特型駆逐艦、綾波(偽)と申します。   作:刹那・F・セイエイ

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巨大組織って、一枚岩なところないよね。


俺、大本営に赴きます。

 出撃し、艦隊行動の何たるかを実戦で学んだ次の日、俺は大本営に赴き前線基地の運営代理を務める許可を取りに行くことにした。ちなみに、このことを昨夜長門秘書艦に相談したところ「気にするな、我々が何とか掛け合って許可を取ろう」とは言っていたが、内容が内容だけに直接会って話がしたい。そのことで実に一時間以上長門秘書艦と揉め、結果的に彼女のほうが折れたため、こうして大本営に赴いて話をすることができるようになった。

 案内役の憲兵隊に囲まれ、交渉のため、応接室へと連れていかれる俺。ここが正念場なんだ、がんばれ、俺。前線基地の未来は、俺の双肩にかかっているんだ。そうして応接室まで連れていかれ、待つこと数十分、ようやく今回の交渉相手である高官がこちらへ来た。服装から見ても、前線で指揮を執る提督と違うところを見せびらかしており、これだけでもここにいるだけの理由の一端が見え隠れしている。

 

「はじめまして、吹雪型駆逐艦一一番艦、綾波と申します」

「ふん、挨拶などどうでもよい。艦娘風情と話す時間を割いてやったのだ、とっとと用件を言え」

 

 ………なんなんだ、この礼儀のかけらもない男は。今の一言だけで大本営に対する信用もガタ落ちであるが、それより気に食わないのが周囲にいる高官が俺を見て下劣な笑みを浮かべていることだ。大方、何を考えているかなど予想はつくが、どうせおもちゃにして日頃溜まった性欲を俺で発散してやろうとか言う算段だろう。だが、そうそう簡単に犯される俺ではない、そういう算段があるなら、目一杯抵抗させてもらおう。今回は青葉の支援(サポート)もある。

 

「ええ、用件ですが、北マリアナ諸島に放棄された対深海棲艦用前線基地、そこの艦娘による独自運営の許可をいただきにまいりました」

「何を言い出すかと思えば、そんなことか。兵器が意思を持って行動するだけでも気に入らんというのに、あまつさえ前線基地の独自運営の許可をくれ、か。生意気を言うな、人形風情が」

 

 ………礼儀のかけらもないどころか、艦娘に対する感謝の念もないとは……これでは前線基地の妖精さんが人間不信に陥るのも無理はないだろう。俺が妖精さんだったとしても、そんな体験をしたら人間など信用できなくなる。きっと、前線基地が放棄されるまで着任していた人間たちは、大本営から派遣された人間か大本営の息がかかった人間たちなのだろう。そうでなければ、艦娘や妖精さんたちに理解を示してあんなことにはならなかったはずだ。

 

「それに、艦娘も妖精も所詮は我ら人間の道具にすぎん。艦娘風情が人間様に楯突いたことを後悔するんだな、やれ」

 

 そうして、男の命令に従い、周囲にいた高官たちが俺を掴み、あるものは服を脱がし、あるものは暴行を加え、またあるものはその様子をカメラで撮影している。この腐ったクズ共が……俺も元は人間だったが、ここまで腐ってはいないと自負はしている。この権力に溺れたクズ共にどんな制裁を加えようかと考えている奥で、俺でも俺と入れ替わることのある綾波でもない別の()()の声が、胸のうちで呻く。

 

 『――人間風情が、いい気になって……――』




???「人間風情が……」

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