特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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唐突に番外編


番外編:転属お祝いパーティー・前編

 綾波ちゃんがいじられていた次の日、私たちは綾波ちゃんたちの転属お祝いパーティーを急遽開くことになったためその準備に追われていた。菊月ちゃんの愛刀はすでに渡してあるし、あの子たちの捜索は任せてもいいだろう。今まで行方不明扱いで前線基地に居座っていたような状態から、正式に前線基地に転属することになったのだ。これを祝わずして何を祝えというのだ。戦友の門出なんだ、目一杯祝わせてもらおう。

 現在、綾波ちゃんには転属のために自室にある荷物をまとめてもらっているが、ほぼ食堂へ来させないための時間稼ぎに等しく、彼女のことだからあと数時間もあればすべての荷物をまとめてしまうのだろう。それをさせないためにも、夕立ちゃんと春雨ちゃんに監視を頼み、時間稼ぎをしてもらっているのだが、どれだけの効果があるのかはさっぱりわからない。むしろ、逆に手伝って予想より早く片付く可能性もあるのだ。

 

「みんな、急いでね。今日の主役が来る前に、全部終わらせなきゃいけないんだから」

「如月ちゃん、張り切りすぎ……いくらお祝いしたいからって、気合い入れすぎだよ」

「気合入ってるのは如月ちゃんだけじゃないんだよ、睦月ちゃん。従妹の門出だもん、気合入って当然だって」

「うん、吹雪の言う通りだね。僕は妹たちの門出を祝いたくて仕方がないんだ」

 

 どうやら、祝いたいのは自分だけではないようだ。そうとわかれば、より気合が入るというものだ。そう思って如月はより気合を入れてパーティーの準備を進める。菊月ちゃんと長月ちゃんがいれば、もっと楽しいパーティーになったのだろうが、いないものはいないので、諦めるしかない。それに、聞くところによると前線基地には軍紀というものがないらしい。自分たちで取り決めたマナーはあれど、明確な軍紀は存在しない。一介の一兵卒である自分としてはうらやましい限りである。

 軍紀に縛られない綾波ちゃんたちを羨むより、その前線基地でどんな生活をするのか、ということを想像してみることにする。聞くところによると、前線基地では基本的に自給自足らしく、みんなで畑を耕して作物を育てているらしい。野菜や穀物には困らないそうだが、お肉や一部の魚は支援頼みでしか手に入らないんだそうだ。畜産業や養殖業を始めてもいいのではないだろうか。そうすれば、もっと生産できるものにもバリエーションが増えるというものだ。

 軍紀に縛られない前線基地での新生活、さぞかし楽しいのだろう。如月はそんな綾波ちゃんたちの前線基地での新生活に思いを馳せつつ、パーティーの準備を進めることにした。


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