特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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テイトクカッコカリ


綾波、基地稼働編
俺、新提督と出会います。


 大本営で一騒動会ってから次の日、俺は鎮守府に帰ってから修復材で骨折を治された後、念のためと病棟のベッドで一夜を過ごして今は病棟のベッドの上で半身を起こしていた。提督として要求した艦娘が送られてきたのだが、まさかそれが彼女とは思ってもみなかった。戦艦三笠、それが彼女の名だ。帝国海軍の戦史を知るもので、彼女の名を知らぬ者はいないと言っても過言ではないほどの前弩級戦艦。彼女の名を知らないのは、にわかかモグリくらいのものだろう。

 

「すみません、本来ならこちらから挨拶に向かわねばならないというのに、病棟に出向いていただいて……」

「一応骨折が修復材で治ったとはいえ、あなたはまだまだ怪我人の身なんだからもう少し甘えてなさい」

 

 優しい人だな、この人は。提督帽を斜めに被った緩いスタイルからはイマイチ想像のつかない生真面目ぶりに少々驚いていると、三笠提督は外に待機させていたのであろう艦娘を中に招き入れる。彼女の姉妹艦だろうか、と思っていると、その予想が大外れだとわかる。そこへ入ってきたのは夕立と春雨、間違いない、この綾波が(フネ)だった頃に第三次ソロモン海戦で共に大暴れしたほうの彼女たちだ。どんなに隠しても隠し切れない闘争心(オーラ)のせいで目がギラついているのがわかる、つまり、また共に暴れたくて仕方がないのだ。

 

「綾波、また一緒に暴れられるね」

「夕立姉さんじゃないけど、素敵なパーティーしましょ」

 

 夕立と春雨が声を弾ませて共に戦いたいと手を差し出してくる。ならば、俺はそれに応えてその手を握り返すのが礼儀というものだろう。俺はその期待に応えようと手を伸ばそうとして、しかし急に表情を急変させた春雨に伸ばした手を払いのけられる。つまり、握り返してほしい綾波は俺ではない、ということか。はいはい、今呼ぶから待ってろ、春雨。アヤナミ、春雨と夕立が呼んでるぞ、応対してやってくれ。

 

『――仕方ありませんね、なんとかあなたとも打ち解けられるよう頼んでおきます――』

 

「久しぶりね、夕立、春雨。また楽しいパーティーしましょ」

「なんか、久しぶりに会ったと思ったら変なのがいてびっくりしたよ」

「姉さん、鉄底海峡(アイアンボトム・サウンド)に捨てられたくなかったら謝って」

 

 妹に冷ややかな目で見られてたしなめられた夕立は、うげっ、ともらして冷や汗を流して目を泳がせている。こんな姉で大丈夫か?その後も妹に肘で突っつかれてようやく頭を下げた夕立が未だに冷や汗を流しているのに気づき、アヤナミがなんとかフォローしていつも通りであろう夕立に戻す。おそらくこの夕立は打たれ弱い節があるのだろう。そして、そのついでとでも言わんばかりに俺のフォローもしてくれてなんとか仲良くなれるきっかけをつかめた。アヤナミGJ。

 

「まぁ、ともかく今日一日は安静にしてなよ。あなた明日前線基地に帰るんでしょ?」

「退屈になったら呼んでください、話し相手くらいにはなります。下手なロールをしない限りは」

「戦争時代から付き合いがあっただけあって、綾波の癖は全部お見通し、ってわけか。ただ、駆逐艦が戦争の優劣を決めるなんて、俺としては考えられなかったから驚いたよ」

「そうそう、素のままが一番ですよ。無理して誰かになろうとしなくていいんです、あなたはあなたのままでいていいんです」

 

 ………まさか、こんな身近に天使がいたとは……俺の目は相当節穴のようだ。三笠は前線基地への着任のための手続きがあるとかでもういなかったので、いろいろと積もる話をしようとしたのだが、もうお昼の時間だったことに気付き、俺たちは食堂へと向かう。

 ………これもしかして、夕立か春雨から「あーん」されるフラグじゃね?




ちなみに、この夕立は「まだ」改二じゃない。

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