特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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なんか、だんだん投稿間隔が開いとる気がする。頑張らんと……


俺、新兵器を試します。

「これが、新開発した艤装?」

「そうです、これがしんかいはつした15.5せんちけいきかんほう、M249です」

「M249、ベルト給弾式の分隊支援火器。火力は十分あるから対空砲向きな艤装ではあるが、実戦で使えるのか?」

 

 俺はそう言いつつ、このリロードの手間がかかりそうな軽機関砲を見やる。確かに、連射サイクルは速いし、対空砲としては申し分ない火力を有している。だが、遮蔽物のない海上においてはリロードの遅さはそれがそのまま欠点となる。

 分隊支援火器とは、その名のとおり「分隊」の進軍を「支援」する「火器」であって、それそのものが中核になっているわけではない。この理論がまかり通るなら、艦船(フネ)には大口径の主砲と機関砲、大出力の機関部にありとあらゆるミサイルを積んでおけば事足りることになる。艦娘版アーセナルシップの完成だ。

 

「確かに、15.5サンチの機関砲にはロマンがあるし、火力の面でもうれしいけど、少々使い勝手が悪そうな艤装だな。もっと使いやすい機関砲ない?」

「では、これはどうでしょう?」

「M4カービン?だいぶ使いやすくなった印象は受けるが……これは14サンチ砲か」

 

 口径も多少小さくなり、取り回しもよくなったので、これなら演習中に性能実験もできる。「オプションパーツの換装により、より多彩な戦況に対応できる機関砲を目指す」とは妖精さんの弁だが、今のところ完成しているのは光学式ダットサイトと4倍率ライフルスコープ、そしてフォアグリップと60サンチ下部固定式臼砲のみ。今後様々なオプションパーツが開発されていくのだろうが、そこは妖精さん次第、といったところか。

 

「こいつはロールアウト前に性能実験をして、本土の鎮守府へ売れるかどうか試してみるか」

「何じゃ?何やら面白そうなモノを造っておるの。吾輩にも使わせてくれんか?」

「構いませんよ、けど、数が少ないので壊さないでくださいね」

 

 俺の忠告に対し、利根ねーさんは「わかっておる」と軽く答えて4倍率ライフルスコープと60サンチ下部固定式臼砲を装備して、予備の砲弾と弾倉を持って演習場へと向かう。そして、ほぼ入れ違いに近い形で来た大和さんは4倍率ライフルスコープと、臼砲の代わりにフォアグリップを装備して持って行った。おそらくは中距離支援狙撃砲(マークスマン・ライフル)としての活躍を期待しての組み合わせだろう。

 ちなみに、編成については俺以外を全員入れ替え、土佐を高雄ねーちゃん――重巡の高雄と区別しようと思ったらこの呼び名になった――に、雲龍を葛城に、川内を神通に、夕立と春雨は陽炎と不知火になった。ちなみに、なぜ葛城がやる気満開かというと……今回の支援艦隊に一航戦と五航戦が来ていたからである。ちなみに、護衛はハイパーズだ。大方、憧れの先輩の前でカッコいい活躍を見せたいのだろう。

 

「瑞鶴先輩の前で恥ずかしいところは見せられない、頑張らないと……」

「肩に力が入りすぎてる、突っ張りすぎてると勝てる戦いにも勝てんぞ」

 

 憧れの先輩に見られているという緊張からか、ガチガチに固まっている葛城の肩を叩いてリラックスさせ、演習を始める。葛城の偵察隊からの入電で分かったのだが、戦艦と空母が後方で待機し、巡洋艦と駆逐艦が接近して攻撃を仕掛けてくるようだ。会敵は、おそらく時間の問題だろう。

 敵空母との制空権争いを葛城に一任し、俺は陽炎と不知火とともに接近する巡洋艦と駆逐艦に対し攻撃を仕掛ける。先行する利根ねーさんに対し、陽炎の14サンチ機関砲が火を噴き、うまく足を止める。その間に不知火が12.7サンチ砲とともに、手元のL.ホークを撃って吹雪を引き付け、残るのはテンリュウだけとなった。

 腰のブレードを抜き放って勇ましく突っ込んでくるテンリュウに対し、両手のL.ホークで弾幕を張りつつ距離を取る。だが、それでも距離を開けるには至らず、じりじりと距離を詰められる。こりゃ、ジリ貧だな、このままじゃブレードで切り裂かれる。なんとか距離を開けなきゃな……などと考えていると、14サンチ単装砲を足元に撃たれ、体勢を崩してしまう。テンリュウがその期を逃すはずもなく、ブレードを振りかぶって突撃してくる。まずい、このままじゃやられる……

 なんてな。

 俺はテンリュウの振りかぶったブレードに合わせて両手の拳銃を頭上に放り投げて構え、顔の前で両手を叩く。要は白羽取りをやって見せただけなのだが、相当意外だったのだろう、驚愕したテンリュウの顔が見える。この期を逃すな、無人在来線……あっ、違う、14サンチ単装砲二門、一斉射!!

 ()()()()()()()に装備した14サンチ単装砲が同時に跳ね上がり、あまりの事態に思考が追い付かないのであろうテンリュウの脇腹めがけて砲弾を撃ち込む。スカートの内側の14サンチ単装砲を跳ね上げるということは、すなわち下着が丸見えになるということで。おそらくは、そのことでさらに動揺したテンリュウの脇腹に砲弾が直撃する。そーいや、今日何色だったかな……などとくだらないことを考えつつ、テンリュウの手放したブレードを投げ捨てて降ってきた拳銃を回収する。

 

「これが実弾だったら()()()()()()()って……そう言いたいのかよ、お前は!!」

 

 それにしてもこのテンリュウ、意外とノリノリである。ふと気が付くと、60サンチ下部固定式臼砲で利根ねーさんを屠った陽炎が神通とともに敵空母と戦艦を叩くべく突出しており、合流を急ぐか、と考えていた次の瞬間、信濃提督に貸した拳銃の砲撃で一撃のもとに屠られる。迎撃が早すぎる、やはり戦艦のパワーは伊達じゃないか……って、今思い出したんだけど、信濃提督に貸したL.ホーク、()()()()()()()……あいつら死んでないよな……

 そんな俺の心配をよそに、テンリュウが14サンチ単装砲を乱射して突っ切り、先ほど奪われて捨てられたブレードを回収して再び突っ込んでくる。おそらく、こちらを斬りにかかってきているのだろう。だが、そうはいかない……と考えていると、大和姉妹がこちらに向けて砲撃を放つ姿が見えた。って、おい!!あいつら、味方ごと撃つ気か!?不知火は、吹雪を足止めしていたせいで遠すぎる、もう助からない。仕方ない、テンリュウだけでも連れて離脱するしかないか。

 離脱を決めたなら、あとはやることはひとつだけだ。呆然としているテンリュウを抱えて――抱えた際にテンリュウの胸を鷲掴みにしたが、緊急事態なので仕方ない――全速力で離脱、砲撃予定ポイントから抜け出す。大和姉妹の砲撃により、なかば切り捨てた同然の不知火と足止めを食らっていた吹雪が徹甲弾の雨を浴びて屠られる。すまん不知火、あとで埋め合わせはきっちりしてやる。

 捨て駒にした不知火に心中で詫びつつ、助けたテンリュウをその場に置いて反転、後方にいた敵陣に突っ込む。両手のL.ホークは残弾21発ずつ、弾幕を張るには少々心許ない。M4カービンは一発も撃ってないが……さて、どうしようか……と悩んでいると、今の今まで傍観していた綾波たちが「いい考えがあります」とアイデアを持ち掛けてきた。いったい何をする気だ?

 

――あなたは攻撃だけに集中してください、索敵は綾波が担当します――

 

『――そもそも、私たちがいるのに、ただの交代要員で済ますなんてもったいないでしょ?回避運動は任せてください――』

 

 俺はその提案に「頼んだ、綾波(アヤナミ)」とだけ答え、回避運動と索敵の全権を預ける。操縦手と観測手が増えたおかげで、俺は砲手に専念することができる。役割を完全に分担できる、多重人格ゆえにできる反則技だ。

 

――八時の方向より砲撃、十時の方向より、敵艦載機確認!!――

 

『――十時の方向へ突っ込みます、迎撃用意!!――』

 

「了解、迎撃開始!!」

 

 左腰に装備していた14サンチ機関砲を手に取り、目の前の艦載機めがけて弾幕を張って突っ込む。この弾幕で艦載機の半数は迎撃できたものの、葛城から大破の報告が入る。これで4対2、状況はますます不利になった。幸いにも高雄ねーちゃんは生きているので、三式弾をバラ撒いて援護してもらおう。

 高雄ねーちゃんに三式弾での援護を頼み、加賀さんに向けて突っ込む。こんなことなら、15.5サンチ機関砲持ってきとけばよかったかなぁ……などと遅まきに後悔しつつ、リロードを終えた14サンチ機関砲を加賀さんの飛行甲板めがけて乱射、発着艦機能を喪失させる。空母は大概、飛行甲板をたたかれたら置物にしかならない。これで3対2だ、状況は少しずつ好転してきている。あとは流れに乗るだけだ。

 だが、そうそううまくもいかないもので、信濃提督の持っていた薙刀に気づかずに突っ込み、石突で腹を殴られ吹き飛ばされ、そのまま大和砲6基18門の十字砲火を全身に浴びて大破判定を食らう。吹っ飛ばされて海面を転がりながら、綾波(アヤナミ)がそれぞれに謝ってくる。

 

――すみません……索敵ミスです……――

 

『――こちらもすみません……回避運動、遅れました……――』

 

「三者三様に、練度不足だったわけだな……まだまだ弱いな、()()()()

 

 今回の演習で、自分の力不足を嫌というほど思い知った俺たちは、遠征と畑仕事のほかに、練度向上のための訓練を追加することを決めた。

 ちなみに、最後まで残っていた高雄ねーちゃんは大和姉妹の砲撃と、テンリュウの雷撃によって倒されたとのこと。




今回の演習結果:戦術的敗北(C)

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