「睦月ちゃん、テーブルクロス、ずれてるわ。吹雪ちゃん、その椅子そこじゃない!!」
「如月、滞っているようね。私も手伝うわ、何をすればいいの?」
如月が綾波ちゃんたちの転属パーティーの準備にあたふたしていると、突然食堂の入り口から誰かが声をかけてくる。誰かと思い、そちらに顔を向けると、出撃も遠征もなくて退屈していたのであろう加賀さんが片手で頭を掻きつつ手伝いを進言してきた。彼女は綾波ちゃんとは親交が深く、今回のパーティーには大賛成なんだそうだ。加賀さんが来てくれれば百人力だ、それに、せっかく手伝いを進言してきたのだ、精一杯働いてパーティーの準備に貢献してもらおう。そう思った如月は、あちこちにあるテーブルにテーブルクロスをかけてもらうよう加賀さんに頼む。あの人には少々役不足だろうが、今手が足りてないところといえばそこくらいなので、そちらを優先して片付けてほしいというのが如月の考えだった。
「すみません、こんな役不足なこと頼んで……」
「構わないわ、手が足りてないんでしょう?」
その返答に、如月は再び「すみません」と謝り、自分の作業に戻る。「ヒマしてたから手伝いに来た」とは加賀さんの弁だが、さすがに何でもかんでも手伝わせては彼女に迷惑というものだろう。とりあえず、とっとと終わらせて今日の主役を迎えに行く要員を決めよう。そう思った如月は、今の自分にできることを探す。どうやら、テーブルクロスかけは終わったようだ。あとやるべきことは……このパーティー会場の飾りつけくらいか。
「お祭りは始まる前が一番楽しい」とは綾波ちゃんの弁だが、確かにそうかもしれない、と如月は思う。こうして準備に勤しんでいるときは、どんなパーティーになるのだろうかとか、あの子たちは喜んでくれるのだろうかとか、期待と不安で胸が膨らむのが自分でもわかる。こうして準備している自分がワクワクしているのだ、当事者はどんな気分で待っているのだろうか……同じようにパーティーを楽しみにしてワクワクしているのか、もしくは、荷造りに追われてそんなことを考えている余裕などないのか。
「如月、準備は整ったわ。あとは、あの子たちを迎えに行くだけよ」
そう加賀さんに言われて、如月ははた、と気づく。今まで準備に夢中で時間など気にしていなかったが、指摘されてスマホで時間を確認すれば、18:30になっていた。あとは料理を並べて主役を迎えに行くだけ、というまでになっていた。さて、誰に迎えに……いや、ここは自分で行こう。半日以上も待たされていい加減イライラしていそうな三人を招待するため、如月は綾波のいる私室へと向かう。急な転属のため、あまりいいものは用意できなかったがあの子たちへのプレゼントも用意してある。きっと喜んでくれるだろう。
「あの子たち、楽しんでくれるかしら?」
次回、素敵なパーティー(not砲雷撃戦)開幕。