あなざー ~もしも夜見山北中学3年3組に「現象」がなかったら~   作:天木武

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 7月31日。まだ太陽が昇っている途中の時刻に、僕の家の前に人が集まってくる。自前の赤い車に荷物を積み込みながら、怜子さんは「あ、おはよう」と来たメンツに声をかけた。「おはようございます」と真っ先に挨拶を返したのは望月。やや遅れて今日も素晴らしい(・・・・・)ファッションセンスの勅使河原と夏の太陽が余り似合わない風見(・・)君もそれに倣う形になった。

 

「あとはお嬢様が送ってくるんだっけ?」

「らしいです。皆向こうの方だからまとめて乗せてきてくれて、それから分乗するって」

「そっか。そのままでもいいけど……。こっちがむさ苦しくなっちゃうもんね」

 

 すみません怜子さん、ここにいるのが男ばっかで……。

 そんなことを思っていると1台の白い乗用車が近づいてくるのが見えた。うわ、高級車っぽい……。案の定、降りてきたのは赤沢さん達だった。

 

「お待たせしてしまってすみません」

「いいえ、こっちの男子諸君も今到着したところだし」

 

 気にしていない様子で怜子さんはそう返す。その赤沢さんの後ろ、乗ってきた人たちが降りてきた。中尾君、杉浦さん、そして桜木(・・)さん。しかし中尾君の様子がおかしい。どうも車酔いをしているようだ。

 

「……この距離でも酔うのね」

「お、俺は乗り物に弱いんだって前から……うっぷ!」

 

 かわいそうな中尾君の背中を杉浦さんがさすってあげている。こう言ってはなんだが、あんな風に面倒見がいいとは普段の様子の彼女からは想像できない姿だ。

 

「一応渡した酔い止めは飲んだみたいなんですが、あの様子じゃどこまで効くか……。私も乗り物は強い方じゃないけど、中尾君があそこまでだとは思ってなかったから」

「まあ仕方ないわね……。あいつの乗り物酔いは今に始まったことじゃないし……」

 

 それでもなんとか中尾君は少し落ち着いたらしく、杉浦さんに心配そうにされながらも「ま、まかせろ……」と到底まかせられない返事を返してこっちに近づいてきた。

 

 これでドライバーを抜いた参加者8人、全員が揃ったことになる。

 

「……では今日と明日、よろしくお願いします」

 

 なぜか整列気味に並び、赤沢さんの掛け声で全員が今回ドライバー兼保護者役である怜子さんに頭を下げた。……クラス委員の桜木さんいるはずなのに仕切ったのは赤沢さんだった。ちなみに赤沢さんの家の車の方は専属のドライバーさんらしい。今日は送ったら明日また迎えの時に来るのだそうだ。……お嬢様だ。

 

「はい、こちらこそよろしく。……ま、今回は恒一君の叔母ってことで一応保護者代わりなんで、何かあったら私に報告して頂戴ね」

 

 そう言って怜子さんは皆に笑顔を返した。それで皆の表情が緩む。

 

「さて、じゃあどう分乗するか決めましょうか」

「望月は怜子さんの車の前でしょ?」

「うん……ってなんで決まってるの!?」

「あれ? 嫌だった?」

「う、ううん! 文句はないよ! ないけど……」

 

 まあ年上趣味の君はそこ以外場所はないだろう。本人も希望だったようだし。

 

「中尾はうちの車の前に乗るといいわ。前の席の方が後ろよりは酔いが多少は抑えられるはずだから」

「う……。すまねえ、赤沢さん」

「恒一君はどうする?」

「僕は怜子さんの車の後ろに」

「そう。じゃ勅使河原、あんたうちの車の後ろに乗んなさい」

「お!? マジで!? 了解了解! 風見もこっち来いよ」

「……ああ」

「それで、残ったのは多佳子とゆかりだけど、どうする?」

 

 赤沢さんに振られて2人が顔を見合わせる。

 

「杉浦さんに任せますよ」

 

 笑顔とともに桜木さんは選択権を彼女に一任した。だが難しい顔で杉浦さんは悩んでいる。

 

「……ジレンマ、ね」

「アンビバレントな乙女心って奴ですね」

 

 じろっと普段の冷たい視線で杉浦さんは桜木さんを一瞥した。が、桜木さんは応えた様子は全くないらしい。それにしても2人の会話の内容がイマイチわからない。

 

「なんだか勘違いされてそうな気がするけど……。まあいいわ。……中尾の世話は慣れてるし心配だから、泉美の家のほうに乗るわね」

 

 どうやら決まったらしい。怜子さんの車には前に望月、後ろに赤沢さん、僕、桜木さん。赤沢さんの家の車には前に中尾君、後ろに勅使河原、風見君、杉浦さん。

 

「ちょ、ちょっと待てよ赤沢! お前自分家の車に乗るんじゃないのかよ!?」

「私はそんなこと一言も言ってないけど」

 

 しれっと赤沢さんはそう答えた。そしてお約束どおりがっくしと勅使河原は肩を落とす。だがめげるな勅使河原、また立ち上がるんだ! ……本当に打たれ強さだけは感服するよ。

 

「杉浦もむさい男2人と後ろに1人はまずいだろ……。俺が後ろに……」

「年寄りの冷や水って言葉知ってる? あるいは老いては子に従え、でもいいけど。病人は黙って酔いにくい場所に乗ってなさい。どうせあんたの後ろは私になるし、なんならシート倒してもいいから。……勅使河原の間に風見挟んでおくから大丈夫よ。ただでさえ真面目ぶってる上に、今ダウナー入ったから問題なさそうだもの」

 

 見れば勅使河原同様、風見君もがっくしと肩を落としている。……あ、そうか。桜木さんがこっちに乗るからか。と、いうことは向こうの車は車酔いしてる中尾君、狙いが外れて落ち込む勅使河原に風見君、元々があんな具合の杉浦さん。……テンションがすごいことになってそうだ。勅使河原が復活しない限り、車内で会話すらないんじゃないか……。

 

「恒一君、早く乗ったら?」

 

 まあ向こうのことは僕の預かり知らないところだ。赤沢さんにも促されたし、僕は僕で怜子さんの車に乗ることにする。

 ……ところが、だ。既に後ろの席の奥には桜木さんが座っている。そして赤沢さんは自分より先に僕に乗ることを促してくる。

 

「……赤沢さん真ん中じゃないの?」

「いいじゃないですか、榊原君両手に華で」

「……ってゆかりが言うからね。まあ私は何でもいいから、早く乗って」

 

 なんだか断れる雰囲気でもないので従うことにした。……あとから勅使河原&風見コンビの嫉妬が怖い気もするけど。

 

「じゃ、行くわよー!」

 

 そう言うと怜子さんは景気よくエンジンをふかし、車を発進させる。後ろの車の様子は知らないが、中は御通夜ムードだろう。一方こっちは久しぶりにドライブできるとかで怜子さんは上機嫌だし、年上趣味の望月は前の席で満足そうだ。僕の両側の女子も特に不満な様子は見せていない。

 じゃあ僕はどうか、と言われると……。実のところ、少し残念ではあった。両手に華、と言われても言い返せないこの状況でそんなことを思うのは少々気は引けるし、勅使河原と風見君にそれがばれたらただではすまされないだろう。だがそれを引いても残念だと思った理由は言うまでもなく、見崎が今回この場にいないということだった。

 

 

 

 

 

 怜子さんが松永さんに無理矢理約束を取り付けて僕が勅使河原に連絡した後、僕は見崎を誘うつもりでいた。なんだか勅使河原にからかわれた手前、少し気は引けたが一緒に行きたいという気持ちは事実だ。

 ところがそこで肝心なことに気づいた。僕は彼女の電話番号を知らない。その日はもう日が落ちていたから直接行くというわけにもいかず、翌日に彼女のお店兼お宅を訪ねることにしたのだった。

 

 僕が今お世話になってる家の住所である古池町から見崎の家のある御先町まではそこそこ遠い。加えて夏と言うことで暑い。しかしその手間と彼女を誘うことを天秤にかけたところ、余裕で後者に振り切れたので、翌日僕は彼女の家を訪れることにした。

 彼女の家、「夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の。」の場所は勿論わかっている。しかし問題はお店である1階から入るべきか、居住区の3階から入るべきか。お店兼展示館の1階入り口からは数度入ったことはある。その脇には階段があり、ここを昇れば3階に行けるとは推測できるが、行ったことがないために行ってもいいものか計りかねる。

 まあ長居をするつもりもない。見崎に会って少し話すだけの用事だし、慣れている方から入ればいい。それにまた霧果さんの作品を見るのもいいかとも思い、僕は1階のお店の方から入ることにした。

 

「いらっしゃ……。おや、君は……」

 

 入り口を開けて入ったところで、天根と言ったか、店番の老婆は僕の顔を覚えていてくれたようだった。

 

「こんにちは。ちょっと鳴さんに用事があって伺ったですが……。ここから入るのが1番慣れていたもので……」

「ああ、そうかい。ついでに見ていくかい? 他にお客さんもいないしねえ……」

 

 半ば決め台詞のようになっている最後の一言に僕は思わず苦笑を浮かべる。だが逆に好都合だ。ゆっくり見て回れるし、見崎と話も出来るだろう。

 

「そこのソファで待つかい?」

「いえ、出来れば地下の方も見て回りたいのですが……」

「ほんと好きなんだねえ。じゃあ鳴には地下に来てもらうように伝えておくよ。それからお代はいいよ、鳴の友達からもらうわけにもいかないしねえ」

 

 素直に感謝の気持ちでもって僕は天根のおばあさんに頭を下げた。彼女は内線か何かで連絡を取ってくれるようだ。僕は1階の方はほどほどに、地下への階段を降りる。初めて来た時はひんやりとした空気が充満していると思ったが、今日は外の暑さのせいもあってそれが心地よい。

 地下の人形達は、相変わらずだった。何かを求めるような、一見すると不安にさせるような表情のドール達。球体関節による四肢と精巧な造りに感嘆のため息をこぼしながら見ていったところで、おや、と思い僕の視線が止まった。多分新作なのだろう。以前来た時は見かけなかったものだ。だがそれは作りかけで、顔に表情があり胸の部分までは出来ているのに、まだ四肢がない。

 僕にとってはそれだけが異質に見えた。いや、周りから特に浮いているとか、そういうわけではない。一見すれば変わらない、造りかけの人形のようだった。しかしなんというか、その表情は僅かに他と違うというか、悲愴にのみ囚われているわけではないというか……。

 要するに、わずかに希望を抱いているような、何か光を見つけたような、そんな思いがその人形の中に内包されているような気がしたのだった。

 

「こんにちは、榊原君」

 

 そして聞こえてきた、予想外(・・・)の声に僕は振り返った。そこに立っていたのはこの人形たちを造った主――霧果さんだった。

 

「あ、ど、どうもこんにちは」

 

 てっきり見崎がくるとばかり思っていた僕は思わず動揺して、挨拶に詰まってしまう。

 

「ごめんなさいね、驚かせてしまったみたいで。……鳴はちょうど今買い物に出ちゃったところなの。もう少ししたら戻ってくると思うけど、よかったら上がっていかない?」

「いえ、すぐすむ話ですし……。それまでここを見学させてもらおうと思ってましたから」

「そう、造った人間としては喜ぶべきかしらね」

 

 言葉と裏腹、特に霧果さんはなんの感情も篭っていないようにそのように返した。次いで沈黙が広がる。ああ、やっぱりこれは苦手だ。僕は誤魔化そうと、さっき見ていたまだ腕と足のない、違和感を感じた人形の方へと目を移していた。

 

「その子……。最近手がけたの」

 

 霧果さんが僕が見ているものに気づいたのだろう、そう説明してきた。

 

「だけど造っているうちに……なんだか違う、って思いがふとよぎって。……でも、廃棄しようとしても出来なかった。それで、そこに陳列してあるのよ」

 

 だとするなら、僕が感じた違和感は間違えていなかったのかもしれない。造っている本人が感じている以上、それはそういうことになるだろう。

 

「……鳴、最近少し変わってきてね」

 

 不意に、霧果さんは話題を変えてそう切り出した。

 

「今度クラスで合宿があるそうね? あの子、学校のことも部活のこともあまり話さないし、そういうイベントも参加自由なら私に何も相談せずに不参加にすることが多かったんだけど……。参加していいか、って聞いてきて。……それだけじゃなくてお弁当を自分で作れないか、とかって相談もしてきたりして。私も料理はダメだから、結局教えられずじまいだったんだけど」

 

 そうだったのか……。まあ普通に考えたらいいこと、なのだろう。以前来た時に見た2人のギクシャクした関係はなんだがあまり心地よいものではないように思える。

 

「……私の勝手な推測だけど、鳴がそんな風に変わったの、榊原君のおかげなんじゃないかな、って思ってるの」

「僕の……?」

「ええ。だって、あの子は今年の4月まで、学校のこととかほとんど話そうとしなかった。……まあ私も聞こうとはしなかったけど。でもそのお弁当の話のとき、なんでか聞いてみたの。そしたらあの子……。『クラスで定期的に食事会みたいにご飯を食べることがあって、今のままだと少し寂しいから』って。あなたを連れてきただけでも驚いたけど、その話を聞いてますます驚いたわ。しかもその輪の中心は榊原君、あなただって言うじゃない」

 

 若干誤解がある。あれは赤沢さんが半ば強引にやっている会で、確かに僕は中心にいるかもしれないが、決して実行している側ではないのだ。しかしあの場にいるのは事実であるし、別に否定するまででもないか、と思う。

 

「男女間の関係云々までは私は口を出さないし本人達に任せるけど……。榊原君、出来ることなら鳴と友達でいてあげて。……いえ、あの子から間接的とはいえ『半身』を取り上げてしまって……しかも未だ前に進むことの出来ない私が……言っていい事ではなかったわね……」

 

 そう言うと霧果さんは僕に背を向け、この部屋の奥、エレベーターが隠れたカーテンの手前にある棺に入った人形に近づき、そっと頭を撫でた。

 そのあたりの事情は見崎から聞いている。一度流産してしまったことで子供を産めない身体になってしまったこと。養子として見崎を藤岡家から引き取ったが、かつて我が子を失ったショックからもう2度と我が子を手放したくないという怖れのために藤岡家と疎遠にしつつあること。そしてその心を埋められないと知っていながら、今撫でている人形をおそらく産まれてくるはずだった我が子の代わりとして造り、さらに今も人形を造り続けていること。

 何かを言いたい。だが、ただの他人でまだ子供である僕にそこに首を突っ込む権利など、口を挟む資格などあるのだろうか。それでも、やはり何かを言いたかった。ならばせめて、と僕は口を開く。

 

「僕も……見崎さんとは仲良くしたいと思っています。たまに僕が振り回されちゃうこともあるけど、一緒にいて楽しいですし……。だから、いい関係を築けていければいいなって思います」

 

 驚いたようにその僕の言葉を聞いていた霧果さんだったが、不意に小さく吹き出した。次いで小さく咳払いし、少し優しげな表情に変わって僕に語り掛けてくる。

 

「……榊原君。それって、聞きようによっては完全に告白よ?」

「え……えっ……?」

 

 そんなつもりは全くなかったのに……。なんだかまずいことを言ってしまったようで、急に恥ずかしくなり、顔が熱くなってきた。

 

「でも……嬉しいわ。鳴をそこまで思ってくれる『友達』がいるってわかっただけで。……これからも鳴をよろしくね」

「あ……はい、こちらこそ……」

 

 言ってから、これもなんだか違うんじゃないかと言う気がしてきた。案の定、霧果さんは小さく笑っている。

 

「……まあさっきのあれは、あくまで『友達』として言った、ということで捉えておくわ。鳴には言わないでおくし、あの子にも……言っても気付かなそうな子だけど、あまり迂闊なことは言わない方がいいと思うわよ?」

 

 返す言葉もない。僕は項垂れて「わかりました……」と答えるしかなかった。

 

 と、その時、カーテンの陰からエレベーターが開く音が聞こえた。多分見崎が帰ってきて降りてきたのだろう。

 

「榊原君……?」

 

 そう言ってカーテンをくぐり、僕と霧果さんというツーショットを見て見崎は少し驚いた様子だった。

 

「おかえりなさい、鳴。ごめんなさいね、丁度いいタイミングで買い物なんて頼んでしまって」

「……ううん、別に。買った物は冷蔵庫に入れる必要があるもの以外はリビングの机に置いておいたから」

「そう、ありがとう。……榊原君に上がっていくように提案したんだけど、大した話じゃないからここで待つって。だから少しお話してたのよ。……じゃあ私は戻るから、あとは鳴、よろしくね」

 

 そう言うと、霧果さんは入れ違いで見崎が乗ってきたエレベーターに乗り込んだようだった。だが霧果さんの気配が消えても見崎はしばらく何も話そうとしない。なんだか、不機嫌そうにも見えた。

 

「あの……見崎?」

「お母さんと……あの人と何を話してたの?」

「いや、別に世間話だよ。仲良くしてくれてるみたいでありがとう、とかこれからもよろしくお願いするね、とか」

「……ふうん」

 

 見崎が右の目で僕を見つめてくる。すると、不意に彼女は左目の眼帯を外した。そして今度は両方の目――と言っても左目は美しい翡翠の義眼でだが、見つめてきた。

 

「……嘘は、言ってないみたいね」

「左目で見るとそんなことがわかるの?」

「……気がしただけ」

 

 よかった。いつもの見崎だ。突然眼帯を外したから少し驚いてしまった。

 

「それに榊原君はこの目が綺麗だ、って言ってくれたし。……だから、ね」

 

 そういえば以前そう言ったっけ。事実、彼女の碧の義眼は美しい。さっきも目があった瞬間、まるで吸い込まれるような錯覚を覚え、同時に本当に嘘をついたらばれるような気にさえなっていた。

 

「……それより急にどうしたの? 口頭で済むような用事なら電話でもくれればいいのに」

「その電話番号がわからないから来たんだよ」

「……名簿、もらってないの?」

「何かあったら勅使河原から連絡来てたしあんまり気にしてなかったけど、なかったみたい。今度久保寺先生からもらうよ」

「そっか……。だからここが私の家だってわからなかった、ってことか」

 

 ああ、そう言われてみればそうか。名簿には住所が書いてあるだろう。本来なら持っていないわけがないのだが、転校するはずだった日を前に入院だの色々ごたごたがあってその辺りがうまくいっていなかったということのようだ。

 

「それで、何?」

「なんか勅使河原が『クラス合宿は山だから海に行こう』みたいなことを言い出してさ。トントン拍子に話が進んじゃって、参加費用1人3000円で隣町の海沿いにあるリゾートホテルに1泊2日で小旅行することになったんだ。食事は出ないから自分達で作ることになるけど……」

「それの誘い?」

「そう。どうかな、って。7月31日と8月1日なんだけど……」

 

 と、日付を聞くと同時に見崎の表情が僅かに曇った。もしかすると日程的に都合が悪いのかもしれない。

 

「……ごめんなさい。興味はあるの。だけど……その日は外せなくて……」

「そっか……」

「……その日の少し前に父が久しぶりに戻ってくるの。普段は海外を飛び回ってるから、久しぶりの休暇とかで。それで、両親と別荘に行くって事が決まってて」

 

 なるほど、久しぶりの家族水入らず、ということか。それにしても別荘とは……。ちょっとうらやましい……。

 

「埋め合わせ、ってわけじゃないけど、合宿には参加するから」

「うん。本当は海も一緒に行きたかったけど……仕方ないね」

 

 言ってから、これもさっき霧果さんに突っ込まれた「聞きようによっては」ってやつじゃないかと若干後悔した。それで顔を赤くする僕だったが、見崎は特に気にした様子もなく僕に背を向けてメモ帳らしきものに何かを書いている。

 

「どうしたの?」

 

 僕の問いに答えず、見崎はペンを走らせ、そのメモを僕へと手渡した。そこには数字の羅列が2つ並んでいた。

 

「はい」

「……これは?」

「連絡取る時不便だと思ったから、携帯の番号。上が私の、下が未咲の」

 

 えっ、と思わずそのメモと彼女を2度ほど見比べてしまった。さっきまで眼帯を外していた彼女が、今は眼帯を戻そうとしている。

 

「……何?」

「見崎、携帯持ってたの?」

「持たされてるの。……言わなかった? お母さん、私のことを手放したくないって思ってるって。だから持たされてるの。……いつも監視されてるみたいで本当は嫌なんだけど」

「ああ。だから『嫌な機械』って言ったんだ」

 

 まあね、と彼女は返す。でも持ってるなら持ってるでもっと早く言ってくれればよかったのに……。僕は見崎からメモを1枚受け取り、自分の番号を書いて返した。俗に言う「ワン切り」というものをやりたいが、あいにくここは地下なので電波が悪い。

 

「榊原君の番号、未咲に教えてもいい?」

「勿論。……ああ、そういえば退院したんだよね。お祝いとか……」

「それを兼ねて、そのうち何か考えてるから。多分あの子から連絡が行くと思う。……あまり期待はしないで楽しみに待ってて」

 

 そう言うと、見崎は僕に背を向けた。本音を言えば一緒に海に行きたかっただけに少し残念ではある。

 

「じゃあ次は合宿で、かな」

「そうね。……じゃあね、さ・か・き・ば・ら・君」

 

 いつも通りの様子で彼女はカーテンの陰へと消えていく。その彼女と、部屋のもっとも奥にある棺に入った彼女に似た人形。その両者を一瞬見つめた後で、僕も踵を返して階段の方へと向かった。

 

 

 

 

 

「恒一君、聞いてる?」

 

 そんな僕の回想は隣から不意にかけられた赤沢さんの声によってかき消された。「ああ、うん」と僕は適当な相槌を打ってそれに答える。

 

 結局、見崎が来なかったことでもっとも顔の広い赤沢さんに僕の分の枠を譲ることになった。ちなみに日曜日の時点では勅使河原は風見君に連絡したものの「受験の夏だから」という理由で断られたらしく、僕の分も空いたので2枠が空きとなっていた。残りの2枠は、赤沢さんが行くと決まった直後、まずは杉浦さんに連絡を取ったらしい。そこで杉浦さんは中尾君に連絡を取ったそうだ。……なんだか意外だった。さっきも中尾君に優しく接していたし、もしかして杉浦さんは彼に気があるのではないか、と思ってしまう。……もっとも、怖いからそんなことは聞けない。あるいは、普段一緒に行動していることが多いから連絡したのだろうか。……よし、今の考えということにしておこう。それがもっとも無難だ。

 その状態で月曜を向かえ残りの2枠をどうするか、となり、赤沢さんは桜木さんを誘うことを提案した。演劇部の人達とは交流がよくあったが、桜木さんとは小学校以来あまりここまで交流していないから、と言っていた。桜木さんはあっさりそれを了承した。こうなればあと1人は簡単に集まる。僕は勅使河原を小突いて「もう1回風見君誘ってみたら? 腐れ縁でしょ?」ともっともなことを言って誘わせ、ふたつ返事しそうな勢いで彼は前日の発言を撤回して食いついて、今のメンバーに確定したわけである。

 

「それにしても海か……。久しぶりだわ」

「そうなの? 泉美の家なら海の近くに別荘とか持ってると思ってたんだけど……」

「ゆかり……あなた私のことどういう目で見てるのよ?」

「お嬢様でしょ? 今日乗ってきた車だって随分といい車だったし、小学校の時に新築して引っ越した先も立派な家だったし。……そもそも中学生のくせにコーヒー好きでお気に入りがハワイコナだとか言ってる時点で完全にお嬢様じゃないの。あれってブルーマウンテンに次ぐ高級豆じゃなかった?」

「べ、別に良いじゃないの! 好きなんだから!」

 

 僕を通り越して行われる2人の会話に、僕はぽかんとしたまま聞き役に徹することしか出来なかった。本当に仲が良いんだと改めて確認する。昼食会の時も何度か話すことはあったが、まさかここまでお互いに気が置けない間柄だったとは。

 

「どうしました、榊原君?」

 

 そんなぼーっとしていた僕が気になったのだろう。今度は桜木さんがそう尋ねてきた。

 

「あ、いや、2人本当に仲が良いんだな、って改めて思ったから」

「そんなに意外かしら? 勅使河原と風見だってでこぼこなのに息合ってるじゃない」

「言われてみればそうなんだけど……」

「泉美は私よりも杉浦さんや演劇部の人といる方が多いように思えるからじゃないかな。飛井小学校にいた時はあんなに私にべったりだったのに……」

「べ、べったりって何よ! そういうあんただって引っ込み思案で真面目しか取り得がなかったじゃないのよ。それが夜見北に入ったらずっとクラス委員やってるとか聞いてびっくりしたわよ」

「大体入学して最初って成績いい真面目そうな人に先生がクラス委員頼んでくるものじゃない? 泉美もそうじゃなかった?」

「私は断ったわよ、面倒だったもの。……って恒一君が全然会話に入れてないじゃないの!」

 

 いやいや、おふたりのお話を聞けてるだけでも楽しいですよ。事実、普段全く絡んでいるところを見ない2人が仲良さそうに話している光景というだけで十分に興味をそそられる。

 なお、今赤沢さんは僕が会話に入れていない、と僕だけを対象に言ったわけだが、前の座席の2人のことはまったく気にしなくていいのである。さすが年上趣味の望月と言ったところか、怜子さんとそれは嬉しそうに話していたからだ。

 

「恒一君も聞き役に回ってないで、何か話してよ」

「そう言われてもねえ……」

「榊原君、急に話振られるの苦手そうだから」

 

 桜木さんが小さく笑った。おっしゃる通りで。この間綾野さんに「アドリブ苦手でしょ」と言われたが、こんな具合に急に話を振られると話題をどうするか考えてしまうのだ。

 

 と、その時。前の方での会話も途切れた、いや、厳密には途切れさせられた(・・・・・)らしい。運転席の方から舌打ちらしき音が聞こえてきた。直後、望月がビクッと体を震わせたのがわかる。

 

「……あのトラック、右車線のくせにチンタラ走ってんじゃないわよ」

 

 あ、始まったか、と僕は苦笑を浮かべる。実は怜子さん、普段温厚だし優しくていい人なのだが、酒癖が悪いことと、このハンドルを握ると性格が変わる、というか運転が荒いというところが非常に問題なのだ。

 今もどうやらイラッときてしまったらしく、エンジンをふかして煽り気味に前の車に続く。そして右車線を走るトラックより左車線側から前に出た瞬間、ウィンカーを上げて一気にトラックの前へと滑り出た。……そう言えば出る前に「安全運転でお願いしますよ」って念を押すのを忘れていてたとようやく思い出す。

 

「ったく、大人しく左車線走ってろってのよ。……あ、ごめんなさいね望月君、それで、なんだっけ?」

 

 そして全く気にした様子もなくこれである。これには望月も完全に引いてしまったらしく「あ、え、えーと……」と言葉を濁すばかりだった。

 

「……なかなか過激なのね」

 

 そんな一連の流れを見ていて、赤沢さんが一言。

 

「まあね……。母方の血筋なのかな。おばあちゃんも未だに車運転するから、登校してしばらくは送ってもらったし。……夜見山に何度か来た時も両親で交代で運転したんだけど、父さんより母さんの方が運転荒かった記憶もあるよ」

「女性というものはそういうものかもしれませんよ? 二面性がある、というか」

 

 ……さすがにここで「じゃあ桜木さんも?」と聞き返すほど僕には勇気がなかった。今僕に見せている笑顔はそんなことを感じさせないようにすると同時に、その質問をさせない、という強制力まで持っているようにも感じていた。

 

「否定は出来ないかもしれないわね。……まあ私の場合演劇部だから、そういうところを意図的に使い分けて演じなくちゃいけない部分もあるんだけれど」

「文化祭の時の演劇部の泉美を見るときっと榊原君もびっくりすると思いますよ。……今年は何やるの?」

 

 その話題になると赤沢さんは少し機嫌を損ねたように窓の外に視線を向けた。

 

「……創作」

「へえ。どんな感じの?」

「中世物よ。王妃となるべき人を巡って婚約を交わした王子と、その王妃を愛してしまったが故に、叶わぬ恋と嫉妬に狂って王子に刃を向ける騎士の物語」

「で、泉美の役は?」

「……後者」

 

 桜木さんがクスッと笑いをこぼした。それを赤沢さんはやはり不機嫌そうに見つめる。

 

「何、そんなにおかしい?」

「ううん。本当に泉美って色んな役やるんだなあって。2年の時は創作劇で空を飛ぶことを夢見る女の子の役だっけ? それで1年の時はシンデレラで主役だったし」

「……よく覚えてるわね」

「有名な話じゃない。『1年で演劇部の主役を務めた子は本番直前まで演技に悩んでたのに、ある日を境に見事にシンデレラを演じ切ってみせて、文字通りのシンデレラになった』とかって。校内新聞で取り上げられてた気がしたけど?」

 

 うっ、と赤沢さんは言葉を詰まらせ、今度は少し恥ずかしそうに窓の外へ視線を移した。

 

「ほんとよく覚えてるのね。……でも、あの時わかったこともあった。ほんの些細な、何てことがない出来事も、人によっては運命とも感じられるし、別な人からすればそれは取るにも足らないことでもある。……そしてそんな出来事のおかげで、私はあの時主役を演じ切ることができた」

「そのおかげで2年目も主役になったと。それで、今年も?」

「……一応は」

「え、じゃあ赤沢さんって3年連続で主役をやるの!?」

 

 普通部活動なんてのは年功序列じゃないが、学年が上の人がいい役をやるものだろう。それを3年連続とは演劇部はよほど人材不足なのだろうか。

 

「そういうことになるわ。ちなみにさっき言った劇の配役、王子役は綾野だから。……王子なのに綾野とはこれ如何に」

「何うまいこと言った気になってるの」

 

 2人が笑った理由を考え、しばらく経ってからうちのクラスの王子君とかけてることにようやく気づいた。ということは……。

 

「赤沢さんと綾野さんの殺陣が見られるの?」

「殺陣ってほどでもないわよ。大したことやらないし」

「さらに王妃役は小椋さんだったり?」

「残念。その役は別なクラスの3年の子がやるわ。あの子はメイドの役。それで王子の命令で私が演じる騎士に探りを入れて、不穏な空気を感じて持ち込んだワインで騎士の毒殺を謀ろうとする。ところがそれがばれて斬られて2階から落ちて死んじゃうの。そのことをきっかけに騎士が王子に反旗を……ってあんまり言うと面白みがなくなるわね。まあそんな感じの創作物よ」

 

 へえ、と僕は相槌を打ちながら聞いていた。面白そうだ。今から文化祭が楽しみになってくる。

 

「それにしても大変ね。男子がいないから、王子役も騎士役も女子がやるんだ?」

「そ。……恒一君、今からでも入部してくれない? ……ああ、でもそうなったら王子役か。それはダメだわ、私嘘でもあなたは斬れないもの」

「じゃあ騎士が王妃じゃなくて王子を愛するが余り、って脚本を変えちゃえば?」

「変えられるわけないでしょ! そもそも騎士は本来男よ! ……ゆかり、あんたの頭の中そんな感じなわけ!?」

「私は違うわよ? ……柿沼さん辺りはその辺に理解ありそうだし、小椋さんもお兄さんの影響で知識ありそうだけど」

「な、何言ってんのよ! 恒一君に変なこと吹き込まないで!」

 

 大丈夫です、赤沢さん。今の話全然ついていけませんでした。

 そして2人のペースに乗せられて聞きたかったことを聞きそびれてしまった。話の流れを止めるようで悪いと思いつつも、僕は口を開く。

 

「ごめん、ちょっと話戻していいかな?」

「ええ、どうぞ」

「赤沢さん、3年連続主役なんだよね? 1年生の時、3年生いなかったとか? 普通主役って学年が上の人がやるものだと思ってたんだけど……」

 

 僕からの率直な質問に赤沢さんは一瞬困ったように眉を寄せた。そして少し考え込んだ様子の後で話し始める。

 

「……私が入部した時の演劇部は3年生が4人、2年生が2人だった。私の学年からは6人ぐらい入ったんだけどね。それで、3年生が結構ストイックな人達で。『役とは自分がもっとも入り込める存在でなくてはならない』みたいなポリシーを持ってて。役を決める時に全員で一度一通り全ての役をやったの。その上で顧問の千曳先生と相談して、自分達にもっとも合う役を選んだ。そこで先輩達は私を主役に推したのよ。……はっきり言って困ったけどね。別に先輩たちにいびられたわけじゃなかったけど、『演技自体はすごくいいけど、何かもう少し足りない』みたいなことは言われ続けてた。それをずっと悩んで探してて……。あとはさっきゆかりが言ったとおり。あることを境に『変わった』って先輩達に褒められ、無事その年は演じ切ることが出来た。

 翌年は先輩達2人が主役を辞退して私に押し付けてきたからやることになったってだけ。本人達が納得してるなら、ってことでやらせてもらったけど、一昨年と、あと今年の役よりは正直言ってやりやすかった印象かな」

「純粋な女の子の役だったものね。……本来の泉美なわけだもの」

「ちょ、ちょっとゆかり!」

 

 クスクスッと桜木さんは笑った。どう反応すべきか、僕は少々困る。

 

「……ちなみに恒一君は私のことどう見てるの?」

 

 と、不意に赤沢さんがそんな質問をぶつけてきた。どう、と言われても……。

 

「……言いたいことははっきりと言う、芯の強いしっかりした女性、って感じかな」

 

 なぜか桜木さんが吹き出した。当の赤沢さんもなんだか少し面白くなさそうな顔をしている。

 

「ご、ごめん……。なんかまずいこと言った?」

「……いいわよ、別に。まあそう見られるでしょうから」

「演じていたのがいつの間にか本当になってた、ってやつかしら?」

「ちょ……! ……じゃあ恒一君、ゆかりのことはどう見てるの?」

「さ、桜木さんのこと?」

 

 彼女は普段見せてるような笑顔を僕に見せてきた。う、ううむ……。なんと言ったらいいだろうか……。

 

「えーと……。頭がよくておしとやかで優しそうな印象、というか……」

「何よそれ! ゆかりばっかり贔屓じゃない!?」

「そんなことないわよ泉美。……榊原君、割と私のこと見抜いてるみたいだし」

 

 ……え? これまた何かまずいことを言ってしまったのだろうか……?

 

「何々『そう』というのは、一見そうであって実はそうでもないかもしれない、という風にも取れるんじゃないかな、って。……いいところ見抜きますね、榊原君」

 

 桜木さんの笑顔はさっきと変わらなかった。が、その意味合いが明らかに異なっていたように感じた。……墓穴を掘った。自分がそこに埋まらないように祈らなくてはならない。

 

「後ろの盛り上がってる諸君、そろそろ目的地に着くわよ。……それにしても恒一君はモテモテだったわね」

 

 そこで前から怜子さんがそう割って入ってきた。今の話をちゃんと聞いていると「モテモテ」なんて簡単な一言じゃすまないんですが……。

 

「なんだかあっという間だったわ」

「そうね。車酔い心配してたけど、泉美と榊原君のおかげで大丈夫だったし。……泉美は帰りもこの車に?」

「恒一君がそうするなら、そのつもりだけど」

「私は向こうに乗るかも」

「そうなの?」

「榊原君の勘がいいから、言っちゃうけど……飴鞭のつもりでいたし」

 

 桜木さんは普段通りの笑顔を浮かべている。赤沢さんはわからない様子で首を捻っているが、僕には彼女が言わんとしていることがわかってしまった。彼女は、風見君が自分に思いを寄せていることを知っているのだ。そして知っている上で飴鞭……つまり来る時は別な車で鞭、帰りは同じ車ということで飴と使い分けるつもりなのだ。……風見君、君はとんでもない人を狙っているんだね……。

 同時にやはりこの人は間違いなくあのクラスの裏の裏の支配者だと思うのだった。「女子の二面性」か。……頼りにしてます、決して逆らいません、委員長。

 

 車が止まる。目的地に着いたのだ。赤沢さんの家の車も到着したようだった。

 これから海が待っている。だがその前に……。もう1台の方のこの車内の会話を全く知らない2人の顔を想像する。おそらく、彼らからは「お前ばっかり」みたいな恨み言をぶつけられるんだろうなと、僕は早くも先行きが不安になっていた。

 




Q.原作アニメの水着回において足りなかったものは何でしょう?
A.特典だか何かで公開されたのに既に退場済みだったために幻となった桜木さんの水着

というわけで座席1つずつ詰めてもらって風見・桜木ペアを追加してあります。
ちなみに本編中で杉浦さんと桜木さんがどっちに乗るか迷うシーンがありますが、書いている当人がどっち乗せるかで相当迷いました。結果として本来はここで退場済みだったために出番がないはずの桜木さんを優先させました。

なお、中尾の乗り物に弱い設定は捏造です。朝家の階段で転んで頭打ってたとかあるわけないじゃないですかやだなー。


それから詳しくは11話の後書き部分で補足してありますが、「赤沢さんは小学4年までは桜木さんと同じ学校で、5年になるときに家を新築して今の住所に引っ越した」という設定を取っています。これで桜木さんとの接点という漫画版の部分をのこしつつ、現住所が紅月町であることの整合性が取れていると思ったので。

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