特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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だいぶ遅れた、すまぬ。


俺、再び菊月と長月を探します。

 テンリュウの偏食癖が発覚した次の日、俺は拳銃(ブレイクガンナー)を手の内で弄びながら今日一日どうしようかを考えていた。ちなみに、現在時刻は04:00。普段の起床時刻の60分前である。俺もたいがい、好き嫌いはあるので人のことは言えないのだが、さすがにこればかりは閉口させられる。俺もここまで好き嫌いは激しくないほうだと自負しているだけあって、これにはただただ驚かされた。

 

――珍しいですね、こんなに早起きするなんて。そんなに気がかりですか?――

 

「いや、気がかりっていうか、腑に落ちないっていうか、昨日一日雲龍たちに探してもらったのに、菊月も長月も見つからないのが不思議でならないんだ。雲龍たちの索敵が十分だったとは言い難いが、それでも足跡のひとつは辿れたはずだ」

 

 別に雲龍たちの技量を疑っているわけではないが、期待していた分、どうしても拍子抜けしてしまう。やはり、自分の足で探し回るしかないのか。そんなことを考えつつ、耳が痛くなりそうな静寂の中、俺はL.ホークのホルスターを装備してドックへと向かい、海へと出ようとする。すると、支援物資を持ってきたのであろうハイパーズと第六駆逐隊がすでに待機しており、どこか退屈そうにしているのが見える。第六駆逐隊はやはり子供なだけあってか、艤装を放り出してドックでゴロゴロしており、それをハイパーズから注意されている姿が見える。そんなに遠征任務は嫌なのだろうか?っていうか、仮にも軍人がそんなことでどうすんの?

 

「遠征任務なんて退屈なだけよ、全然エレファントじゃないわ」

「じゃあ、どんな任務ならマジメに取り組んだんだ?」

「決まってるじゃない、空母や戦艦の護衛任務よ。それこそ、この一人前のレディにふさわしいビッグな――」

 

 「生意気(ナマ)言ってんじゃねぇぞ、ガキが」と、俺は暁の文句を最後まで聞くことなく、その頭を無遠慮に踏みにじる。普段なら、ここで綾波が止めにくるはずなのだが、それがないということは、相当綾波もイライラしていたのだろう。その証拠に、両脚の制御権を奪われており、暁の泣き叫ぶ声にも耳を貸さず、ただ無慈悲なまでに踏みにじる。さすがに、これ以上はマズいと判断したのか、大井が止めに入って一方的な蹂躙劇の幕が下りる。

 

「さすがに、これ以上は勘弁してあげて。この子もかわいそうよ」

「………それもそうですね……今回は大井さんの顔に免じて許してやるけど、今度やったらただじゃ済まさないからな」

「はい、ごめんなさい……」

 

 どうやら、暁も反省しているらしく、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして反省の色を見せる。とりあえず、暁は菊月と長月の捜索を手伝うことを罰則としよう。響たちは知らない、そっちはそっちで勝手にやってくれ。艤装を手早く装着し、海に出る準備は整った。暁もまた、艤装を装着し、帽子の位置を整えて準備万端なようだ。テンリュウには悪いが、今日は一日構ってる暇はないんだ。悪く思わないでくれ。

 

「行きましょう。菊月と長月が待ってるはずよ」

「ああ、そうだな」

 

 待ってろ、菊月、長月。絶対見つけ出して連れ戻すからな。




暁「一人前のレディになるには、どうしたらいいの?」

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