたことを示しているかのように、巨人を纏っていた光が膨れ上がった。

 

それはまさに炎だった。光に触れた木が肺となって消えていく。巨人の付近は一瞬にして焼け野原と化してしまった。

 

 

「くっ!!」

 

 

引き金を引く。その弾丸は真っ直ぐ巨人の元に近づいていく。狙いにズレはない。弾は間違いなく標的を捉えていた。

 

だからこそ、惣一の未熟さが勿体無かった。その行動をもう少し早く行うべきだったのだから。

 

惣一の銃から放たれた弾丸は、巨人の周りに漂う光に触れ、一瞬にして消え去ってしまった。巨人の足元に生えていた木々のように燃え尽きたのである。木材だろうと鉄だろうと、燃え尽きるものであることには変わらないのだ。

 

 

「がああああ!!!」

 

 

大きく飛び上がる。空中に飛び上がった巨人はその場で回転を始めた。その動きは先程から行われていたものだった。

 

先程と違うのは、あらゆるものを燃やし尽くす光があることだ。破壊力は先程の比ではない。通ったところが真っ黒に染まり上がるのだ。その姿はまさに地獄絵図、目も当てられない惨状を作り上げる。

 

回転している巨人が地面に着地する。そうして回転により高速で移動した。その行き先には、先程の攻撃で遠くに吹き飛んだ刃燗だった。

 

 

「そんな…!あんなのでやられたら…ッ!」

 

 

非常にマズイ。惣一の判断は間違っていなかった。

 

刃燗は既に意識が朦朧としている。立つだけでもやっとという感じだ。そんな状態だと避けるのも難しいだろう。

 

それに加えて、惣一の立ち位置からでは刃燗を助けだせないのだ。巨人は惣一から離れている方に向かっている。急いだとしても速度的に追いつけない。

 

焦ってはいるが、どうすることも出来ない。危険とかではなく絶望に近かった。

 

 

真っ赤な液体が飛び散る。

 

 

巨人が刃燗を飲み込み、辺りが真紅に染まり上がる。

 

 

それはいわば鐘だった。たったいま、一つの命が終わりを告げる音が鳴ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は澄んでいた。

 

意識が朦朧としているのに、身体能力が高まっていくのを自分でも感じる。今までの中で一番力強い状態になっているのだ。

 

だがそれは当然でもあった。寧ろ意識が朦朧としていたからこそ力を発揮出来なかったとも言える。

 

感情が結構豊かである彼は、一方で雑念も大きかった。少し幼くも見える感性ゆえか、1つの事に集中できずにいたのだ。

 

だがいまの彼には雑念がない。目に見えているものは己に迫ってくる敵のみ。耳に入ってくるものは迫ってくる音のみ。それ以外の情報は全く入っていない。

 

普通に見たら脅威にしか見えないが、彼には寧ろ格好の的でしかなかった。何しろ的がかなり大きいのだから。

 

手に力を入れる。いつものように殴りつける、訳ではない。

 

恐ろしく静かな彼は、荒々しい技よりも、鋭い技の方を使おうとしていた。

 

掌に小さな風が巻き起こる。円盤のように回転するそれは静かな音を生み出していた。

 

もっと小さくだ。下手に力を入れては寧ろ意味がない。大事なのは、鋭さのみ。

 

イメージは殴るではなく

 

 

 

 

 

 

 

斬る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を一回だけ振る。その瞬間掌から、小さく、細長く、鋭い光が走った。

 

それは巨人が纏っていた光をあざ笑うかのように斬り落とし、そして巨人の肉体すらも刃を通した。

 

真っ赤な血が流れ出る。大きな身体から出てくるそれは、あまりにも多すぎる量であり、そこら一帯を真っ赤に染めた。

 

転がり続けていた巨人は勢いが止まり、地面に倒れたまま静止した。先程のように暴れる気配はない。

 

 

「うう…ッ」

 

 

呻き声をあげる。かなり弱々しい声だった。絞り出すのも精一杯である。巨人は弱り切っていたのだ。

 

 

足元から崩れ落ちていく。だんだんと分解されていき、足から胴体まで分解が進んでいく。

 

分解が進んでいくにつれて、意識が戻り始めていた。巨人の身体であるファトラスの意識が。

 

 

(負けた…?僕が、死ぬ……?)

 

 

理解できたのは、自分の死という運命のみであった。いまの状態ではどうすることも出来ない。彼はその運命に従うしかないのだ。

 

 

(ごめんよ…母ちゃん。結局何も、出来なかった…)

 

 

ファトラスが思い浮かべているのは、村と一緒にいなくなった母親だった。

 

いつも優しかった母親、それはあっけなく殺された。村を襲いに来た兵士たちによって。

 

なぜ母は殺されなければならなかったのか。何も悪いことはしていない。ただ軍隊の都合で殺されたのだ。

 

そのこと自体に、ファトラスは激しく怒った。無関係な人の虐殺はあっていいことではない。それをした兵士たちに、憎悪のような怒りを感じた。

 

彼がDWに属している理由は、世界平和だった。あのような悲劇が二度と起こらない世界になって欲しいと心から願った彼は、その願いを叶えるといった青年に協力する事になった。

 

だが、それはまやかしだった。皮肉にもそれを言った本人に否定されたのだ。

 

人間が共存している以上、争いが無くなることはない。それはファトラスも薄々分かっていた。けどもしそんな世界が出来たらどれだけ嬉しいかとファトラスは心から思った。

 

それは実現できなかった。それどころか自分は何もできなかった。ただ利用するだけ利用されて、挙げ句の果てには無様に散っていく。あまりにも空虚な生き様に、情けなさしか出てこなかった。

 

 

『いいのよ、ファトラス』

 

「…………ッ」

 

 

声が聞こえた。彼にとって馴染みのある声が確実に耳に入った。上半身しかない彼の首を動かして、声のした方を見る。そこにはもう見ることがないと思っていた彼の母親の姿があった。

 

 

「母…ちゃん」

 

 

掠れた声で呼びかける。母親は優しく微笑んだ。いつものように優しい母親だった。

 

 

『おいで』

 

 

手を広げ、彼を迎えようとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「母ちゃん…母ちゃん…!」

 

 

体が小さくなり、小さい頃の彼の体型になる。そのまま手を広げている母親に向かい走り出す。

 

 

母親の膝に抱きついた。そんな彼を母親はそっと抱きしめ返す。

 

 

 

「ごめん…ごめん。何も、してあげられなかった…何も出来なかった…!」

 

 

 

口から謝罪の言葉を出す。情けなさで一杯だった。母親のためにと動いて何もできなかった自分が情けなくてしょうがなかった。

 

 

 

『大丈夫。あなたがわたしやお父さんたちのために頑張っていたのは知っているんだから』

 

 

そんな彼を母親は責めたりはしない。自分たちの事を思って動いてくれた息子を責めることは出来なかった。

 

 

 

『さぁ、行きましょう。もうあなたが苦しむ事はもう無いんだから』

 

 

「うん…うん!」

 

 

 

1人の男が命を絶った。残酷すぎるこの世界で生きるにはあまりにも優しすぎて、あまりにも純粋な男だった。彼の願いは決して叶えられるものではない。それはあまりにも難しすぎるのだ。

 

自分の逢いたかった母親の夢を見て、ファトラスは安らかに眠った。

 

 

 

 

 

 

巨人の姿が跡形もなくなり、その場で刃燗が立ったままでいる。技を繰り出したせいか思考が上手く働いていない。意識さえもギリギリ保っている状態だ。

 

そんな状態で刃燗は先ほど巨人が倒れていた場所を見る。そこに巨人の姿はない。もちろんそれは移動したわけではなく、本当に姿を消したのだ。

 

 

(そうか、勝ったんだな、オレ…)

 

 

勝利した事の安堵か、それとも達成感か。自分の勝利を確信した刃燗は力を抜いてバタリと倒れる。

 

倒れている刃燗のそばに惣一が歩み寄る。一度だけ面倒を見た彼の様子を見ていた。

 

心の何処かで、見込みがないと思っていた。成長がなかなか訪れない刃燗は、戦闘に出せる男ではないと考えていた自分がいた。それは決して刃燗を貶しているわけではなく、戦力になるかどうかの冷静な判断だった。

 

だが、それはいま覆った。

 

 

「………お見事でした。あなたのおかげであの巨人の暴走を止めることが出来ました。おかげで大きな被害を出さずに済みました」

 

 

倒れている刃燗を讃えるような口上だった。それは1人の戦士として敬意を示している証拠でもある。惣一は初めて、刃燗を戦士と認めたのである。

 

 

(…どうしますか。黎人さんたちの様子も気になりますが、刃燗さんを放っておくわけには…)

 

 

思考を切り替える。これからどうすればいいのかを考えていた。敵を倒したのなら次の目的地に向かうべきなのだが、目の前で倒れている刃燗を放っておくことは惣一にはできなかった。彼を治療するためには永遠亭に連れて行く必要があるが、あまり時間はかけられない。

 

 

「惣一さん、ですよね?」

 

 

悩んでいる惣一に1人の少女が声をかけた。惣一の後ろで救急箱を持っている少女は永遠亭の助手である鈴仙だった。

 

 

「鈴仙さん。ちょうど良かった。よろしかったら刃燗さんを永遠亭に連れて行ってくれませんか?」

 

 

惣一に言われ、刃燗の隣で座り込み、その様子を詳しく見た。怪我はもちろんのこと、骨や内臓にもダメージが入っているはずだ。

 

 

「…ひどい怪我ですね。体がもうボロボロになってます。相当無茶をしたんですか」

 

「はい。ですが刃燗さんの無茶がなければどうなるか分かりませんでした」

 

 

惣一の話を聞いて納得する。彼も無事とは言えない。今すぐ応急手当ては必要だ。もし刃燗の無茶がなければいまよりも酷い状態だったことは間違いない。

 

突如鈴仙は考え始めた。何か迷っているようにも見える。それを尋ねようとしたが直ぐに考えがまとまったらしく鈴仙が話し始めた。

 

 

「たしかに刃燗さんには今すぐに治療した方がいいでしょう。そのために永遠亭に連れて行くべきです。

 

ですが、私は刃燗さんを永遠亭まで連れて行く事が出来ません」

 

「え……?」

 

 

惣一は戸惑いの表情を見せた。『宜しければ』とは言ったが断られるとは思っていなかったのである。彼女はあまり人の頼みを断らなさそうな性格に見えたから余計にそう思った。

 

戸惑っている惣一を他所に鈴仙は話を続ける。

 

 

「ここには師匠に言われて来たんです。黎人さんたちの助太刀をするために」

 

 

驚きの感情を隠せない惣一。視線の先は銃を持っている鈴仙がいる。その言葉は冗談ではなく、本当に戦いに来たという事だった。

 

 

「…ダメです。素人が戦場に出てはいけません。そうするとあなたが…」

 

「素人じゃないんです。実は私軍隊に入っていた事があります」

 

 

その話を聞いた事は無かった。そもそも幻想郷に、自分以外の軍人がいるとは思ってもいなかった。いたとしても弾幕で勝負する者たちだと考えていた。

 

 

「とは言っても、私に出来ることは治療ぐらいです。惣一さんや黎人ほどの実力はないと思います。けど絶対に足手纏いにはなりません。いまこの幻想郷を守るためには、怖がっている時じゃないんですから」

 

 

鈴仙の言うことには一理ある。いまの幻想郷は普通ではない。まさに異常と言ってもいいレベルだ。対処するためにはなるべく多くの戦力が欲しいのだ。豺弍もそれが分かっているからこそ、魏音を味方にしようとしていたのだから。

 

 

「…分かりました。ですが、刃燗さんは…」

 

「私が永遠亭に運んであげましょう」

 

 

この場で倒れている刃燗をどうするかを考えた時、聞いたことのある声が聞こえた。そして近くにスキマが現れ、中から八雲紫が現れる。

 

 

「私のスキマを使って、一瞬で永遠亭まで運ぶわよ。そう時間もかけられないんでしょう」

 

 

事情は把握されている。妖怪の大賢者と言われている紫なら理解していてもおかしくないし、スキマが現れた時も大体は把握されている様子だったのだから。

 

 

「…はい。お願いします」

 

「ええ。責任を持って預かるわ」

 

 

紫は刃燗を抱えてスキマの中に入る。あとはそのスキマを閉じるだけだった。

 

 

「あぁ、そう。惣一。ひとつだけ警告をしておくわ」

 

 

その時紫は後ろを振り返った。突然呼びかけられて驚いている惣一だが、そんな事を気にせずに話を進める。

 

 

「気をつけなさいよ。あなたは見落としが多いから」

 

 

紫から言われたのは、まさに忠告のようなものだ。そんな事を言われなくても、惣一は自分自身が見落としが多い事は自覚している。そのため他人の話に左右されやすく、紫に騙されて黎人を襲ったぐらいなのだから。

 

このタイミングでなぜそんな事を言うのだろうか。それを気にしながら惣一は去ろうとしている紫に頭を下げる。

 

 

「了解しました」

 

 

八雲紫はスキマを閉じた。このまま刃燗を連れて永遠亭に行ったのだろう。

 

 

「それでは行きましょうか」

 

 

そして惣一は黎人の元へ向かう。鈴仙も彼の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

遠く離れた場所。

 

そこはまさに氷の大地である。今の幻想郷は全体が氷の地面になっているのだが、そこは特に白かった。その純白さゆえに太陽の光を受けて白く輝いている。

 

 

そんな中で2人の女性が向かい合っている。

 

1人はこの現象を作り出した張本人である雪羅であり、もう1人は博麗の巫女である霊夢だった。

 

 

「あはは。もう限界じゃない?見ていて結構悲惨よ」

 

「うるさいわね…こんなの屁でもないわよ」

 

 

明らかに霊夢の方が不利である。ボロボロになっている彼女の体は、そのダメージを物語っているようだ。

 

 

その様子を、遠くから黎人は見ていた。

 

 




これが今年最後の投稿となります。一年間ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。

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