ぼっちではありません、エリートです。   作:サンダーボルト

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銀魂も盛り上がり、艦これも作戦が始まりましたね。

ちょっとあっさり目ですが、二人の仲直り回です。


たった一歩を踏み出せば、溝はきっと越えられる

休みが明けて月曜日。由比ヶ浜さんへのプレゼントが鞄の中で潰れてしまわないように、荷物を二つに分けて学校へと行く。そういえば、雪ノ下さんが由比ヶ浜さんに話をすると言っていましたが、どのタイミングで話しかけるつもりなのでしょうか。彼女は三浦さんと二回も衝突していますし、学校内でもかなりの知名度ですから、教室に来たらまたひと悶着ありそうですね。

 

なんてことを考えていたら校門へ着きましたが……おや、僅かながら人だかりができていますね。しかも立ち止まっているのはいるのは男ばかり。微妙な知名度のアイドルでも転校してきたのでしょうか。人と人の僅かな隙間から人だかりの中心を覗いてみると……そこにいるのは雪ノ下さんではありませんか。しかも、相対しているのは葉山君のグループ、の中の由比ヶ浜さんのようです。

 

……え、まさかあの人、校門の前で待ち伏せしてたんでしょうかね?だとすれば、周りの野次馬が男ばかりなのも頷けますが…。

 

親の仇でも見るかのような目で睨みをきかせている三浦さんに、気まずそうに視線を交わす葉山君達。そしてそれらをガン無視して由比ヶ浜さんと何か話している雪ノ下さん。言葉を交わせば十中八九罵り合いに発展するから、無視を決め込むことにしたのでしょうか。残される由比ヶ浜さんが気の毒ですねェ。

 

教室で自分の席に着くと、川崎さんと戸塚君が駆け寄ってきました。

 

 

「ねえ、なんか校門に雪ノ下がいたんだけど…」

 

「比企谷君、何か聞いてた?」

 

「……まあ、仲直りに向けての第一歩とでも言いましょうか」

 

「仲直り?ふーん、それでか…」

 

「ちゃんと仲直りできたらいいね」

 

「それはあの二人次第ですかね」

 

 

不穏な空気を纏った葉山君のグループが入ってきたところで、会話を止めて席に戻っていく二人。三浦さんの不機嫌面が酷いですね。葉山君が何やらご機嫌取りをしているようですが、当事者の由比ヶ浜さんが上の空状態なので効果は薄いようです。心中お察しします。

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

授業が終わって帰り支度を済ませていると、由比ヶ浜さんがおどおどしながら私の隣りへやってきました。

 

 

「ひ、ヒッキー…あのさ…」

 

「由比ヶ浜さん、今日は私は部活を休みます。雪ノ下さんにそう伝えておいてもらえますか?」

 

「え、あ、えっと…」

 

「朝、雪ノ下さんに言われたのでしょう?部室に来てほしいと」

 

 

由比ヶ浜さんは無言でこくりと頷いた。

 

 

「なら、早く行った方がよろしいですよ。あの人、信じられないくらい早く部室にいますから」

 

「……う、うん…」

 

 

教室から廊下に出て、由比ヶ浜さんは部室へと向かう……と、思いきや反対にこちらに振り向きました。

 

 

「ヒッキー、お願い…一緒に来てくれない…?」

 

「お断りします」

 

 

由比ヶ浜さんの顔には不安の色が見える。きっと仲直りの時に私にフォローしてもらいたいのでしょう。その気持ちは理解できますが、今回に限っては私は口出しする気はありません。これはあなた方二人の問題ですから。

 

お願いをあっさり断られた由比ヶ浜さんは、大きく肩を落とす。その目は若干涙で潤んでいますが、そんな目をしても私は行きませんからね。

 

今回の出来事は二人の関係を大きく変えるものとなる。ただの部活仲間か、それとも、もっと進んだ関係か。私の介入によって左右されず、二人がどうなっていくのか。非常に興味があります。

 

 

……彼女らはお互いに、本物という存在になれるのか。

 

 

私にとっての信女さんのように、かけがえのない人になれるのか。

 

 

本音を言っても逃げなかった相手。

 

 

本音を隠さず言える相手。

 

 

それぞれ理由は違いますが、求めていたものはきっと同じものなのでしょう。

 

 

そして今、見つけかけたものを無くしてしまうのを恐れている。雪ノ下さんも由比ヶ浜さんも、いつの間にここまで仲良くなったのか……自分でも不思議に思っている事でしょう。

 

 

「……」

 

 

なおも由比ヶ浜さんは、奉仕部へ向かおうとはしない。雪ノ下さんに拒絶されるのを恐れ、怯えてしまっているのでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……やれやれ、世話のかかる人だ。

 

 

「由比ヶ浜さん」

 

 

私が声をかけると、由比ヶ浜さんは俯き気味の顔を上げた。私は鞄の中から丁寧にラッピングされた箱を取り出し、由比ヶ浜さんの顔の前へと差し出した。

 

 

「お誕生日おめでとうございます」

 

「……えっ?」

 

 

ぽかんとアホ面をさらす由比ヶ浜さん。箱と私の顔を何度も見てからようやく我に返り、おずおずと両手でプレゼントを受け取ってくれました。

 

 

「あ、ありがと…。ヒッキーってあたしの誕生日知ってたんだ…」

 

「自分でメールしてたの覚えていないんですか?」

 

「そうだっけ…?」

 

 

頭を人差し指でかきながら、嬉しそうにはにかむ由比ヶ浜さん。さっきまでの不安な気持ちは幾分かは吹き飛んだようですね。

 

 

「まあ、由比ヶ浜さんの誕生日を祝いたいと提案したのは雪ノ下さんなんですけどね」

 

「……へ?」

 

「では、私はこれで」

 

 

私は踵を返して歩き出す。そして少し経つと、廊下を慌ただしく走る音が遠ざかっていきました。流石に露骨過ぎたかもしれませんが、あの人の頭の出来だと理解してもらえるか不安でしたからねェ…。

 

 

…しかし、エリートとしたことが凡人の手助けをしてしまうとは…。

 

 

……。

 

 

……まあいいか。認めてしまおう。

 

 

まごまご悩んで足踏みをしているなら、一歩を踏み出す手助けをしてあげる程度には、あの人達の事を気に入っているみたいですから。

 

 

 

 

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翌日、放課後になった瞬間に由比ヶ浜さんが消えていました。もしや絶交したのでしょうか、と頭の片隅で考えながら部室へと向かう。そして部室の前へ立つと、そんな予想は簡単に砕かれました。中から聞こえる騒がしい声。その主は恐らく彼女でしょう。

 

 

「どうも。私が最後のようですね」

 

「ヒッキーやっはろー!」

 

「こんにちは。……由比ヶ浜さん、いい加減離れてちょうだい」

 

 

扉を開けて私の腐った目に入りこんできたのは、女の子同士のイチャコラでした。実際は由比ヶ浜さんが雪ノ下さんに抱き着いてるだけなんですけどね。

 

 

「ね、ね、聞いて!ゆきのん、あたしのためにケーキ焼いてくれたんだよ!」

 

「ほう、さぞや美味だったのでしょうねェ」

 

「まだ食べてないよ?」

 

「……はい?」

 

「だって、昨日ヒッキーいなかったし。ね、ゆきのん」

 

「……ええ。あなた一人を仲間外れにはできないって、由比ヶ浜さんが…」

 

「て、わけでさ、今日パーティしようよ!大丈夫!もうお店とか予約してあるから!」

 

「抜け目ありませんね、こういう時のあなたは…」

 

「その頭の回転の速さを、日常でも活かせたら…」

 

「はい、今日は難しい話はナシナシ!ヒッキー、さいちゃんとか誘っておいてね!」

 

「仕方がありませんね。凡人のあなたが輝ける年に一度の日くらい、顎で使われてあげますよ」

 

「……ケーキ、足りるかしら…」

 

 

彼女らが昨日、何を語り合い、何をぶつけ合ったのかは知る由もありません。ですが、こうして共に誕生日を祝う事が出来るのは喜ばしいことなのでしょう。興奮冷めいらぬ様子ではしゃぐ由比ヶ浜さんと、鬱陶しそうにしながらも時折微笑んでいる雪ノ下さん。きっと彼女らの関係は、友達という簡単な言葉で表す事はできないでしょう。その答えが何なのかはエリートである私にも分かりませんが、少なくとも答えに一歩近づいたのは確かです。

 

 

ああ、そうそう。少しだけ成長した由比ヶ浜さんを見て、私はある事を確信しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「由比ヶ浜さん。あなたが首にしてるそれ、犬用です」

 

 

結論:アホは成長してもアホですね。




物足りないという方はごめんなさい。久々の執筆ではこれが限界なのです…。

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