特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

98 / 121
最初に言っておく、特に何も言うことはない。


俺、改めて演習をします。

 川内ロイミュードを()()した次の日、俺は信濃提督とともに演習について協議していた。やはりというかなんというか、前回の演習は信濃提督にとっても不完全燃焼だったらしく、再戦を希望しているとのことだ。だが、こちらとしては願ったりかなったりである。ロイミュードの介入のせいで中断させられた演習を完遂させて、練度向上に努めるとしよう。

 

「ふぅん、やはりそちらとしても不完全燃焼であったか。私としても物足りない感じはあったからな、今回の提案を受け入れてくれてありがたい」

「こちらとしてもありがたい話です、中途半端に終わらされて不完全燃焼なんで。目一杯暴れたい気分です」

 

 ロイミュードのおかげで、ちっとも暴れられんかったからなぁ。せっかくだから目一杯暴れて、スッキリしたかったのに。だが、今回の演習でも重加速(どんより)のせいで再びお流れになっては、何のために信濃提督たちを招いたのかがわからなくなる。演習を通じて得るものが一つもなければ、俺たちはただ前線基地の設備を自慢しただけで終わってしまう。

 

――演習ですか、装備のほうはどうしますか?艤装全部乗せとなると、重くなって足が遅くなりますよ?――

 

『――機動性を確保しつつ、火力を向上させる艤装(アセンブリ)。魚雷マシマシというのも一つの手ですが、撃ち切ってしまえば重荷(デッドウェイト)になりますからね……――』

 

――妖精さんが、新しく艤装を開発していてくれていればいいのですが……――

 

『――果たして、そう簡単にうまくいくものでしょうか?――』

 

 おめーら、俺をほったらかして会議してんじゃねーよ、と突っ込みたくなったが、()()を知らない信濃提督の前ではそうもいかず、ただ聞きに徹するだけになる。そうして、勝手に脳内会議を続ける綾波(アヤナミ)をほっときつつ話は進み、さぁ、これから演習、といったところで、信濃提督が俺の手元の拳銃(L.ホーク)に釘付けになっていることに気付く。興味がわいたのだろうか。

 

「信濃提督、この拳銃(L.ホーク)に興味がおありですか?」

「ああ、その拳銃はいったいなんだ?」

「拳銃型20.3サンチ砲、L(ライトニング).ホーク。ユニバーサル規格計画(プロジェクト)のフラッグシップとなる艤装で、生産性と整備性の向上を目的に開発しました」

 

 「艦種を問わずに装備できるようになったのは思わぬ副産物でしたが」と続け、信濃提督のためにL.ホークを一挺用意する。専用のホルスターも用意してあるし、予備の弾倉も用意した。せっかくだ、今回の演習では信濃提督にはL.ホークも装備して出撃していただこう。それにしても、今の信濃提督、ずいぶんと性格がキツイな。眼鏡をはずすと人格が変わるって、いったいどこの特佐なんだ?あっちは眼鏡外したら物腰柔らかくなってたから信濃提督とは逆なんだけど。

 

「せっかくです、お使いになってその性能をお確かめください」

「わかった、ありがたく使わせてもらおう」

 

 信濃提督にL.ホークを貸与し、この後演習することが決まったため、俺は工廠ドックへ向かうことにする。理由はもちろん、今回の装備プランの検討である。もし、綾波の予想通り新型の艤装が完成しているのなら、ロールアウト前に稼働試験も兼ねて演習に投入しておきたい。そうでなくとも、やるべきことは山ほどある。だが、今考えるべきことは……

 

「演習メンバーの編成だな」




ちょいとアンケート設置、詳しくは活動報告へ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。